仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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アニメ3期がいよいよスタートしたところで、今回で2期の内容が終了します!
退場してしまったルビー、そして創世の力を取り戻した英寿!
彼らのこれからの行く末もご覧下さい!



第五十話「豁然F:絶望の先に見えるもの」

シックを倒した英寿達。

戦闘により負傷したあかねに、ルビーを亡くした影響で放心状態になってしまったアクア。

夜が明け、かな達が探しに来るまで、アクア達はその場を動く事が出来なくなっていた。

 

「……」

「……まさかこんな事になるなんて…」

「うっ…うそ…でしょ…?ルビーちゃんが……?」

ここまでの状況をかなとMEMちょに説明した英寿。

かなは毅然とした態度で振る舞い、MEMちょは現実を受け止めきれない様子だった。

 

「……すまない。守れなかった」

「…う、嘘だよね!?エース!いつもみたいに私達を化かしてるだけなんだよね!?ねぇ!?そうだって言ってよぉ!!」

服の裾を掴んで泣き叫ぶMEMちょ。英寿はそれを静かに見守っていた。

 

「……社長には?」

「言った。今は…カメレオとウルスの看病をしてる」

 

真実を知ったミヤコは、話を聞くやいなや負傷したあかねの看病と、顔色の悪いアクアに睡眠を取るように促した。今は3人とも別室に居る。

 

「…あいつは、最期まで自分を信じて戦っていた。あの時もっと奴を倒せていれば……あいつはデザ神になる事だって夢じゃなかった筈だ……」

「……」

「……俺の力不足だ」

英寿は2人に頭を下げた。

彼は何も悪い事はしていない。だが彼なりに持っていた罪悪感が、彼をそう行動させた。

 

「あんたのせいじゃないわ……それに、ルビーのサポーターって奴も、あんたが倒してくれたんでしょ?」

「…あぁ……」

「…それじゃ、私達に出来る事はただひとつよ」

「……」

「あの子の想いに応えてあげるの」

かなは覚悟を持った眼でそう言った。

 

「きっと今回の事でMVの撮影も中止。ライブもしばらくは出来なくなる……でも、それで終わりじゃない」

「……かなちゃん…」

かなの言葉に塞ぎ込んでいたMEMちょもやっと顔を上げた。

 

「私達は仮面ライダーよ。これまでだって、色んな仲間達の想いを託されてここまでやって来たの」

「……」

「…こんな所でめげてちゃダメ」

「……たしかに…そうだよね」

俯きながらも、MEMちょはかなの意見に賛同した。

 

「こんな所で塞ぎ込んでても、ルビーちゃんが心配かけるだけだもんね……」

「……」

「ルビーちゃんの為にも、私達で『B小町』を続けよう…!」

「……お前ら…」

「……エース。あんたはどうするの?」

「……」

2人の強い眼差しを感じ、英寿も覚悟を決めた。

 

「…当然、お前たちのマネージャーを続ける。お前達を東京ドームに立たせる」

「「…っ」」

「……それが俺の、新しい理想だ」

「…大きく出たわね」

少しいつも通りに戻った英寿を見て、かなは少し安堵する。

 

 

 

「……」

そんな彼らの会話を聞き、ある者が瞳から一粒の涙を流した。

 

「……まったく…誰に似たんだか…」

ミヤコはドアの裏から彼らの会話を聞いていた。

彼らの覚悟も。

 

「……私も…負けてられないわね…」

 

 

その後の話だ

 

非常事態の為、やはりMVの撮影は中止

撮影済みの物で編集をやりくりしたようだが、新曲の公開と併せて無期限の延期となった

実質的に、新生『B小町』の初オリジナル曲は闇に葬られた

 

そして騒動があった一週間後

『苺プロ』は星野ルビーの訃報をネットに公開した

ネットでは大きな反響を産んだ

訃報を悲しむ者、これを機に『B小町』の曲を聞いたという者、中には心無いコメントもあった

 

ニュースでも取り上げられ、12年前の事件を呼び起こされるキッカケともなった

アイの死と、星野ルビーの死

 

ふたつの因果が巡り会い、今回の事件が起こったのではないのかと…

 

 

 

「……」

「……やぁ、エース君」

そうして俺はこの日、クラムの元を訪れに運営のラウンジへとやって来た

 

「聞きたいことがある」

「…大体わかるさ。まぁ座りたまえ」

酒の肴を片手に、クラムはカウンター席に俺を促す

 

「テラスのサポーターを名乗る奴が、テラスを殺した」

「把握しているよ」

「奴はジャマトの力を有していた」

「把握している」

「お前らの誰かが、奴にその力を与えたんじゃないのか」

「……」

カランッと、クラムの飲む酒の氷が沈む音が響いた。

 

「ジャマトの持つ“力の種”には、破壊の力と創世の力が秘められている。俺はそれを食って創世の力を手に入れた」

「……」

「……奴に“力の種”を渡したんじゃないか?そして奴はジャマトを使役する力を手に入れた。それでテラスを…手に掛けた」

「……」

「…集めた“力の種”は何処だ」

英寿はクラムに詰め寄る。

しかしクラムは冷静を保っていた。

 

「…君は何かお門違いをしているようだね」

「……は?」

「確かに、シック君は初めに俺らを頼って来たよ。ジャマトの力が欲しいと……でも俺と、一緒に居たシロメ君がそれを許す筈もなく、クロメ君に直談判しに行ったようだけど、それも断っている」

「…っ」

「それに“力の種”も、今はシロメ君が管理している。今はアクア君と協力して集めているようだけどね」

「…シロメ……じゃああいつが…!」

「無いよ。シロメ君はそんな事をする子じゃない」

「……っ」

クラムの強い視線が、英寿を黙らせた。

今までに見ないような剣幕だったからだ。

 

「……可能性があるとしたら…」

「…心当たりがあるのか」

「……まぁね……以前話しただろう、ジャマトのスポンサーが居ると。本来であれば、ジャマトの力は彼らにしか干渉出来ない」

「……ジャマトのスポンサー…」

「シック君は彼らにその力を懇願した…その身に起こる危険も顧みずね…」

「……だが、奴は女神から受けた力だと…」

「記憶操作されたんだ。自分達の都合のいい記憶だけをインプットさせて、自分達の邪魔をさせないように……」

「……どういう意味だ…?」

クラムは酒を一気に飲み干すと、英寿の方に振り向いた。

 

「……ここだけの話。俺はジャマトのスポンサーの存在を知っている。シロメ君やクロメ君は知らない」

「……相手は…人間なのか」

「…そうだ」

「……まさか…お前が俺にその正体を話さない理由は…」

「彼らの存在が公になれば、ジャマトの力を使って世界を滅ぼすと宣告された。そうなっては女神の力でも修復は不可能…この世界は終わる」

「……デザイアグランプリは、女神の娯楽の為にある訳じゃないのか…?」

「その通りだよ。でも、彼らは全く別の勢力だ。自分達の利己の為なら女神までも牛耳る実力を誇る」

「……」

「…俺が話せるのはここまでだ。あとは君がその眼で真実を探すんだ」

話し終えたクラムは、英寿の肩に手を置き、彼の瞳を見詰めた。

 

「……うん、この間よりもいい眼をしている」

「……」

 

 

 

「……ふぅ〜…」

英寿を残して別室までやって来たクラムは、重い肩の荷を下ろすように椅子に座って天を見上げた。

 

「クラムさん、大丈夫だった?」

「…ん?…まぁ何とか丸く収まりそうだよ」

ひょこっと出て来たクロメに、先程までの会話を端的に説明する。

 

「本当に良いのかな…」

「どうしてだい?嘘は言ってないんだ……僕らは何も、間違った事はしちゃいないんだ…」

「……」

少し不服そうな顔をするクロメに、クラムは微笑んだ。

 

「ふへぇ〜…疲れたぁ〜」

「お疲れ様、シロメ君。厄介な仕事を頼んでしまったねぇ」

「もぉ最悪だよ〜…あんな奴と顔合わせなきゃいけないなんてさぁ〜…」

すると、奥からへとへとになったシロメが出て来た。

手には何やら資料の様な重なった紙を持っている。

 

「はいこれ、あの子からの持ち込み企画っ!」

その資料をクラムに渡したシロメは、そのままベッドにダイブしいびきをかき始めた。

 

「……ふむ…」

クラムはその企画書を丁寧に読む。

そして最後のページまで開いた後に、その口角をニヤリと上げた。

 

「……ほぅ…なるほどねぇ」

「…?」

「……これは、面白い事になりそうだねぇ」

 

 

「……ルビー…」

 

ルビーの訃報が日本のトレンドとして扱われなくなり、新生『B小町』の再始動が始まろうとしていた最中でありながらも、アクアはその壁を乗り越える事が出来なくなっていた

 

一度は復讐を忘れ、普通に生きてみようと決心した彼。しかしまたしても最愛の者がこの世を去り、そしてその仇ももう討たれた。

彼にとって「生きる意味」と言えるものが全て無くなった世界では、彼は生きる気力を完全に失っていた。

 

「……アクア。ほら、ココアでも飲みなさい」

「…………要らない…」

「…そんな事言って……あの日からまともに食事も睡眠も取ってないでしょ。五反田監督も心配してたわ」

横に寄り添うミヤコは、最期まで母親としての役目を果たそうとした。

それが例え、偽りの母親であっても。

 

「……アイさんが亡くなって、今度はルビーまで居なくなっちゃうなんて……あの子ならアイさんの理想を、叶えてあげられるって、私も信じてたわ」

「……」

「…貴方もそうでしょ?ルビーがステージの上に立つ姿に、いつもアイさんの面影を重ねてた。貴方が芸能界に入るって言い出した時は、びっくりしたけど……今なら何となく分かるわ……」

「……」

「アイさんの仇を取ろうとしたのよね…」

「…っ」

ミヤコは全てを知っていたのかもしれない。

全てを知った上で、それを受け入れようとしていたのかもしれない。

 

「……でももう、そんな事する必要は無いの。貴方はこれまでも、そしてこれからも…私の大事な息子で、アイさんの家族で、ルビーが大好きなお兄ちゃんなんだから…」

「……っ」

不意に、アイとルビーの死に際の光景がフラッシュバックして来る。

でもそれと同時に、アイとルビーの心からの笑顔も忘れる事は無かった。

 

「……アイを喪ってから……戦うのが怖かった」

「…っ」

すると、アクアは声を震わせながら思いの丈を綴った。

 

「…アイを喪って…本当に大切なものを失った絶望感と喪失感に苛まれて…それと同時に生まれた怒りをコントロール出来ない自分が居て……でもそれが本来の俺なんじゃないかと思い始めて……そんな自分も…俺が俺じゃなくなるみたいで……怖かった…」

「……アクア…」

「復讐に走る俺を…俺は受け入れようと必死になって……でも…あかねや有馬と出会って…そんな自分が心底嫌になって……いつしか本当の自分も忘れて……」

「……」

「…これ以上大切なものが増えるのが怖くなって……でも普通に生きたいと叫ぶ俺も居て……大切なものをまた喪う事が怖くて……」

「……」

 

星野アクアの人生とは、怒りや悲しみ、憎しみとの戦いではすまなかった。

それは自身から生まれる恐怖。それとの戦いだったのだ。

 

「……今は…ただ怖い……また喪うんじゃないか…って……また俺の前から居なくなっちゃうんじゃないかって…………だから俺は……もう…戦えない…!」

「……アクア…」

「…戦えないから、何もしないのか」

すると、どこからか話を聞いていた英寿がやって来た。

 

「…エース……」

「たしかにお前は、最愛の母親も…妹も亡くし、戦う事に恐怖を覚えた。その気持ちは分かっているつもりだ」

「……」

「だがそれじゃあ、お前はいつまで経っても幸せになれないぞ」

英寿のその言葉に、アクアは少しだけ反応した。

 

「あいつらは、幸せの為に命を燃やした。自分の幸せ、他人の幸せを想って死んでいった……だが、お前は生きてる」

「……っ」

「今を生きているお前の役目は、あいつらの代わりに…いや、あいつらの分も幸せになってやる事じゃないのか?」

「……」

顔を上げたアクアの瞳には少しだけ光が戻っていた。

 

「今からでも遅くは無い。お前は幸せになれる。マーリやマーニア、カメレオだって…きっと幸せになれる」

「……英寿…」

英寿の真っ直ぐな言葉が、アクアの心を動かしつつあった。

 

「「…っ」」

そんな時、彼らのスパイダーフォンにある通知が入り、ミヤコのパソコンにもメールが入った。

 

「デザイアグランプリからのお知らせ……」

ミヤコがメールの内容を音読し始めた。

内容としては、今期最後のデザイアグランプリを開催するとの要領だった。

 

「ルールは簡単。ペアを作り、エリア内に散らばって自身が持つアイテムを、他のプレイヤーに取られないように死守して戦う、究極のサバイバルゲーム……その名も…」

「……っ!」

しかし、英寿の眼に映ったその文字に彼は震撼する。

 

「……デザイアロワイヤル…だと…」

デザイアロワイヤル。

かつての世界で幾度か英寿達を震撼させた禁断のゲーム。仮面ライダー同士で争わせ、純粋な戦いを楽しむ目的として開催された、世界平和とは程遠いものだった。

 

まさかこの世界でも、このゲームに出遭うとはな…

 

「最後までアイテムを死守した者がデザ神となる事が出来、デザイアグランプリで叶えたい理想とは違う理想を叶える事が出来る…?」

「……っ」

「参加条件は無し。なるべく多くのプレイヤーの参加を希望しております……デザイアグランプリ運営一同…」

「……」

つまり、これまでのゲームで参加権を剥奪された仮面ライダー達も参加出来るという事であり、そいつらにも改めてデザ神になるチャンスが巡って来た、という事だ

 

「……っ」

「……アクア…?」

すると、アクアが不意に立ち上がり、英寿を見た。

 

「……出るよ」

「…え?」

「…俺は……デザイアロワイヤルに参加する」

「……ウルス…」

アクアの覚悟も固まったようだ。

星のハイライトは無いものの、完全に光を取り戻した瞳が、英寿からしばらく離れなかった。

 

 

 

デザイアグランプリの運営は、

ジャマトの力に直接干渉する事は出来ない。

 

 

第五十話「豁然F:絶望の先に見えるもの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、それを可能とする人間が

 

一人だけ存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……生きてますか?」

「……」

片寄ゆら。

今をときめく天下の大女優として大きな知名度を集める彼女。

今日は大きな仕事を終えたリフレッシュ期間として登山に来ていた。

 

「言ったでしょう。足下に気を付けてって」

「……」

 

それを、()()()に……

 

「……人……殺し……────」

「……」

後ろにまとめあげた金髪を解く男は、その瞳を開ける。

両目にはどこまでもどす黒い光が浮かび上がり、今も尚彼女を見詰めていた。

 

「……っ」

「…ジャァァ……」

そんな彼の背後に、一体のジャマトが現れる。

白いバラの意匠を持ち合わせた、女型のジャマトだ。

 

「……ふふっ」

すると、彼がそのジャマトに近付くやいなや、その横を通り過ぎた。

 

「好きに食べちゃっても良いよ。あ、でも身元が分かるものは遺しておいてね」

「…ジャァァ……」

男の言葉を聞いたジャマトは、彼女に近付きその身体を貪り喰い始めた。

グチュグチュと音を立てながらも、彼女の身元が分かるようなもの以外を避けて喰っていた。

 

「…消息不明のままだと、ちょっと厄介だからさっ」




次回

「デザ神になれるチャンスが巡ってきたのよ……ここを逃す手はない」
「ライダー同士のガチバトル!デザイアロワイヤルだぁ!!」
「最後に残ったペア同士で争わせ、デザ神を決める。あの運営が考えそうな事だ」
「あら、アンタ達も仲間割れ?」
「アクアくんを、止めて」
「浮世英寿……俺と、ペアを組んでくれ」

第五十一話「阿吽Ⅰ:震撼のデザイアロワイヤル!」
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