仮面ライダーギーツ【Mother and Children】 作:キャメル16世
個人的にルビーが闇堕ちする展開ってすごく好きで、心苦しいところもありますが、原作で読んだ時めちゃくちゃ鳥肌立った記憶あります。
アニメで命が吹き込まれたことによってその真価が発揮されたと思ってます。伊駒さん、最高ッス
「ジャッ…」
「ジャァァ…」
「ジャジャッ…」
「……」
無数のポーンジャマトの前に立ちはだかるテラス。
「ジャァァ…!」
そのジャマト達が一斉に襲いかかってくる。
しかし、彼奴等の攻撃が届くことも無く、テラスによって薙ぎ払われる。
「はぁぁっ…!」
「ジャァァ…!」
「ジャジャァァ…!」
星空をイメージしたマントは、ポーンジャマトの攻撃を防ぐだけでなく、テラスのひとつひとつの攻撃をも強化していた。
「…ふっ…!」
《 CANCER 》
《 NOVA! 》
《 I feel… 》
バックルを操作したテラス。バックルの上部に示されたのは蟹座の紋様だった。胸部にある同じクレストも淡く発光する。
すると、背中のマントが形を変え始め、テラスの右腕手へと移動する。
その形はカニのハサミのように変化し、なんでも切り裂きそうな鋭利な形をしていた。
「はっ…!はぁぁっ!」
「ジャァァ!」
「ふっ!はァァっ!」
「ジャジャァァ…!」
アステリズムバックルは十二星座の力を扱うバックルだ。十二星座それぞれの特徴を捉えた力を背中のマント「アステリズムケープ」へと流し込み、あらゆる武装へと変化させる。
今テラスが武装しているのは蟹座の力を解放した右前腕武装「レイズキャンサー」だ。
「はぁぁっ!」
「……あいつ…」
その斬撃は空を切り、地を抉る。
「ジャ…ジャァァ…」
「ジャジャジャ…」
「…ふっ…!」
《 SAGITTARIUS 》
《 NOVA! 》
《 I explore… 》
テラスは再びバックルを操作する。
次に胸に現れたクレストは射手座の紋様だった。
右腕に武装されていた「レイズキャンサー」は再び形を変え、今度は左腕へと移った。
その形は弓矢のように変化し、弦には光の矢が常備されている。
射手座の力が解放された左前腕武装「レイズサジタリウス」だ。
「はっ…!」
「ジャ…!」
「はっ!」
「ジャッ…!」
「はぁっ!」
「ジャァァ!」
次々とジャマトを射抜くテラス。その所作には一切の迷いや無駄がなかった。
「はぁぁっ!」
「ジャァァ…!」
「レイズサジタリウス」を駆使した戦いで、テラスは遂に全てのポーンジャマトを殲滅した。
「…あの数を…この一瞬で……」
呆気に取られていた英寿。しかし、それでも尚バスに張り巡らされたツタが消えない事に疑問を持った。
「……さて、ここからが本番…」
「……ジャァァ…アァァァァァァ!!」
「…なっ…バラのジャマト…!?」
現れたのは赤色の花弁をしたバラのジャマト。
『今ガチ』の時に現れた赤いバラのジャマトと同型だ。
「ジャァァッ!」
「ふっ…!はっ!」
「ジャァ…!」
猪突猛進で向かってくるジャマトの攻撃をすんでで避けるテラス。
《 LIBRA 》
《 NOVA! 》
《 I balance… 》
再びバックルを操作するテラス。今度は天秤座の力を解放した。
「レイズサジタリウス」は形をふたつに変え、それぞれ円盤状の乾坤圏を模した武器「レイズリブラ」へと変化する。
「ジャァァ!」
「はっ!ふっ!はぁっ!」
テラスへとツタの束を突き出すジャマトだったが、「レイズリブラ」による斬撃を受け細切れにされる。
「はぁっ!」
「ジャァァッ…!」
更にテラスは「レイズリブラ」をひとつジャマトに向けて投げ飛ばし追撃する。
「……これでおしまい…!」
「レイズリブラ」を解除したテラスの背中に再び「アステリズムケープ」が装備される。
そして最後の一撃を喰らわせる為、バックルの魔法陣を2回回転させる。
《 ASTERISM 》
《 NOVA STRIKE! 》
「はぁぁぁ…!」
「…ジャァァァッ!」
テラスの全身にエネルギーが溢れ出し、瞳の黒いハイライトも強く輝き出す。
「はぁぁぁあっ!」
「ジャァァ…!ジャァァァァッ…!」
飛び上がったテラスは星空と共にジャマトに強烈なキックを放った。
攻撃に耐えかねた赤いバラのジャマトは爆散。バスやそこらじゅうに張り巡らされたツタも消滅した。
「……テラス…これが今の…お前の力…」
「……」
「…お前の…覚悟か……」
戦いを見届けた英寿も、また改めて考えを改める。
今の自分に何が出来るのか、何をするべきなのか。
「……」
「……」
変身を解いたルビーの瞳を見て、英寿はその深淵に深く堕ちる事となる。
「という事で!急ですが英寿さんには今日から私の専属マネージャーになっていただきまーす!」
「本当に急だな…」
鮫島アビ子へのインタビューを済ませ次の日、ルビーのこの行動は当然英寿の同意の元である。
妹の挙行にアクアも思わず困惑の意を見せる。
「…それで?どういう心境の変化?」
「……何がだ?」
ミヤコとルビーが別室に居る中、かなが英寿に質問する。それをアクアとMEMも聞いていた。
「何って……ルビーとの事よ。急にマネージャーって…タレント業はどうすんのよ」
「別に、マネージャー兼タレントの芸能人だって居るだろう。俺ならそつなくやりきるさ」
「なんで急にマネージャーになんかなった?」
「……」
あっけらかんとする英寿に、今度はアクアが問いかける。
「叶えたい理想の世界があるんじゃなかったのか?」
「理想は叶えるさ…いずれな。だがその前に、アイツの活躍をそばで見届けたくなった。それだけだ」
「本当にそれだけか…?」
「……」
「お前がそんな打算も無しに動くとは思えない」
「……」
「……」
アクアの言葉が周囲の空気に重くのしかかる。
かなもMEMも、英寿に対し疑念の視線を送っていた。
「……たまには化かされるのも悪くない。そう思っただけだ」
「……」
「「…?」」
英寿の言葉は、かなやMEMには理解しがたかった。
しかし、アクアだけはその言葉に意味を見出そうとしていた。
「英寿さーん!早速仕事入ったから、マネージメントよろしくねっ!」
「…あぁ」
英寿は3人に詳しい説明もすること無く、その場を後にした。
「……」
「…ア、アクア…!」
「……なんだ?」
アクアもその場を後にしようとした時、かなが歯切れも悪く呼び止める。
「……あっ…えっと…」
「……用が無いなら行くけど」
「…ごめん……」
「……かなちゃん…」
「それにしても、英寿さんにマネージャーなんて務まるの?」
「そんなに俺はマネージャーに不向きか?これでも多少は考えたさ…考えに考え抜いて、この答えを出した」
「…ん〜…でも、やっぱり英寿さんは表舞台でバーンと活躍したほうが良い気がするんだよなぁ」
「いずれな。今はお前の黒子に徹するさ……それで、今日の内容は?」
まるで自分がマネージャーに語りかけるようにルビーに質問する英寿。
今日はネット記事のインタビューと撮影だった。
マネージャー業務としては初歩中の初歩を学ばせてもらう事となる。
しかし、ルビーがインタビューの支度をしている最中、彼はある人物と遭遇した。
「…や、エース君」
「……クラム…」
デザイアロワイヤルが明けて以降、彼との連絡は途絶えていた。
運営からの音沙汰も無し。
しかし先日現れたジャマトの軍勢…
なにか裏があるに違いない
「まさか君がルビー君のマネージャーになるとはね」
「色々やりたい事が出来たからな。これもそのひとつだ」
「…ん〜?」
クラムと向き合った英寿は彼の瞳を見つめた。
「テラスを蘇らせたのは誰だ?」
「……」
「いつその願いが叶えられた?デザイアロワイヤルの時点でテラスは蘇っていた。であればそれ以前に、誰かが女神の力でテラスを蘇らせた筈だ……それは誰だ?」
「……ほぉ…なるほど、君にはリセット前の記憶が残っているんだね。これは驚きだ」
クラムは少しだけ考えて答えた。
「でも残念ながら、その問いには答えられない。今言えるのは、ルビー君が生き返ったのは事実だが、それを叶えたのは誰かの願いか、はたまた創世の女神の気まぐれか……」
「……」
「…どちらにせよ、彼女は生まれ変わったんだよ。新たな自分へとね」
クラムはどこか自慢げに語る。
「…知ってるかい?デザイアロワイヤル…あれはルビー君の持ち込み企画だ」
「…なに?」
「彼女が生き返った数週間後、ご丁寧に企画書持参で。アクア君の妹はなかなかに戦略的だね」
「……」
デザイアロワイヤルの開催が発表されたのは宮崎での一件から数週間……あの一件の直後にはもう生き返っていたのか…?
「ああいう事が出来る子は強いよ。芸を磨いて評価されて…そういう正攻法だけが売れる道筋じゃないからね」
「……」
「いかに裏口を見つけてポジションを取るか、状況状況でその時しか使えないウルトラCはいくらでもある。それを見逃さない嗅覚と行動力は、強い武器になる」
「……何故あいつの願いを聞き入れた?」
「…ん?」
「分かっていた筈だ。デザイアロワイヤルは、あいつが仕組んだ、あいつ自身が勝ち残る為に企画された物だと」
「それでも、エンターテインメントとしての企画の良さを優先したまでだよ。おかげさまで新たな事業へと発展させることも出来た」
「……新たな事業?」
「…おや、ルビー君から何も聞いていないのかい?てっきりこの間ジャマトの軍勢に遭遇した時に説明されたのかと……」
クラムは少し呆れたような表情をした後、宙にモニターを出現させた。
「ジャマトの軍勢を率いていた赤いバラのジャマト。そして彼女の手によって既に葬られた青いバラのジャマト。そして他にも別の色のバラのジャマトが複数体いる」
「…青いバラのジャマト……いつの間に……」
モニターには先日、テラスが赤いバラのジャマトを葬った映像と、別日に青いバラのジャマトを葬った映像が映し出された。
「これはそれぞれの色のバラのジャマトを倒し、最終的にとある色のバラのジャマトを倒すゲーム『ジャマトスタンプラリー』だ」
「…とある色のバラのジャマト……まさか…!」
「……そう、君達が幾度か取り逃している…白いバラのジャマトだよ。あの個体は他のバラのジャマトより進化が早く、今まで一体しか存在が確認されていない。言わば突然変異種と呼んでいいね」
モニターに映し出された白いバラのジャマト。
これまでの三段階の進化形態が時系列で映し出される。
「…バラのジャマトは合計何体居る」
「赤、青、黄、緑、桃の5色だよ。色が変わる毎に強さも比例して強くなる。この5体を全て倒す事が出来た者が、白バラのジャマトと戦う事を許される」
「奴は今何処にいる」
「さぁね。どこかに潜伏しているのか、しばらく目立った動きは無さそうだ。だから今のうちに、こちらの戦力も拡大しなくてはならない……」
クラムは再びモニターの映像を切り替えた。
そこにはこれまでの戦いでその力を魅せ合ってきた仮面ライダー達の勇士が記録されていた。
「白バラのジャマトを倒し、この世界に安寧をもたらした者が、最後のデザ神となって理想の世界を叶える。しかしこれを表立って開催するにはあまりにも過酷過ぎる…だからプレイヤーの中でも特に優れた者達にのみエントリーを承認した、まさに“裏のゲーム”…デザイアグランプリ・ノワールだ」
「…デザイアグランプリ・ノワール……」
モニターに新たなデザイアグランプリのロゴが映し出される。
「…君の言う通り、ルビー君は僕らのコネによって生き返った身だ。しかしこれも、利害の一致によるものだ。こちらも色々と事情を抱えていてね……今回ばかりは、目を瞑ってくれるとありがたい」
「英寿さーん!取材始まるよー?何してんのー?」
「……」
クラムの言葉に答える前に、準備を終えたルビーが部屋から出て来た。
「…あぁ、今向かう」
英寿はクラムに背を向け、険しい顔でその場を後にした。
ルビーと共にインタビュールームへと出向いた。
「よろしくお願いしまーすっ!」
「…お待ちしておりました」
そこには2人のスタッフが居た。
無機質な表情を取る女のスタッフと、金髪でサングラスをかけたシルエットの整った男のスタッフ。
ルビーと英寿が部屋に来た事を確認するなり、男のスタッフは女のスタッフに耳元で何かを伝え、部屋を後にしようとする。
「……っっ!!」
その男が英寿の横を通り過ぎた瞬間、英寿は以前にも感じた強いプレッシャーを感じた。
咄嗟に振り返ったが、部屋を後にした男のスタッフに変化は無い。むしろ自分だけがこの違和感を感じている。
「……気のせい…か…」
今だけはそう思う事にした。
だが知る由もなかった。
部屋を後にした男が、微かにニヤリと口角を上げていたことを……
ライター・プロデューサー・タレント等、有識者9名が集いその年に最も活躍したアイドルを決める『女性アイドルアワード』。
その中の「新星賞」を、「B小町」の星野ルビーが獲得した。
「B小町」は十数年前に解散した伝説的グループのリブートユニットだ。となれば、熱烈的なファンの手により道半ばで命を落とした『アイ』と重ねて見る者も多いだろう。
しかし星野ルビーは『アイ』を超えるのではないかという高すぎる期待に応えうるポテンシャルを持っている。
彼女が注目されたきっかけは『深掘れ☆ワンチャン!!』。数ヶ月前のコスプレイヤー炎上の際に、当番組を見たという人も多いのではないだろうか。
ずば抜けたルックスと、強烈なおバカキャラ。
しかし小気味のいいトーク力やアドリブ力も持ち合わせており、業界内での評判も高い。
加えて、兄のアクアも新進気鋭の俳優。
美男美女の双子として、二人でゲスト出演する機会も増えて来た。
「B小町」は、ユーチューバーグループとしても人気が高い。
半年前は30万人だった登録者も、今や100万人を目前とする所まで伸びている。
1ヶ月ほど前に報道のあった、同じく「苺プロ」のタレント、浮世英寿が星野ルビーの専属マネージャーに就任した事も、彼女を飛躍させる大きな一歩になったかもしれない。
そして最も注目を浴びているのは、仮面ライダーとしての彼女の勇士だ。
まるで鬼神のようにジャマトを屠る彼女の姿は、誰の目にも留まっただろう。
ユーチューバー、アイドル、テレビタレント、そして仮面ライダーの四軸を持つ彼女は、正に令和を象徴するアイドルと言えるだろう。
彼女はインタビューでこう語った。
「B小町、アイの奪われた夢を私たちが叶えます。B小町は必ずドームに立ちます。」
「星野ルビー」の今後の活躍に注目していきたい。
「…あれから、色々調べてみた。星野ルビーがどうやって生き返ったのか、一体誰の願いで蘇ったのか……何故、突然あいつの躍進が止まらなくなったのか。何故ここまで狡猾に事を進めることが出来たのか…一体誰の差し金なのか……全て、アンタのせいだったんだな……「苺プロ」元代表取締役社長、
「……」
「……「苺プロ」は…デザイアグランプリのスポンサーだったんだな…」
第六十話「軋轢Ⅱ:ルビーの躍進」
次回
「この事件は、何一つ終わってない」
「ブッ殺すんだよ。アイをあんな目に遭わせた奴を…!」
「悲しんでる友達を見たら、なんかしたいって思っちゃうのが人間てもんでしょ」
「俺があいつに、こんな事したくてしてると思ってるのか…?」
「俺も一度は復讐に囚われた人間だ…その報いを、俺は晴らす…!」
第六十一話「軋轢Ⅲ:ストロベリーアベンジ」