仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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この作品を投稿してからもうすぐで2年が経とうとしています。
ここまで読んでくれた皆様、本当にありがとうございます!
これからも皆様のご期待に応えられるよう頑張ります!
それでは2026年もよろしくお願いします!



第四十八話「豁然Ⅶ:星に、愛を」

「……」

「…星野ルビー。君は高みを目指せるよ……僕が保証する」

「……」

「僕が必ず、君をデザ神への道へと導く…」

対峙するシックとルビー。ルビーは言葉を発することも無くシックの言葉を呑んでいた。

 

「……どうして…ここまでするの?」

「…ん?」

「私が幸せになろうが、貴方には関係ないでしょ?」

「……ん〜…君なら理解出来ると思うけど、その答えは簡単だよ」

「……」

「君がだぁい好きだからさ♪」

「……そう」

身の毛もよだつような笑顔を見せるシックを、ルビーは目を閉じたまま受け入れる。

 

《 DESIRE DRIVER 》

 

そしてそのままデザイアドライバーを装着し、ステップバックルを装填した。

 

「変身」

 

STEP

《 READY FIGHT 》

 

ルビーは仮面ライダーテラスへと変身し、シックと対峙する。

 

 

 

「……ハァ…ハァ…」

「……おい……おい…!」

「…どこだ……どこに居るんだ…?」

「おい…!」

英寿の奇行を見て見ぬふり出来なくなったアクアは、戸惑う英寿の肩を掴んだ。

 

「一体どうしたって言うんだ…?さっきから様子が変だぞ」

「……お前は知らなくていい。とにかく、一刻も早く雨宮五郎の死体を見つけなきゃいけない」

「…もう16年も前の事だ。どこかに埋められてるか、野生動物に食い荒らされてるに決まってる」

「……」

アクアはまるで誰かからの受け売りのように言葉を並べた。

 

「……っ!」

「…なんだ…?」

すると、突如として遠くから大きな衝撃音と大きな土煙が立っていたのに気が付いた。

 

「……まさか…!?」

 

 

「へやぁっ!」

「……」

シックとテラスの戦いは攻防を繰り返し両者一歩も引かない姿勢を貫いていた。

 

「はははっ!てりゃ!」

「……っ」

 

《 1!》

STEP 1 STRIKE 》

 

「…はぁっ!」

「グオッ!?」

テラスの強力な一撃が炸裂する。

 

「……ククク…まさかここまで実力を伸ばしてたとはね……アッパレだよ…」

「……」

「……でも、君が仮面ライダーである以上、君は僕を倒す事も出来ない」

「……」

「……でも、僕は違う…!」

「…っ!」

シックは突如として身体の一部からツタのような物をテラスに向けて伸ばしてきた。

 

「どうして僕がジャマトを使役出来ると思う?こんな事もあろうかと、僕は取っておきの切り札を取っておいたのさ……」

「……そのツタ…まさか…」

「僕の身体のセルに、ジャマトの遺伝子を組み込んだのさ……女神の恵みによってね…!」

シックはそのツタを触手のように扱いテラスにムチ打ち攻撃を仕掛ける。

軽快なステップをそれを避けるテラスだったが、次の瞬間死角からのツタが片腕を捕らえた。

 

「…っ!」

「言ったでしょ…!僕からは逃げられないってぇ!」

「グッ…!」

地面に叩きつけられるテラス。

 

「ケヘヘ……」

地面に出来たクレーターとそこに横たわるテラスを見てシックは不敵な笑みを浮かべ続けた。

 

「結局の所、君はひとりでは何も出来ないし何も守れない」

「……クッ…」

「常に他人を巻き込んで翻弄して、私利私欲の限りを尽くすようなワガママ娘だ」

「……」

「これまで君が何かを成し遂げた事なんて、一度だってあるかい?無いだろぉ!?アイドルに成れたのも、メンバーを集められたのも、初ライブが成功したのも……君が、今の君でいられるのは…君の実力なんかじゃないんだ」

「……」

痛いところを突かれる

この事に関しては、シックの言う通りだった

私は今まで一度だって自分でやり遂げた事が無い……

ミヤコさんが私のワガママに答えてくれて、アクアが先輩とMEMちょを引き入れてくれて、初ライブもエースさんのおかげで何とかなった……

先輩とMEMちょが他の分野で頑張ってくれてるから、新生『B小町』の人気も徐々に上がっていってる

 

「……」

じゃあ…

私の居る意味って何なんだろう…

 

「君は自分が思うより不器用なんだ。愛に貪欲な奴ほど、愛想だけを振りまき無自覚に他人を不幸にする。哀しい程にね」

「……」

「そう…今回も同じだ……」

「…っ?……っ!?」

シックが振り向くと、その視線の先にあったものにテラスは焦燥の表情をとる。

 

「グッ…カハッ……」

「ジャァァ……」

「あかねちゃん!!」

ボロボロになったカメレオが青いバラのジャマトに首を掴まれて宙吊りにされていた。

 

「殺すなよ。その子も彼女のトリガーになる」

「ジャァァ……」

シックの言う通りにするジャマトは大人しくするもカメレオの首を掴んだままだった。

 

「……どうして」

「…ん?」

「……どうしてこんな事になるの…」

「……」

「…やっぱり…私のせいで……みんなが不幸に…」

再び絶望の表情をみせるテラス。

 

ママも…せんせも…あかねちゃんも…

私にとって大切な人は、みんな不幸になっていく…

 

「……フフ」

「……クッ……ルビー…ちゃん…」

「星野…ルビー……」

「……」

 

……もう…いい

後戻り出来なくてもいい……

 

みんなを…助けなきゃ…!

 

「……おっ…?」

「…っ!…そのバックルは…!」

「…ジャァ……」

テラスは先程シックから渡されたバックルを取り出した。これを使うということは、シックにとっては思うツボ。

 

「……」

だが、彼女はとっくにその覚悟も承知の上だった。

 

「……クッ…はぁぁっ!」

そのバックルをセットしようとした、その時だった。

 

「…っ!」

「やめろ!星野ルビー…!」

イラドがテラスの手に向けて自身のレーザーレイズライザーを投げ付けて、バックルをセットする事を阻止した。

 

「思い出せ!お前が居る事によって幸せになった奴も居る!」

「……え…?」

「お前の母親は、本気でお前達を愛していた!星野アクアが再び光を見たのも、お前のおかげだ!」

「……っ」

「…雨宮五郎だって、君の事を最期まで想っていたんだ……」

「……どうして…せんせの事…」

「あぁもう!君はうるさいねぇ!!」

イラドの行動に苛立ちを覚えたシックは、彼の顔面をレーザーレイズライザーで殴った。

 

「ガッ…!」

「……っ!?」

そして、その仮面が半分だけ砕け、その素顔がテラスに見られてしまった。

 

「……うそ…せんせ…」

「俺は雨宮五郎じゃない……雨宮五郎の記憶を見た、ただの偽物だ」

「……」

「……初めて自分で踊れた時の事を思い出せ。君は本当に、自分が誰かを不幸にしていると思ってるのか?」

「……っ」

 

 

それは、アイのダンスレッスンを見学してた時だった

 

「ママ、そこの振りちょっと変」

鏡越しに映ったママの振り付けに違和感を持った私は、ママを指摘した

 

「武道館の時もっと手高かったよ」

「あれーもしかして私のライブ映像観たの?よく覚えてるねー」

「……」

当たり前だよ

ママのライブの映像は何百…何千回も観た

振りだって全部覚えてる

 

「どんなだっけ?」

「ここの時はもっと……っ…」

「あ…大丈夫?」

真似て踊ってみようとしたけれど、どうしてももたついて倒れてしまう

そんな私を見てママも思ったのだろう

 

「…ルビーの動き方…なんか倒れる準備してるみたい」

「……」

だって……

いつも倒れてばかりで…

受け身取らないと怪我するから……

 

「…転ぶのを怖がったら、もっと転んじゃうものなんだよ。もっと堂々と、胸を張って立つの」

ママは説教混じりに、そう私に囁いた。

 

「大丈夫だよ。ママを信じて」

「……」

 

ママを信じなかったことなんて、一度だってない

 

私の人生は、その殆どを病室で終えた

身体は不自由で殆ど言う事を聞かず、ベッドの中でひたすら憧れ続けた

ママのカッコイイ動きは、全部脳裏に刻まれてる

あの光は全部、網膜に焼き付いている

 

私の光……

 

あんな風に動けたら…

あんな風に自由に…

もっと……もっと動け!!

 

私の身体…!!

 

「……ハァ…ハァ…」

一曲を踊り終えた私は、鏡に映るその姿に自惚れていた

 

──ああ

私も踊っていいんだ……

 

ママは沢山の人を歌や踊りで幸せにする

私もその一人だった

 

今の私なら、踊れる

もうベッドの中に籠る必要も、小さい画面の前に居るだけの必要も無い

 

私も……

誰かを幸せに出来る!!

 

 

「……何してるんだ…?早くそのバックルを使え!そのバックルがあれば、君は確実にデザ神への一歩を踏み出せるんだ!!」

「……シック…!」

俯くテラスに迫るシック。しかし、そんなシックをボロボロのイラドが食い止める。

 

「…クッ…!離せぇ!」

 

FINISH MODE

LASER VICTORY

 

激昂するシックは、掴み掛ってきたイラドに強力な一撃を喰らわす。

 

「グッ…!ぐはッ!」

攻撃をモロに喰らったイラドは吹き飛ばされる。

 

「…おい!」

「……グッ……っ!…星野、アクア…!」

すると、騒ぎを聞き付けやって来たアクアに抱き抱えられる。

後ろからは、唖然とした英寿もやって来ていた。

 

「……お前、テラスを守ろうとしたのか」

状況を察した英寿がイラドを問い正す。

 

「…どうしてこんな無茶を…?」

「……フッ…少し、カッとなっちまっただけだ…だが、もうあいつは大丈夫みたいだな」

「…え…?」

イラドがそう言うと、今まで俯いていたテラスが3人の前に出た。

 

「……ありがとう、サポーターさん。お陰で、大事な事に気が付けた」

「……ルビー…」

「……確かに私は、今まで色んな人達に迷惑かけて、色んな人の手を借りてここまでやって来た。でも、それもこれも……私には私の理想があったから…!」

「……あ?」

シックと対峙するテラスは、先程のバックルでは無く、ブーストバックルを手に出した。

 

『ずっと大事にする……ずっとだ…!』

 

「私もママみたいに、誰かの事を幸せに出来る!」

 

『大丈夫だよ。ママを信じて』

 

「私は…!私を信じる!!」

 

《 SET 》

 

ブーストバックルをデザイアドライバーにセットするテラス。ステップバックルを操作した後にブーストバックルも操作する。

 

《 DUAL ON 》

STEP & BOOST

 

《 READY FIGHT…! 》

 

「……ク…ククク…」

ステップブーストフォームへと姿を変えるテラス。

その姿を見たシックは、不覚にもという表情で笑う。

 

「……まったく…悔しいけど、君のそういう所は本当に嫌いになれない。むしろ、そういう所に僕は惹かれたんだ」

「……」

「……でも、僕にもプライドと使命がある…」

シックは自身の身体からジャマトのツタを出現させる。

 

「…ここからは、僕も本気でやらせてもらうよ」

 

 

僕らサポーターは、女神マリアによって創られた創造物

女神マリアの意志に応えるのが僕らの役目であり、使命だ

だが命の無い僕らは、その存在意義を見いだすことが出来なかった

テキトーな仮面ライダーを支援してはみたが、何の成果も果たせずに散っていった

 

その生き様が哀しく思えて、僕自身にも哀しさや虚しさを覚えた

 

「はァっ!」

「はぁっ!」

「グッ…!たぁっ!」

「クッ……はっ!」

 

でも、あの日は違った

 

初めて君に出会えた日

吸い寄せられるようなその瞳に、僕はまんまと惹かれていった

 

君の為なら、どんな事でもしようと誓った

どんな犠牲も厭わないと思えた

 

「星野ルビー!!改めて聞こう…君の理想はなんだ!?」

「……」

 

出来ることなら、僕が君を幸せにしてあげたかった…

 

「私はぁ…!ママみたいなアイドルになる!!誰かを幸せに出来るアイドルに…!!」

「アイドルの道は!そんな簡単じゃないぞ!!」

「分かってる…!でも私は、叶えたい!!」

 

《 1!2!3!》

BOOST TIME!

 

「……これで最後だ…!」

 

FINISH MODE

 

僕に愛をくれた人

僕に勇気をくれた人

 

「はぁぁぁ…!」

「はァァァ…!」

 

STEP BOOST

GRAND VICTORY

 

LASER VICTORY

 

僕に生きる意味をくれた人

 

「はぁぁぁぁあ!!」

「はァァァァア!!」

 

だから…こんな最期は哀しいよ……

 

「…っ!」

「……っ」

シックとテラスの互いの攻撃がぶつかり合う。

辺りには土煙が充満し、アクア、英寿、イラドはそれを固唾を呑んで見ていた。

 

「……っ!」

煙が晴れ始めると、その中から2つの影が浮かんで来た。

向き合うように並び立つ2人をみて、アクアはテラスの勝利と、シックとの和解を確信した。

 

「………ハッ…!」

しかし、現実はそう甘くはなかった。

 

「……」

「……ア……アアッ…」

テラスの腹部を貫通するシックのレーザーレイズライザー。その影響かテラスの変身も解け、素顔が現れた口からは血も出ていた。

 

「……っ」

アクアはこの状況に既視感を覚えた。

そして次の瞬間に襲ってくる過去の記憶。

この状況は、あの日アイがストーカーに刺された構図とほぼ一致していた。

 

「……ルビー…?」

「……っ…ア…」

ルビーはこの状況を飲み込めないといった様子でシックの目を見つめた。

 

「……これが…君の運命(さだめ)だ」

「……」

「……ルビィィィィ!!」

ルビーの腹部からレーザーレイズライザーの刃を抜き取り離れるシック。

ルビーはそのまま後ろに倒れ込み、取り乱したアクアが急いで駆け寄った。

 

「ルビー!!ルビー!!」

「……お兄…ちゃん…」

倒れ込んだルビーを抱えるアクア。

そんな彼を、ルビーは優しい笑顔で見つめた。

 

「……いやぁ…油断したなぁ……これでも私…結構強くなったんだよ…?」

「……っ」

 

『いやぁ…油断したね……こういう時の為にドアチェーンってあるんだ…施設では教えてくれなかった…』

 

何故運命というものは、どうして俺をここまで苦しめるのだろう。ルビーの面影は、しっかりとアイから受け継がれているのだと、皮肉な事に改めて気付かされる

 

「…………やめろ…

「MVの撮影は……中止かなぁ…?せっかくヒムラさんが描いてくれたのに……ミヤコさんにも謝っておいて…」

「……」

 

『今日のドームは中止かな…皆に申し訳ないなぁ……映画のスケジュールも本決まりしてたのに…監督に謝っておいて……』

 

「…………やめてくれ…

「……あぁあ…私が東京ドームに立つ姿……お兄ちゃんにも見せてあげたかったなぁ…」

 

『二人が大人になってくの…側で見てたい……』

 

ルビーのデザイアドライバーにはめられていたIDコアにもヒビが割れ始め、ルビーの身体にもノイズが走り始めた。

 

「……っ」

「カーッ!カーッ!」

「……」

すると、自分に向かって鳴くカラスに目を配る英寿。

カラスは近くにあった祠の入口に立っており、彼の事をじっと見つめた。

英寿は気になり祠の中まで入って行く。

 

「……っ!」

そこには白骨化した雨宮五郎の遺体があった。

そこで英寿は全てを悟った。

 

「……手遅れ…だったのか…」

英寿は自分がルビーの幸せを守れなかった事を悔い、ある決意を持って振り返った。

 

 

「……先輩やMEMちょにも…迷惑かけちゃうなぁ……まぁでも先輩の事だから…私なんか気にせず続けられるでしょ……」

「……」

「…だからきっと……私が居なくても『B小町』は大丈夫……」

「……そんなわけないだろ」

「……」

「…お前の居ない『B小町』に意味なんて無い……『B小町』はお前達3人が揃って『B小町』だろ!!」

「……」

アクアが演技以外で感情的になるのは、アイの死後初めての事だった。

 

「…なんで……なんでなんだよ……どうしてお前なんだよ……」

「……」

「…俺は今まで……全部…全部お前の為に…!!」

「……エヘヘ…そうだったねぇ……お兄ちゃんは…相変わらずシスコンだなぁ…」

嬉しそうにそういうルビーは、手のひらをアクアの頬へと向かった。

 

「……でも……私もだよ…」

「……」

「…お兄ちゃん…だぁいすき……」

「…っっ」

 

『…せんせ…だぁいすき……』

 

「……」

どうして……

あの時の記憶が……

 

「……もし…生まれ変わっても…きっと……」

 

《 Mission, Failed… 》

 

「……」

ルビーの身体は塵のようになって消えた。

彼女の最期の言葉がアクアの中で反芻し、自然と涙を枯らしていた。

 

 

 

ジャマトの遺伝子を組み込んだサポーターは

女神の恩恵によりジャマトを一体だけ

使役する力が与えられる。

 

 

第四十八話「豁然Ⅶ:星に、愛を」




次回

「もうこの世界なんてどうでもいい!」
「俺は諦めない!この世界に……願いがある限り!!」
「人間ごときが!ジャマトの力を使いこなせる筈が無いだろ!」
「ついに取り戻したぞ!俺の…創世の力!!」
「変身ッ!」
「さぁ、ここからが…ハイライトだ!」

第四十九話「豁然Ⅸ:九尾の凱旋、願いを力に」
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