仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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前回登場したカメラマンは、誰とは言いませんがあの方です。推しです。
やっぱり世界線が繋がってる以上登場させたいと思ってたし、せっかくなら英寿との絡みを見たかったので!



第四十五話「豁然Ⅳ:出発と再出発」

私がアイドルユニット名を『B小町』にした理由は、二つある

 

一つはママが叶えるはずだった願いを引き継ぐという気持ち

そしてもう一つは……

 

「…えっ……どういう事ですか?」

「吾郎先生は何年か前急に連絡が付かなくなって……」

「……」

「いわゆる失踪という──」

 

転生して色んな事が落ち着いていた時期

私が入院していた病院に連絡した事がある

せんせはアイが出産した日から連絡がつかなくなったそう

 

「……せんせが『B小町』という名前を見逃すはずがないもんね。どこかで私の事を見ててくれるはず」

 

お兄ちゃんの舞台を見に行った時、せんせらしき人を見かけた。すぐに見逃しちゃったけど

あれが本当にせんせなら、きっと新生『B小町』のセンターである有馬かな(先輩)を見に来たに違いない

だからきっと……

 

「…せんせ……今頃どこに居るんだろ……」

 

*

 

ヒムラさんの曲は、思ったより早く上がって来た

仮歌の状態で既に100億点満点!

私達3人は新曲の完成に大いに盛り上がっていた

 

「はー…これからこの曲をアンタ達の歌声で汚すと思うと申し訳なさしかないわね」

「今日も辛辣だねぇ」

「大丈夫大丈夫!音源はキューベースとかプロツールスで調整しまくるし、音痴の歌でもそこそこ聞けるものになるよ!」

「言ってて悲しくならないの?」

「……」

これを歌えるかと思うと、本当に心が弾む!

ヒムラさんの件でアドバイスくれたフリルちゃん!ありがとぉ!!

 

 

 

その後の話だけど、MEMちょの知り合いが新曲のMVまで撮ってくれる事になり、私達は撮影当日までその振り入れを進めていた

 

「いち、にー!さん、し!いち、に!いち、に!」

「有馬ちゃん、そこの振り付けはもっと腕を伸ばした方がいいよぉ」

「む…テンポが早くて踊りずらいのよね、この曲…」

「まぁでも、せっかくヒムラさんがやる気出して作ってくれたんだし!私達も全力でやらなくちゃ!」

その日も練習で、レッスンは撮影前日の夜まで続いた

 

「おう、お前ら」

「エース!なんでここに?」

「お前らのマネージャーだからな」

「その設定、まだ生きてたのね……」

するとエースさんがやって来て私達のレッスンを見学しに来た

 

先輩とMEMちょのパートでふたりがレッスンする間、私は休憩でスタジオの隅に座っていた

 

「明日への備えは万全か?」

「うん!いやーそれにしても、ヒムラさんのセンスがまだ生きてて良かったぁー!なんなら「STAR☆T☆RAIN」よりも凄い名曲になるかも!」

エースさんは私の横までやって来て声をかける

 

「……」

「…エースさん?」

「……いや、宮崎の件でな」

「…あぁ〜…そっか、エースさんは知ってるんだもんね、私の生まれた場所の事」

「……テラス。今だから聞く…」

「……」

「何故俺にだけは、母親の秘密を告げた…?」

「……」

長い沈黙の中、先輩とMEMちょがレッスンをする声とステップの音だけがスタジオに響いた

 

*

 

撮影当日

 

「……♪」

ウキウキで空港まで来ていたかな。

前方には以前アクアが選んだ白いキャリーケース、とオレンジ色のキャリーケースが並んでいた。

 

「…お邪魔します」

「……」

アクアに誘われていた黒川あかねが合流していたのだ。

 

「なんで部外者が付いてきてんのよ…」

「お前が慰安旅行として一緒に来たらって言ったんだろ」

「だーもうそーだけどー!」

自分の言った言動を英寿に指摘されたかなは心底後悔する。

 

「本物の黒川あかねちゃんだー!『今ガチ』見てました!綺麗ー!かわいー!」

「そんな…ルビーさんの方が何倍もカワイイですよ…」

「えへへー!」

ルビーはあかねの両手を握り彼女を歓迎していた。

 

「…なんでこんな綺麗な人が兄と……どんな弱味を握られたんですか?」

「お前の中で俺はどういう人間なんだ」

「ふつつかな兄ですが末永く宜しくお願いします!」

「……」

「…あとそのっ……あかねさんの事…お姉ちゃんて呼んでも良いですか!?」

「えーっ!?」

「私ずっとお姉ちゃんが欲しかったんです!いずれ私のお義姉ちゃんになるんでしょ!?結婚するんでしょ!?」

「いや…そのーっ…」

「テラス。あんまりカメレオを困らせてやるな」

「…はーいっ!」

「……」

「……」

英寿の言う事を素直に聞いたルビーは彼等から離れて行く。

 

「エースくんも来てたんだね」

「テラスからの誘いでな。あと、俺は一応『B小町』のマネージャーだしな」

「へー…」

「……あんまり信じてないな」

「いやいやっそんな事ないよ!ただイメージ沸かなかっただけで…」

 

その後飛行機に乗った一行は宮崎までのルートを順調に進んでいた。

 

たどり着いた地は高千穂。

神話と渓谷と安らぎの町が謳い文句の雪景色が広がる地だった。

 

「いらっしゃい高千穂へ!映像ディレクターのアネモネです!」

一行の前に姿を現したのは派手な色のメッシュが目立つ女性、アネモネだった。

 

「アネモネ!」

「MEMちょおひさー!」

彼女こそがMEMちょの友人で今回のMV撮影の依頼を快く受けてくれた恩人だ。

 

「『苺プロ』の齋藤です。よろしくお願い致します」

「こちらこそです!お忙しい中こんな田舎にわざわざ来ていただいて!」

 

「……」

アネモネとミヤコの会話が弾む中、ルビーは街並みを観察していた。

 

「面白い街並みだな」

「え…?うん」

すると、英寿が横に並んで同じように街を観察する。

 

「ここがお前達が生まれた場所か」

「…うん……」

私が生まれ育って……私が死んだ場所…

 

「調べによれば、ここは芸能の神が祀られてるらしい。それで芸能人がよく参拝に来るんだとか…」

「なんて神様?」

「…天鈿女命(アメノウズメノミコト)。荒立神社に祀られてる女神だな」

「へぇ〜アクたん詳しいねぇ〜」

「…まぁな」

「……」

芸能の神……女神、ねぇ…

 

「じゃあ皆で参拝行こ!話には聞いてたけど私来た事なかったのよね…!」

「うんうん!でもその前に……」

アネモネはウキウキするかなの肩に手を力強く置いた。

 

「今回はMVの撮影2本だからスケジュール詰め詰めなんですわ!早く衣装に着替えてスタジオに入ってもらいましょう!」

「…うぇ〜〜〜」

背中をグイグイ押されながら連行されるかなと他3人。英寿もマネージャーとして同行し後を追っていた。

 

「頑張ってこいよー」

「あはは、バタバタだねぇ。私達はどうする?近くに日本神話の天岩戸(あまのいわと)が有るんだって!ほら、アマテラスが引き篭って周りで神様達が宴会して外に出させたアレ!」

「…神様……か」

「アクアくん結構オカルト好き?」

「…好きというかまぁ……」

自称元神様の奴が身近に居るからな……

 

「……中には真実もあると思ってる」

「面白いよねそういう話!」

「……」

だが、今回知りたいのはそれじゃない

 

「行きたい所がある」

「うん、アクアくんの行きたい所でいいよ?どこに?」

「病院」

「えっ……お腹痛い?お薬飲む?」

「そういうのじゃない」

どこまで用意周到なのだろうか、あかねはバッグから錠剤やら何やらを取り出した。

 

「俺とルビーが生まれた病院があるんだ」

 

*

 

「もしかして、アクアくんの祖父母がこの辺の人とか?里帰り出産みたいな」

「まぁ…大体合ってるよ。MEMはここが俺達の故郷だって知らなかったみたいだけどな」

「すごい偶然だねぇ」

「俺も驚いたよ」

しばらく歩くと、2人は少し大きめの病院までやって来た。

雪景色に溶け込むような白い建屋は、なぜだか彼を歓迎しているようには見えなかった。

 

「ちょっと確認したい事あるだけだから、すぐ戻る」

病院にたどり着いたアクアは、受付に来るなり彼の名を口にした。

 

「すみません、この病院に雨宮吾郎という医師が居たと思うのですが…」

「雨宮、ですか…?」

あれから15年

当然人員の入れ替えもあって、俺が親しかった同僚は居なかった

雨宮吾郎は突然連絡がつかなくなり、そのまま退職扱いになったらしい

 

だがやはり、死んだ事にはなっていない…

だとすれば……

 

「なんの確認だったの?」

「知り合いがここに務めててさ……」

この地を巡ると、不思議と記憶が呼び起こされる

俺が1人のファンとして、1人の医師として彼女と向き合った日の事

 

「……」

そして俺が、そのどちらの人生も失った日の事

 

「…えっ…どこ行くの?」

「ちょっと探し物。あかねは中で待ってて」

「いや行くよ〜〜」

 

俺は気が付けばあの山道を進んでいた

あのストーカーが逃げ込んだ暗い道無き道

 

「アクアくん小さい頃はワンパクだったんだね…野に入り山駆け回るって言っても、こんな獣道……」

「…この辺の筈……」

少し開けた場所に、崖が広がっていた

ここから俺は……

 

「あかね、例えばの話だけど…15年位前にここで迷子になったペットの死骸とかって、見つけられると思うか?」

「…んー…埋めたなら骨くらいは見つかるかもだけど、野ざらしなら野生動物に食い荒らされて散り散りになってると思うから厳しいかもね」

「だよな…」

「……」

アクアくん…

昔飼ってた犬を捜しにこんな所まで…

かわいい所あるなぁ……

 

「……」

埋められたならお手上げだが、無理に捜す理由も無い

死者の墓を暴いた所で良い事は無い…か

 

ただ一つ気になるのは……

 

『くそっ…どこいった?』

『《 ■■■■ STRIKE!》』

『……えっ?』

 

「……」

「…?」

「…あと見ておきたい場所は……」

 

 

 

「色々連れまわして悪いな」

「ううん、アクアくんの行きたい場所に行こって言ったの私だし、勝手に付いて来てるだけだし」

「…これで最後だから」

2人は最後の目的地として、オンボロの古民家にやって来た。玄関は立て付けが悪いのか、少し明けずらかったが、鍵は開いていた。

 

「ここは…?」

「知り合いの家だ。といっても住人は全員もう故人で、誰も住んでないんだけどな」

「…わざわざ足を運ぶ位だから大事な人なんだよね?どんな人だったの?」

「……雨宮吾郎」

古民家の表札には雨宮の文字が今だに刻まれていた。

 

「そいつには、母親が居なかった」

 

*

 

産科危機的出血

子供が出来た事を親に隠してて、自宅で一人で産んだが出血が多過ぎた

救急車が着いた頃にはもう……

 

仕方なく祖父母の家に預けられたが、母親を犠牲にして生まれてきた後ろめたさは、結局最後まで拭いきれなかった

進路を医大に決めた時も……

 

「産医になるのね!」

「……」

「お母さんの事があったから…やっぱり貴方は優しい子ね…!」

「……」

 

本当は外科医になりたかった

好きな小説に出てくる医者が格好良くて、憧れだった

 

結局人に合わせて生きるしか取り柄がない奴だった

医者になった後も、無力で…

 

「どうしてそういう事になるんだ!?なんでさりなが亡くなるかもしれないって時に!あいつの両親は顔も出さないんだ!!」

「お二方とも都心部の方で働いてる方なので、すぐには……」

「それでも本当に親なのか!?母親ってのは……」

「そんなのは幻想だ。そういう親も居る、掃いて捨てる程……さりなちゃんはお前によく懐いてた…」

「……」

「…最期は、お前が傍に居てやれ」

 

「……」

「……せんせぇ……これ…あげるよ…」

さりなちゃんが危篤になり、あの子から受け取ったのはひとつのキーホルダーだった

 

「体調良い時……一回だけ「B小町」のライブに行った事があって、その時のガチャで出たんだぁ……」

「……」

アイの笑顔がでかでかとプリントされたキーホルダー

きっと、あの子の宝物だったに違いない

 

「私だと思って…大事にしてね……」

「…分かった。ずっと大事にする」

男は、気が付けばそのキーホルダーを力強く握りしめていた

 

「…ずっとだ」

「……えへへ」

「……」

「…せんせ…だぁいすき……」

「……」

「もし…生まれ変わっても…きっと……」

「……」

「……──」

 

*

 

「神様はきっと優しいよね」

カラスが鳴き叫ぶ枯れ木の下で、少女は微笑んでいた。

 

「真の意味で母を得られなかった2人と、魂の無い子を産んだ母親を導いてあげた…」

銀色の髪が靡き、不気味さを一層増していた。

 

「…もしかしたら、それ以上の意味があるのかもだけど」

「……一体、どういう意味だ…!」

英寿は少女を見上げる。

彼女の発言に意味を見出そうとする英寿は、暫く少女の雰囲気に惑わされていた。

 

 

 

デザイアグランプリは、

今年で開業15周年を迎える。

 

 

第四十五話「豁然Ⅳ:出発と再出発」




次回

「創世の女神は、16年前この地で生まれた」
「あいつらは、創世の女神に選ばれた…」
「アクアくん、思い入れのある場所だって言ってた」
「あの場所は、私にとっても大事な場所だよ……」
「女神マリア。それが創世の女神の名だよ」
「もう一度…会いたいよ……」

第四十六話「豁然Ⅴ:生きる意味をくれた人」
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