仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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爛漫編、最終回です
漫画で初めてこのシーンを見た時はかなりの衝撃でした…
正直これを文章化するのは大変難しかったです…
少しでも伝わればと思います

それでは本編をどうぞ



第四十一話「爛漫F:怒りの矛先」

『この村に宿はひとつしかありません。一度チェックインしてから…村を散策すると良いでしょう』

 

「アクア凄かったね!天才天才!」

 

昔から

人が求めるものには、なるべく応えてきたつもりだ

 

「すごく気持ち悪くて良い演技だったよ!」

「子供に言う感想か?」

 

誰かに期待されたら、曲がりなりにもその期待に答えたくなるというものだ

 

「本当に凄いよ!アクアならきっと誰よりも凄い役者になれる!」

 

それが前世の推しであり、今世の母親であれば

尚更だ

 

 

 

ポチャン…

 

 

 

「……」

水の滴るような音がする

まるで時を刻むメトロノームみたいに、等間隔で音が響く

 

演技は楽しいか?

 

「……」

誰かの声が、僕の中で木霊する

 

お前にとっての演技とは、復讐だ

 

そして当たり前のようなことを言う

 

お前は果たさなければならない

母親の無念を晴らす事

それだけがお前の生きる意味だ

 

「……俺は…」

 

お前の理想を…

お前の復讐を果たせ

 

「……」

 

その為に……

 

 

「……」

有馬…あかね…

お前達は楽しそうでいい演技をするな

 

眩しい

 

 

「……」

そういうアンタはどうなの?

 

 

「……」

俺は違う

お前達みたいなスター性を俺は持っていない

 

 

「……」

そうだよ

そういうかなちゃんが見たかったの

 

そういうかなちゃんに勝ちたかった…

 

 

「「ブレイド」!今よッ!」

「はぁぁっ!」

「ツルギ」の掛け声に「ブレイド」が応える。

彼の斬撃が「刀鬼」を襲うとした。

 

「……っ」

「……っ!」

しかし、その攻撃を庇った「鞘姫」。

まるで花弁が散るように、その命の灯火は消えかかっていた。

 

「……」

勝ちたかったな……

私は……

 

「……っ…傷が…」

辺りに舞う花弁と共に、自身の傷が癒えていく事に「ツルギ」は気が付いていた。

 

「……」

倒れた「鞘姫」を見つめる「刀鬼」。

いつしか彼からは戦意が感じられなくなっていた。

 

「刀を取れ」

「……」

「女を斬られて、黙って引き下がるのか?」

「…もういい」

完全に目の中から光を消した「刀鬼」は、「鞘姫」を抱えながら呟く。

 

「俺は「鞘姫」の為に戦っていた。守れなかった今となっては、戦う理由がない」

「……それだけか?」

すると、「ブレイド」は諭すように語りかける。

 

「あるんじゃねぇのか?お前の中にも──」

「……」

 

 

ポチャン… ポチャン… ポチャン…

 

時を刻む水滴は、絶え間なく俺の中で木霊する

その音をずっと聞いていて、おかしくなるくらいには

 

「お前は演技を楽しもうとすると、罪悪感に苛まれる。違うか?」

「……」

いつの間にか俺の中にいたイラドが、俺に語り掛けた

 

「その罪悪感が、お前の中の怒りを呼び覚ます」

「…それはお前が……」

「俺にお前の感情を昂らせる能力なんてない。ただ俺はきっかけを与えているに過ぎない。お前に火をつける為のトリガーをな」

「……トリガー…」

 

ポチャン… ポチャン… ポチャン…

 

「俺はお前の記憶を元に、俺という存在を確率して行った。お前の怒りを知る事、それが俺の生きる意味となった」

「……」

 

ポチャン… ポチャン…

 

「俺はお前の怒りが生み出した存在。つまり俺は、もう1人のお前だ」

「……もう1人の…俺…」

 

ポチャン…

 

「星野アクア。お前がこの場を切り抜く方法はただ一つしかない……お前にとっては辛く、しんどい選択だ」

「……」

「お前はもう──」

「……」

 

演技を楽しむな

 

 

「うあぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

「…っ!」

 

演技が上手い奴ってのは

大抵芝居が好きで

芝居を楽しめる事が最大の才能だったりする

 

お前はその逆を行け

 

「はあぁぁぁっ!!」

「……っ」

 

苦しみながら、芝居をしろ

お前にとって演技は、辛く苦しいものであれ

楽しいなんて二度と思うな!

 

「ぬあぁぁぁぁあっ!」

アイ…!

アイ…!アイ…!

アイ…!アイ…!アイ…!

 

「……」

「ああああああああぁぁぁ!」

そこを退け!姫川大輝!

 

有馬かな

黒川あかね

浮世英寿

 

お前等を下して

俺はこの業界での『評価』を手にする!

 

「ふっ!」

「クッ…!があぁぁぁああ!」

 

他は何も要らない!

俺にとって

演じる事は復讐だ!

 

 

「……」

ウルスの奴、感情演技を……

しかし…

 

「うあぁぁぁぁあ!」

 

どうしてそんな辛そうな顔をする…!?

 

「……っ」

まさか…!

 

 

 

「……それでいい…星野アクア…」

観客席に座るイラド。

しかしその目はしっかり閉じられ、意識をレーザーレイズライザーへと集中させていた。

 

 

「うわぁぁぁあああっ!」

「どうした!?お前の怒りはそんなもんか!?」

彼の記憶の中で、仮面ライダーとなったイラドとウルスは死闘を繰り広げていた。

 

ソルジャーランサーとレーザーレイズライザーの刃が擦れるように衝突する。

 

「有馬かなに光を見たか!?黒川あかねと出会って理解者を得たと思ったか!?演技は楽しいか!?」

「……っ」

「このまま全て忘れて恋とか青春とか楽しい人生送りたいと思ったか!?」

「……」

「…許さねぇよ…そんなの」

 

FINISH MODE

 

「母親を死に追いやった奴を細切れにして、すり潰して!心も身体も痛めつけて、死よりも苦しい地獄を終わらせるまで……お前にそんな権利はねぇんだよ!」

 

LASER VICTORY

 

「はぁぁっ!」

「クッ…!」

イラドの攻撃を受けたウルスはソルジャーランサーを地に着き膝を着く。

 

「……」

「……戦いはまだ終わってない。ここで姫川大輝を倒し、お前は次のデザ神の最重要候補としてのし上がる。デザイアグランプリの関係者にその名を轟かせ、真犯人と接触する手立てを構築する」

「……」

「…俺はお前のサポーターだ。俺がお前を、デザ神までの道へと導く」

「……」

立ち上がったウルスは、その顔を俯かせたままだ。

 

「……お前はもう1人の俺…って言ったな」

「あぁ、そうだ」

「…ならお前にも分かる筈だ。俺の怒りの矛先…その正体を……」

「……?」

ウルスはソルジャーランサーを引きづりながらイラドに近付く。

 

「僕はアイを救えなかった。目の前で潰える命の雫が、音が鳴らなくなるまで何も出来なかった……僕が本当に一番殺したいのは…無力で何も出来なかった、後悔に焼かれる僕自身だ…!」

「……っ」

 

IRON CHARGE

 

「…はぁぁっ!」

「……っ」

ソルジャーランサーを構えるウルス。

その矛先は、イラドに向いてはいなかった。

 

TACTICAL EDGE

 

イラドのすぐ後ろに居た、雨宮吾郎と同じ形をした黒い影。

彼の怒りの残留思念が残した、正真正銘もう一人の彼だ。

 

「……」

「悔しくて、悲しくて…たった一度で良いから、またアイの声を聞きたくて……」

 

破壊されたその影は、形を失いながらアクアの元へと向かって行く。

 

「……その感情…使うぞ」

 

 

「戦いは終わりだ!けが人の治療を…!」

「ブレイド」と「刀鬼」の戦いは、「刀鬼」が彼の雷でひるまされたことにより、「ブレイド」が勝利を収めた。

 

「遅いよ。失血が多すぎる…「鞘姫」は助からない」

「……」

すぐさまけが人の応急処置を指示した「ブレイド」だったが、「匁」が彼女の容態をすぐさま察知した。

 

「…まだ」

しかし、「ツルギ」が彼女の盟刀の鞘を手に持つ。

 

「これは、『傷移しの鞘』。自分が負った傷を他人に移し替える事が出来る支配者の力。この子はその力を、仲間の傷を自分に移し替える事に使っていた」

「……っ」

「死ぬ直前に私の傷まで持って行った。敵にまで情けをかけるなんてね…」

「…俺の傷もなくなってやがる……っ…まさか!最初からこうして戦いを治めるつもりで…!?」

「…そういうお方なんだ」

「だから僕達は……」

皆、「鞘姫」という底無しに情の深い女性を理解し始めていた。

敵であれ味方であれ、等しく命を救おうとしたこの剣士に尊敬を称える。

 

「……まったく…」

盟刀・流水を手に持った「ブレイド」は、盟刀・花蓮の鞘を持った「ツルギ」と目を合わせた。

 

「この鞘の本来の使い方は…!」

「こういう事だろう!」

盟刀・流水の刀身を盟刀・花蓮の鞘に収めた2人は互いに叫ぶ。

 

「盟刀・花蓮…!極ノ刃…!」

「盟刀・流水!極ノ刃!」

「「鏡花水月…!」」

 

 

 

「……」

何度だって、都合の良い夢を見たよな

 

なんかの物語みたいに

ご都合主義の奇跡でも起きたらって…

 

 

 

「「はぁぁぁぁ…!」」

「……」

 

あの時、アイを救えてたら…

 

 

 

「……っ」

 

ポチャン…

 

でも君は、案外ケロッとした表情で居るのだろう

 

「ああああああああぁぁぁ!!ああああああああぁぁぁ!アイ!!アイぃ!!」

「…どうしたのアクア?甘えんぼさんだね。私はこんなんじゃ死なないよ!☆」

「……ああああああああぁぁぁ…!」

 

ポチャン… ポチャン… ポチャン…

 

命の輪郭を伝う雫が、再び鳴り響いてくる

 

何度願っただろう

そんな叶うはずのない夢を

 

 

「……こいつは…」

こんな記憶は存在しない筈だ……

なのに俺は、今あいつの記憶を観ていた…

 

「……フッ」

どうやら、俺はまんまと化かされていたようだな

 

俺はあいつの怒りを理解していたつもりだった

理解した上で、俺はあいつを利用して自分の憂さ晴らしがしたかっただけなのかもしれない

 

ファンの意見てのは、実に身勝手なもんだな

 

舞台は大団円。

客席のほとんどがスタンディングオベーションをする中、イラドは再び仮面を被り客席を後にした。

 

「……あばよ、星野アクア」

せいぜい、幸せになりやがれ

 

 

 

「……っ」

そんな時、ルビーが観客とは別の方向を向くイラドの存在に目を奪われた。

それは一度見た事のあるキツネのお面にでは無い。

 

「…………せんせ?

気が付けば、ルビーはミヤコの声も届かぬ程に無我夢中で客席を後にする。

 

「…ハァ…ハァ……せんせぇ!」

会場の扉を開いても、その姿は見つけられなかった。

まるで神隠しにでもあったかのように…

 

「……見間違い……いや…」

でもその出来事は、星野ルビーの想いをまたひとつ変える事となる。

 

「……せんせ。私、頑張るから…」

 

 

舞台『東京ブレイド』の初公演日は無事に終了し、劇は大団円で締め括られた。

 

結局、このゲームは主役である「ブレイド」役の姫川大輝が勝利を収め、あかねとかなのライバル関係に終止符が打たれることもなかった。

 

英寿とメルトは一層互いを高め合う仲へと発展し、時折2人で模擬戦を行っているとか…

 

そんなメルトだが、吉祥寺の直談判により次回の吉祥寺原作の実写化ドラマへのオファーがかけられていた。

 

どうやら、アビ子とGOAの合同脚本の次の劇の話も、既に持ち上げられ始めているらしい。

 

この舞台によって、様々な演者達の新たなる一面が露となった。

ゲームとは言え、やはり舞台に注ぐ思いは役者一同同じ。決定的な決着が着くことも無く、ゲームも締め括られた。

 

こうして、ひとまず舞台の幕は降りる。

しかし、次の物語の舞台は

すでに幕を開きかけていた……

 

『私的DNA型鑑定書』

 

「……」

 

 

 

プレイヤーの総意で勝者が生まれない場合

そのゲームは無効となる。

また、その場合プレイヤー各々に

ポイントが加算される。

 

 

第四十一話「爛漫F:怒りの矛先」




次回

「今日も良かったぞ!じゃあ飲みに行くか!」
「金田一さんて、ララライにいつ頃から居るんですか?」
「俺もオッサンの失敗は気になる」
「俺は今まで、あいつの怒りを理解していたつもりだった」
「お前らが良い演技するおかげで、俺は不完全燃焼だったんだ……その鬱憤、ここで晴らさせてもらうぜ?」
「今日は貴方と話がしたかったんです」

第四十二話「豁然Ⅰ:真のターゲット」
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