望まれて生まれた。望まず生まれた。   作:杉鋸

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00_雑談相手

 その話題が出たのはいつの話で、どういう流れで出たんだったか。

 少なくともこんな大きな戦いが起こるなんてどちらも思っても無い頃で、真面目な話は終えた後だったのは確かだ。

 

 

 

 コーディネイターを超える存在を生み出すのに何が必要になるか。それを考えるにはまずは物事の根を考えるべきだ。

 君はコーディネイターという存在の長所――親という存在がわざわざそれを買い求める理由は何だと思う?

 私が考えるに、それは『親の望むままの性質を持たせられる』事だ。

 

 彼は苦し気に笑いながら、あるいは楽し気に顔を歪めながら、己の同朋としているコーディネイター達を『親の買い求めた商品だ』と断じる事から話を始めた。

 

――それが理由であるのなら『コーディネイターを超える』とは、メンデルの人工子宮の様に『より確実に設計通りの子を生み出せる様になる』事を?

 

 メンデルの人工子宮は確かにより確実に望んだ通りの性質を持った子を作るのには役立っただろう。しかし、なんだったら今でも数を打てば同じ結果を得られる程度の代物だ。

 コーディネイターとして完璧ではあるかもしれないが、私はそれを今のコーディネイターを過去の物へと変える程のものとは考えていない。

 コーディネイターを超えたコーディネイター、差し詰め『スーパーコーディネイター』とでも呼ぶべきものを生み出すのなら、私だったらもっと強烈なものを作る。

 

 コーディネイターに望まれる様な性質とはどんなものがあるだろうか。

 見た目の良さ、能力の高さ。それだけじゃあないとは思わないか?

 

 『昨日はこの外見の子が欲しかったけれど、今日は全く別の姿の子を連れていたい』そこまでは言わないとしても、10ヶ月もあれば心変わりの一つもあるだろう?

 更に言うのならば、『望んだ年頃のままでいて欲しい』『望むままの精神を持って欲しい』『そもそも子育てなどしたくはない』『10ヶ月も待ちたくない』

 コーディネイターを人間として作る限り、そういった"問題"を解消する事など不可能だろうさ。

 

 だからそれを作るのであれば、私は機械として作る。

 常に望んだ姿へと変える事が容易な外装を付けた機械を、望まれた通りの行動をインプットしたコンピューターで制御する。

 望むままに目の色を変えたいのなら眼のパーツを取り換えればいい。望むままに行動させたいのならプログラムを書き換えればいい。

 そうすれば親がコーディネイターに望む機能の全てを完全に満たせると思わないか?

 

――血も通わない機械が子供の代用品になると?

 

 血を、自分の遺伝子を残すなど、コーディネイターですらどれだけ残っているかも定かではないのだから大差はないだろう。

 嫡子扱いされないなど、法も倫理も変わるだろうさ。

 

 彼は『コーディネイターを作る親』という存在は、そもそも子など望んではいない。もっと都合の良い"着せ替え人形"を用意すれば十分なのだ、と親達を嘲笑し、少し間を置いて彼は再び語り出す。

 

 しかし、これはコーディネイターが生み出す事はないだろうものだ。

 『コーディネイターこそが新人類である』というのならば、更なる新人類となるべきそれが生まれたその瞬間に自分達も『ナチュラルと同じ』能力の低い旧人類に成り下がってしまうのだから、作れる訳がない。

 

――作るならナチュラルだと?

 

 ナチュラルだって生み出しはしないさ。

 コーディネイターという強力な対立者を生み出した後で、更なる脅威を望んで作り出すだろうか?

 

 どちらも尤もな話だった。より強い人の代用品を作れたとして、より強く・より完成度の高い代用品であればある程に脅威にしかならない。

 ナチュラルとコーディネイターの二種ですら対立しているこの時代に、更なる対立者――その候補を作り出すのはただの愚者でしかない。けれど……

 

 とはいえ、歴史を作るのは万の賢者ではなく一人の愚者だ。

 作りうるというのならいつの日にかそれは作られ、想像された通りの結果を生み出すだろう。

 

 ……あるいは、もう既に存在していて第二のジョージ・グレンとして告白する個体がまだ現れていないというだけの事かもしれないがね。

 

――君がその気なら、僕達でその愚者になるのも悪い話じゃあないと思いますよ。僕は。

 

 彼の言うスーパーコーディネイターというのは、きっとコーディネイターのそれに限らず多くの問題を解決してくれるだろう。

 いや、彼と一緒にやるのならそれだけで何だっていいのかもしれない。僕にとっては。

 

 私もそれは面白いと思ってはいる。思ってはいるが、まだどちらも私という蝙蝠を必要としている今はまだ、ね。

 

――その頃にはチャンスを逃してるかもしれないですけどね。まあ今後の楽しみとでも思って、君との事業に取って置きますよ。

 

 

 

 そんな事が出来る日が来るなんて端から思ってもいなかったさ。

 けれど僕は今でも思う。そんな事が出来たなら、それは本当に楽しい事だったんじゃあないか、と。

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