仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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いよいよ【推しの子】第3期の放送も近づいてまいりましたね
今年最後の投稿になりますが、3期の放送と共にこちらも楽しんでいただければと思っています!



第四十七話「豁然Ⅵ:哀しみと絶望の狂詩曲(ラプソディ)」

「……どうして…貴方がこんな所に居るの…?」

「……」

「……シック…!」

「…………ケヘヘッ」

シックは不敵な笑顔浮かべ、ルビーを見つめた。あかねの事はまるで眼中に無い。

 

「僕の力の事忘れたの?君がどこに行こうと、僕から逃げる事なんて出来ないよ」

「……別に……逃げてた訳じゃ…」

「じゃあどうして今も逃げようとしてたんだい?」

「……え…?」

「いつも君は、自分の都合のいい解釈ばっか広げて、現実を見ようとはしない……今だって、彼が君の大好きな人じゃないと思い込もうとしてたよねぇ?」

ルビーに段々と近付くシック。

 

「…っ!」

「邪魔だよ…!」

いてもたってもいられなくなったあかねは、意を決してシックに突っ込もうとした。しかし、それは拒まれる。

 

「きゃっ…!」

「ジャァァ…!」

青いバラのジャマトが現れ、あかねは羽交い締めにされ捕らわれてしまった。

 

「そのまま捕まえててねっ」

「ジャァ…」

どうやらシックはジャマトを使役しているようで、ジャマトは大人しくあかねを捕らえていた。

 

「…どうだい?僕お手製のジャマトは?創世の女神にお願いして創ってもらったんだよ?凄いでしょ」

「……なに……言ってるの…?」

「それがこの世界の真実だよ。女神マリアはジャマトや僕らを創り上げ、自分が楽しくなるようなゲームを創った。それが現実」

シックは無抵抗なルビーの頭を撫でるように掴む。

 

「さぁほら、よくご覧よ」

「……っっ」

ルビーの目線を無理やり遺体へと向けるシック。

 

「ルビーちゃん…!」

「哀しいよねぇ?苦しいよねぇ?君が好きになった人達はみーんな死んでいくんだ…」

「やめてあげて!」

「うるさいなぁ……その女、外に連れ出して」

「ジャァ…!」

ジャマトはあかねを無理やり連れ出すと、空洞の外までやってきて乱暴に放す。

 

「クッ…!」

「ジャァァ…!」

「…変身っ!」

ウェスタンフォームへと変身したカメレオは、青いバラのジャマトへと立ち向かっていくのだった。

 

「ルビーちゃんは…これ以上悲しませない!!」

 

*

 

「……ったく…ホントにどこに行ったんだ?あいつ」

夜道に一人、英寿を探しに来たアクアは辺りを散策していた。

 

「……」

 

『分かったから!私は宿に戻る!……でも…アイツの事頼んだわよ?アイツ、ああ見えて意外とそそっかしいところあるから…』

 

「……」

頼んだって言われてもな……

 

「……っ」

かなに言われた事を思い出していたアクアだったが、しばらくすると小道の脇で座り込む英寿を見つけた。

 

「……ハァ……ハァ…」

「おい」

「……ウルスか…」

どこか英寿の表情は取り乱していて、アクアは山を昇って息が上がっているのだろうと思い込んだ。

 

「こんな所で何してるんだ?皆心配してるぞ」

「…撮影は……?」

「もう終わった。MEM以外は皆宿に戻ってる」

「……テラスは…?」

「…ルビー?…ルビーならあかねと一緒に……」

「お前、雨宮五郎の死体は見つけたのか…!?」

どんどん飛び交う質問に、アクアは仰け反ってしまう。

 

「…はぁ…?見つけてないが、それがどうした?」

「……」

「……?」

「…テラスを探すぞ…!」

「お、おい…!」

どこか生き急いでいる英寿を、やれやれと言った表情で追いかけるアクア。

しかし、そんな英寿自身の心境はそれどころでは無かった。

 

「……」

 

 

 

それは、銀髪の少女との会話まで遡る。

 

「あそこの病院にはね、昔病弱な女の子と、心優しい医者が居たんだよ」

「……?」

突拍子もない事を言う少女に、英寿は疑問を持つ。

 

「だけどその女の子は不治の病を抱え、12歳という若さでこの世を去った。女の子は医者の事が大好きだった。そしてその医者も、女の子の事が頭から離れなかった」

「……」

「……そしてね、その女の子も医者も、どちらも『B小町』のアイが大好きだった」

「……っ」

どこかで聞いた事のある内容に、英寿は驚いた。

 

この少女は今、雨宮五郎の話をしている…

そしてもう1人、病弱な少女……

 

なんだ…?

身に覚えなど無い筈なのに、もう少しで答えが出そうな……

 

『何故俺にだけは、母親の秘密を告げた…?』

『……』

 

それは先日の英寿とルビーの会話の中に、ヒントが残されていた。

 

 

 

「…エースさんはさ、自分のお母さんの事…好き?」

「……なんだ突然…」

「……私はね?昔重い病気にかかってて…外の空気を吸うことも出来ないような生活をしてたんだ…」

「…それは…お前の前世の話か」

「それも知ってたんだ……うん。毎日が辛くて、生きる意味なんて私には無かったんだ……でも…そんな時にママ…アイと、ある人に出会ったんだ……」

テラスはダンスレッスンを続けるマーリとマーニアを眺めながら続けた。

 

「アイは私に希望をくれたんだ……アイを知ってからは毎日が楽しくて、世界が輝いて見えて……もし生まれ変わったら、芸能人の子供になって…いつかアイと共演したいなぁとか思ってたんだぁ……」

「それが、推しの子として生まれてきてしまったと……」

「うん!あ、この事はアクアには内緒だよ?今更前世の話なんて出来ないよぉ……」

立ち上がったルビーはその場でストレッチを始めた。

 

「……ある人ってどんな奴なんだ?」

「…私に、生きる意味をくれた人」

「……」

「私の病室によくサボりに来てた先生なんだけどね?ドライでモラリストな人だったんだけど、すっごく優しくて……いつしか私、あの人の事好きになっちゃったんだァ…!」

「ほぉ……」

「あの日エースさんにママの事を教えたのはね?私の理想を、エースさんにも聞いて欲しいって思ったからなんだ……『アイのようなアイドルになる』。私の前世からの夢。そしてその姿をせんせに見て貰えたら……」

「…もしそいつに会えたら、お前はどうする?」

「……そんなのもぉ…幸せで死んじゃうよぉ…!」

 

 

 

「……っ」

もし本当に、テラスの前世が雨宮五郎の知っている少女なら……あいつは今も尚雨宮五郎を探し求めている

雨宮五郎の死体は発見されていない…

もしそれを見つけられたら……

テラスは……

 

「……くそっ…!」

迫り来るような焦燥と、途方も無いような胸騒ぎを覚える英寿は、戸惑うアクアを背に山道を駆け巡るのだった。

 

*

 

「……もしかして…貴方がせんせを…?」

「違うよぉ!僕が彼を探し当てた時には既にこの状態だった…ってか白骨化した遺体だよ?何年前に死んだと思ってるのさぁ……」

「……じゃあ……どうして私を…こんな所に…?」

「…君とその医者は深い仲だったみたいだからね。君に現実を見せるのにはちょうどいいと思ったんだ」

「……」

シックの答えを聞いて、ルビーの表情はどんどん暗くなっていった。

 

「……」

さてと…そろそろ仕上げかな……

 

「覚えてるよね?僕は君に、現実と向き合って欲しいんだ。人生は全て上手くいくわけじゃない。成長には必ず挫折が必要だ」

「……」

「ここで得た経験は、必ず君をデザ神へと導く糧となる。そうすれば、君の理想は叶えられる」

シックは懐からひとつのプレゼントボックスを取りだし、その中をルビーに見せた。

 

「僕のサポートを受けてみないかい?君の理想を叶える為なら、僕は君をずっと見守り続ける……」

ボックスの中には、12個の紋様が描かれた中央に大きな円があるバックルが入っていた。

 

「…君をずっと大切にする……」

「……」

「……ずっとだ…」

「……っ」

その言葉に既視感を覚えたルビーは、シックの方へと初めて振り返った。

 

「おい」

「……っ」

すると、シックの肩に手を置く者が居た。

 

「…イラド……」

キツネのお面を被ったイラドが、シックに接触していた。

 

「何かを企んでいたとは思っていたが…こんなくだらん事だったとはなぁっ…!」

「…グッ…!」

次の瞬間、イラドはシックを殴り飛ばしルビーから遠ざけた。

 

「……ケヘヘ…相変わらずだねぇ、イラド…」

「てめぇには引導をくれてやる…!」

 

《 IRADO Set. 》

 

「変身」

 

《 LASER ON 》

《 IRADO Loading. 》

 

レーザーレイズライザーを取り出したイラドは、仮面ライダーイラドへと変身を果たす。

 

《 Ready... Fight. 》

 

「……あぁ〜…あと一歩なんだけどなぁ…」

「……」

「せっかく彼女がその気になりかけてたのに…君も空気が読めないよねぇ……」

「推しを不幸にする奴は、サポーターの風上にも置けないぞ」

「…んふふっ……そいつは心外だなぁ」

 

《 SHICK Set. 》

 

「……変…身」

 

《 LASER ON 》

《 SHICK Loading. 》

 

シックも仮面ライダーシックへと変身し、レーザーレイズライザーを構える。

 

《 Ready... Fight. 》

 

イラドとシックは各々のレーザーレイズライザーから刃を出現させ、互いに睨み合った。

 

「……みせてあげるよ…僕の、サポーターとしての意地を…!」

 

*

 

「ジャァ…!」

「ウッ…!」

青いバラのジャマトと交戦するカメレオは、その力の前に苦戦していた。

 

「クッ……」

このジャマト……

祠に近付かせないようにしてる…?

早くルビーちゃんの元に戻りたいのに…!

あのままじゃ、ルビーちゃんの身に何か……

 

「…っ!?」

すると、その祠の空洞から土煙と1人の人影が飛び出して来た。

 

「……チッ…シックの野郎、なんか小細工仕込みやがったな…!」

「だ、誰…!?」

「お前はそこのジャマト押さえ付けとけ!そのジャマトはシックの言う通りしか聞かねぇ…裏を返せば、そのジャマトはお前に反撃出来ねぇ!」

「…えっ…?」

「俺はあいつを食い止める……星野アクアに悲しい思いさせたくねぇだろ!?」

「…っっ!」

イラドの言葉に我に返ったカメレオは、再びジャマトへと視線を移す。

彼の言う通り、ジャマトは彼女を見つめるだけで攻撃する素振りを見せなかった。

 

ふと、木南はるなを退場まで追いやった赤いバラのジャマトの事を思い出した。

 

「……」

あかねは瞳を深く閉じ、その鮮明に残った記憶を呼び起こす。

アクアとの初めての共闘と勝利。初めてのデート。

初めて料理を振る舞い、初めてハグをしたあの夜。

初めて舞台で共演し、初めて知った彼の知らない顔。

そして、初めてのキス……

 

「……っ」

目を見開いた彼女の両方の瞳には星が宿り、アクアを思いながらもジャマトを見据えた。

 

「……ジャァァ…」

その雰囲気に身に覚えがあるのか、ジャマトはたじろぐような反応を示した。

 

「……あの2人は、私が護ってみせる…!」

ウェスタンバレットの銃口を向けながら、カメレオはジャマトに言い放った。

 

 

 

「……」

とりあえずあっちは大丈夫みたいだな……

 

カメレオが青いバラのジャマトに集中し始めた事を確認したイラドは、土煙が立つ祠の方へと視線を移した。

 

「……」

「イぃ〜ラぁ〜ドぉ〜…ダメじゃないのかい?サポーターは他のサポーターの意向を邪魔するような行為はルール違反だろう?」

「そんなものはルールに無い!確かに人が人を想う気持ちは等しく公平であるべきだ……だが、他人を不幸に陥れるような行為を見て見ぬふりは出来ねぇ!」

レーザーレイズライザーを構えながら、イラドはシックに向かって叫んだ。

 

「……君が言う?」

「…っ」

「ナハハ!君がやろうとしていた事と何が違うって言うんだい!?これは彼女のこの先の幸せを見据えての行動だ……君がとやかく言っていい事じゃないでしょ??」

「……」

思わぬ墓穴を掘っていたイラド。

だが、その言動に自覚が無かったと言えば嘘になる。

 

「…確かに俺は、あいつを一度不幸に引き釣り込もうとした。だがあいつはもう解っていたんだ、自分の幸せの在り方ってやつを……」

「……」

「他人の幸せは、誰かが決めるもんじゃない。幸せはそいつ自身が決め、そいつ自身が叶えるべきだと気が付いた……」

 

《 FINISH MODE 》

 

イラドはレーザーレイズライザーを操作し構える。刀身が赤色に淡く光り出した。

 

「シック!お前は俺を怒らせた……」

「……」

「お前を見ていると、以前の俺を見ているかのようで腹が立つ!俺をそんな風に思わせた自分自身にも腹が立つ!」

飛び上がったイラドは、レーザーレイズライザーを振りかぶりシックへと飛びかかった。

 

「これは俺とお前の傲りが産んだ出来事だ!ちゃんと反省して生まれ変わって来い!」

 

俺達サポーターや運営の人間は、たとえ死んでもその身体をリデザインし生まれ変わる事が出来る…

シックを倒したら、俺も一緒にこの命を絶つ!

それがシックのたった1人の友人として出来る、唯一の償いだ…!

 

「はぁぁぁぁぁあっ!」

「……」

 

《 LASER VICTORY 》

 

彼の言葉に感化されたのか、シックは無抵抗のままイラドの攻撃を待った。

イラドの攻撃は衝撃波を放ち地面からは土煙が舞っていた。

 

「……っっ!」

しかし、シックを仕留めたと思っていたイラドの背後に気配を感じたその瞬間、何者かに背中を突かれた。

 

「グハッ…!」

「……甘いよ、イラド」

シックは瞬間移動でイラドの攻撃を躱し、更にイラドの背中をレーザーレイズライザーで貫通させていた。

 

「お、お前…!」

「僕達が存在する理由を忘れたのかい?僕らに与えられた使命は二つ。一つは仮面ライダー達が理想を叶えられるように支援する。もう一つは……」

変身の解けたイラドからレーザーレイズライザーを抜き取ったシックは微笑みながら答えた。

 

「……女神マリアを満足させる事…」

「…っ」

「全てはゲームを盛り上げる為だよ!だから僕らは直接仮面ライダー達に干渉する事を許されている。実際君が起こした出来事は女神様には好評だったし、今だって喜んでくれているに違いない!」

「……お前…その為に、わざわざジャマトを使役する力まで…!?」

「命が無い僕らにとって、女神の恵みこそが生きる糧。それを得られなければ僕らは本当に死んでしまう……そしてそれは、どれだけ女神に気に入られているかで決まる」

イラドの顔を覗き込むシックは、この上ないといった表情をとった。

 

「サポーターから足を洗おうとしている君を見れば、女神は君に恵みを与えるだろうかぁ?」

「……っっ」

イラドは自分の手を見つめる。

すると、少しではあるが身体に綻びが生じているのが分かった。

 

「致命傷を負った君は恵みを与えられる事もなく身体は消滅……リデザインされることも無い…」

「……クッ…」

「君との別れがこんなに呆気ないなんて……哀しいよ、イラド…」

心にもない事を言うシックに、イラドは怒りと悔しさで頭が爆発しそうだった。

何よりも、彼の一番側に居ながら彼を救えなかった自分自身への怒りが……

 

「……っ…まぁそこでゆっくり見学しててよ」

「……え?」

シックはイラドの顔を覗き込むのを辞め、祠の方へと視線を移した。

イラドも吊られて視線を移すと、そこにはひとつの人影があった。

 

「このゲーム、まだまだ盛り上がるみたいだよ?」

「……っ!」

シックの視線の先にはルビーが居た。

目の下を真っ赤に腫らし、今も瞳には涙が溜まっていた。そして左手に握られたアイのキーホルダー。

 

「……」

左目の瞳に浮かぶ星は綻んでいたものの、まだ光は失われてしなかった。

 

 

 

サポーターや運営の人間は

創世の女神から創られた存在である。

しかし、女神の恵みを受けなければ

その身体は消滅してしまう。

 

 

第四十七話「豁然Ⅵ:哀しみと絶望の狂詩曲(ラプソディ)」




次回

「私のせいで……みんなが不幸に…」
「君は本当に、自分が誰かを不幸にしていると思っているのか?」
「一刻も早く雨宮五郎の死体を見つけなきゃいけない」
「私もママみたいに、誰かを幸せに出来る!」
「私は…!私を信じる!」
「……これが…君の運命だ」

第四十八話「豁然Ⅶ:星に、愛を」
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