陽炎の立つ頃に-陽炎型ミステリーゲーム-   作:遠野静

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現場検証の途中ですがお知らせがあります。


『『転』』

『二日目・第二の事件・現場検証2』

 

野分「……では、現場検証の続きをしましょう。その前に『GМ』、この血糊はゲームと同じ状態ということで良いですね?」

 

秋雲「おっけー」

 

野分「分かりました……さて」

 

 壁、窓、棚、殆ど全てに血が掛かっている。

 包丁も同様……のように思えるが、やはり。

 

野分「……やはり、この包丁の血糊は不自然です。それに散らばっている皿も」

 

浜風「何が不自然なのですか?」

 

野分「血糊が付着してないんですよ。これを磯風の血だと仮定しても、皿や包丁は、血が広がった後でばらまいたということになる」

 

野分「皿は特に不自然ですね。食器棚にしまってあったと言いました。磯風が抵抗した跡なら、棚も動いていないとおかしい。

 ……けれど、血糊は棚の下にはついていない。

 少なくともこの出血があった時、誰も棚に触れていないということです。フライパンなども同様ですね。

 ……そして、窓も空いていたわけではない」

 

野分「ちなみに、陽炎姉さん。これだけの人体を解体するのに、ここの機材でどれだけ掛かると思いますか?」

 

陽炎「そういうのをあたしに聞くの? ……そうねえ、磯風の身体丸ごとでしょ? 1時間~2時間くらいじゃない?」

 

野分「私もそう思います……実際には鍋で加工する時間もあるので犯行時間は更に伸びる。……では、磯風の死亡時刻ですが」

 

野分「陽炎姉さんが0時半にここを出たとする。不知火姉さんがいつまで居たかは分かりませんが、この犯行現場の様子では最低でも3・4時間は経過しているはず。陽炎姉さんが磯風を発見し、私を起こした時間が5時。つまり、犯行時刻は大体昨夜の1時~2時頃」

 

陽炎「不知火が何時に出たかでもう少し特定出来そうね。惜しむらくは深夜ってことか」

 

野分「そうですね……まあその辺りは他の方々のアリバイを聞いてからでいいでしょう」

 

野分「では、包丁を戻していこう……と思いましたが――」

 

陽炎「どうしたのさ?」

 

野分「……面白い物を見つけてしまいました。この包丁、なんだと思います?」

 

浜風「それは……谷風の部屋にあった鮪包丁ですか?」

 

野分「現場に入った人がいて、これを取ってきた人がいる。ということですね」

 

陽炎「待った。それって、本当に谷風の部屋にあったやつ?」

 

野分「そうかどうか、今から確認しようということです。ここ以外に包丁はない筈ですから」

 

 結論から言うと。

 包丁は、過不足なく棚に収まってしまった。

 

野分「……ここにあった包丁である。その可能性が高い。陽炎姉さん。確かに戻る前は、一本足りなかったのですよね?」

 

陽炎「そうね……つまりこれが凶器か――」

 

野分「――カモフラージュか……ただ、他に『自然な形で』血を被った包丁はありません。

 刺殺、斬殺だと考えると、この包丁がもっとも適している。解体用ですしね」

 

陽炎「野分はあくまで包丁が凶器だと考えるの?」

 

野分「鋭利な刃物が凶器だとは思います。……死因は失血死かな。

 陽炎姉さんは分かっているでしょう? 床だけでなく、壁やモノにまで血糊が掛かっている。

 谷風の死体とは状態が違う」

 

陽炎「まあね」

 

野分「でも、この包丁をもって廊下を歩けば、誰かに見つかる可能性がある。

 ……いや、血糊が残るから確実に見つかるはずだ。

 でも、拭けば谷風の血も落ちる……だとすれば……」

 

陽炎「野分ー? 推理に没頭するのはいいけど、そろそろ片付けていい?

 いい加減、何人かが腹を空かせて起きてくるわよ」

 

野分「……そうですね。ただ、この包丁は持っていってもいいですか?」

 

陽炎「いいわよ? 二度も姉妹を解体した物を使う気にはなれないし」

 

野分「ありがとうございます……では、この包丁は私が預かるとして……」

 

浜風「全員を起こしましょう。キッチンの血糊を片づけないと……」

 

 その言葉に私は頷いた。

 現場証拠が消えてしまうのは辛いが、仕方ない。

 

浜風「……出来れば、皆を起こすのを手伝ってほしいのですが」

 

野分「そうですね、全員で行きましょうか。……陽炎姉さんも」

 

陽炎「………あんた、あたしを疑い過ぎよ」

 

 

~~~

 

陽炎「不知火ー? 起きなさい。ご飯よー」

 

野分「……何度ノックしても起きませんね」

 

秋雲「朝シャンでもしてるんかねえ」

 

陽炎「いや、あたしの知る限り不知火にそんな習慣は無かったはず……しょうがない。開けようか」

 

 ガチャリ。と陽炎姉さんが扉を開け、そして――

 

 ――そこに、死体が転がっていた。

 部屋の中央よりも少し向かい。窓のすぐ傍。

 

秋雲「んお!?」

 

野分「わ……」

 

 不知火姉さんが窓際に座るように倒れている。

 その胸元は血で真っ赤。床にも血が広がっていて……。

 そのさまは、初日の谷風の状況を連想させた。

 

陽炎「わ……ちょっと不知火、大丈夫?」

 

不知火「ぐう……んはっ……? すいません、寝ていました……ああ、いえ。

 大丈夫じゃないです、不知火は死んでいます」

 

陽炎「死んでるって、つまり?」

 

不知火「はい……じゃなくて、先に『GM』に報告でしょうか」

 

秋雲「お、おう……。び、びっくりしたー。まさか三日目にして、二人も死者が出るとは」

 

秋雲「えっと……不知火姉さんから状況を確認するから、外に出ていてくれる?」

 

野分「分かりました……」

 

浜風「……想定外でしたね」

 

陽炎「不知火死亡かぁ……ところで、どうする? 朝食?」

 

浜風「あ……」

 

野分「……陽炎姉さんと、浜風姉さん。他の皆さんを起こしてきてくれますか。私は、秋雲と不知火姉さんから話を聞いておきます」

 

陽炎「まあそうなるか……頑張ってねー」

 

浜風「では、朝食が出来たら呼びますね」

 

野分「了解です」

 

秋雲「おっけーだよーん」

 

野分「さて……」

 

未だ頭は切り替わっていないものの、起きてしまったものは仕方がない。

第二の事件もそそこに、第三の事件の状況を確認しよう。




第二の事件の被害者→磯風
第三の事件の被害者→不知火

です。彼女達は同日に『殺人』されているため、『二日目』の証言は二・三の事件双方の証言として扱います。
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