仮面ライダーギーツ【Mother and Children】 作:キャメル16世
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第四十二話「豁然Ⅰ:真のターゲット」
「ふいぁー〜」
「疲れたぁーっ!この舞台消費カロリー高いのよ……」
「おしおし!今日もよかったぞ!じゃあ飲みに行くか!」
「ええっ今日も!?」
「舞台人は飲み会好きだよな」
「予約は任せてください!この辺りで当日団体OKな店のデータはいくつか押さえてあります!」
「意外と大人しい奴の参加率高かったりするよな」
その日の舞台も無事そつなくこなした演者達は、毎回恒例の飲み会を開催する。
「姫川も行くよな」
「んー…そうだな。たまにはオッサンも行く?」
そういうと姫川は金田一に声を掛けた。
「オッサンが居たら気を使うだろ。若者だけで楽しんでこい」
「気なんて使いませんよ。一緒に行きましょう!」
「……んー…なら行くか」
「やった!」
「……」
「私こういう飲み会とか騒がしくて苦手なのよね。アクアはどうするの?私は帰って──」
「行く」
「やっぱ私も行く」
「だからね!?役者も一人の作家であるべきなのよ!その場その場でミスしないように演じるんじゃなくて、作劇的な盛り上げに加担しなきゃいけないわけ!」
「でもそれは演出家の仕事だろう」
「そうだけど!駄目な芝居なら行ってくるでしょ!?」
「チャレンジな芝居は必要だ」
「……」
結局盛り上がってるじゃねーか
頬を赤らめて熱弁するかなを横目にアクアは思う。
ちなみにかなが呑んでいるのはジンジャーエールである。
「浮世は呑まないのか?」
「酒は嗜まん。好みじゃないんでな」
「お前も姫川と同じぐらいだろ?若いうちに酒の恐ろしさは知っておくべきだぞぉ」
「…いや、もう十分に知ってる」
「……」
金田一敏郎…
『劇団ララライ』の代表兼演出家で、この劇団に長く籍を置いている…
《そこだろうね…アイが恋をしたのは》
「……」
アクアにはひとつ目的があった。
それは金田一敏郎と接触し、『劇団ララライ』のワークショップを開いていた時代の事を聞き出す事だ。
「隣、良いですか?」
「ん、星野。芝居少しずつ良くなってきているな。このまま千秋楽まで気張れ」
「ありがとうございます」
傍にある鉄板で肉を焼く姫川と英寿を横目に、アクアは本腰を入れ始めた。
「金田一さんて、ララライにいつ頃から居るんですか?」
「…最初からだ。ララライは元々演劇専門学校で芝居やってた奴等が自分達でサークル演劇を立ち上げた所から始まっている。俺も立ち上げメンバーの一人だ」
「演劇学校の演劇とサークル演劇って違うんですか?」
「まぁ学校にもよるが……専門学校は教員主導。サークル演劇はOBや外部の講師を自分達で呼ぶ。やりたい事をやりたい身勝手な奴等でララライを立ち上げた訳だ…」
「……」
「最初は人を集める事も大変でな。ワークショップで集めた人材使って何公演か回して……」
「……」
「……」
「まぁあれは失敗だったがな、もうやらん」
「…失敗……ですか?詳しく聞きたいですね」
「若い頃の失敗だ、詮索するな」
金田一はアクアの要求を一蹴すると、ジョッキのビールを飲み干した。
「教えてください」
「駄目だ。子供にするような話じゃない」
「……」
以外にも頑固な金田一に、アクアは少々諦めの表情を見せる。
「……っ」
「任せろ、俺もオッサンの失敗は気になる」
すると、姫川がアクアの肩に手を置き小声で応えた。
「金田一さぁん、ヤサ変えて飲みましょう」
「……」
「…いい店があるんです」
「ふ〜ん〜…ふふ〜ん〜…」
「……帰った」
「お、おかえりイラドぉー!見て見てぇ!ナビゲーターちゃんにお願いして、僕のレーザーレイズライザー直してもらったんだぁ〜!」
ソファでくつろいでいたシック。帰って来たイラドに自身のレーザーレイズライザーを見せて自慢する子供のような表情をとった。
「…よかったな」
「……あれ?イラド、なんかあった?」
「……別に」
「…ってか、『東ブレ』の舞台見に行ったんだよね?どう?君の理想は叶いそう?」
イラドの声色に違和感を持ったシックは半分好奇心でイラドに質問した。
「……いや、俺の完全敗北だ」
以外にも、イラドはあっさり負けを認めた。
「俺は今まで、あいつの怒りを理解していたつもりだった。その怒りを、あいつを利用して発散するつもりだった……だがあいつは、俺よりも先を行く」
「……?」
「…あいつは俺をも利用して、あの時必要だった感情だけを抜き取った。余分な怒りを捨てて……あいつはもうとっくに、自分の怒りと向き合っていた……」
イラドはキツネのお面を再び外す。
その表情は、どこか澄み切っていた。
「…俺は暫く、推し活から足を洗う」
そう言うと、イラドは自室に戻って行った。
「……ふぅ〜ん……そっかっ…」ニヤッ
「…で、なんでまたあんたが居るんだよ」
「演出家様のご希望だ。どうしても俺と呑みたいんだとよ」
姫川と金田一が前を歩くなか、再び着いてきていた英寿にアクアが指摘する。
「…それに、お前があいつから引き出そうとしている話、俺も聞きたいからな」
「……」
「「「カンパーイ!」」」
「このままあの人潰してー」
「おっけーっ」
4人は感じの良いバーにやって来た。
金田一は姫川の促されるまま、美人の店員と酒を交わすゲームをしていた。
「男ってのは可愛い女の子に注がれた酒は飲み干すもんだ。酔わせてオッサンの恥ずかしい過去とやらを引き出すぞ」
「やり口悪いな」
「ここはどういう店なんだ?」
「モデルとかアイドルとか、顔が良くても食えない奴は多い。そういう奴が事務所に内緒で働く店だ」
「それはまた……」
「会員制だからバレるリスクも少ない。結構多いぞ、こういう店」
「その感じ、割と通ってる感じだな」
「まぁな、俺可愛い女の子好きだから」
ちなみにだが、姫川はこの間20歳になったばかりらしい。
「結局俺等は口の堅い同業者としか遊べないからな、共演者と色恋も面倒が多い。カジュアルに遊ぶならこういう場所が丁度良い訳だ」
「オレンジジュースください」
「俺はウーロン茶を頼む」
「おっけ〜」
向かって来た定員にアクアと英寿が注文する。
「……オイ、飲んでねぇな姫川…浮世…!」
「やべぇバレた」
すると向かいの席から酔った金田一がヌルッと顔を出して来た。
「二人はどういう関係なんだ?」
「俺は養護施設出身でさ、施設出た後金田一さんに何かと面倒見てもらってたんだよ」
「…養護施設……」
「……欠けてる奴は良い。欠けてる部分を求めるように技術を吸収していく。姫川がまさにそうだった…」
金田一は酔いながらも思い吹けるように語り始めた。
「星野、浮世、お前達もだ……お前達の芝居は似ている。
「…たしかに……そのケはあるかもね」
「星野…お前はつまらん芝居をする奴だと思った……だが終盤の演技、本物の感情が見えた…あれは本物のやつだ、面白い」
金田一はニヤけながらアクアを褒めるような発言をする。
「浮世も自分は王者だという貫禄と謎の説得力がある。あれも面白い芝居だ。まぁ俺の指導が良かったんだなぁ」
「すぐ自分の手柄にするじゃん」
「何おうぅ…?何にも無かったコイツを売れっ子まで育ててやった…なのに飲まねぇ…飲め飲め……Zzz…」
「しまった飲ませすぎたか……」
いつの間にか寝てしまった金田一を別のソファに寝かしつける姫川。
落ち着いてからまたアクア達の机に戻って来た。
「すまんな。オッサンの過去話はいずれ引き出してやる
から」
「別に良いですよ」
しかし、本日の彼の真のターゲットは金田一では無い。
「今日は貴方と話がしたかったんです。このタイミングを待っていました」
「…ん?」
「これを」
アクアは懐から1枚の紙を取り出した。
そこには、「私的DNA型鑑定書」の文字が記されていた。
「…何これ……遺伝子…鑑定?」
「俺と姫川さん、父親が同じなんですよ」
「…っ!?」
「……」
彼の真のターゲットは姫川大輝。
DNA鑑定の結果、異母兄弟である事が分かった唯一の人物だった。
「教えてくれませんか?貴方の父親の事」
「……まさかそこまで辿り着いていたとはな」
「…英寿はこの事知ってたのか?」
「いいや、今初めて知った。こいつの事情は分かっていたが、こうもあっさり答え合わせが出来るとはな…」
「……」
遺伝子鑑定書を再び見た姫川は改めてそこに記されていた事実に唖然とする。
「…異母兄弟……そういう事も…まぁあるのか」
姫川は寝ている金田一を見てカバンを持ち始めた。
「こんな所でする話す内容でもないな。オッサンも寝かせたいし、3件目行くか」
「どこにだ?」
「…んー……俺ん家で良い?」
姫川の提案通り、4人は姫川の自宅へと向かっていた。
金田一はアクアの肩に抱えられ、英寿がその前を歩く。
「DNA検査までしてるって事は、大体目星つけてた感じか?」
歩きながら、姫川は話を進めることにした。
「星野の母親って誰?」
「それは言えない」
「……」
「…なるほど、タレントか」
誰なのかは分からないが、姫川の中でひとつの結論に至った。
「……同じだな。姫川愛梨って知ってる?」
「知ってる。朝ドラのヒロインやってた。かなり昔の作品だけど…」
「そう……で、その母親なんだけど…俺が5歳の時とかだっけっかな……」
姫川は歩きながらスマホで何かを検索し始めた。
「……あ、出た出た…」
「…っ!伏せろぉ!」
「…っ!?」
姫川が検索結果の画面を見せる直前。
英寿がある者の存在に気が付き声を上げる。
「…グッ!」
すると、歪な形をした棘のあるツタが4人を襲い、英寿はその攻撃を庇って左腕を損傷していた。
「おい!大丈夫か!?」
「……っ…あれは…!」
「…っ?」
アクアが目の前の景色に目を見開く。
砂煙が舞う夜道のど真ん中、見覚えのある異形の姿があったからだ。
「……ジャッジャッジャッ…」
「…白いバラのジャマト……」
「…クッ…性懲りも無くまた現れたか……ウッ…」
戦おうと立ち上がる英寿。しかし腕の痛みに耐えられず再び膝を着く。
「……トアーブグファテル…」
「…なに?」
「ジャマト語だ……どうやらこの間より知識を蓄えたようだな」
独自の言語を用いり何かを呟く白バラのジャマト。
どことなく声質は女のそれっぽかった。
「…トアーブグファテル」
「…クッ…何を言ってるのか分からないが、目的が俺だと言うことだけは分かる」
腕を押さえた英寿は自信が標的にされている事を察し、再び立ち上がる。
「……」
姫川はそんな英寿の状態と、金田一を抱えたアクアを交互に見たあと、英寿の元へと向かう。
「俺にやらせてくれ」
「…っ」
「今回の舞台…お前らが良い演技するおかげで、俺は不完全燃焼だったんだ……その鬱憤、ここで晴らさせてもらうぜ?」
すると、姫川は何やら金色のデザイアドライバーを取り出した。
「…なんだ、そのドライバー…?」
「……『デザイアドライバーツヴァイ』。殿堂入りデザ神に贈られる、上級者専用のドライバーだ」
《 DESIRE DRIVER
姫川はデザイアドライバーⅡと呼ばれる黄金のデザイアドライバーを腰に装着した。このドライバーでは腰に巻かれる帯までもが金色に染まるらしい。
「お前等の想像通り、俺は過去に何度かデザ神になった……だが今は演技一筋。だから今日は久々に…暴れさせてもらうぜ」
そう言うと、姫川は新たなバックルを取り出した。
英寿がクラムから受け取った特殊なバックルと同形状でありながら、色は赤みがかった紫と、銀と紺色で配色されたバックルだ。
《 SAMURAI 》
すると姫川は側面のダイヤルを回して前面の絵柄が変化し、和風チックな背景に刀が描かれた絵柄が浮き出て来た。
《 SET 》
バックルをドライバーにセットする姫川。
手を荒々しく広げ、身体の前に構える。
「変身」
《 TRADITIONAL WARRIOR 》
《 SAMURAI EDGE 》
黄金のデザイアドライバーで変身した仮面ライダーはどうやら、エントリーフォームの時点で身体の所々に金色の差し色が入るようだ。
そして上半身には羽織に似たアーマーが装着され、最後に2つのオオカミの頭を模したような仮面が被さる。
姫川が変身するライダー。仮面ライダートロス サムライエッジフォームがここに見参した。
「……クロカカツームファツイズラサキョ」
「悪いがこの後込み入った話があるんだ…すぐ終わらせてもらうぜ?」
《 READY FIGHT 》
サムライエッジフォームの専用武器である二本の刀「ムラマサ」と「ムラサメ」を構えるトロスは、白バラのジャマトをしっかりと見据えていた。
第四十二話「豁然Ⅰ:真のターゲット」
次回
「俺の両親は夫婦ともども心中してて、この世にはいない」
「もう……生きてない…?」
「妙な気分だよ、俺に突然半分とは言え血の繋がった人間が現れるんだから」
「……新曲?」
「やんねぇとなのに…やる気ぃ…」
「それ、大御所病かもね」
「お兄ちゃんも宮崎行く?」
第四十三話「豁然Ⅱ:新たな出発点」