私、高町なのは。●●歳   作:軟膏

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21話

「それじゃあ次は、なのはさんの言っていた新しい魔法に移りましょうか?」

 

「あれ? 他の魔法は確かめないの?」

 

ユーノが言ったことに、なのはが首を傾げる。

ユーノは頷いて続ける。

 

「それも必要ですけど、なのはさんの知っている魔法は、他にはバインドなどの拘束魔法や、飛行などの移動魔法です。バインドは拘束する対象がありませんし、飛行や高速移動なんかをこの屋内で行うのはちょっと……」

 

「そうだね。そっちの方が良さそうだ。それじゃそっちはまた夜に外でやろうか」

 

「はい」

 

 なのはは納得すると、新しい魔法を覚えることにする。

 

「でも魔法を覚えるって、いったいどうすればいいのかな?」

 

「基本的にレイジングハートには、ある程度の魔法はプログラムされているので、今までのように願えば発動します。それで何を使えばいいのか、なんですが……」

 

 ユーノは唸る。

 

「僕には攻撃系の魔法の適性が無くて、あまり使えないんです」

 

「そうなの?」

 

「はい。完全に、というわけではないんですが、なのはさんのお手本になるような長距離攻撃魔法などは無理です」

 

「それでもいいよ。何かイメージの参考になるかも知れないから」

 

「分かりました」

 

そういってユーノは、ポウッと手から光の球を出して浮かび上がらせる。

 

「これがディバインシューターです。いわゆる魔力弾を撃ち出す魔法で、これは誘導制御型ですから……こうやって、こんな感じに思い通りに動かせます」

 

ユーノはその翠色の光を動かす。

自分の身体の周りを飛びまわらせて、その後は不規則な動きをさせたり、素早く撃ち出したりしてから消した。

 

「ふぅ……適性のない僕には、これが限界です。上手な人は複数を同時に操れるんですが」

 

「わかったよ。無理させてごめんね」

 

「いいんです。なのはさんの力になれるなら」

 

なのはには、ユーノが少し青い顔をしているのが分かった。

適性が無いといっているのに、なのはに見せて、イメージを掴ませるためにわざわざやってくれた。

それが身体に掛ける負担がどれほどのものか、なのはには計り知れない。

そもそも、ユーノは魔力を回復させるために、フェレットの姿をしているというのに、その魔力を使わせることをしているのだ。

これに応えられなければ、なのはは自分を恥じるだろう。

 

「見ててね、ユーノ君」

 

なのははレイジングハートを構える。

 

「お願いね、レイジングハート」

 

『All right.Divine Shooter』

 

赤い宝玉が輝くと、泡立て器の先端に、桜色の光の球が浮かび上がる。

 

「やった! 出来たよ、ユーノ君」

 

「おめでとうございます!」

 

なのはが喜び、ユーノはそれを祝福した。

なのははそれを目の高さに上げ、先程ユーノがやったように色々と動かしてみる。

 

「私の思い通りに動かせるみたいだね」

 

「魔法の構成にも、不具合は無いみたいですね」

 

二人してその光球を眺めてみる。

 

「……で、さあ」

 

「……なんでしょうか?」

 

なのはがそれを指さしながら、ユーノに尋ねる。

 

「何で回転してんの? これ……」

 

「さあ……?」

 

二人の目の前には、ユーノが作り出した物とは違って、クルクルと回転する桜色の光球があった。

 

「本当に何なんだろう? これは」

 

「とりあえず、回転が止まるように願ってみたらどうでしょう?」

 

「そうだね。よし、止まれ~」

 

なのはがそう願ってみるが、回転は止まらない。

 

「おかしいな。どうして止まらないんだろう」

 

「逆に、もっと回れって願ってみるとか?」

 

「う~ん?」

 

 

――ギュィィィイインッ!

 

なのはがもっと回れと願ってみると、光球はドンドンと回転数を上げていった。

 

「こっちは効果あるんだ……」

 

「回ってるのがデフォルトみたいですねぇ……」

 

二人して頭を抱える。

 

「ねえ、レイジングハート。あなたが回してるってことは無いよね?」

 

『違います』

 

なけなしの考えで頭を搾るが、ハズレのようだ。

 

「やっぱりねぇ……。何なんだろうね、この回転は」

 

「レアスキルでしょうか?」

 

「また新しい単語出て来た……その『レアスキル』ってのは?」

 

なのはが新しく出て来た単語に反応する。

 

「魔法を使える人が、稀に持っている固有能力のことです。さっき聞いた話だと、なのはさんが会ったフェイトという子も、魔力を電気にしていたんですよね? それも魔力変換資質という、レアスキルの一つです」

 

「ふうん……じゃあ私は、魔法が回転するレアスキルだってこと?」

 

「おそらく。そんなレアスキル、聞いた事ないですけど……」

 

「なんか微妙な感じ……」

 

なのはの意思に反して、クルクルと回り続ける球を見ながら、ポツリと呟く。

願うのを止めたので、先程のような音を立てるほどの回転はしていない。

 

「じゃあ何? ドリルショットとか、トルネードバスターとか、あれは私が撃ったからであって、他の人には使えないと?」

 

「そうでしょうね」

 

「ということは、このレアスキルのせいで、私はボコボコにやられたわけ?」

 

自分が反撃出来なかったのは、自分で制御出来ないレアスキルが邪魔をしていたから。

こんな殺意の高い魔法を人に向かって撃てない、と思っていたのに、その原因が自分の体質にあったのだと知って、なのはは始めて魔法の力を恨んだ。

これがなければフェイトと話す時間がもっと取れたかもしれない。

これがなければフェイトに対等に見られて、フェイトがジュエルシードを集めている理由を聞くことが出来たかもしれないのだ。

そんな思いで恨めし気に光球を見ていると、何か黒い影が、放物線を描きながらなのはの横を通り過ぎる。

 

ヒュッ、バシッ! ガッ!

 

「痛いっ!?」

 

その黒い影はなのはの目の前にあった光球に当たると、弾かれてなのはの顔面に飛んで来た。

急に起きたことになのはが反応出来る訳も無く、なのはの頬にそれはブチ当たった。

 

「な、何?」

 

頬に当たったそれが音を立てて道場の床に転がる。

拾ってみると、親指の先ほどの小さな石だった。

 

「ああ、やっぱり弾かれるんだね」

 

後ろから、石を投げた張本人であろう、美由希ののんびりした声が聞こえる。

 

「お姉ちゃん!」

 

なのはが石の当たった、ヒリヒリと痛む頬を押さえながら、美由希に詰め寄る。

 

「なのは。やっぱりそれ、本当に回転してるみたいだね」

 

「そうじゃなくて! どうしていきなりこんなことを?」

 

なのはの問いに、美由希はあっけらかんとして答える。

 

「いやいや、なのははもし当たっても大怪我しないような魔法を覚えたかったんでしょ? だから当たっても大丈夫かどうか、石を投げて確認しただけなんだけど」

 

「私のほっぺたが大丈夫じゃないよ……」

 

なのはは落ち込みながら言う。

確かに、なのははフェイトに大怪我をさせないために、新しい魔法を覚えようと思った。

だけれど相談もなしに、いきなり石を投げることは無いと思う。

美由希はそんななのはの様子を見て、頬をポリポリと掻きながら謝罪した。

 

「それは悪かったよ。ごめんねなのは。だけどあんなに綺麗にヒットするなんて、思ってもみなかったし」

 

「それは……」

 

なのはも先程のことを思い出す。

石が飛んで来て、それが回転する球に当たって、それが弾き返されて、偶然近くにいた人の頬に当たる。

いったいどんなギャグだ。

そんなギャグが起こるなんて、誰も考えやしない。

 

「でもさ、その石削れたりとかしてないみたいだから、なのはの魔法は成功ってことでいいんじゃないの?」

 

「え?」

 

美由希に言われて、なのはは手の中にある小石を見る。

そこには、綺麗な丸い石があった。

どこにも表面が削れた跡などは無い。

 

「そう……だね。成功したって言っていいのかな?」

 

「いいんじゃない?」

 

単純な魔力弾の放出なら、多少回転してようが物理ダメージを与えすぎることは無い。

最初に考えていたものとは少し違ってしまったが、これでなのはは非殺傷の魔法を手に入れたのだった。

 

「それじゃ、実践と行こうか?」

 

「え?」

 

「誘導弾なんでしょ? ならちゃんと思った通りに飛ばせるように使いこなさないとね。私が避けるから、なのははそれを私に当てる練習」

 

「でも……」

 

「大丈夫大丈夫。まだまだ私、現役だから!」

 

 

 

 ――三十分後――

 

 

 

「ちょ、当たらないんだけど……」

 

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