私、高町なのは。●●歳   作:軟膏

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9話

なのはがジュエルシードを封印すると、あとに残ったのは小さな子犬と、封印を施されたジュエルシードだけだった。

レイジングハートの中にジュエルシードを格納したなのはは、気を失っている子犬をそっと抱き上げる。

 

「こんな小さな子が、どうして……」

 

痛ましい表情でなのはは子犬を撫でる。

ユーノがそれを見ながら、自分の推論を述べる。

 

「多分、強くなりたいという願いを、ジュエルシードが叶えようとしたんじゃないかと」

 

「こんな叶え方は、間違ってるよ」

 

子犬を撫でながら、なのはは断言する。

 

「これじゃあ、誰も幸せになんかなれない」

 

そこでなのはは、子犬がお腹に怪我をしているのを見つける。

 

「これは……」

 

薄茶色の綺麗な毛並みの一部が、僅かに焦げ付いていた。

 

「私がやったんだね……」

 

「それは……!」

 

「いいよ。事実だから」

 

ユーノが反論しようとするが、なのはは首を振る。

 

「レイジングハート。この子の傷、治せる?」

 

『No problem』

 

「そう……」

 

なのはの手に持つ泡立て器が、桜色の光を振りまきながらクルクルと回る。

暖かな光は子犬に降り注ぎ、傷を癒やしていく。

傷がふさがり、毛並みが元通りになると、子犬が身じろぎし、目を開ける。

 

「凄い……」

 

ユーノがそれを見つめながら、ポツリと零す。

 

「僕はそんなこと教えていないのに……」

 

「これでいいかな?」

 

そういってなのはが子犬を地面に降ろす。

子犬は一度身体をブルブルと震わせて、キャンと一度鳴いたあと、走り去って行った。

飼い主であろう、気を失っている女性の元へ。

 

「あの人、あの子の飼い主だったんだ」

 

「そうみたいですね」

 

飼い主の頬をペロペロと舐めている子犬を、目を細めて見ながら、なのははユーノに尋ねる。

 

「……ねぇ、ユーノ君」

 

「なんですか?」

 

「あの子、もしかしてあの人を襲うんじゃなくて、ただ甘えたかっただけじゃないのかな?」

 

「わかりません」

 

「そうだね……もしかして、私は悪者だったのかな?」

 

「そんなことないです!」

 

暗い顔でつぶやいたなのはを、ユーノが首を振って否定した。

 

「なのはさんは凄いです。魔法に触れたばかりなのに、あれだけ使いこなせてたじゃないですか。

応用も自分で考え付いていました。なのはさんはさっきは僕が教えていない回復魔法まで使ってあの子犬を助けました。だから、えっとだから……」

 

言葉が思い浮かばず、だからと繰り返すユーノ。

その頭を、なのはは優しく撫でる。

 

「ありがと、ユーノ君。慰めてくれたんだよね」

 

ユーノは俯きながら、なのはに言う。

 

「もう終わったんです。それでいいじゃないですか」

 

「そうだね。もう終わったんだから……ね」

 

そしてなのははバリアジャケットを解除する。

翠屋の制服から元の服に戻り、レイジングハートも元の宝玉へと戻った。

 

「さて、帰ろうか。ユーノ君」

 

「あ、はい」

 

再びなのはの肩に飛び乗ったユーノが、そこであることに気付く。

 

「あれ? そういえば美由希さんたちはどうしたんでしょうか?」

 

「来てたよ?」

 

「え?」

 

なのはの言葉に、ユーノは疑問符を顔に浮かべる。

 

「あの犬が女の人に飛びかかったとき、私はまだプロテクションを張れてなかったよね」

 

「そういえば……」

 

思い返して、そのことにユーノは気付く。

なのはのプロテクションが発動したのは、暴走体が弾き飛ばされた後だった。

 

「あの子に向かって針が飛んで行くのが見えたからね。刺さりはしなかったみたいだけど。

 でも二人とも、少し離れた所から見てたんだと思うよ?」

 

「でも、どうしてそんなことを?」

 

「さあ? 来るのが遅かったのかもしれないし、私がどこまで出来るのか見ていたのかもしれない。 二人とも仕事が忙しい中、わざわざ抜け出して来たんだからね。もう大丈夫だと分かったから、帰ったんじゃないかな?」

 

なのはの知る高町家の皆は、自分が助けたからって自慢をするような性格はしていないのだ。

 

「何にせよ、随分と私は信頼されているみたいだね」

 

「なのはさん……」

 

頼りにされていることに、なのはは少し気恥ずかしそうに笑う。

 

「さ、行こうか」

 

「はい」

 

なのはは来た時とは違って、ゆっくりと石段を下りていく。

急ぐ理由も無くなったからか、歩くことを楽しむ余裕が出来た。

風に絡む髪を梳きながら、なのははのんびりと高台から見える海鳴の街を眺める。

 

「けっこう動いたから、喉がもうカラカラだよ」

 

「また飲むんですか?」

 

「当然。良い魔法も知ったし、これで休肝日を作らなくて済むよ。ありがとうね、ユーノ君」

 

「いえ、それは作ったほうがいいと僕は思います」

 

「ユーノ君も飲む? 子供向けに甘酒作ってもいいけど」

 

「遠慮しておきます」

 

「なぁんだ、残念。皆あまりお酒飲まないからね。お父さんも歳だからってちょっと控えてるし。それでいつも一人で飲んでいるんだけど」

 

「……」

 

「ん? ユーノ君、どうしたの?」

 

「……一杯だけなら」

 

「そう。それじゃあ、腕によりを掛けて作るからね」

 

「ははは……」

 

ユーノの乾いた笑いが響く。

止めておけばよかったかな、とユーノはその日、フェレットサイズで見た、御猪口に注がれた甘酒の量の多さを見て後悔することになるのだった。

 

 

 

「あ、タクシーッ!!」

 

 

 

 




これでアニメの第二話分まで終了です。
前回の話の補足みたいな感じなので短いです。
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