私、高町なのは。●●歳   作:軟膏

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3話

なのはは走っていた。

 

 

 

「ハアッ……ハアッ……」

 

 

 

誰かがなのはに助けを求めているから。

 

 

 

「ゴホッゴホッ……」

 

 

 

なのはは走っていた。

 

 

 

「ヒュー……ヒュー……」

 

 

 

自分がこの声の主を助けたいと思ったから。

 

 

 

「か、身体……ゲホッ……き、鍛えとけば……ヒュー……よかっ、た」

 

 

 

そして立ち止まった。

 

 

 

 

「もう無理」

 

 

 

 

 

 

 

何かに呼ばれて家を飛び出したものの、ペース配分も考えずに全力疾走したせいでもう身体はボロボロだ。

思えばもう10年以上もまともに走って無い。

高校の時のマラソンを乗り切った後は、もう意地でも走るものかとそんな事とは無縁に生きてきたのだ。

そのツケがこんなところで回ってくるとは思っていなかった。

 

「あ~あ、やっぱり」

 

「え?」

 

振り向くと、そこには美由希が立っていた。

 

「だらしないなあ、なのはは。まだ10キロも走ってないっていうのに」

 

どうやら美由希は、なのはが必死になって走って来たこの道のりを、汗一つかかず踏破したらしい。

 

「お、お姉ちゃ……、どうして……ここに……」

 

「あんなこと言って飛び出して行ったんだから、気になるに決まってるでしょ。だから、私も行くよ」

 

「え……でも……」

 

言葉を続けようとした矢先、なのは達の耳に聞き慣れない轟音が響いた。

 

「今の……」

 

「この先からだ」

 

美由希が眼鏡を外し、常ではあまり聞かない低い声を出して警戒する。

 

「行かなきゃ……」

 

何かに急き立てられるようになのはは前に進む。

その肩に美由希が手を添え制止する。

 

「なのは、行っちゃダメ!」

 

「でも……!」

 

美由希に反論しようとするなのは。

だがその時、なのはの視界の端を小さな影が横切る。

 

「あれは……」

 

「あれがなのはの言ってたフェレット?」

 

「うん。そうだけど……」

 

そのフェレットは、なのは達のことになど気付いていないらしく、こちらに向かって走って来る。

まるで、何かから逃げるように。

近くまでやって来たフェレットを抱え上げると、何かに怯えるように震えている。

 

「逃げ出して来たのかな?」

 

「でも、檻の中に居たはずなのに、どうやって……」

 

最後まで言葉を発するより前に、なのはが聞いたあの声が腕の中から聞こえてくる。

 

「来て、くれたんですね……」

 

「え?」

 

「しゃ、喋った!?」

 

驚いて腕からフェレットが落ちそうになるのを慌てて抑える。

 

「なのは。とりあえず、この場から離れよう。ここは危ない」

 

「う、うん」

 

美由希に促され、そこから走りだす。

 

 

 

 

「で、何が起きてるか分からないんだけど、君は何か知ってるの?」

 

走りながら、美由希がフェレットに質問する。

フェレットはなのはを指差しながら答える。

 

「この人には資質が有ります。お願いです。力を貸して下さい」

 

「ハァッ……ハァッ……し、資質……?」

 

息も絶え絶えになのはが問い返す。

 

「僕は、ある探し物の為に、ここではない世界から来ました」

 

「別の世界? パラレルワールドとかそんな感じ?」

 

「今はそう考えて頂いて構いません。でもこの探し物は、僕一人の力では、想いを遂げられないかもしれないんです」

 

だから、とフェレットは続ける。

 

「迷惑だと分かってはいるんですが、資質を持った人に協力して欲しくて……」

 

「なるほど」

 

そこでフェレットはなのはの腕の中から飛び出し、なのはと目を合わせる。

 

「必ずお礼はします。お願いします。僕の持っている力を、魔法の力を貴女に使って欲しいんです」

 

「ま、まほう!?」

 

なのはが胡散臭そうに目を細める。

そこで上空から獣のような雄叫びが響き、なのは達目掛けて黒い光が飛び込んできた。

 

「なのは! 危ないっ!」

 

美由希に抱えられ、その場から離脱する。

黒い光はコンクリートを穿ち、地面に大穴を空けていた。

衝撃で舞い上がった砂埃に、思わずなのはは目を閉じる。

風が収まり、顔を上げたなのは達の目に映ったのは、黒い毛玉。

 

 ……

 

 ……

 

 ……

 

 

「私、飲みすぎたのかな? 今日は度数の低いお酒で済ませてたはずなんだけど」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないよなのは! アレ私にも見えるよ!」

 

「えええええっ?」

 

どうやらなのはが酔って見せた幻覚などではないらしい。

しかし、毛玉としか言いようのない丸い体躯をしている。

中心にはギョロギョロとした目のようなものがあり、周りにはなのはの胴体よりも太い触手のようなものが蠢いている。

 

「何アレ? あんなのが居るなんて聞いてないよ?!」

 

「それよりもアレ、こっちに来るよ」

 

美由希が腕を振ると袖から飛針が2本飛び出し、それを投げつける。

投げられた飛針はブレることなく直線的に進み、毛玉の手前の地面に突き刺さる。

しかし毛玉は、威嚇目的で放たれたそれには目もくれず、身体を引きずりながら、尚もこちらへやってくる。

 

「なのは、アレは私が抑えるから、なのははそのフェレットをお願い」

 

「えっ? 危ないよ!」

 

「大丈夫。動きは遅いし、飛針を警戒しようともしない。あまり頭も良くは無さそうだ。あんなのにやられるほど柔な鍛え方してないよ、私は」

 

そういってもう一度腕を振り、今度は4本の飛針を取り出す。

その姿を見て、なのはも渋々頷く。

 

「わかった。けど無理しないでね」

 

「わかってるよ」

 

美由希は前へ、なのはは後ろへそれぞれ走りだす。

しかしなのはを制止する声が聞こえる。

 

「無茶です! あの人は魔法が使えないんでしょう!? 魔法の使えない人にはあの思念体は倒せません!!」

 

「大丈夫、お姉ちゃんは強いから」

 

なのはは安心させるようにフェレットに言う。

ある程度離れたところで、なのはは立ち止まる。

 

「それよりも魔法っていったよね? その資質が私にあるって」

 

「あ、はい」

 

「その魔法があれば、アレをなんとか出来るの?」

 

フェレットはなのはを見つめ、静かに返す。

 

「貴女が力を貸してくれるなら、必ず……」

 

なのははフェレットのその言葉に笑みを浮かべる。

 

「わかった。じゃあ私は何をすればいいの?」

 

「これを」

 

フェレットは首に掛けられていた赤いビー玉を、なのはに見せるように掲げる。

 

「温かい……これは?」

 

手に取ってみると、まるで生きているかのような温かみが感じられた。

 

「インテリジェントデバイス、魔法を使うための杖です」

 

「これが……?」

 

杖と言われても、なのはにはただの赤いビー玉にしか見えない。

 

「今は待機モードの状態なんです。ですから、貴女の力で目覚めさせて下さい」

 

「え、どうやって?」

 

「目を閉じて、心を澄ませて、僕の後に続いて唱えてください」

 

「あ、うん」

 

フェレットに促され、なのはは目を閉じる。

 

「我、使命を受けし者なり」

 

「(え? なにそれダサい)……わ、我、使命を受けし者なり」

 

どもりながらも、なのはは答える。

 

「契約の下、その力を解き放て」

 

「契約の下、その力を解き放て」

 

ドクン、と手に持つ赤いビー玉が、鼓動を始める錯覚をなのはは覚える。

 

「風は空に、星は天に」

 

「風は空に、星は天に」

 

唱えていると、手の中の宝玉はドンドンと熱を帯びていく。

火傷しそうな熱さを感じながら、それでもなのはは手放さない。

それと同時に、手の中の熱と同種の熱が、身体の奥底から湧き上がるのを感じたから。

 

「そして、不屈の心は」

 

「そして、不屈の心は」

 

なのははもうフェレットの言葉を聞いていない。

聞かずとも、自然と、何を言えばいいのかが分かるから。

 

 

 

 

 

 

 ――この胸に――

 

 

 

 

 

 

「この手に魔法を! レイジングハート! セットアップ!!」

 

唱え終わると同時に、桃色の光が天へ向かって迸った。

 




なのはの容姿はsts時と変わらないとお考え下さい。
高町家はそれがデフォです。

レイジングハートの形状をちょっと変えようかなって思ってます。
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