仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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第6章 軋轢 編
第五十九話「軋轢Ⅰ:生まれ変わっても、きっと」


新曲「POP IN 2」のMV撮影から、半年が過ぎた

『B小町』は今や、ブレイク寸前特有の空気を持っている

 

公開されたMV。それはアネモネとヒムラの力作とも言える。通常のアイドルMVと比較したら、頭が一つや二つ抜けた完成度となった

 

そして、その中心に居たのは……

 

「みんなおっはよー〜っ!」

星野ルビーだった

 

「お兄ちゃん!ミヤコさん!おはよぉー!」

「あぁ、おはようルビー」

「おはようルビー。早速だけど新しい仕事が来たわ」

テラスは意気揚々と事務所のリビングにやって来て、ウルスやミヤコに朝の挨拶を振りまく

 

「……」

「…おはよっ!英寿さんっ!」

「……あぁ…」

いつものテラスとは違う、ミステリアスでダークな雰囲気が彼女の存在価値を変えた

何かを強く訴えるような視線。その視線はどこまでも黒く、どこまでも深く輝いていた

 

「…あれ?英寿さんなんか元気無いねぇ?」

「……そうか?」

「うんっ!なんかまるで……()()()()でも見てるみたいっ…!」

「……いいや、そんな事ないさ…」

そう、そんなことは無い

星野ルビーは生きている

この事実に、嘘も虚構もない

 

ただ1つ、確かなことは……

 

「……ふふっ!」

「……」

 

この世界は創り替えられたのだ

『星野ルビーが生きている世界』へと…

 

そしてその真実を知っているのは…

 

「お兄ちゃんもそう思うでしょ?」

「何言ってんだ。宮崎で()()()()()()んだから、あながち間違って無いだろ」

「あはっ!そっかぁ!!」

 

この世界の異変に気が付いているのは、どうやら俺だけのようだ……

 

 

 

デザイアロワイヤルが終幕しデザ神が誕生した後、世界は創り替えられた。

そして人々は数ヶ月という虚構の時間を過ごし、やがて春がやって来た。

 

仮面ライダーカメレオ:黒川あかねと仮面ライダーマーリ:有馬かなが3年生へと進級。

仮面ライダーギーツ:浮世英寿と仮面ライダーウルス:星野アクア。

そして、仮面ライダーテラス:星野ルビーが2年生へと進級するところから、物語は再スタートする。

 

今や新曲MVは2000万回再生を記録し、マーニア曰くこれは最大手のグループと同じくらいの再生数だという

彼女ら自身も様々な戦略を練り、幾分かの再生数を担保したという自負はある

しかし、これは到底新人のアイドルグループが叩き出せる数字じゃない

 

「やっぱルビーには…何か特別なものがあるんだろうな……」

マーニアのその言葉通り、テラスはその後の芸能活動でも華々しい功績を得ていた

 

そして俺が最も目を引いたのは……

 

「ほんっと憎たらしいわねぇ〜…この半年間の間に何度かデザ神になって理想の世界を叶えてるでしょうに……これ以上何を望むのかしらねぇ……」

「……」

黄金のデザイアドライバー…

トロスやレヴィアが持っていた物と同じ物…

それはつまり、テラスは既に何度か理想の世界を叶えている。殿堂入りデザ神だという事だ

 

 

 

「……ふぅ…」

この事案を整理する為には、あまりにも心の余裕が無さすぎる

ただでさえ退場したと思っていた人間が実は生きており、更には殿堂入りデザ神になっていた

正直混乱している

 

終いには周りの人間の記憶から、テラスの退場に関する記憶だけがリセットされていた

これでよかったのかもしれないと思う自分と、本当によかったのかと思う自分が居る

 

あんなゲームを引き起こしてでも叶えたかった理想とは…?

運営はどこまで加担しているんだ…?

今この世界に起きているあらゆる事象が、謎に包まれている……

 

そして何より、アイツのあの瞳……

まるで以前のウルスを想起させるかのようだ…

 

「……テラス…お前の身に、一体何があったんだ…」

 

 

「主演の黒川あかねさんオールアップです!お疲れ様でした!」

「ありがとうございます…!」

黒川あかねは初の主演映画の公開を控えていて、ドラマの撮影も何本か始まるそうだ。

実力派女優として、着実に表舞台へのし上がっている。

 

「すまんなあかね。これから舞台挨拶のスケジュール会議があるんだ…撮影終わったばっかで申し訳ないが……」

「大丈夫ですよマネージャーさん。ひとりで帰れますから」

「いやいや…まぁあかねの事だからそういうと思ってな、実は送迎を頼んでいるんだ」

「…えっ?」

あかねのマネージャーが手を指し示すと、そこには浮世英寿の姿があった。

 

「…よ、カメレオ。順調そうだな」

「エース君…!」

 

「…そうか、今日が撮影最終日だったか」

「うんっ、音響の人が監督より怒鳴ってて怖かった」

「あぁ…音の人は結構細かい奴居るからな。俺も派手なアクションで何度もマイク壊して怒られた…」

「…ふふふ…エース君、意外と無茶な演技するって業界でちょっと有名だよ?」

「そんなにか?俺としては普通に演ってるだけなんだがなぁ……」

英寿とあかねはふたりで明るい夜道を歩いていた。

外灯や蛍光看板の光が、乾いた地面に吸い込まれていく。

 

「意外といえば、今回の映画…ジャンルがラブ・サスペンスだったか?濡場が多いと聞くが……」

「まさかまさか!高校生にそんなハードな演技させて来ないよ!濡場があるのはみんな大人の俳優さん達だから、私は見学で……」

「だがキスシーンはお手の物だろう?」

「…むぅっ!!」

英寿の言葉に顔を真っ赤にさせて英寿の肩をポカポカと殴るあかね。

 

「キスシーンなんてまだNGだよぉ!アクア君ともあの時以来出来てないし……

「ん?あの時以来…?」

「…っ!な、何でもない!!」

「……そういえば、ウルスも最近は順調みたいだな」

「…そうだねぇ…ネットのバラエティ番組のレギュラー出演が決まって、私もドラマの撮影何本か来ちゃってるからなかなか予定が合わないなぁ……」

「……」

「…次はいつ会えるんだろう……」

あかねはどこか物寂しそうに呟いた。

 

「……なぁ、聞きたいことがある」

「…ん?」

「……ウルスの事だ」

英寿はいよいよ本題に入った。

本来であれば、あかねのマネージャーから苺プロへ来た送迎の連絡は、苺プロのスタッフが受け持つ筈だった。

しかし英寿が無理を言ってこの代役を担う事となった。

そこまでしてしたかった話を。

 

「……アイツの復讐は、終わったと思うか?」

「…っ」

虚を突かれたような表情をするあかね。

だがすぐに表情を戻す。

 

「…アクア君の復讐?なんの事?」

「……そうか。お前にはまだ、ここまで直接話してはこなかったな。だが気付いている筈だ…どうしてウルスが、このデザイアグランプリでデザ神を目指していたのか…」

「……」

「アイツらの母親が、一体誰なのか……」

「……」

あかねは英寿と視線を合わせない。

悟られてしまっては、ここまで抱えて来た秘密をさらけ出しそうになったからだ。

 

それでも、あかねも知りたかった。

 

「…誰から聞いたの?」

「……本人達からだ。その様子だと、この秘密は墓まで持ってくつもりだったんだろう」

「……」

「お前らしいな。ウルスが復讐を捨て、幸せを歩む事を選んだのならば、自分はこの秘密を抱えたまま生きればいいと……だが、アイツの復讐は終わっていない…そうだろ?」

「……うん」

あかねも覚悟を決めたかの表情で英寿を見る。

 

「エース君は、いつからこの事に気付いてたの?」

「…『東ブレ』の初公演日の帰り、俺とウルスはトロスの元を尋ねた」

「……姫川さん…」

「そこで、ウルスの父親についての証言を得た。奴の父親は15年前に軽井沢のコテージで心中して、もうこの世には居ないと……」

「……」

「…だが、そこにはひとつの大きな欠点がある」

英寿もまたあかねを見つめ、真実を確かめるかのように言及した。

 

そして英寿は自身の考察を述べた。

それは今のアクアの思いを踏みにじるかのような内容だった。

この真実を知れば、彼が再び復讐に囚われるとすぐに分かる程に……

 

「……この話…アクア君には…?」

「言う筈が無いだろ。アイツはもう未来を見てる……これ以上苦しめる必要は無い…」

「……エース君…」

「…アイツは見つけるべきだ。新しい理想の世界を…そして……」

「……?」

「……本当の幸せもな…」

「…っ///!もうっ!エース君っ!!」

あかねの目を見てからかう英寿に、あかねは恥ずかしそうにポカポカと英寿を殴る。

 

その後、あかねを家まで見届けた英寿。念の為アクアにも一報入れ、その場を去ろうとする。

 

「……カメレオ」

「…ん?どうしたの?エース君」

「……いや、なんでもない…」

英寿は言葉を飲み、改めてその場を後にした。

 

杞憂だと思った

カメレオ程のプロファイリング能力があれば、いずれ犯人像に確実に近付く事が出来る

しかし、その正体が判明しても…

 

流石に、彼女から直接手を出す事は無いだろう……

 

 

『深堀れ☆!ワンチャン!!』

「……」

テラスはその後、ウルスがレギュラー出演しているネット番組のリポーターに就任し、茶の間を沸かす存在となっていた

 

双子タレントである星野アクアと星野ルビーの共演、そして持ち前の明るさと天然さであらゆる視聴者層を虜にしていく

 

「……」

その笑顔に、一体何人の人間たちが騙されて来たのだろう……

 

「英寿さーん!」

「…どうした」

「今日『東ブレ』の鮫島アビ子先生にアポ取って今からインタビューしに行くんだけど、一応英寿さんも着いてきてくれない??」

「…な、何故俺まで……」

「お願い!!アビ子先生って小難しいところあるって聞いてるから念の為!!」

「……わかった」

「ホントっ?ありがとー!」

テラスの願いを渋々受け入れる俺

しかしここはひとつの目的もあった

 

テラスは生き返り、明らかに変わった

性格から、その狡猾さ

何より、何か大きな事を成し遂げようとする強い野心

 

デザイアロワイヤルの時に感じた異様なプレッシャー…

あれが全てを物語っている気がするが…

その真意を確かめなければ……

 

「……」

「……」

ロケバスに乗り込み、現地に向かう

どうやら鮫島アビ子も、俺の同行が分かって安堵の表情を見せているとの事だ

「匁」役として新たな可能性を示唆した甲斐があったものだ

 

「……」

「……」

それにしても何も喋らない

間接的とは言え、身内が世話になった相手に会いに行くのだ。少しくらいはワクワクと緊張を持ってもいい筈だ

 

「……」

「……テラス」

「…ん?なに英寿さん」

「アイドル活動の方は順調か?」

「え?…うん、音楽番組のオファー何件か貰ってるし、楽曲提供の話もちらほらね〜…」

「そうだな……テレビへの露出も増えて来たし、マネージャーとしては喜ばしい限りだな」

「あははーまたまたー」

「ホントさ。ファンの間じゃ新メンバー加入の噂も立ってるぞ」

「何それー?」

ロケバスは赤信号で停止する。

少しだけ大きいエンジン音が、車内に木霊する。

 

「……なぁ、テラス」

「…ん?」

「……お前は何故、仮面ライダーになった?」

「……」

ロケバスは青信号で再び発進する。

 

「…な〜に突然?」

「ただの興味本位だ。気にしなくていい」

「……ん〜…そうだなぁ…」

ルビーは英寿の言葉を呑み、深く考え始めた。

 

「……私が今世で物心着く頃には、仮面ライダーはあった。私にとって仮面ライダーは、アイドルになる為の通過点としか思ってなくて…」

「……」

「…ミヤコさんに、苺プロでのアイドル活動を認めてもらって、ようやく私は仮面ライダーになれた。危険なのは分かってたけど、それでも叶えたい世界があったから……それだけ、だったんだけどねぇ……」

「……」

久しく見せなかったテラスの哀しい表情は、思ったよりも俺の心を動かした

これが演技なのか、真実なのか、俺にはもう分からない

 

だが、少しだけこいつの心の叫びを聞けたのかもしれない

 

「…お前は創世の女神の力によって蘇った……そして俺達の知らぬ間にデザ神になるまで実力を上げた。違うか?」

「……あれ、私生き返った事誰かに言ったっけ…?」

「……」

「…なんで英寿さんがその事知ってるの?私ちゃんとデザイアロワイヤルの時の願いで、この世界の人達の記憶をリセットしてってお願いしたんだけどなぁ…『星野ルビーが生きている世界』として……」

「……やはりそうか…」

おそらくその願いは俺だけには通用しない。その理由は今のこいつには伏せておこう

 

「何故かは分からないが、俺にだけはあの時の記憶が鮮明に残っている。お前の死も、あいつらから感じる絶望も、全て受け止めたつもりだった……だが何故…」

「……」

「…何故こんな嘘をついてまで……」

「叶えたい理想の世界があるからだよ」

「…っ」

テラスの方へ振り向くと、テラスの両目には黒く光る星が輝いていた

やはり似ている…

あの時のウルスに……

 

「私はすぐにでも、もっとビッグにならなきゃいけないの…その為なら、嘘も犠牲も厭わない」

「……一体…何がお前を……っ!?」

すると、突然バスが急停止する。

 

「どうした…!?」

「あ、あれを…!!」

「…なっ…!あれはっ…!」

運転手の方まで行くと、運転手は真っ青な顔で前方へ指を指した。

 

「ジャ……」

「ジャジャ……」

「ジャッ…ジャジャ…」

「……ジャマトの軍勢…いや、残党か…?テラス!降りて戦……っ」

バス前方に大量のポーンジャマトの軍団を確認した。しかしながら腕や頭部など全身にかけてツタのようなものが張っていた。

振り向いたがテラスの姿は見えず、よく見るとバスの外を既に歩いていた

 

「…あいつ、もう……っ!」

「うわっ!」

俺も外に出ようとしたその瞬間、入口含め、窓ガラスにツタが張り始め出られなくなった

 

「……このツタは…」

よく見ると、そのツタには無数の刺がある。バラのジャマトが持っている物と同じ物だ。

 

「……居るのか…この近くに…!」

白バラのジャマトの存在を警戒し、俺は再びテラスの方を向く。

 

「テラス…!」

「大丈夫だよ、英寿さん」

「…っ?」

「もうあの時の私じゃない。もう誰かに守ってもらう必要なんて無い」

「……」

「もう誰かの都合で動いたりしない。自分だけの力で、この芸能界(世界)を生き抜いてみせる……この力で、私は……」

 

《 DESIRE DRIVER(ツヴァイ)

 

テラスは黄金のデザイアドライバーを取り出し、装着した。

 

「……」

「…そ、そのバックルは…!?」

取り出したバックルに、英寿は心当たりがあった。

かつてシックが彼女に贈った、最悪の切り札だ。

 

SET DUST…

 

十二星座のエレメントが描かれた魔法陣のようなバックル、「アステリズムバックル」をドライバーにセットするルビー。

同じような円形の魔法陣が、ルビーの背後に現れる。

 

「……変身」

バックルを回転させ、魔法陣が回る。

背中に居た魔法陣がアーマーを出現させ、ルビーの上半身へと装着された。

 

ASTERISM

READY...FIGHT... !

 

「…見ててね…英寿さん……」

仮面ライダーテラス アステリズムフォームへと変身したテラスの背中にはプラネタリウムのように満点の星が描かれたマントが装備され、複眼には黒い星がふたつ浮かんでいた。

 

「……生まれ変わった、私の姿」

「……テラス…」

何かを振り切ったかのように振る舞う彼女を見て、英寿もそれを見で追う。

 

今も尚彼女の眼前には、無数のジャマトが蔓延っていた。

 

 

 

DGPルール

創世の女神の力は生死をも超越する。

 

 

第五十九話「軋轢Ⅰ:生まれ変わっても、きっと」




次回

「英寿さんには今日から私の専属マネージャーになっていただきまーす!」
「理想の世界があるんじゃなかったのか?」
「まさか君がルビー君のマネージャーになるとはね」
「テラスを蘇らせたのは誰だ?」
「プレイヤーの中でも特に優れた者達にのみエントリーを承認した」
「全て、アンタのせいだったんだな……」

第六十話「軋轢Ⅱ:ルビーの躍進」
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