私、高町なのは。●●歳   作:軟膏

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6話

 

 

  臨時休業のお知らせ

 

  誠に勝手ではありますが、

  喫茶「翠屋」2号店の店長が急病のため、

  本日は臨時休業とさせて頂きます。

 

  尚、病気の快癒の暁には、お詫びとして翠屋商品全品に、

  2割から3割の割引セールを実施致したいと考えております。

  このセールは、本店である1号店では行われませんので、御注意下さい。

 

 

                           喫茶「翠屋」  』

 

                                           

翌日

 

「きゃー可愛いっ!」

 

美由希がユーノを両親に見せると、詳しいことを説明する間もなく桃子にユーノが攫われた。

 

「結構賢そうだな」

 

士郎がそれを横から眺めて感想を呟く。

桃子はまだ可愛い可愛いといいながらユーノに頬擦りしている。

 

「でも、このフェレットは怪我して入院していたはずじゃなかったか?」

 

「あら? そういえばそうだったわね」

 

そこで桃子もそのことに気が付き、ユーノの身体を調べる。

しかし、その身体には傷の痕などどこにもない。

 

「まあまあ、それを今から説明するから。ね? ユーノ君」

 

美由希のその言葉にユーノは、桃子の腕の中から飛び出して、床に着地する。

そして首を傾げている桃子と士郎の方を向き、言葉を発した。

 

「始めまして。僕の名前はユーノ・スクライアと言います」

 

「え?」

 

「しゃ、喋った!?」

 

いきなりフェレットが人間の言葉を喋ったので、二人とも呆然とする。

その表情に美由希がふふーん、といたずらが成功したと満足気な顔をする。

 

「驚かれるのも無理はありません。ですが、僕の話を聞いて頂きたいのです」

 

「あ、ああ」

 

「わかったわ」

 

二人とも話を聞いてくれると判断したユーノは、何故自分がここにいるのかを話し始めた。

 

「まず、僕はこことは違う世界、別の世界からやってきました」

 

「別の世界……?」

 

「そんなものが、本当にあるというのかい?」

 

「はい」

 

疑惑の視線を向ける二人に、ユーノは頷く。

美由希がユーノに尋ねる。

 

「そういえば昨日もそんなこと言ってたね。詳しく聞かせてくれる?」

 

「わかりました。ではまず、次元世界という言葉からご説明します」

 

「次元世界? それは平行世界とは違うの?」

 

「次元世界とは、次元空間にある様々な『世界』のことを指します。それぞれが独立した歴史を持っていて、並行して存在します。次元空間を海、次元世界を島と考えて頂ければ結構です。昨夜美由希さんが言っていた、パラレルワールドという表現でも間違いはありません。ですが、世界がほぼ同じで、そこの住人もほぼ同じという鏡写しのような世界は、未だ見つかっていません。そのため、厳密には違う、と僕達は定義しています」

 

「なるほどねぇ……」

 

美由希は納得したようにうんうんと頷く。

 

「続けます。そしてその次元世界には、余りにも文明が発達しすぎて戦争などが起こったときに、その進化し過ぎた技術が周辺の世界までも巻き込んで滅ぼしてしまうことが時折あります。そんな高高度文明、超古代文明が残した遺産。それを『ロストロギア』といいます。このロストロギアは、遺産と呼ばれるだけあって、現在の科学力などでは到底理解の出来ないほどの超技術で作られています。物によっては、それ単体で世界を滅ぼすことが出来るような、そんな代物です」

 

「それで? 次元世界というものはとりあえずは分かった。だがそのロストロギア、とやらがどう関わってくるんだい?」

 

士郎がユーノに続きを促す。

 

「それが僕がこの世界に来た理由です。現在、この世界にはそのロストロギアがこの街の各地に散らばっています」

 

「何だって!?」

 

士郎が声を出して驚く。

桃子も美由希も、声には出していないが、困惑と驚愕がその顔に浮かんでいる。

 

「そのロストロギアの名は『ジュエルシード』……願いを叶える、魔法の種です」

 

「ジュエルシード……」

 

「これが、そのジュエルシードです」

 

そう言ってユーノは、首に掛けられたレイジングハートから、ジュエルシードを1つ取り出す。

 

「このジュエルシードは、手にした物の願いを叶える魔法の石です。

ですが、力の発現が不安定で、単体で暴走することもあれば、

人や動物が間違って使用してしまって、それを取り込んで暴走することもあります。

これは現在封印処理をしているため、今のところ危険性はありませんが」

 

「なんだ。じゃあもう大丈夫じゃない」

 

桃子はホッと息を吐く。

士郎は目を細めながら、ユーノに尋ねる。

 

「待ってくれ。今各地に、と言ったな? なら他にもあるというのか?」

 

その言葉にユーノは首肯する。

 

「その通りです。このジュエルシードは、1つではありません」

 

「……幾つだ?」

 

士郎は険しい目つきでユーノを見据える。

 

「全部で21個あります。今現在封印処理を施されているのは、今僕が持っている2つだけです。

残りは19個。1つでも発動し、暴走を始めてしまえば、この世界は滅びます」

 

「何て……ことだ……」

 

暗い声が士郎の口から洩れる。

ユーノは決意の籠った声で、皆に向かう。

 

「身勝手なことだとは分かっています! ですがどうか、どうかお願いします!」

 

ユーノは頭を下げる。

 

「この星は僕と相性が悪いらしくて、今のままだと封印もままならない。

お礼はしますから、魔力が戻るまでの間……一週間、いえ五日だけでもどうか、力を貸して下さい!」

 

「わかった」

 

士郎がその言葉に即答する。

 

「桃子さんも、それでいいかな?」

 

「ええ、もちろん。私達の街が危ないのなら、少しでも力になりたいと思うわ」

 

「うん、私も賛成だよ」

 

「……ありがとうございます」

 

快く受け入れてくれた三人に、ユーノが深々と頭を下げて礼を言った。

 

「君も、お礼なんてことは考えなくていい」

 

「そうだよ。困った時はお互い様なんだから」

 

「“困っている人がいて、助けてあげられる力が自分にあるのなら、その時は迷っちゃいけない”だったかしら?」

 

「ああ、さすがは桃子さんだ。僕の言ったことを覚えていてくれるなんて……」

 

「あらあら、当然よ」

 

そして士郎と桃子は笑い合う。

年老いてなお熱々の中の良さに、先程までの重苦しい空気が無かったかのように霧散した。

その言葉に、ユーノは先程とは別の意味で頭を垂れる。

 

「もう一つ聞いていいかしら?

 

そこで桃子が気になる事を質問する。

 

「そういえば、どうしてそんなものがこの世界にあるの? 聞いた話だと、この世界にはそんなものがあるようには思えないのだけれど……」

 

「……僕の、せいなんです」

 

「どういうことだい?」

 

ユーノが沈痛な面持ちで話し始める。

 

「僕は故郷で、遺跡発掘を仕事にしているんです。そしてある日、古い遺跡の中でアレを発掘して……。調査団に依頼して保管してもらっていました。でも運んでいた時空間船が、事故か、何らかの災害に会ってしまって、その時に近くのこの世界に、降り注いでしまったんです」

 

「……それだと、話を聞く限り、君の所為ではないと感じるけど?」

 

「でも、アレを見つけてしまったのは僕だから……。全部見つけて、ちゃんと有るべき場所に返さないといけないから……」

 

呟くようにユーノは答える。

敬語を使うのも忘れているようだ。

 

「君は悪くないよ」

 

そういって、フェレットには大きすぎる手で、士郎がユーノの頭を撫でる。

 

「え……?」

 

「君はこの世界を見捨てる事も出来た。けれどそれを良しとせず、何とかしようと行動した。一人でそんな事をしたのは確かに無茶だとは思うけど、その思いを踏みにじるようなことはしないさ。それに君が見つけなくても、いずれ別の人がジュエルシードを見つけていただろう。それを考えると、君に見つけて貰ったのはむしろ、不幸中の幸いと言ってもいい」

 

士郎は立ち上がると、軽く背伸びをする。

 

「それじゃ、久しぶりに動くとしようか」

 

「ねぇお父さん、身体鈍ってるんじゃないの?」

 

「おいおい、確かに昔ほどの力は無いけど、それでも僕は御神の剣士だよ? 守るものがある時、御神流は絶対負けないさ」

 

「うん、そうだったね」

 

「でもそうなるとお店の方は閉めなきゃいけなくなるわね」

 

桃子が翠屋を開くことが出来ないため、悲しい顔をする。

それに安心させるようにユーノが補足する。

 

「あ、ジュエルシードは今眠った状態です。そのため、今のままでは見つけることが出来ません。もし発動しても暴走を始めるまでには時間があります。その間に封印を施せば大丈夫です。僕は発動を感知出来るので、それから動いて頂いて構いません」

 

「そうなの?」

 

「それなら、いつも通りの生活を続けていいということかな」

 

「はい」

 

「じゃあ、私達は仕事に行きましょうか」

 

「そうだな」

 

「私も仕事があるし」

 

桃子の言葉に士郎と美由希の二人が返す。

美由希はユーノに話しかける。

 

「ユーノ君はなのはと一緒にいてくれるかな? 一人くらいは連絡する人が必要だからね」

 

「はい、分かりました」

 

そこで士郎が気付く。

 

「そういえば、なのははどうしたんだ?」

 

「まだ寝てるみたいね」

 

「お店の方には張り紙しておいたから大丈夫でしょ」

 

(……本当に大丈夫なのかな?)

 

一人心配になるユーノであった。

 




今回は説明の回ですね。
ユーノはアニメではなのは一人に全て任せてしまうことになるので遠慮していましたが、この話では頼った相手が大人なので最初から色々と話しています。
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