仮面ライダーギーツ【Mother and Children】   作:キャメル16世

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ご無沙汰してます
久しぶりに1ヶ月間が空いてしまいました…
期待してくれていた方、お待たせいたしました!



第六十二話「軋轢Ⅳ:燃えろ!ふたつの咆哮」

「デザイアグランプリ・ノワール?…そんなゲーム聞いた事ないぞ」

「そりゃそうだよっ!なんたって上級者向けに作られたゲームだからねっ!運営が指名しないと本当はエントリーすらさせて貰えないんだから……」

デザイアグランプリ・ノワールへの招待状を片手に疑問を持つアクア。

そのゲームの発案者であるルビーは自信満々に答える。

 

「大体、なんでお前がこんなの持ってるんだ?こういうのは本来、運営から直接オファーが来るもんだろ」

「それは兄妹のよしみだしぃ?私からクラムさんにお願いして、的な?」

「……」

疑いの目をやめないアクア。

 

「とにかく!返事は今すぐにじゃなくていいからさっ!ゆっくり考えてよ!」

「……」

ルビーは後腐りの無いように立ち去ろうとした。

 

「…待て」

しかし招待状を手にしたアクアはそんな彼女を呼び止めた。

 

「少し前から思ってた……お前、何か隠してるだろ」

「……ん?何が?」

ルビーもその反応を予期していたかのように振り返る。当然シラを切る。

 

「最近のお前の活躍には、目を見張るものがある。デザグラで優勝するようになって、仕事もいくつも取るようになった……でも、その中でもいくつか気になる事がある」

「……なに?」

「…いくらデザ神になろうと、有名になろうと、あんな数の仕事をそう何個も取れるもんじゃない……教えてくれ、一体誰がお前に手を貸してる…?」

「……」

「…それに、エースがいきなりお前のマネージャーになったのも気になる。アイツに一体何を吹き込んだ?」

「……やだなぁーお兄ちゃん、そんなゲームの黒幕を見るような目しちゃってさっ…」

アクアの嫌悪に満ちた眼を見て、ルビーは哀しそうな表情を見せる。しかし、それは明らさまに冷めていた。

 

「私は別に何もしてないよ?デザ神になってから色んな人に声をかけて、私の努力を認めてもらってるだけだよぉ〜?英寿さんも遂に私の実力を見てめてくれたんだね〜」

「そうじゃない…!その声を掛けた相手は誰だ?」

「…『深掘れ☆ワンチャン!!』の漆原Dだよ」

「…漆原D…!?……まさか…あの炎上をきっかけに…?」

ルビーとアクアが出演中のネットバラエティー番組『深掘れ☆ワンチャン!!』は、数ヶ月前に炎上事件を起こしている。

番組裏で起きていたパワハラやセクハラを問題提議し、ネットにその情報が出演者によりリークされた事で炎上した。

 

結果的にルビーの策略により、漆原と出演者の間にあったいざこざも示談となり、炎上も収束した。

 

「漆原Dが私に恩を感じてるみたいだったから、じゃあ仕事を沢山くださいって言っただけだよ?こんなの芸能人として当たり前の事じゃない?」

「…そうかもしれないが……そのやり方は…!」

「“使えるものは使う”。アクアや英寿さんがいつも言ってる事だよ?」

「…っ!」

やっぱりそうだ……

ルビーは…

 

「……本当に良いのか…?」

「…ん?」

「…そうやって人を利用したりするの、お前が一番嫌がってる事だと思ってた……」

これまで見て来たルビーは何事にも真っ直ぐで、ド直球に突っ込む姿が魅力だった

 

《でも私達の初めての仕事だよ?嘘は、いやだ!》

 

《コケて当たり前!楽しく挑もうよ!》

 

《絶対、ママみたいになるんだ!》

 

でも今目の前に居るルビーは……

 

「……」

そんな姿とはかけ離れてしまっていた……

 

「…他人にも自分にも嘘を吐かず、奇麗にまっすぐアイドルを目指すのがお前じゃなかったのか?お前が目指したアイドルはそんななのか!?」

「……ねぇ、アクア」

激昂するアクアに、ルビーは優しく呼びかけた。

 

「…ママだって嘘吐きだったじゃん」

「……」

「子供が居る事隠して、アイドルやってたじゃん。無理なんだよ、奇麗にまっすぐこの世界で売れるなんて」

ルビーの瞳の黒いハイライトが強く輝く。

まるでこれ以上の会話は不要と言っているようだ。

 

「それに、私こっちの方が向いてるみたいなんだよね。見てて、もっと凄いもの見せるあげるから」

「……」

その言葉の通り……

ルビーはその後も次々と仕事を獲得していく事になる

 

その歪さによって、至る所で亀裂を作りながら…

 

*

 

「それじゃ、ここのスケジュールまとめて頂戴」

「あぁ、分かった」

ミヤコから資料を受け取った英寿は、早速デスクに向かってパソコンを打ち始めた。

その資料にはルビーのスケジュールが書かれており、それをデスクトップにまとめる作業をミヤコから指示された。

 

「……アンタ、最近なんかあった?」

「…何だ急に。特に何も無いぞ」

「そう?急にルビーのマネージャーやるって言い出した時は驚いたけど…上手くやれてるの?」

「……あぁ。マネージャーの仕事もだいぶ板に付いてきた…アンタが心配する事なんて何も…」

「そうじゃなくて……ルビーと上手くやれてるの?」

「……」

ミヤコは少し呆れたようにため息を吐く。

 

「あの子がデザグラで勝つようになって、「苺プロ」の雰囲気も一気に変わった。でも私が一番変わったと思うのは…アンタよ、エース」

「……どういう意味だ?」

「前は、願いの為に一直線だった。洗礼された知恵を酷使して、どんな手を使ってでも勝とうとしていた……」

「……」

「…でも今のエースは、勝利へと踏み出す足を一歩引いてしまっている。それはルビーのマネージャーになったからじゃない…それはただの言い訳」

「…何が言いたい?」

しびれを切らした英寿は椅子から立ち上がりミヤコに迫った。大体何を言いたいかなんて分かる。

でも今の英寿は、その答えを知らないフリを貫いていた。

 

「…アンタ、勝つのが怖くなったんじゃない?勝つ事で、世界の真実を知る事が……」

「……っ」

 

《お前ならもっと、完璧な勝ち方が出来た筈だ》

 

《叶えたい理想の世界があったんじゃ無いのか?》

 

「……どうして…」

「長年この芸能界(世界)に居ればイヤでも気付かされるわよ。デザイアグランプリに関わる事は、世界の真実を知ると言う事。今までオーディエンスとして、娯楽として楽しんでいたエンタメを、私達は現実として受け入れるしかない……ここはそういう世界…」

「……」

おそらくミヤコは、『苺プロ』がデザグラのスポンサーだった事は知らない。

しかし、薄々勘付いていたのだろう。

星(・)野(・)ア(・)イ(・)が(・)3(・)つ(・)の(・)世(・)界(・)を(・)叶(・)え(・)る(・)ま(・)で(・)は……

 

「…アンタの言葉を否定するつもりはない」

「……」

「…だが、俺が勝利を拒んだ事は一度もない!確かに俺は勝利を恐れているかもしれない…だが俺が掴む勝利には、何人ものライダー達の紡がれた想いがあった!」

「……」

「…その想いだけは、否定したくない…!」

「……」

英寿の想いを聞き入れたミヤコ。

 

「別にアンタの想いを否定するつもりは無いわ……初めてアンタの眼を見たあの時から、アンタはやる男だって思ってただけ」

「……っ」

「どれだけ勝利を積み重ねても、どれだけ人間離れな力を得ようとも…アンタ達は私の大事なタレント(子供達)なんだから、もっと自分を大事にしなさい」

「……」

「貴方の人生は、貴方の物なんだから」

「……ミヤコ…」

その言葉が心に深く響く。

久々に感じたミヤコの器の大きさに思わず感心する。

 

「……フッ…アンタ、よく聖母だって言われないか?」

「なっ、何よその呼び方っ!」

「……っ」

そんな会話をしていると、英寿のスパイダーフォンに映像が送られて来た。

そこには2体のバラのジャマト。今回は緑色の個体だった。

 

「……悪い、マネージャーの仕事は後でやる」

「…行くのね?」

「あぁ…アンタのお陰で少し目が覚めた。俺は、俺の為に戦うよ」

事務所を後にした英寿は、ジャマトが現れた現場に迷わず向かう事とした。

 

「……ん〜〜っ!」

英寿が去り、誰も居ない空間になって清々と伸びをするミヤコ。

 

「……さて、私も私のやるべき事をしなくちゃね」

髪を束ねたミヤコは、再び自身のパソコンに身体を向けた。

 

「……私達の夢の為に…!」

 

*

 

「ジャァ…」

「ジャジャジャァ〜!」

緑色の花弁を持つバラのジャマトは都内の公園で暴れていた。

まるで遊ぶかのようにツタを伸ばし、地を抉り公園に来ていた人々を脅かしていた。

 

「はぁッ!」

「ジャジャッ!」

「……さぁ、ハイライトと行こうか」

駆け付けた英寿がジャマトを蹴りで牽制する。

ブーストマークⅢバックルを取り出したところで、手が止まる。

 

「英寿さんばっかずるいなぁ」

「…テラス」

今日はオフの筈のルビーが公園にやってきたのだ。

そして腰には既に黄金のデザイアドライバーが装着されていた。

 

「順調そうで良かったっ!ゲームに誘った甲斐があったよぉ〜」

「あぁ、おかげさまでな」

「ジャァ…?」

ジャマトを挟むようにして対峙するルビーと英寿。

 

「…ふーん……なんか雰囲気変わったね」

「そうか?こんな俺は嫌いか?」

「ふふっ!やっぱり英寿さんはそうでなくっちゃ!」

 

《 SET DUST… 》

 

「……フッ…」

 

《 SET IGNITION 》

 

「…変身」

「変身…!」

 

《 ASTERISM 》

《 GEATS Ⅸ 》

 

そしてルビーは仮面ライダーテラス アステリズムフォームへ、英寿は仮面ライダーギーツⅨへと変身する。

 

《 READY FIGHT! 》

 

「…ふんっ!」

「はぁッ!」

「ジャジャッ!」

「ジャァッ!」

両者共にジャマトへの先制攻撃を打ち込む。

 

「ジャジャァ…」

「…それじゃっ、まずは肩慣らし!」

 

《 PISCES 》

《 NOVA! 》

《 I believe … 》

 

テラスがバックルを操作する。

「アステリズムケープ」は魚座を象徴する双節棍(ヌンチャク)型の武器「レイズピスケス」へと変化する。

 

「はぁっ!」

「ジャァッ!」

「レイズピスケス」は2匹の魚のそれぞれが鎖で繋がっている見た目をしており、その鎖は伸縮自在。中距離型の打撃戦法を得意とする。

 

「やっ!とっ!はぁっ!」

「ジャッ!ジャッ!ジャァッ!」

次々と繰り出されるテラスの攻撃に、緑のバラジャマトは為す術を無くす。

 

「てやぁ!」

「ジャァァ…!……ァァァ…」

「…っ?」

そう思われた。

しかし、今回の敵はそんな簡単には攻略出来ないらしい。

 

「ジャァァ…!」

「…なっ…!」

緑のバラジャマトは自身のツタを変化させ、テラスと同じような双節棍(ヌンチャク)型の武器を作り上げた。

 

「ジャジャジャァ…!」

「コピーする力…!」

嘲笑うかのようにジャマトはテラスを挑発し始めた。

やはりクラムが言っていた、色が変わる度強さも比例して強くなるという言葉にも嘘は無いようだ。

 

「ジャァァ!」

「ふっ!」

バラジャマトが双節棍を振るう。鎖の部分は伸縮はしないものの、双節棍に生える棘が致命傷を与える可能性がある。

テラスはその攻撃を避け続ける。

 

「奴ら、自分達の強さを研究しているな」

「えっ?」

ギーツⅨの視線の先にも緑のバラジャマトが立ちはだかる。ギーツⅨがギーツバスターを携えるのに対し、相対するバラジャマトも同じように棘の生えた剣を持っていた。

 

「奴らはおそらく、産まれたばかりの個体だ。だから自分の強さの技量を自分で把握し切れていない。だから戦いの中でそれを研究している…肩慣らしなんかしてたら、あっという間に越されるぞ」

「なるほどぉ…それじゃ、短期決戦で行くしかないねっ!」

「……あぁ」

ギーツⅨはギーツバスターを構え直し、バラジャマトに振りかざす。

 

「ジャッ!」

「ふっ!はぁッ!」

バラジャマトはギーツⅨの攻撃を見切り避ける。更にカウンターを仕掛ける。

対するギーツⅨも負けじと対応し、互いの斬撃がクロスカウンターする。

 

「ジャッ…!」

「クッ……ふっ…!」

創世の力を駆使し、足場を生成。

 

《 LEO 》

《 NOVA! 》

《 I will … 》

 

「英寿さん…!」

「…あぁ!」

テラスの足元にも同様に足場を生成し、上空へと上昇させる。

テラスは胸にライオンの画面に酷似した拡声咆哮装備「レイズレオ」を装着する。

 

「…さぁ、盛大に打ち上げだ!」

 

《 DYNAMITE BOOST TIME! 》

 

ギーツⅨがバックルを操作すると、ギーツⅨの身体に青白い炎が纏い始めた。

 

「うおぉぉぉっ!」

テラスが咆哮を上げると、胸の「レイズレオ」が呼応し全身に真っ赤な炎が纏い始めた。

 

「はぁッ!」

「はぁっ!」

 

《 BOOST Ⅸ VICTORY 》

 

《 ASTERISM 》

《 NOVA STRIKE! 》

 

「はぁぁぁッ!」

「はぁぁぁっ!」

「ジャッジャ…!」

「ジャッ…!」

互いにそれぞれの方向を向き、相対するバラジャマトに強烈なキックを繰り出す。

互いの姿が交差し、それぞれのバラジャマを打ち破ったふたりは地面に降り立った。

 

「…これでお互いに3体目。いつの間にか追いつかれちゃったなぁ〜」

「……今回は運が良かった。正直、あのレベルのジャマトが2体相手は厳しかったからな…」

「……」

「次こそは、俺がリードしてみせる」

「……うふふっ!楽しみに来てるっ!」

 

 

 

デザイングランプリ・ノワールは、通常のゲームとは異なり一般公開されていない裏のゲームとなる。その為、それを観る事を許されるオーディエンスも限られ、その内容も通常は非公開だ。

しかし、プレイヤーからその存在を知らされた人物は、その戦いを観る事が出来る。

 

「……エース……ルビー…」

 

《お兄ちゃん、はいこれ》

《これは?》

《デザイアグランプリ・ノワールのゲームが観れるタブレット。ゲームが開かれたら通知が行くようになってるから》

 

「……これが…デザイアグランプリ・ノワール…」

この戦いの一部始終を見届けたアクアは、2人の戦いを見て思い馳せた。

 

「……でも……今の俺は…もう…」

少し前まで感じていた筈の物が感じ取れなくなっていた事に、今更ながら気が付いた

劣等感、焦燥感、闘争心、復讐心…

でも、今の俺が感じているものは……

 

「……」

アクアはとある会員制のバーのカウンターでその映像を見ていた。

そして今日ここに来たのは、ただの暇つぶしではない。

 

カランカランと店の扉が来客を知らせる。

その足音は次第にアクアへと向かって来る。

 

「…よ、待たせたな。星野」

今夜も稽古帰りだろう、メガネの奥には澄み切った目が映る。

 

「…暇つぶししてたので大丈夫ですよ。姫川さん」

 

*

 

「……ハァ…ハァ…」

4次元ゲートを超え、少女は息を整える。

黒い髪とドレスが靡き、彼女に夜の訪れを知らせる。

 

「……」

「……っ」

しかし、すぐに追っ手が迫る。

中世的な衣装に黒いフードのローブ。そして骸骨のような大きな仮面を被った男は、少女に迫って来ていた。

 

そしてその少女は、デザイアグランプリのナビゲーターのひとり、クロメだった。

 

「…こ、来ないで!私は…!」

「……裏切り者を粛清する。それが創世の女神から授かった俺の使命だ…」

「……クッ…!」

男が手をかざした時、クロメは攻撃を予知しヴィジョンドライバーを構える。

 

「…フッ!」

「うっ…!」

しかし、男は衝撃波を発生させてクロメを吹き飛ばした。衝撃でヴィジョンドライバーが彼女の手から離れる。

 

「…っ…!」

クロメは再び4次元ゲートを開いてその中へと逃げ仰せた。

 

「……」

残った仮面の男は夜にひとり、静かにその行く末を探っていた。

 

 

 

DGPルール

バラジャマトは色によって強さが変化する。

全ての色のジャマトを倒した者が、

白いバラジャマトと戦う事を許される。

 

 

第六十二話「軋轢Ⅳ:燃えろ!ふたつの咆哮」




次回

「私は運営を追放された……女神に仇なす裏切り者として」
「私は…創世の女神に、愛されなかったからね」
「テメェの理想を、テメェで勝手に終わらせんな」
「彼にしか知りえない記憶までも、見る事が出来るかもしれないね」
「あのマスク…まさかゲームマスター…!?」
「裏切り者は粛清する。それが女神から与えられた俺の使命…!」

第六十三話「軋轢Ⅴ:黒い瞳に宿る理想」
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