私、高町なのは。●●歳   作:軟膏

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10話

「……レイジング……ハート」

 

『All right』

 

なのはが魔法に出会ってから一週間。

こうしてレイジングハートに毎朝の魔法を頼むようになってから、なのはは毎日気持ち良く起きることが出来ていた。

 

「やっぱり魔法って凄いねぇ……」

 

猫のように背伸びをして、肩を軽く叩いてマッサージしながら、なのははポツリと呟く。

服を着替えると、なのはは階段を下りて、洗面所で顔を洗う。

冷水がなのはの意識をクリアにしていく。

すると、後ろからこの一週間で聞き慣れてしまった声が、なのはの名前を呼ぶ。

 

「あ、なのはさん。おはようございます」

 

「あ~、ユーノ君か。おはよ~」

 

のんびりとした口調で、鏡越しに見える小さなフェレットに挨拶する。

寝ているときに乱れてしまった髪を、櫛でゆっくりと梳かしていく。

 

「そういえばユーノ君、ジュエルシードってあと何個封印しなきゃいけないんだっけ?」

 

「もう5個も封印できたので、あと16個です」

 

「16個かぁ……。先は長いなぁ……」

 

櫛を洗面台に戻して、ユーノを肩に乗せる。

 

「それじゃ、朝ご飯にしようか」

 

「そうですね」

 

 

「いただきます」

 

「いただきま~す」

 

そんな声が朝の食卓に流れる。

士郎はいつものように桃子の料理を褒め、桃子はそれに照れながらも笑顔で返す。

いくつになってもお熱いですな、とそれを茶化しながら眺めている美由希となのは、といういつもの構図が出来上がる。

最近はこれにユーノを加えて食事をするのが高町家の朝の日常だった。

 

朝食を食べ終えて、桃子は食器を洗いに行き、なのはは美由希や士郎と和やかな会話をしていた。

すると、ふとなのははあることに気付き、ユーノに尋ねる。

 

「ねえ、ユーノ君」

 

「なんですか、なのはさん?」

 

ユーノはクッキーを齧る手を止めて、なのはを見る。

 

「これまで言われた通りに使って来たけど、魔法って他にどんなことが出来るの?」

 

「どうかしたんですか? 急にそんなことを聞くなんて」

 

自分の説明に何か問題でもあっただろうか、とユーノが首を傾げる。

 

「この間の子犬に取り憑いたジュエルシードの時は、ユーノ君の言うとおりに色々使ったけどね」

 

「ええ、格好よかったですよ」

 

「ありがと。それでね、あれから毛玉しか出てないから、お父さん達に一瞬で倒されて私は封印しかしてないでしょ?」

 

「そうですね」

 

子犬に取り憑いた暴走体はなのはが一人で倒したものの、その後見つかった2つのジュエルシードは普通の思念体だった。

暴走しているとはいえ、たかが毛玉ごときには傷一つ付けることなど出来ず士郎達にあっさりと瞬殺され、なのはは封印作業を淡々とやっていただけだった。

 

「だから、私一人でもなんとか出来るようにしようかと思って。仕事をバカにしているつもりはないけど、私のお店は半ば道楽でやっているようなものだから。今のところは色々と融通が利かせられているけど、お父さんやお姉ちゃんはそうじゃないし」

 

「そうですか……」

 

「そもそも魔法ってどんなものかよく知らないから、色々聞いてみたいなって思って」

 

「そうだな。魔法なんて専門外だから僕も興味あるし、ユーノ君、教えてくれないか?」

 

「あ、私も!」

 

なのはの言葉に、士郎と美由希も賛成する。

 

「……わかりました。それでは、僕の知っている事なんて僅かですけど、お話しようかと思います」

 

「よろしくね。ユーノ先生」

 

ユーノは手に持っていたクッキーを横に置き、小さな身体を精一杯伸ばして、皆を見渡す。

 

「まず、魔法とは、身体にあるリンカーコアと呼ばれる器官を通して発動されるものです」

 

「リンカーコア?」

 

「はい。『連結する核』の意味で、魔導師が持つ魔力の源です。これがあるからこそ、僕たちは魔法を使うことが出来ます。大気中にある魔力素と呼ばれるものを取り込んで、魔力へと生成し、魔法として使うために外部に放出する器官を魔導師は持っています。

ちなみに魔力の色は、僕なら翠色、なのはさんなら桜色といった感じに、人によって固有の色を持っています。この魔力光が一致するのは稀で、魔法を使った犯罪の調査にも使われていますね」

 

「へぇぇ。色に違いがあるんだ。綺麗でいいよね」

 

美由希は感心したような声を出す。

 

「……でもなんか器官とか犯罪の調査とかいうから、あまりファンタジーって感じがしないなぁ」

 

「そういうな美由希。たとえどんな力であっても、使うのは人間だ。そういうこともあるさ」

 

「でもさ、魔法だよ魔法。もっと夢とかロマンとか欲しい~」

 

「僕たちの魔法は、あくまで科学の延長上にあるものだと、そう思って頂いて結構です」

 

「う~ん、わかった。話進まないし、続けて続けて」

 

美由希が頷くのを見ると、ユーノはまた話し始めた。

 

「そして肝心の魔法の種類についてですが、これは多種多様といってもいいです」

 

「主にどんなのがあるの?」

 

「そうですね……」

 

ユーノは考えを纏めるかのように手を顎に当てて、少しの間思案する。

 

「なのはさんが使った魔法から説明することにします。まずなのはさんの身を守った、プロテクションなどの『防御魔法』があります。これはバリア系、シールド系、フィールド系の三種類に大別されます」

 

「プロテクションはどれに入るの?」

 

「プロテクションはバリア系に分類されます。

バリア系は物理的な攻撃に強い防御力を誇りますが、魔法などには弱いです。

それに対して、シールド系と呼ばれるものは魔法的な攻撃に強く、物理攻撃に弱いです。

最後のフィールド系ですが、これはバリアジャケットのことです。

このフィールド系はどちらの攻撃にも耐性を持っていますが、それぞれに特化した魔法ほどではありません」

 

「なるほど。後でメモを作っておいた方がいいかな?」

 

「必要があればまたお話します」

 

「ん、ありがと」

 

そしてユーノはコホンと咳払いをして話を戻す。

 

「次に、『捕獲魔法』の説明をします。なのはさんが使ったチェーンバインドは、この中に入ります。相手に悟られないように、事前に設置しておくことも可能です」

 

「拘束具がその場で作れるのか、それは凄い」

 

ほう、と感心したように士郎が呟いた。

 

「次は『補助魔法』を。補助魔法には飛行魔法で空を飛んだり、念話で遠くの相手と話したりすることが出来ます。転送魔法で指定した座標まで人や物を転送したり、探索魔法で探し物をすることも可能です。ジュエルシードを封印する魔法もこれに入ります。封印魔法は他に比べるとマイナーなんですけどね」

 

「ああ、あれね」

 

なのはは飛行魔法で石段を飛び越えた時を思い出す。

アレを最初から知っていれば、あんなに苦労することなどなかったと、後でしみじみと思ったものだ。

 

「でもあれを人目のあるところで使うと、フライングヒューマノイドとかいうUMA扱いされちゃうからなぁ……。もし捕まったりしたら、ジュエルシード探しどころじゃなくなるし……」

 

なのはが悔しそうに言う。

叶う事なら即座に飛んで行きたいものだが、世間体がそれを許してはくれない。

しかし、まあ移動ならタクシーを使えばいいかと、気を取り直してユーノに続きを促した。

 

「そういえば念話ってのは初めて聞くね?」

 

「言ってませんでしたか?」

 

「聞いてないよ」

 

「そうですか、すいません。これは魔導師間のみでしか会話が出来ないので、今まで使う機会がありませんでしたからね」

 

「ふ~ん。……あ、もしかして最初に助けを呼んでたアレ?」

 

「そうです。普通は特定の相手に向けて使うんですが、あの時は助けを求めていたので全方位に送ったんです。

そしてなのはさんが使った魔法で、最後は子犬の怪我を治したやつですね。これは言わなくても分かると思いますが、『回復魔法』に入ります」

 

「まあそうだよね」

 

「それ以外に回復なんて無いだろうしね」

 

「これは僕もあまり知らないので、詳しい説明は出来ないのですが、

人の身体の新陳代謝を促進させたり、細胞に直接働きかけて傷を癒したり解毒をする魔法のことです。体調を整えるのもこれですね。もし極めることが出来たのなら、細胞をコントロールして老化を防止したり、若返ったりすることが出来ると言われています……まあ流石にこれは迷信ですけどね」

 

「そういうのは夢だよね」

 

「うん。いつまでも若くありたいっていうのは、女なら誰でも思うことだしね」

 

「きっと切実な思いがあったんだろうねぇ……」

 

なのはと美由希がうんうんと頷いていると、食器を洗っていた桃子が戻って来た。

 

「あら? 何の話?」

 

「……」

 

「……」

 

桃子の姿を見て、二人は黙り込む。

士郎がその二人を置いておいて、桃子に話しかける。

 

「桃子さん、今朝はまた一段と綺麗だね」

 

「まあ嬉しい。ありがとう士郎さん。やっぱり化粧水を新しいのに変えたのが良かったかしら?」

 

そういって桃子は手を頬に当て、はにかむ。

既に還暦を過ぎているはずなのに、ご近所で若々しいと評判のマダムだ。

ユーノは事情が理解できず、突然桃子の方を向いて固まってしまった二人を見て、どうかしたかと首を傾げた。

 

「……老化を防止……」

 

「……若返り……」

 

ブツブツと呟く二人にユーノが話しかける。

 

「あの、どうかしたんですか?」

 

「……ねぇ、ユーノ君」

 

美由希が静かな声でユーノに話しかける。

 

「は、はい。なんでしょうか?」

 

なのはがそれに追従する。

 

「さっき、念話は魔法使い同士でしか出来ないって言ってたよね?」

 

「え、ええ」

 

戸惑いながらもユーノは首を縦に振る。

 

「ちょっと、お母さんに念話で話し掛けてくれる?」

 

「え? でも桃子さんは魔法使いじゃないんじゃ……」

 

「いいから!」

 

「は、はい!」

 

美由希に急かされ、ユーノは念話を使う。

 

『も、もしもし、桃子さん?! 聞こえますか?!』

 

焦って話しかけたせいか、隣にいたなのはにまでユーノの大きな声が聞こえてきた。

なのはは反射的に思わず耳を塞いだ

すると、士郎と楽しげに話していた桃子が、クルッと顔をこちらに向ける。

 

「あら? ユーノ君どうしたの? そんなに大きな声を出さなくても、十分聞こえるわよ?」

 

なのはは美由希の方を見る。

しかし美由希はフルフルと首を横に振った。

 

「やっぱり……」

 

「お母さんって……」

 

二人は思いもかけない事実に驚愕し、ユーノは桃子が念話に反応したことに驚いていた。

 




驚愕の新事実発覚! とまでは行きませんが、今回は魔法の説明「防御・補助・回復」編です。
次回はちょっと脱線します。
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