『二日目・第三の事件』
野分「では『GM』、状況を聞かせてくれますか?」
秋雲「はいよ。ガイシャは見ての通り不知火姉さん。発見現場は102号室……つまり不知火姉の自室だね。……でも、野分が聞きたいのはこういうのじゃなくて、死体の状況かな?」
野分「はい、特に今回は……」
秋雲「うむ、見る物があまりない」
不知火「不知火の落ち度ではありませんが、そうですね」
野分「部屋も綺麗で、荒れた様子もありません。異変といえば、不知火姉さん自体しかない」
秋雲「今回の部屋はマジでほぼ見たままだよ。私も対応に困る程度には。
ま、現実との違いについては不知火姉の死体の胸だね。
胸部に長い刃物でぐさぁっとやった痕跡があって、そこから血が服に広がって、床に零れてるって感じかな」
野分「背後はどうですか?」
秋雲「不知火姉の背中には、少量しか血が付いてない。周りは見てのとおり。血まみれべったりんぐ」
野分「了解です。死体の状態を詳しく聞きたい。たとえば他の外傷、痕跡はありますか」
秋雲「胸の刺し傷以外の外傷はない。少なくとも痣や跡が残るような物はね?」
野分「では、致命傷はほぼ胸で確定ですね……深さは分かりますか」
秋雲「……野分、例えば指とか棒とか、死体の傷に差し込める?」
野分「…………必要に迫られたら」
秋雲「では、その覚悟に免じて確認出来たとしよう。……そうだね、相当深いかな。ギリギリ貫通はしてないぐらいざっくりと」
野分「なるほど」
不知火「……野分に汚されました」
野分「やめてください……さて、そこまで深く突き刺す凶器といえば……」
野分「……いえ、それは後にしましょう。まず死亡時刻の検証をします。
磯風よりはよほど綺麗な死体ですので、死体現象から確認出来るでしょう?」
秋雲「そうだねえ……んーと、不知火姉さんは……」
不知火「死後、3時間以上は経っています」
野分「3時間……今は、5時半だ。暫定だと、昨夜の0時半には生きていて……それから1時間前後の時間……?」
……第二の事件とほぼ同時進行している?
だから、不知火姉さんは綺麗なまま……いや、でも。
だとしたら、違和感がある。
不知火「野分、不知火はお腹がすきました」
野分「分かってます……ただ、一応部屋を改めさせてください。これは人形と置き換えるでしょう?」
秋雲「そうだけど、その前に朝ごはんかな……一応、野分の検証が終わるまでは付き合うけどさ」
野分「分かりました」
とはいえ、現場を改めたところで、見えている以上の情報は出なかった。
凶器も見当たらなければ、部屋に異変もない。
そうなると……。
野分「『GM』、確認します」
秋雲「はいはい」
野分「このゲームは存在する証拠で『探偵』が解けるゲームである。そうですね?」
秋雲「ふむ……つまりあれかい? 野分が危惧しているのは、『証拠はあるのか!』で逃げ切られる可能性ってこと?」
野分「それもあります。ただそれ以前に、私では確定しきれな証拠がいくつかある。
例えば血を遺伝子鑑定でもすれば、誰の血か分かるでしょうし、指紋を鑑定する技能があればそれも証拠になる。
けれど、私はそれらを確定出来る技能がない。だから幾つかの推理は、仮定を重ねた論拠にしかならない。
……限りなく真実味を帯びた推論であっても、事実足りえない
その上で、推理出来るゲームか否かを問いたい」
秋雲「言いたいことは分かった。つまり、根本的に『探偵』のスペックが足りなくて攻略出来ない無理ゲーじゃないかってことね?」
秋雲「それで言うなら、このゲームは『探偵が攻略可能なゲーム』だ。『GM』が今んところ把握している限りではね? ミスがあれば、その時点で『探偵』に通達するし、最終的な推理が正しければ、野分の勝ちだ」
野分「……了解しました」
不知火「終わりましたか? ではご飯にしましょう」
野分「ゲームから抜けた人が何かを言っている……」
次回から証言になります。