仮面ライダーギーツ【Mother and Children】 作:キャメル16世
「……そして…この場で起こり得る最も最悪な事が起きた…!」
「…っ?」
「……ジャマトに…創世の力が渡ってしまった…!」
クロメが白いバラのジャマトに喰われ、そのジャマトは新たな姿へと覚醒した。
それはつまり、ジャマトが新たな進化を得たという事を体現している。
「…ジャマト……ん〜…そんな無粋な呼び方しないで欲しいなぁ〜……そうだっ…マリアジャマト♡、これが私の新しい名前っていうのはどう?」
「……女神の名を…お前が騙るな!」
金髪の男はヴィジョンドライバーに再び手を伸ばす。
「…変身…!」
《 INSTALL 》
《 Extremer's high vision, GLAREGEATS. 》
「はぁぁっ!」
グレアギーツへと変身し、マリアジャマトへ剣を振り下ろした。
「うふふっ…」
「なっ…!」
しかしその刀身は奴が出現させたツタに捕まれ防がれてしまう。
「ほぉ〜ら♡可愛がってあげる♡」
「クッ!」
危機感を察知し、即座に距離を置くグレアギーツ。
剣は奴のツタに包まれたままだが、グレアギーツはそのままドライバーの左側面にあるアップグレードアセンブルへと手を伸ばした。
「…ふっ!」
「……あら♡」
アップグレードアセンブルに再び剣を出現させるグレアギーツ。先程までジャマトのツタに包まれた剣も消失している。
「俺の
「ヤダなぁ〜…子供が危ないモノ持ってたら、取り上げるのが親の務めでしょ♡?」
「…あくまでも俺の事は子供扱いするのか……母なる女神の名を騙り、同胞を取り込み、尊厳を踏み躙った貴様を……」
「…ん〜♡?」
「……俺は許さない!!」
《 ERASE 》
「はぁぁぁぁあっ!」
放たれた5つのヒュプノレイから強力なビームが休みなく放たれる。
消し炭にでもするかのような威力で、しばらくして攻撃は止んだ。
「…ハァ…ハァ……」
「…すごーい♡!今度のお遊戯会でやる出し物〜?でも残念〜♡…こんな程度じゃ、ママには効かない♡」
しかし、相手は彼らが思っている以上に強固だった。
奴の元々備わっていた脅威の再生能力、それが創世の力により更に強化されていたのだ。
「クッ…!思っていた以上だな……」
「……クッ…ククッ…!」
「…っ!おい、よせ!お前にはまだあのジャマトと戦う資格が無い!戦ったところで死ぬぞ…!」
ボロボロの身で立ち上がろうとする英寿を引き止めるグレアギーツ。
「……だからって…このまま黙って見てる訳にもいかない…!」
「…これは俺達、運営の撒いた種だ!プレイヤーのお前が出る幕じゃ…!」
「俺を粛清するんじゃなかったのか…?」
「…っ……こんな時に何を…?」
英寿は含みのある笑みを見せて、グレアギーツを黙らせた。
「…まだ…俺のハイライトは……終わってないって事だ…!変身…!」
《 SUNSHINE BULLET 》
《 SOL BLASTER 》
ギーツⅨへの変身は体力的に困難と判断した英寿は、ソルブラスターフォームへと変身した。
「はぁぁぁッ!」
「…太陽光を浴びてエネルギーを得ているのか…?」
照らし出す太陽の陽を浴びて、体力を少しづつ回復させるギーツ。
《 READY FIGHT 》
「……さぁ…ここからもハイライトだ…!」
ここは、とある企業のオフィスビル。
その入口の自動ドアが開かれる。
「おかえりなさい、社長」
「…うん、ただいま」
そこから黒髪ロングの女の秘書を連れた、金髪とグラサンの男が入ってくる。
彼の登場を予期していたかのように、社員は一斉に成立し秩序を持った隊列を見せた。
まるで無機質な兵隊のようだ。
男は秘書を連れたまま、そのままエレベーターへと乗り込んだ。
やがて社長室に着き、優雅な椅子に腰を掛ける。
「…社長、お客様がお見えです」
「通して」
秘書が男に語りかけ、男は無駄なく返答した。
「……っ」
「…やぁやぁ!久しぶりだねぇ〜!クロメちゃんっ!」
社長室に入って来たのは血相を悪くしたクロメだった。
男は腕を大きく広げて喜びの感情を見せた。
「来てくれて嬉しいよ〜!今日来てくれたってことは、僕の話に乗ってくれるって事で良いのかな?」
「……っ」
クロメは黙ったまま、男に袋に入った何かを投げ渡した。
「…交渉、成立だねぇ」
袋の中に入っていたのは、複数の“力の種”だった。
「…ほら、これで元気な子を産んでね」
「……ッ…ジャァ…!」
男はその袋ごと秘書に渡す。
すると秘書は姿を変え、白バラのジャマトへと変貌した。
「ジャァァ…!」
入っていた“力の種”を一気に飲み込んだジャマト。しばらくすると、お腹を大きく膨らました。
「…ジャッ…ジャァァッ!」
少しの間悶えるような様子の白バラのジャマトだったが、口から何かを複数個吐き出した事で、悶えもなくなりお腹の膨らみも無くなっていた。
「……ジャ…」
白バラのジャマトから産まれたのは赤や青色のジャマトの幼体だった。産まれた5体はそれぞれ別の色をしていた。
「運営の保管庫から持って来てくれて助かったよ〜!これでまたジャマトを生み出せるっ!」
「…こ、これで本当に…私の理想の世界が叶うの?」
「……もちろんっ」
男は立ち上がり、クロメの傍まで来て顔の輪郭に触れた。
「…女神の力が弱まっている以上、理想の世界を叶える方法はひとつしかない」
男はサングラスを外し、その瞳をクロメに見せた。
「…ジャマトが創世の力を掌握し、女神の代わりにジャマトが世界を創造する」
「……えっ?」
男の両方の瞳には、黒い星のハイライトが宿っていた。
「…ちょっ…ちょっと待って…!私は力をつけたジャマトが女神の力として還元されれば、また女神に力が戻るって…!」
「そうだよ?だからジャマトから新たな女神が誕生する…破壊と創造、ふたつの力を兼ね備えた…究極のジャマトがね?」
「…う…嘘…!」
男の手を振り払うクロメ。その表情は絶望に染まりきっていた。
「やっと…叶うと思ったのに…!私とシロメの…理想が…!」
「君の理想は素晴らしいと思うよぉ?シロメちゃんとふたりで叶えたいっていう健気さもぉ…」
「……ヒッ!」
再び男の眼を見たクロメは更に表情を青く染めた。
「安心して?君の理想は…誰の記憶にも残らないまま、ゆっくりと消えていくだけだからさぁ…」
不気味な笑みを浮かべた男は、クロメに手を伸ばした。
「…クッ!」
「……あれ」
すぐさま4次元ゲートを開いたクロメは、何とかその部屋から抜け出した。
「……まぁ…いいか」
どうせ運営にもバレて、粛清されだけだし…
「……ご主人…サマ…」
「…行っても良いよ?あまり目立った動きしなくちゃね」
「……ジャァァ…!」
「……」
さてと…どっちが先に喰らうかな……
「はぁぁッ!」
「はぁぁっ!」
「あははっ!私…勝ったんだ♡!これで世界は私達のモノ…!」
2人の仮面ライダーと戦いながらも、悦に浸るマリアジャマト。
「ハァァァ!!」
「ぐあっ!」
「ぬあっ!」
以前よりも硬化したツタを振るうマリアジャマト。
その攻撃には規則性が見られたが、計算され尽くした連撃は彼らに反撃の隙を与えることも無く圧倒する。
「はぁぁッ!」
体勢を直したギーツは、腕の「フレアランチャー」から炎弾を放つ。
「ふっ!」
それに合わせるように、グレアギーツもヒュプノレイを2体放ちビーム攻撃を仕掛ける。
「……ん♡?」
「……クッ…」
しかし、攻撃は命中するも傷一つ付かない。
「どう?ママのこの身体♡!まさにパーフェクトでアルティメットッ!私の求めていたモノ…!もっと…モット楽しませて♡ッ!!」
「ぐあっ!」
「…っ!…おい!」
標的をグレアギーツに絞り攻撃するマリアジャマト。
弾かれるように吹き飛んだグレアギーツは変身が解除され、ボロボロの状態で横たわっていた。
「…さぁ♡おいで…!私の肥料にしてあげる♡」
「…クッ…グッ……」
「私と……ひとつになりましょう♡…!」
「……クッ…ここまでか…」
金髪の男は静かに目を閉じた。次の瞬間、鈍い音が辺りに響いた。
「……っ?」
「…クッ…!ガハッ…!」
「…浮世英寿!」
金髪の男を狙ったマリアジャマトの攻撃を、ギーツが庇っていた。
腹部に抉れるように喰らった攻撃を、今も尚耐え続けている。
「…はぁぁッ!」
「……っ♡!」
「フレアランチャー」から放たれた炎弾を弾くマリアジャマト。しかし、目を離した隙に2人の影は消えていた。
「…あれ……逃げちゃったぁ……」
残されたマリアジャマトは、戦いの余韻に浸りながら、不敵な笑みを浮かべ続けた。
「ミヤコさん!英寿さんがジャマトにやられたって…!?」
「…私も今さっき聞いたところよ。どうやら、またあの白いバラのジャマトが現れたらしいわ……」
「……今あいつは?」
「…命に別状は無いけれど、しばらくは意識が戻らないかもって…先生が……」
「……そんな…」
急報が飛んできた『苺プロ』。仕事の合間を抜けて来たルビーとアクアが病院でミヤコから状況を聞く。
鈍色の空の雲行きも怪しくなってくる。
「…エースがこんなになる相手って、一体どんな奴なのよ……」
「バラのジャマト……なんだか嫌な予感がする…」
あとから合流して来たかなとMEMにも内容が伝わる。
病室のベッドに寝ている英寿は、目覚める兆しが無く、苦しそうな表情で冷や汗もかいている様子だった。
「…まさか裏でそんなゲームが開かれてたなんてね」
「エースが戦ってたジャマトって、そのゲームのラスボスだったんだ……」
「……」
ルビーとアクアからデザイアグランプリ・ノワールについて聞いたかなとMEMとミヤコ。ミヤコは2人の話を聞いて目頭を摘むように困惑していた。
「今まで黙っててごめんなさい……まさかこんな事になるとは思わなかった…」
「ルビーのせいじゃないでしょ。エースだって、それに同意した上でゲームに参加してるんだから…エースにだって責任はあるわよ」
「……でも…」
「……」
何かと責任を感じている様子のルビーだったが、彼女の肩にミヤコが手を置く。
「…みんな、今日はもう帰りましょう。エースもじきに目を覚ます筈よ。彼の目が覚めたら、またみんなでゆっくり考えましょう」
ミヤコの言葉にみんな納得し、一同は身支度をして病室を後にしようとした。
しかし、1人だけは違った。
「……っ…アクア?」
「……悪い有馬、先にみんなで戻っててくれ」
「…え?…あぁ、うん」
アクアは病室に残り、彼のベッドの横にある椅子に腰を掛けた。
「……」
不意に、近くの机の上にある彼のデザイアドライバーに目が留まる。
「……」
《そんなに気になるなら、彼のIDコアに触れてみるといい》
《IDコアには、使用者の記憶データが内蔵されている。触れることで、使用者の記憶を見る事が出来るかもしれない》
「……」
クラムさんが言っていた事が本当なら、エースが戦ったジャマトの事も知れるかもしれない…
でも何故だろう
ここでエースのIDコアに触れる事を躊躇っている俺が居る
「……お前は一体…何を見たんだ…」
「……」
「……俺の知らないところで、世界に一体どんな異変が起きたんだ…?」
「……」
「……」
《この世界は、一度創り変えられ…人々の記憶もリセットされてる》
《ルビーが…叶えた世界…?》
《もしかしたら、彼にしか知りえない記憶までも、見る事が出来るかもしれないね…》
「……っ」
遂に思い立ち、アクアは英寿のドライバー…ギーツのIDコアに手を伸ばした。
「……やっぱり…何も…」
触れて数秒、これといってなんの変化も訪れなかった。
「……ウッ…!」
しかし、その時は訪れた。
アクアの脳裏に浮かぶ情景。
それは宮崎でのMV撮影。ルビーは彼女自身のサポーターに命を奪われ、英寿はそこで新たな力を獲得した。
デザイアロワイヤルの開催。抜け落ちていた戦いの記憶がそこには詰まっており、姫川から託されたものを胸に、彼は新たに理想を願い再び現れた白いバラのジャマトと交戦した。
そして英寿との勝負が決まる直前、退場した筈のルビーが乱入しデザイアロワイヤルの勝者になった。世界は創り変えられ、この世界は今、ルビーの世界となった。
しかし、訪れた記憶はそれだけではない。
彼…アクアの中には無い、英寿のみが知り得る記憶がそこにはあった。
《15年前に起きた軽井沢の心中事件。その時、星野アイはまだ
《アイツらの父親は、別に居る。上原清十郎は妻が不倫相手と子供をこさえた事を知り激怒し、心中を企てた。アイツらの父親は……アイを死へ追いやった男は、今もまだ生きている》
《この事件は、何一つ終わってない》
「……ハァ…ッ…!」
我に帰った時、彼は自分の気持ちを抑える事に必死だった。
「……ハァ…ハァ…!」
思わず外へと飛び出したアクア。
外は土砂降りの雨が降っていたが、そんな事はお構い無しにアクアはとにかく走った。
「……」
違う…
そんな筈がない
もう全部終わったんだ…
静かな公園のベンチに座り込んだアクアは、自問自答の中で自分の考察を必死に肯定していた。
アイの仇は取れた筈なんだ
そうじゃなきゃ……俺は……
「良かったね。また始められるよ」
「……っ…!」
目の前には、幼い頃の俺が居た
「憎しみに駆られるだけで良い。アイを殺した男を今度こそ見つけ出して、この世で可能な限界まで苦しみを与えてやるんだよ」
「僕は苦しむべきなんだ。アイを見殺しにした僕が、のうのうと生きてて良い筈がない」
俺の背後には、前世の俺が居た
「これは罰だ。報いなんだよ」
違う…!だって俺は……やっと普通の幸せを…!
「ここしばらくの安息は、夢のようなものだ」
「忘れて良いよ。だって僕達は何一つ終わらせてないんだから」
……
「復讐を」
「報いを」
……ア…
「「アイの受けた苦しみを、罰を…」」
……クア…!
「「永遠に手遅れになった物を…」」
……アクア!
「うるさい!!」
「…っ!」
弾いた手には重みがあった。
柔らかいものが触れた手には、人肌を感じた。
そこには、手が弾かれた衝撃で手が赤く腫れ、雨空の下尻もちを着いてしまっていたかなが居た。
「……ハッ……ハッ…」
「…………そこまで…」
雨音が大きく、その小さな声はかき消されそうだったが、彼にははっきりと聞こえた。
「…私…嫌われるような事した……?」
「……っ…」
震えるような声で、彼女はそう言った。
「私…馬鹿だから全然気付けなくて……」
「……」
「…………ごめん…アクア……」
「……っ…」
前を見ると、そこには1本の傘が逆さまに転がっていた。
きっと、別れた後心配で見に来てくれた彼女が、雨空の下雨に濡れてベンチに座っていた彼を見て、見兼ねて傘を差し出していたのだろう。
「…………はぁ…」
様々な感情が入り乱れ、彼から出た大きなため息は、降り注ぐ雨によってかき消されて行った。
第六十五話「軋轢Ⅶ:記憶の残光」
次回
「時々出るんですよ。こういう目をした奴ってのは」
「見てみたいです!映像ないんですか?」
「人間も…ジャマトも…神でさえ到達した事の無い、至高の域…」
「……似てる」
「果報は寝て待て、だよ?」
「私の中に居る再現したアイの感情が、ざわめいていた」
第六十六話「軋轢Ⅷ:ざわめく感情、揺れる瞳」