仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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ほほぉ…第3期は来年1月ですか……
……え?1月?

と、思ったよりも放送時期早くてビビった僕でした
3期が来るまでに2期の内容終わらせないと……ボソッ



第四十話「爛漫XI:悪魔の微笑み、天使の囁き」

「さっきのシーン、乗るべきだったんじゃないのか?」

「……」

シーンが一区切りし、舞台裏で英寿はかなに声を掛けた。

 

「仕方ないでしょ…姫川さんは自分が主役って演技するし、黒川あかねも主役食ってやるって演技するし。アンタだって自分が目立つように戦ってる。皆が好き勝手やってたら舞台は纏まんないでしょ。一人くらいは調整役やらないと」

「……ふぅん…」

煮え切らない様子の英寿。

かなの顔をじっと見つめる。

 

「……な、なによ」

「…いいや。お前は化かすのには向いてないと思っただけだ」

「…はぁ?」

「お前は良くも悪くも感情が表によく出る……お前、今まで人を騙したり嘘吐いた事、そこまで多くないだろ」

「……っ」

英寿の言葉にかなは図星を突かれた様な表情をする。

 

「ア、アンタになんでそんな事分かるのよ」

「分かるさ。よく人を騙す事がある奴程、お前みたいなのは分かりやすい…」

「……」

「…俺にとって演じる事とは、人を化かすという事。偽りの自分を演じ、他人に俺を俺と思わせない……だが、それが演技の全てじゃない筈だ」

「……何が言いたいの?」

「…お前の強みを、お前は分かってない。あんな演技はお前には向いてない。ましてや人を化かす演技も向いてない……」

「……」

「本当のお前は何だ?本当のお前は、どんな演技をしたい…?」

英寿はそれだけ言うと奥へと去って行った。

 

「……一体何なのよ…」

「有馬」

納得がいかない様子のかなに、今度は姫川が声を掛けた。

 

「黒川がノっててこのままだと食われる可能性がある。次のシーン、アドリブ入れるぞ」

「えーっ…そういうのはもっと事前に…」

「お前ならどんなアドリブだろうと合わせられるだろ?」

「…私を誰だと思ってるの?」

 

 

様々な剣士がぶつかり合う中、遂にこのふたりの対決が始まった。

 

「お前が渋谷で一番強い奴か」

「…貴様には、志があるのか?」

「あ?」

「「鞘姫」にはある」

仮面ライダーブレードとなった「ブレイド」と、仮面ライダー刀鬼となった「刀鬼」。

これから互いを高め合う仲となるふたりの邂逅が今行われる。

 

「志ねぇ?ないこたないと思うが、俺は口で説明するのは得意じゃねぇんだ……だからよぉ…」

「……」

「…語ろうぜ、俺達の刃で!」

「……良いだろう」

 

姫川大輝

『劇団ララライ』の看板役者

噂ではデザ神の座に輝き、今でもデザ神候補の一人だという

 

一つ一つの所作に感情が乗っている

まるで情報量の塊

 

これが感情演技…

 

「盟刀・風丸!五ノ刃!疾風怒刀!」

ほら どうした

楽しもうぜ

 

「はァァっ!」

「……」

悪いけど

訳者として格上の相手と同じ土俵で戦うつもりはない

 

「盟刀・流水(ながれ)…一ノ刃。水天一霹」

 

披露されるのは対比構造による演技。

熱い感情演技を魅せる姫川に対し、冷たい無感情の演技を魅せるアクアが演技で劣ることは無く、互いの優劣が定まらない攻防の一手である。

 

しかし、姫川も一筋縄ではいかない。

 

「おらぁっ!」

つまんねぇな

もっと楽しもうぜ

 

アクアの策略に動する事もなく、自分の演技を魅せて観客の視線を着実に奪っていく。

これが姫川大輝という人間なのだ。

 

「…クッ…なんなんだアイツ…!それにあの盟刀……他の刀とは、何か……」

そこに「ツルギ」が合流する。

姫川が提案して来たアドリブのシーンに差し迫っていた。

 

「避けろ!ツルギ!」

「……っ」

そして突如、本来「鞘姫」の攻撃が「ツルギ」を襲うシーンで、「ブレイド」の一言で本来の状況と一変する。

「ツルギ」を庇う形で「鞘姫」の攻撃を受け止める「ブレイド」。そして一方、引き寄せられた「ツルギ」は「刀鬼」の胸の中に居た。

 

「……っ」

……って、こっちに全振りかい!

 

姫川が提案して来たアドリブのメインは、「ツルギ」と「刀鬼」のシーンだったのだ。

 

アクア!

私が上手く繋げるから、合わせなさ──

 

「……っ」

「女、遊んでる場合か?」

すると「刀鬼」は「ツルギ」の口を掴み、喋れないように塞いだ。

 

「命を賭して死に合うのは男だけで良い。男に守られなければ戦場に立てないようならば、今すぐこの場から去れ」

「…っ!?」

アドリブ!?

 

「わっ、私は戦える!」

「こんなに柔らかい身体をしてか?もう少し鍛えたらどうだ」

「ちょっ、あんだ!乙女の魅惑ボデーに何すった!」

「やはりお前は女だ。男は女を命を賭して守るものなのだろう。だから俺は絶対に負けるわけにはいかないのだ」

 

ここで台本に合流。

後々長い因縁となる「つるぎ」と「刀鬼」の初会話シーンにキレイに繋がった。

 

「……」

アクアって、こんなに受けが上手かったんだ…

 

「何よ!女女って!舐めないでよ!」

「舐めてなどいない」

知らなかった……

こっちから無茶をする事なんて今までなかったから…

 

《皆が好き勝手やってたら舞台は纏まんないでしょ?一人くらいは調整役やらないと》

 

立ち位置も、私を中心に誘導して

私に視線が集まるように立ててくれる

 

演りやすい……

 

 

 

「……」

お前が調整役に回るに必要はない

裏方は俺に任せろ

 

どんなアドリブだろうと受けてやる

 

やりたい演技やれよ、有馬かな

 

《いや……一般科受けた》

《なんでよ!?》

 

《頼む、アイドルやってくれ》

《無理なものは無理!絶対やらないから!》

 

《本当に初心者か?》

《アクアとするのが初めて!》

 

《いい加減、俺も傷付く》

《ア、アクア…ッ》

 

《ここからが私たちの、ハイライトよッ!》

 

「……」

確かに

アンタは人を引っ掻き回すの、得意よね…!

 

 

母はどうやら、その昔芸能人になりたかったらしい

だから、私にその夢を託した

 

私が売れて憧れの芸能人とお喋りしたり

ホームパーティにお呼ばれしたり

一端の業界人を気取れて、どうやら楽しかったらしい

 

私も楽しかった

 

何も考えず好き勝手演技していれば

皆が天才子役と持ち上げてくれて

お母さんもニコニコ

 

私の人生が一番幸せだった時期

だからこそ、ママは有馬かなの人気に一番敏感だった

私の人気に陰りが見えてからの母はちょっと大変だった

 

なりふり構わず営業をかけて

出じろを増やせと現場を困らせて

 

私にもちょっと…なんというか当たるようになって

 

お父さんが他の女の人を好きになっちゃったのも

そんな母に嫌気が差したからだと思う

 

お母さんは『売れてる有馬かな』が好きだった

私はこの業界で生き延びなければなからなかった

じゃないと……

 

そう思っていた時期だった──

 

 

 

「……」

「…うわぁ〜!本物の有馬かなちゃんだぁー!」

「…っ」

「かわいいぃぃ〜!!」

「……」

私がアクアとの初共演が終わった次の日の撮影

彼女は私の顔を見て容赦ない笑顔を見せつけた

誰に見せる訳でもない、私だけに向けられた笑顔

 

「アイ。もうすぐお前の出番だ、準備しろ」

「はーいカントク〜!」

「……」

B小町センターのアイ

彼女が魅せるパフォーマンスは、いつも天才と言わざるを得ない出来栄えだった

 

人が求める最適解を、いつも叩き出していた

 

「昨日はうちのアクアがお世話になりました!」

「……うちの…?」

「…あっ…えと……()()()()()()()、アクアがお世話になりました!」

「…あぁ……」

なんだろう……この不思議な感覚…

彼女の発するオーラからは、可愛いや綺麗では片付く事の出来ない何かを感じる…

溢れ出る母性…

例えるなら、女神様のような……

 

「きゃぁぁぁ!」

「……っ!」

突如として、女性スタッフの悲鳴が現場に響いた

 

「ジャァ〜」

「ジャジャ〜…」

「ジャマトだァ!みんな逃げろぉ!」

現れたジャマト達は、スタッフ達を襲い始めていた

 

「……っ…あれが……ジャマト…!?」

この日、初めてジャマトの存在を視認した私は恐怖に打ちひしがれていた

 

「……」

しかし、アイはジャマトから視線を外すこと無く、私に手を差し伸べた

 

「…立てる?」

「……は、はい」

「…カントク、この子をお願い」

「おう。よし行くぞ…!」

五反田監督に預けられた私は、手を引かれたまま彼女から離れる

 

「ちょっ…待ってよカントク!」

「ぁ?どした?」

「あの人は……アイはどうなっちゃうの!?」

「…あぁ?…アイなら大丈夫だ」

「どうして!?」

「……見てみろ」

「…っ?」

安全な位置まで来たカントクは、私に視線を促した

 

そこには、逃げ果せるスタッフの中

果敢にジャマトに向かって一歩一歩確実に足を進めるアイの姿があった

 

「…ジャァ〜?」

「もぉ〜!こんな所にまで居るなんて聞いてないんですけど?」

「ジャ!ジャジャ!」

「まぁ…少しくらいはスコア稼ぎの足しになるから……いっか!」

そういうとアイは黒いお弁当箱程のサイズのデバイスを取り出し腰に装着した

 

「…カントク!あれはなんなの?」

「……あいつはデザイアドライバー。仮面ライダーに変身する為のアイテムだ」

「…仮面…ライダー?」

まだ、仮面ライダーというものが世間に浸透していない頃だった

私はこの日初めて、仮面ライダーという存在を知った

 

「それじゃあ、ぱぱっと片付けて撮影再開と行きますか!」

アイはそう言うと、真っ白なバックルを取り出し構えた。

 

《 SET 》

 

「…ぴょんぴょんっ……ホイっ!」

デザイアドライバーにそのバックルをセットしたアイは、両手でウサギの耳を摸しその手をキツネの形にすると、指先と指先を合わせてキツネの手をキスさせた。

そしてその手を指パッチンして甲高い音を鳴らす。

 

「変身っ!」

 

バックルを操作したアイの全身にはアーマーが纏われる。

純白の上半身のアーマーには、今にも羽ばたきそうな純白の翼が生成されていた。

肩や肘には天使の輪っかの様な装飾に、ウサギを模した頭部のメット。

 

《 ANGEL 》

《 READY FIGHT 》

 

アイが変身する、仮面ライダーラヴィの基本形態。エンジェルフォームである。

 

 

あの出会いがなければ、今の私はここには居ない

アクアとアイの存在は、私の芸能活動の中でトラウマであり、いつしか目標となった

 

私は天才じゃないって知って

大人は演技力より使いやすさを求める事を知って

気に食わない事も全部飲み込んで

 

生き延びる為に、私は他人に合わせる演技を覚えた

 

《合戦です…!》

《語ろうぜ、俺達の刃で!》

《決着付けるぞ、匁!》

《懐かしい顔ぶれですね…》

 

「……アンタ達は、楽しそうに演技するわね。見ててこっちも楽しくなるわ……私はこっちで良い。その方が皆喜ぶから。大人の人も、ママも……私は主役じゃなくて良い」

 

 

「ホイっ!ホイ!ホホーイ!」

「ジャァァ…!」

「よっと…!ズキューン!」

「ジャジャァ〜!」

ラヴィは特殊な弓矢である「エンジェルアロー」で無数のポーンジャマトを射撃していく。

それだけでなく、近付いてくる個体にはご自慢のステップを活かしながら敵の攻撃を捌きカウンターを食らわしていた。

 

「……」

「……アイはすげぇだろ。例え戦いの中でも、あいつは自分がアイドルである事を忘れない」

そんな彼女の戦いぶりに魅入る当時のかなは言葉を失っていた。

 

「あいつの芸能活動に対しての姿勢は正しさだけじゃないと思う。あいつにはあいつなりの正解があって、それを目指して日々努力する。周りがそれを正解だと錯覚する程に……」

「……」

「…有馬かな。俺はお前の芸能活動に対しての姿勢は間違いだとは思わない…だが、正しいとも言えない」

 

カントクは私の今まで言えなかったことを問答無用で吐き捨てた

 

「この業界に長く生きようと言うのなら、もっと自分にとって都合の良い正解を見つけろ」

 

曲がりなりにも消えずにこの業界でやって来れたのは、アイの存在とカントクの言葉のおかげだ

この言葉がなければ、私はとっくに消えていた

 

「…なぁ……お前にとって演技ってなんなんだ?」

「…え?」

「売れる為の手段?褒められたいから?それとも楽しいからか?」

「……」

かなは黙って首を横に振る。

 

「……なら、理想はなんだ?」

「…理想?」

「あぁ。誰しも理想はあるもんだろ?お前にもある筈だぞ、女優じゃない“有馬かな”の理想が」

「……」

「…その為に戦え」

「……私の…」

 

私の…理想は……

 

 

どんな役者にも、輝きたい瞬間がある

私はそんな子達を支えたい

輝きたいと思える瞬間に、輝かせてあげたい

 

ずっとそう思ってた

 

「……っ」

 

でもアンタは、私の事なんてなりふり構わず

底なしの光で私を照らしてくる

 

「アンタはいつもそうやって…私なんか持ち上げても何にもならないわよ」

「「つるぎ」の役柄は、天真爛漫な戦闘狂だ。縮こまった演技じゃ映えないだろ」

「まぁそれもそうなんだけどね…」

 

アンタは私の事、まるで分かってない

 

「でも……好き勝手やったら周りの迷惑に…」

「周りの奴等が、それを見たいって言ってるんだ」

「……っ」

 

こんな事で、私が変わるわけがない

変えられる筈がない……

 

「演りたい演技やれよ、有馬かな。フォローは俺がする」

 

なのに…

なのに…!

 

「俺も有馬の演りたい芝居を見てみたい」

「……」

 

 

 

もう…………もう!

 

「……っ」

 

アクア!

アンタが悪いんだからね!

 

「……フッ」

 

アンタはいつも私を

変にさせる!

 

「盟刀・恋華!三ノ刃!依依恋々!」

「ふっ!クッ…」

「てりゃァァっ!」

 

 

 

「……」

有馬かなの演技が的確に変化した事を観客も気が付いていた。

その中でも、クラムは一際驚いた表情をとっていた。

 

そうだったね……

商業的に分かりやすい泣き演技がクローズアップされがちだったけど

有馬かなはこういう演技で一世を風靡した

目を焼く程に眩しい太陽の様な、巨星(スター)の演技

 

今まで便利な役者だから使っていたけど……

枯れてなかったか…

 

「……分からないものだね…」

 

 

 

ほら

見たかったんでしょ?私の演技

 

もっと私を見て!

 

観客の誰もが彼女の演技に釘付けになる。

しかし、そんな中…みんなを照らす太陽のような演技を目の当たりにした彼女は、また違う反応を見せていた。

 

「……」

かなちゃんかなちゃんかなちゃんかなちゃんかなちゃんかなちゃんかなちゃんかなちゃん!

有馬かな!!

 

これが数年ぶりに推しの本気を見たファンの末路である。

 

 

では最後の質問です

A. あなたにとって、理想とはなんですか?

 

「私の理想……ですか…」

 

「……私の…理想…」

 

「…私は、これまで「天才役者」として舞台で戦って来ました。でも、現実の辛さを知って…信頼出来る友達や恋人が出来て……それからの毎日はすごく楽しくて…」

 

「これまでの私は「元天才子役」という意味の無い肩書きを盾に自分の身を守って来ました。ですが…アイドルを始めて、信頼出来る仲間やライバル達と出会って……それからの毎日は凄く大変で…」

 

「……だから…」

 

「……でも…」

 

「「こんな日が、ずっと続けたらいいなと思います」」

 

 

 

ジャマトが現れた際、

仮面ライダーが戦う事は義務ではない。

戦うかどうかは本人次第である。

 

 

第四十話「爛漫XI:悪魔の微笑み、天使の囁き」




次回

「ブレイド!今よ!」
「勝ちたかったな……私は……」
「刀を取れ」
「……もういい」
「それだけか?あるんじゃねぇのか?お前の中にも──」
「アクアならきっと誰よりも凄い役者になれる!」

「うあぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

第四十一話「爛漫F:怒りの矛先」
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