私、高町なのは。●●歳   作:軟膏

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4話

世界はいつだって、こんなはずじゃない事ばっかりだ。

ずっと昔から、いつだって誰だってそうなんだ。

 

 

 

そう

 

 

 

こんなはずじゃなかったのに……。

 

 

 

 

 

 

 

つまり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、なのは。これすっごい弱かったよ。小太刀使う暇も無かった」

 

私があんな恥ずかしい思いをしたにも関わらず、見せ場が全然無い事も、こんなはずじゃなかった事の一つなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「レイジングハート! セットアップ!!」

 

歌うように、高らかに呪文を唱え終えた瞬間、私の身体から桃色の光が溢れだし、夜空をまるで真昼のように染め上げていく。

その様はまるで光の柱のように見えた。

 

「凄い……。なんて魔力だ……」

 

フェレットは予想以上のことだったからか、茫然としている。

なのはは自分の様子に焦る。

 

「え、ちょ、コレやばいんじゃないの!? なんかドンドン溢れ出てるんだけど!?」

 

その言葉にフェレットはハッとして、なのはに声を掛ける。

 

「落ち着いて下さい! それは貴女の魔力です。落ち着いて、イメージして下さい」

 

「イメージって何を!?」

 

自分の身体に起こる異変のせいで、なのははもういっぱいいっぱいである。

 

「貴女の魔法を制御する、魔法の杖の姿を。そして、貴女の身を守る、強い衣服の姿を!」

 

「ええ!? それ自分で考えるの!? なんかこう、呪文を唱えたら後は全部やってくれるんじゃないの!?」

 

「なんでもいいんです! 後で変更出来ますから! 貴女が馴染みのある格好で構いませんから!」

 

「そんな、急に言われても……。えっと、え~っと……」

 

フェレットに言われ、凝り固まった32歳の頭を回転させる。

馴染みのある格好と言われ、一つの姿が脳裏をよぎった。

 

「と、とりあえずこれで!」

 

なのはがそう言った瞬間、手の中の宝玉が輝く。

なのはの身体が光に包まれ、次の瞬間には姿が変わっていた。

 

小豆色のジャージの上下は、清潔感漂わせる白いブラウスと、赤いロングスカートに。

無造作に後ろに流していた長い髪は、白いリボンでポニーテールに纏められている。

そして身体の全面を覆う、「翠屋」とポップな字体でレタリングされた黒いエプロンをしていた。

 

 ぶっちゃけて言うと、ただの翠屋の制服である。

 

 

そして、手の中にあった赤いビー玉もまた、変化していた。

どこからか金属のような物質を集め、その周りを覆っていく。

そしてなのはの手に収まったときには、既にビー玉とは言えない形状をしていた。

金、白、桃色のトリコロールカラーの金属で構成された《魔法の杖》は、片手でも扱えるようにグリップが付いていた。

《杖》の先には白金色の細長い金属が、流線型で放射状に広がり、先端で鋭く尖った一点に集約されたものが4つ付いている。

人差し指に備えられたトリガーを引き絞ると、ドリルの如き形状をした『それ』が素早く回転する。

まるで触れるもの全てを引き裂き、掻き混ぜ、ぐちゃぐちゃにしてしまうかのような、そんなフォルムをしていた。

 

 

 

「よし、行こう」

 

「え? ちょ、本当にそれでいいんですか!?」

 

「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ。急がないと……」

 

フェレットが焦った声を出す。

なのははフェレットを抱えて肩に乗せ、急ぐように走りだす。

フェレットは急な事に驚き、なのはの肩から転げ落ちそうになるのを、しがみ付いて必死に耐える。

 

「待っててね、お姉ちゃん。今助けに行くから」

 

今もまだ、あの凶悪な敵にたった一人で立ち向かっている姉の事を想う。

手に持つ《魔法の杖》を、これから共に闘うことになる相棒を握りしめながら。

 

 

そしてなのはが必死でさっきの場所まで戻り、そして見たものとは……。

 

 

 

 

 

 

「あ、なのは。これすっごい弱かったよ。小太刀使う暇も無かった」

 

 

 

 

 

 

小太刀を手で弄びながら、不機嫌そうにしている美由希の元気な姿だった。

 

「え? お姉ちゃん?」

 

「何? なのは」

 

「あの、さっきの怪物……は?」

 

「ああ、これ」

 

そういって美由希は己の足元を指さす。

そこには黒い粘液のようなものがビクビクと蠢いていた。

黒い粘液の間に青く輝く宝石のようなものが僅かに見え隠れしている。

 

「倒したと思わせて油断させるつもりなのかと思ったけど、こんなに無防備を装ってあげたのに全然攻撃してこないから、これで終わりなんじゃない?」

 

「ど、どうやっ、て?」

 

なのはが信じられないものを見る目で美由希を見る。

 

「どうやってって、ただ鋼糸で動けなくしてから、飛針で中心を狙い撃ちにしただけだよ?」

 

「……」

 

「いやぁ、まさかこんなに弱いとは思わなかった。初めて見たやつだから警戒したんだけどね。技の一発も使う前に終わっちゃったから、ちょっと消化不良気味だよ」

 

「……」

 

「そういえば、なのは。いつの間に翠屋の制服に着替えたの? あとそれ、手に持ってるやつって泡立て器だよね? なんでそんな物持ってんの?」

 

「……」

 

美由希の言葉には答えず、なのははその場に膝をつく。

必死で走って来たなのはは、体力的に既に限界に達していたのだ。

へなへなと崩れ落ちたなのはは、手に持つ電動泡立て器を投げ捨てる。

肩に乗るフェレットの声も届かない。

喉の奥から絞り出すように、なのはは小さく声を出す。

 

 

 

 

「空気読んでよ……」

 




まあこんな感じになりました。短くてすいません。
40まで鍛え続けた美由希が、たかが毛玉相手にピンチになることなんてそうそう無いと思います。

レイハさんの形状は電動泡立て器です。
ちなみに、もう一つの候補は酒瓶でした。

追記
今更思うけど頭おかしいなこれ。
15年前の自分はなんでこれで行こうと思ったんだか。
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