私、高町なのは。●●歳   作:軟膏

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7話

「すいませーん、ユーノですけど……なのはさん、起きてらっしゃいますか?」

 

ユーノがコンコンと扉を叩くと、中からズルズルと何かが這うような音がした。

数瞬の後、ガチャリと扉が開き、中からなのはが顔を出した。

 

「……あれ? 誰もいない……」

 

「こっちです、なのはさん。下です」

 

 ユーノの呼びかけに、なのはは下を向く。

 

「……あ~。そうだったそうだった。ユーノ君フェレットだったね。忘れてたよ」

 

「いえ、僕は人間で、今は魔法でこの姿になっているだけなので、別にフェレットの姿が本当というわけではないです」

 

「どうでもいいや……」

 

ユーノの発言をさらっと切り捨てるなのは。

 

「それより、なに? 今はちょっと、気分が悪いんだけど……?」

 

凄く不機嫌な顔をして、ドスの聞いた低い声でなのはは告げる。

十分寝たはずなのに目の下には隈が浮かび、寝起きのせいで髪はボサボサになっていて、

左胸に高町と名前が書かれた小豆色のジャージは、刺繍のところが僅かに綻んでいる。

そのなのはが青い顔で、まるで虫けらを見るような目でユーノを見つめている。

その目に射抜かれたユーノはしどろもどろになり、言葉が上手く出てこない。

 

「あ、いえ、その……」

 

「用がないなら後にして……」

 

「いえ! あ、あの……調子が悪いのなら、魔法でなんとか出来ると思いまして……」

 

なのはが扉を閉めようとするが、ユーノがそれを制止する。

閉まろうとしていた扉がピタッと止まり、中からなのはの声が聞こえてくる。

 

「……それ、本当?」

 

「はい。体調を整える魔法がありますから、それを使えば……」

 

「……入って……」

 

キィィィッ、と扉がゆっくりと開いていく。

そしてユーノは、魔王の一室へと足を踏み入れたのだった。

 

 

「あ~すっきりした。魔法ってこんなことも出来るんだねぇ」

 

ユーノの魔法によって体調が万全になると、なのはは起き上がってユーノを肩に乗せ、洗面所へと向かった。

顔を洗ってさっぱりすると、既にそこに先程の悪魔じみた表情をしていた女性の姿は無い。

ちなみになのはの治療でユーノの魔力の回復が少し遅れたのは余談である。

櫛で髪を梳かしながら、なのははユーノに話しかけた。

 

「にしてもユーノ君、二日酔いに効く魔法なんて良いモノ知ってるね。ユーノ君もよく飲むの?」

 

「い、いえ。僕はお酒はちょっと……あとこの魔法は体内の毒を解毒したりするものの応用です」

 

「ふ~ん」

 

「僕は遺跡発掘を仕事にしているので、侵入者を撃退するための罠などに遭遇することが多いんです。ですから僕達一族は罠を調べるための探査魔法や、身を守る為のシールド魔法、危機に陥った時の為の回復魔法なんかが得意です。特に僕達スクライア一族は転移魔法などで各地を旅しているので、転移時に気分を悪くすることもよくあるので……」

 

「なるほどねぇ」

 

なのはは感心したような声を出す。

だがそういうことはどうでもいいようだ。

 

「それでさ、ユーノ君。あの魔法、私にも使える?」

 

「え? ああ、構成自体は初歩的な魔法なので、なのはさんなら直ぐに使えると思いますよ」

 

「やった」

 

なのははその言葉に満面の笑みを浮かべる。

その綺麗な笑みを見たユーノは、毛並みを僅かに赤くして身を震わせた。 

 

 

なのはとユーノは部屋に戻った後、なのはが寝ていて聞いていなかった説明をもう一度ユーノがする。

時折頷いて相槌を打ちながら、最後まで話を聞くと、なのはもまた、ユーノを撫でた。

 

「みんなも言ってたけど、やっぱり、ユーノ君のせいじゃないと思うよ。私も手伝うから、一緒にがんばろうね」

 

そう言われ、自然とユーノは、再び頭を下げることになる。

そこでなのはが、頬を掻きながら、ユーノに質問する。

 

「そういえばさ、あの呪文何とかならない? ちょっと恥ずかしいんだけど……」

 

控え目に二度とやりたくないとなのはは伝える。

 

「それは大丈夫です。これを」

 

そういってユーノがレイジングハートを掲げる。

なのはがそれを受け取り、見つめる。

 

「セットアップと言ってください」

 

「えっと、セットアップ」

 

『Stand by ready. Set up.』

 

するとレイジングハートから光が溢れ、次の瞬間には、なのはは翠屋の制服を着て 手にはメカニカルな泡立て器を持っていた。

 

「僕達の魔法はプログラムみたいなものなので、ショートカットを組めば次からは簡略化して使うことが出来ます」

 

「え? じゃあ昨日はどうしてあんな事言わされたの?」

 

「あれは悪用されないための本人認証用の起動パスワードなので、最初は必ず唱える必要があります。あの時は僕がそれを教えたので、初めて使うなのはさんでも使用出来ました」

 

「じゃあ、もう唱えなくていいんだね?」

 

「はい」

 

それを聞いてなのはは、これで心おきなくユーノの手助けが出来ると喜んだ。

 

「それで魔法のことですが、レイジングハートはインテリジェントデバイスという人工AIを積んだデバイスです。その中でも祈祷型という分類になりますね」

 

「祈祷型?」

 

「ある程度の魔法を事前に組み込んでおくことで、術者の願いを感知して魔法の制御や発動をデバイスが行ってくれます。細かい魔法理論を学んで使った方が精度は上がるんですが、慣れていないならデバイスに任せた方が効率的です」

 

「車のマニュアルとオートマみたいなものなんだ。それは便利だね」

 

そしてなのはは目を閉じ、少し考え事をすると、バリアジャケットは解除されて泡立て器も元のサイズのビー玉へと戻っていた。

 

「こんな感じ?」

 

「はい。あとデバイスにも意思があるので、危険と判断したらデバイスが魔法の発動を抑えることもあります」

 

「ふ~ん」

 

なのはは手に持つ赤いビー玉に目をやる。

 

「ただの道具ではなく、信頼関係の結ばれたパートナーと考えて頂けると嬉しいです」

 

「わかった」

 

なのははレイジングハートを顔と同じ高さまで掲げる。

 

「ちゃんと挨拶出来なかったけど、これからはよろしくね、レイジングハート」

 

『こちらこそ、よろしくお願いします。マスター』

 

「マスター? 私が?」

 

『今のマスターは貴女です』

 

「僕にはレイジングハートは使いこなすことが出来ませんでした」

 

少し落ち込んだ顔でユーノは呟く。

 

「ですから、レイジングハートをなのはさんに使ってもらいたいんです」

 

『私もそれを望んでいます』

 

「ん……。わかった。それじゃあ改めて。よろしくレイジングハート」

 

そしてなのははユーノから首飾りをもらい、レイジングハートを首から下げる。

 

「どうかな?」

 

「綺麗ですよ、なのはさん」

 

「ありがと、ユーノ君。綺麗だってさ、レイジングハート」

 

『私ではありませんが』

 

「?」

 

なのはが顔に疑問を浮かべていると、ぞっと背筋が冷える感覚がなのはを襲った。

 

「っ!? これって……!」

 

「ジュエルシードです! ジュエルシードが発動する前触れです!」

 

「近い……?」

 

初めて味わう感覚になのはは戸惑う。

 

「美由希さんたちに連絡を!」

 

「わかった!」

 

なのはは携帯で二人に電話を掛けながら、家を飛び出す。

電話に出た美由希と士郎は、直ぐにジュエルシードの現場に直行すると返って来た。

 

「地図……は見方分からないよね。昨日みたいに思念体が移動するかもしれないし、携帯のGPSオンにして後から追跡してもらうよ」

 

「あの人達がいくら強くても、封印作業は僕達にしか出来ません。手遅れになる前に急がないと」

 

「分かってる」

 

そしてなのはは、急いでその場へ向かうため、手を上げた。

 

 

「ヘイ、タクシーッ!!」




なのはさんは二日酔い対策を手に入れた!
とまあ、そんな感じです。
前回は次元世界とロストロギアについて、今回は魔法とデバイスについての話になってますね。
あと今回、大人にしか使えない移動方法を使用しています。
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