仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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第四十六話「豁然Ⅴ:生きる意味をくれた人」

「えーっ…こんな所まで撮るんですか?」

「アイドルのMVは踊りパートとドラマパートに分けて撮る事が多いでしょ?メインは全体のダンスの映像で尺を稼ぐけど、ちょくちょく個々の可愛さを切り取ったカットを挿入しなきゃいけないのよ」

いわゆるオフショットというものの撮影に入ったルビーとMEMちょ。

屋外のベンチに座ってサンドウィッチを頬張っていた。

 

「かなちゃんも、カメラを好きな人だと思って振り返って?」

「……っ…」

アネモネを声をかけられたかなは、自信たっぷりの表情でカメラに目を向けた。

 

「……へぇ…いいカオ。かなちゃん好きな人居るんだ」

「っ!?」

「どんな人?どんな所が好きになったのぉ?」

問い詰められるかなは顔を真っ赤にし、カメラは続けて彼女を画面に納めていた。

 

「MVはコンセプトとざっくりとした流れだけ決めて、どんなものを撮るかはその場の判断になる事も多いんだぁ…いかに被写体の可愛さを引き出すか、グラビアカメラマン的な才覚が求められるよねぇ」

「へー……」

MEMちょの説明もあって、ルビーは改めて辺りのスタッフを見渡した。

 

「結構スタッフ多いんだね」

「だねー」

「カメラマンに助手、照明、美術や衣装、メイクにもろもろ、制作PMとか監督も含めたら、人数は10とか20になるわよ。全体で言ったら500万以上かかってるんじゃない?」

「ひえっ…!」

続いてかなの説明に肝を冷やすルビー。

 

「結局アイドルは搾取されてるといっても、お金がかかる所はガッツリかかるからね。こんな金にならないグループにこれだけ出してくれる社長に、感謝しなさいよ」

「ミヤコさん大好き〜」

「ちょっ…もぉ、なに〜?」

突如のルビーの甘えに、ミヤコは苦笑いを留めていた。

 

「…まぁ、地下アイドルの撮影とかだと50万位で作ったりする事もあるって話だけど……」

「あるだろうねぇ……あれ、そういえばエースは?」

「さぁね?外の撮影の時、いつの間にか居なくなってたわ……」

「…それ、ホントにマネージャーって言えんの?」

「私に聞くんじゃないわよ」

 

 

「……一体…どういう意味だ…!」

「……フフッ」

「…クッ……」

くそっ…

少し辺りの散策に出ただけのつもりだったが…

いつの間にかこんな道外れの場所に……

まるで導かれていたかのようだ

 

そしてこの少女…いつの間に俺の事を……

 

「……フフッ」

「……」

 

……いや、違う

ずっとだ……

 

ずっと俺達の事を──……

 

「浮世英寿君。君は神様を信じるかい?」

「…なに?」

銀髪の少女は突如英寿に語り掛ける。

周りの枝に留まるカラス達の鳴き声がうるさい。

 

「……ちょっと聖地巡りしようよ。女神様が祀られてる場所を案内するよ」

「…女神様?」

「……創世の女神」

「…っ!?」

「…彼女の元に案内してあげる」

「……」

なんとも不思議な少女だ

だがしかし、創世の女神の名を口にした事で、デザイアグランプリの関係者である事は判明した

こいつに付いて行けば、何かが分かるかもしれない…

 

英寿は何を言うことも無く、銀髪の少女に付いて行く。

少女の後を追う間も、周りのカラスの野次が飛び交い、羽ばたく翼の音も雑音になる。

 

「……ここだよ」

「…ふざけてるのか?」

少女が立ち止まったのは、何の変哲もないただの木だった。

御神木という訳でも、なにか目印になるものも無い。

道に沿って生えてる訳でもなく人目にはつかない。

 

それでも少女は、その木を真剣な眼差しで見ていた。

 

「ふざけてなんかないよ。創世の女神は…16年前、この地で生まれたんだから…」

「……なんだって?」

耳を疑うような事実が英寿の耳に入る。

 

「創世の女神は、16年前この地で生まれた。それは奇しくも、星野アクアくんと星野ルビーちゃんが生まれた日と同じ」

「……」

「…これは運命か、はたまた必然か……少なくとも、あの双子が特別な存在である事は分かるよね」

少女は試すように英寿を見上げる。

彼にも心当たりがある事を分かりきっているかのような目線だ。

 

「……あいつらは、創世の女神に選ばれた…とでも言いたいのか?」

「…さぁ?それは女神本人にしか分からない事だよ」

「…創世の女神に会わせろ」

「それは出来ない」

「何故だ」

「創世の女神は私達のように“形”を持たない、概念みたいな存在だよ。故に私達は彼女に干渉出来ないし、彼女も私達には干渉出来ない。それを彼女は、創世の力を利用する事で世界に干渉してきた」

「……」

創世の女神は形を持たない……

母さんのような、あんな姿では無いという事か…

そしてこいつの発言が正しいなら、誰かが創世の女神の後継者という訳でもないようだ……

 

彼女の言葉にどこか安堵した英寿。

自身の母親や元の世界でのナビゲーターだったツムリのような被害者が出ないというのは、彼にとっては救いでもあった。

 

「……」

だが、それだけでは済まされない。

彼には確認しなければならない事があった。

 

「……お前はデザイアグランプリの関係者なのか?」

「…さぁ、どうだろうね」

「……なぜお前達は女神を利用し続ける?」

「……」

「女神の力を使って、プレイヤーに幸せを届けたつもりでいながら…退場した者達から幸せを奪い続ける……それは本当に女神の意思なのか?女神が望んでいる事なのか?」

「……」

「やがて女神の寿命が尽きれば、この世界はどうなる?お前らの勝手な都合で、全部無かったことにされるのか?全部無駄だったと、これまで命を懸けてきた仮面ライダー達に簡単に言うのか?」

「……」

「……答えろ」

英寿は静かな怒りを見せた。

今にも近くの木を殴ってしまいそうな勢いと形相で、少女に近付いた。

 

「…………プハハッ!」

「…っ?」

すると、少女は突然吹き出ししばらくの間ツボにハマったようで笑っていた。

 

「……分かった。そこまで知りたいのなら、教えてあげるよ」

「……」

「…創世の女神の…全部をね」

 

 

「おう」

「おかえりー!」

「撮影は順調?」

撮影スタジオにアクアとあかねが帰って来てMEMちょが迎える。

 

「ルビーとかなちゃんのドラマパートはあらかた撮り終わって、これからダンスパート撮る感じ」

「…ん?MEMはまだ撮ってないのか?」

「うん、後回し」

「なんで?」

「ははははははは!未成年者は深夜22時以降の労働が禁止されてるからねぇー!ちっとも未成年じゃない私はド深夜撮影出来ちゃうからねぇー??」

「聞いて悪かった……ってか、あいつは?」

MEMちょのドスの効いた声を聞いていたたまれなくなったアクア。ここで英寿が居ないことに気が付いた。

 

「エースの事?お昼過ぎから見てないなぁ…てっきりアクたん達と合流してるのかと……」

「MEMちょ〜!ちょっと来てもらっていい〜?」

「あ、はーいっ!」

アネモネに呼び出されたMEMちょは去っていってしまった。

 

「しっかり観光してきたみたいね」

「……っ」

「…あっ、衣装良いでしょ?皆で話してデザイン決めたのよ。いかにもアイドルーって感じでルビーが好きそうな……」

「全然ダメ」

「……」

そうだった…

あかねは有馬のアイドル活動に否定的だったな

揉めなきゃ良いけど…

 

「ちょっとこっち来て」

「……なによ…」

「……」

恐る恐るあかねに近付くかな。

すると、あかねはかなの衣装に手を伸ばした。

 

「そんなにリボンだらしなく付けてどういうつもり?見栄張ってウエスト細く見せたいのかもしれないけどベルト締めすぎてシワになってる。ここにも埃…衣装さんが困るからあんまり歩き回らない」

「…っ」

あかねはテキパキとかなの衣装の手直しをする。

 

「……これで良いワケ?」

「別に……及第点程度じゃない?」

かなちゃん!かなちゃん!有馬かな!

 

「…元ファンの反転アンチって一番面倒だな」

満更でもない様子のあかねを見てアクアは思う。

 

「アクアはどう?」

「…っ」

「……私、可愛い?」

「……まぁ、及第点はあるんじゃね?」

「素直に褒めなさいよアンタ達!!」

 

 

 

「……かなちゃん、本当にアイドルなんだね」

「…まぁな」

3人のダンスパートの撮影に入り、あかねとアクアは見学席でその様子を見ていた。

 

「かなちゃんの演技が良くなった理由が分かった。「私を見て」ってずっと叫んでる。叫んでる人が居たら、つい見ちゃうよね」

「……」

「私アイドルとかあんまり詳しくないから分からないんだけど、かなちゃんはアイドルとして売れそう?」

「……売れる」

踊るかなを見て、アクアは躊躇い無く言った。

 

「…そっか……じゃあこないだみたいなデートはもう駄目だよ」

「……っ」

「かなちゃんから自慢されたよ。アクアくんとブラジリアンバーベキュー行ってきたって……今は注目度が低いから良いけど、これからかなちゃんは注目されていく。そしたら人目がある場所で男女の食事は絶対駄目。最低限個室を予約してあげて欲しい」

「……」

「…アイドルって、一度の炎上が致命傷なんだからさ」

あかねはまるで誰かを思い馳せるように語っていた。

 

「役者畑の人はこの辺ちょっと緩いから、男の人から気を付けてあげないと」

「……そうだな、意識が足りてなかった…」

 

そうだった

有馬はアイドル

男の影がチラつけば、大抵ロクな事にならない

週刊誌に撮られたり、身内からリーク流されたり

 

最悪の場合…アイの様に……

 

「……」

 

 

「女神マリア。それが創世の女神の名だよ」

「…マリア……」

「女神マリアは16年前この地で生まれ、同時に創世の力を授かった。初めは穢れのない純粋な子供のように、ままごとのように色んなものを創造してきたそうだよ」

少女は歩きながら創世の女神の説明を始めた。

それは創世の女神の起源を追うようなものであり、まるで歴史の教科書のページをめくるかのような感覚だった。

 

「だけど…どんなモノでも、いずれ飽きというものがやってくる。女神マリアはただ創造するだけでは飽きたらなくなって行った……そして彼女は…ジャマトを創造した

「……えっ?」

少女は淡々と語り進める。

 

「初めは世間は混乱していたようだよ。名も無き怪物が次々と人間を襲うんだから……そこで女神マリアは、新たな創造を施した……それが仮面ライダー。デザイアドライバーとIDコアを創造し、更にその仮面ライダー達とジャマトの戦いを描くエンターテインメント『デザイアグランプリ』を造り上げた」

「……何の為に…?」

「……楽しむ為だよ。女神自身が」

「…っ!」

少女は英寿に向き直り、戸惑う彼を置きながら語り進めた。

 

「女神はゲームを盛り上げる為、ナビゲーター・プロデューサー・サポーターを造り上げ、デザイアグランプリを発展させて来た」

「……」

「云わばデザイアグランプリとは…女神が、女神による、女神の為のゲーム…」

少女は微笑みを浮かべ、英寿を煽るように言葉を解き放った。

 

「……デザイアグランプリは、全て創世の女神の意志によって造り上げられて来たんだよ?」

「……」

しばらく彼の思考は止まったままだった。

この世界のデザイアグランプリにも裏があって、創世の女神はそれに利用されているのだと、だからこそ創世の女神を救わなければならないと、そう思い込んですらいた。

しかし、そんな救わなければならないと思っていた存在こそが……

 

「創世の女神自身が……全ての根源…」

ジャマトやデザイアグランプリを創造し、人間達と戦わせる。今までは運営が女神の力を利用した自作自演だと思っていたが、創世の女神による自作自演のエンターテインメント。全ては創世の女神自身の娯楽の為に造られたのだ。

 

「カァ!カァ!」

「…っ!」

木に留まっていたカラスが鳴き、ふと我に返る。

 

「……破壊の力は、創世の力と表裏一体。だからジャマトの力の源である“力の種”は、その結晶とも言える」

「カァ!カァ!」

「…いずれ多くの力の種を吸収したジャマトは、強大な力を手に入れる」

「……ジャマトの…破壊神…」

「…それを阻止出来るかは、君たち仮面ライダー次第だよ」

 

いつの間にか少女は消えていた

結局彼女がデザイアグランプリとどのような関わりがあるかは聞き出せなかった

残されたカラス達は夕暮れを俺に伝え、俺はどこかも分からない山道を降りる事しか出来なくなっていた

 

 

「はーい!未成年組は宿戻ってー」

時刻は22時を回り、収録は一旦お開きとなった。

 

「MEMは成人してるから居残りねー!18歳だもんねー?」

「はぁい私は18歳以上ですぅ」

MEMちょは死んだ目をしながらアネモネに腕を掴まれていた。

 

「私は今日あかねおねえちゃんと同じ部屋が良いなー!」

「えー?いいよー!」

「……」

「アクアくんはどうするの?」

「…俺はあいつを探してくる。マネージャーのくせにどこほっつき歩いてんだかな」

「あ、うん。分かった」

アクアくん、妹思いだなぁ…

 

「わ、私も行くっ!」

すると、アクアの元にかなも駆け寄る。

 

「……」

「…なによ?」

「…夜道だ、危ない。宿に帰ってろ」

「な、何よその言い草!ふたりの方が探しやすいでしょう!?」

「はぐれたら探す人数が増える」

「なんで私が遭難する前提ナノ!?」

 

 

 

「おっとまり♪おっとまり〜♪」

ウキウキで歩くルビーをあかねは微笑みながら見ていた。

 

「ルビーちゃんて、結構アクアくんと仲良いんだね」

「いや〜うちの兄シスコンなんで〜!私がアイドルやりたいって言った時も背中押してくれたんです!」

「へ〜…」

「先輩とかMEMちょまで仲間に引き入れてくれて、初めてのライブも……今考えたら、全部お兄ちゃんのお陰だなぁ…」

「……」

そっか…

アクアくん、全部ルビーちゃんの為に……

 

「いいお兄さんだね♪」

「いやいや!そんな全然!?昔っから素っ気ないし、女たらしだし、小言はグチグチうるさいし!」

「…でもそれって、ルビーちゃんもアクアくんの事、良く見てるから言えるんじゃない?」

「…っ」

「私一人っ子だから、正直羨ましいなぁ〜」

「……」

立ち止まるルビーの顔を、あかねは微笑みながら覗く。

 

「やっぱりいいお兄さんだね!」

「……えへへ…そうかもっ…」

「カァ!カァ!」

「…っ!」

すると、近くの木の枝に留まっていた一羽のカラスがこちらに向かって鳴いていた。

 

「…カラス…?」

「珍しいね、こんな時間に……」

「カァ!カァ!カァ!カァ!」

カラスの鳴き声は勢いを増し、まるでこちらに何かを警告しているかのようだった。

 

するとその推測が正しかったのか、茂みの奥から何やら音が響いて来た。

 

「……ジャァ…」

「ジャ、ジャマト…!?」

「なんでこんなところに…!」

現れたのは、あかねが『今ガチ』で対峙したローズジャマトに酷似したジャマトだったが…

 

「青いバラのジャマト…」

花弁の色は青く、その姿からは異様な雰囲気すら感じた。

 

「ジャァァ……」

「あっ、待てっ!」

「ちょっ…!ルビーちゃん…!」

すると、振り返り去って行く青いバラのジャマト。

ルビー達は逃がすかとその後を追いかけた。

 

「……くっそー…どこ行った〜?」

「ルビーちゃん危ないよ〜…せめてエースくん達を呼ぼー?」

「大丈夫!私だって強くなったし、二人でも戦えるよ!」

「でも暗いし…迷子になっちゃうよ?」

「大丈夫!この辺なら多少は土地勘あるし……っ」

「…へー…?」

「あっいや!生まれがこの辺でね!?車で結構通ってたりしてたから!」

口を滑らせたルビーは慌てて誤魔化した。自分に前世があるということは勘づかれてははいけない。

 

「うん、アクアくんから聞いてるよ」

「そっ、そう……?」

「丘の上の病院で産まれたんでしょ?」

「……うん」

「アクアくん、思い入れのある場所だって言ってた」

「…へぇ……」

思いもよらない言葉に、ルビーは少しだけ驚きと関心を示した。

 

「あの場所は、私にとっても大事な場所だよ……」

 

 

 

「ルビーちゃんは役者には興味無いの?」

「…実は…ちょっとある」

「そうなんだ!私でよかったら教えるよ!」

「えーうれしー!」

ジャマトを探しながら2人はそんな世間話をしながらいた。

 

「でも、まずはアイドル一本やり切ってからって思ってる」

「……」

「いつかドームでライブやって!皆が知ってるアイドルになって!それで……」

 

『…よく頑張ったな、ずっと応援してたぞ』

『せんせ……』

 

「……」

あの人に会いたい……

 

「あかねちゃんは、年の差っていくつまでイケる人…?」

「えぇっ?…大事なのは精神年齢だし…10位は全然……って何!突然恋バナ!?」

「えへへ〜」

恥じらいのある表情で聞かれたあかねは思わず答えてしまう。

 

「ルビーちゃん、年の離れた好きな人が居るんだ?」

「うん」

「どんな人?」

「すっごく優しい人!私がずーっと1人だった時に側に居てくれて、いつも励ましてくれて……」

ルビーは前世の事を思い出しながら楽しそうに語った。

 

「せんせが居なかったら、頑張って生きようだなんて思わなかった…アイドルになろうだなんて思わなかった」

「……」

「…生きる意味をくれた人」

ルビーは木々の間から見える星空を眺めながら呟いた。

 

「分かるなぁ…好きな人が居るのっていいよね。ちょっと位の年の差なんて関係ないよ!」

「そうだよね!?ちょっと位関係ないよね!」

「どんどんアタックしていこ!なんなら私も協力するから!」

「……でも、今は何処に居るか分からないんだ。突然職場からも消えて、消息不明になっちゃったんだって」

「……」

どこかで聞いたことのあるような話に、あかねは唖然とする。

 

「どうせ大方女性トラブルでトンズラこいただけだと思うけど!」

「えー……いいのそんな人で?」

「思わせぶりな人だったんだよ!私が何度好き!結婚しよ!って言ってものらりくらり躱してさ!」

「……」

「…だけど、それでもいいの……」

 

『せんせ好き!結婚して!』

『残念だったな、16歳になったら真面目に考えてやるよ』

 

「……」

せんせ

私、16歳になったよ…

 

「もう一度…会いたいよ……」

「カァ!カァ!」

また、カラスの鳴き声が響く。

 

「……ジャァ…」

「あっ!居た!」

視線を移すと、青いバラのジャマトが月明かりに照らされながら佇んでいた。

 

「ジャァ……」

「あっ!また…!……?」

ジャマトは近くにあった祠の物陰へと姿を消した。

よく見ると、祠の裏に空洞が広がっていたのだ。

 

「祠の裏に空間が……よし、追い詰めたぞぉ!」

デザイアドライバーを構えながら、2人は空洞の中へと進んでいく。

 

スマホの明かりを頼りに、空洞を進んで行く。

どこか湿っぽい生臭い匂いと、何かが腐った後ような若干の腐敗臭が漂う中、2人はあるモノを見つけた。

 

「……ルビーちゃん…戻って」

「……」

「…死体だよ、これ」

空洞の奥で横たわっていたのは、人生で初めて見る白骨化した遺体だった。

 

「……」

しかし、その遺体が身に付けていたものに、ルビーにはある筈のない、あってはならない筈の心当たりがあった。

 

「……白衣……お医者さんかな…」

「…………違う」

ボロボロになった白衣。

レンズが砕かれた眼鏡。

そして……

 

「……違うよ……だってせんせは…」

 

『ずっと大事にする。ずっとだ……』

 

職員証と共にカードケースに入れられていたキーホルダーが、ルビーの目に映って離れなかった。

 

「死んだんだよ。君のだぁい好きな人は……みーんな、死ぬ」

「…っ!?」

「誰!!」

突如彼女の耳に届いた声。

その声には聞き覚えがあった。

 

「……どうして…貴方がこんな所に居るの…?」

「……」

「……シック…!」

「…………ケヘヘッ」

 

ルビーのサポーター:シックは不敵な笑顔を浮かべながら、彼女の事を見詰めていた。

 

 

 

創世の女神マリアは

16年前、高千穂で生まれた。

しかし実体は無く、

形を持たない思念体である。

 

 

第四十六話「豁然Ⅴ:生きる意味をくれた人」




次回

「ルビーちゃんは…これ以上悲しませない!!」
「僕のサポートを受けてみないかい?」
「何かを企んでいたとは思っていたが…こんなくだらん事だったとはなぁっ…!」
「あそこの病院にはね、昔病弱な女の子と、心優しい医者が居たんだよ」
「もしそいつに会えたら、お前はどうする?」
「そんなのもぉ…幸せで死んじゃうよぉ…!」

第四十七話「豁然Ⅵ:哀しみと絶望の狂詩曲(ラプソディ)
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