野分「さて……」
一度、自分の部屋に戻る。
手元には、二名……ないし三名の血を吸ったであろう、鰻包丁が乾いた血糊のついた刃を光らせていた。
野分(結局、不知火姉さんの現場まで持ったまま。朝食の前に、ここに置いてはきましたが……)
野分(どうしてこの刃物がキッチンにあったのか? 昨夜の時点では、谷風の現場にそのまま残していたはず……)
野分(……いえ、考えるまでもなく、誰かが持ちだしたのでしょう)
野分「では、何故それをキッチンに残した?」
野分(持ち出せたなら戻すことも出来たはず……だからこの場は『戻せなかった』と考えるのが正しい。それがブラフでなければ)
野分「血糊の跡や、目撃者……つまり、露呈の可能性」
野分(それは有り得る。浦風と天津風が廊下で立ち話をしていたから、包丁を持って出られなかった……?)
野分(……いや、やっぱりおかしい。浦風姉さんと天津風姉さんは、1時には部屋に戻っていた。二人が出た後なら悠々と部屋に戻れる……)
野分「……この話は一度保留にしましょう。次……」
野分(不知火姉さんの死因も刃物による殺傷。つまり、この包丁である可能性が高いが……だとすると、昨夜の犯行時刻はどうなる?)
野分「二人とも、昨夜の1時前後には殺されている……つまり、浦風と天津風の二人が廊下で会話をしていた頃だ」
野分「不知火姉さんの死体と現場がシンプルなことも気になる。磯風の方はあれだけ荒らして、鍋にまで入れたのに……そう、時間を掛けて……」
野分(殺害出来るのは『犯人』のみ。なら不知火姉さんと磯風姉さんが殺害された時刻の前後はどうなるか)
野分「不知火姉さんは食堂に入っていったのが、0時半頃。磯風姉さんの最後の目撃情報は、天津風の23時。この二人のその後の行動は……」
野分(…………まだ、犯人の確定には証拠が足りない気がする)
舞風「野分、いるー……? わっ!?」
野分「ああ、舞風。どうしてそんなに驚い……て、こんな刃物を持っていたら当然ですね。すいません……」
舞風「い、いいよ。少し驚いただけだから……」
秋雲「まいのわー? なにしてんのさー」
野分「その呼び方はやめなさい」
舞風「えっと……今から時津姉と雪風姉と一緒に中庭の探索に行くんだけど、野分もくるかなーって?」
野分「中庭ですか……」
この場にいても、あまり続けることもない……それに中庭は、まだ詳しく見ていない。
この事件に関わっているか否かは置いといて、一度確認するのは有りに思えた。
野分「分かりました、行きましょう。『GM』もしばらく付き合いなさい」
秋雲「へいへい。時津風と雪風はもう外にいるから、そんな刃物は置いときなよぅ? 秋雲さん怖いわー」
野分「分かっていますよ……」
現場検証も大切です。