時は呪術全盛の時代。魑魅魍魎が跋扈し、呪いの絶えない血の時代。そんな時代に、ひっそりと
◇◆◇◆◇
「うぐォ゙ァ゙ァ゙ー!」
叫び声を上げる。
……とりあえず叫んだけど、ここ何処? なんか辺り暗いんだけど? もしかして私今ヤバい?
――OK、落ち着け私。身体に痛みはない。学校の帰りに体中にとんでもない痛みが走ったところまでは覚えてる。周りには誰も居なかったはずだけど、あの後気絶したのか? だとしたら普通病院じゃね? よく見たらここどう見たって建物ですらないけど? もしや誘拐? いや、私みたいな底辺JK捕まえて何になるんや。
とりあえず、携帯あるかな……ん? 腕がなんか変……
「へ?」
私の手が虫の足になってる。――もう一度言おう。私の、手が、虫の足に、なってる。
よく考えれば、身体の感覚もおかしい。首も動かないし、なんか体中によく分からん力を感じる。身体を動かして違和感を確かめていると、視界の端に私の足らしきものが映った。
……蜘蛛の足が。
おおおおぉぉおお落ちちちち付けけけけ!!!
こ、これは、まさかのあれか!?あれなのか!?今もネットで流行してるあれなのか!?
イヤイヤイヤ!違うよね?違うと言ってくれ!
もう一度自分の手(推定前足)を見る。意識して動かすと、私の思い通りに動いた。
――うむ。ここは潔く認めなければならない。
どうやら私は、蜘蛛に転生してしまったらしい。
「ないわー。」
◇◆◇◆◇
少し落ち着いたので、自分に出来る事を整理してみた。まず、私は蜘蛛だけど糸が出せなかった。いや出し方分からんわ。お尻に力入れても何も起こらないし。
ただ、その代わりに体中に流れる不思議な力を扱う事ができた。恐らくこの世界はファンタジー的なアレで、私はモンスターで、これは魔力かなんかなのだろう。身体能力を強化したり、身体を硬くしたり、怪我を治したりする事ができた。何で怪我したかって?へっ、聞かないでくれ。
そして、魔法みたいなやつも使えそうだ。なんとなく使い方が分かる。効果は簡単、食った奴の特性やら力やら魂?やらを奪う。一部分だけ食べたとかでも、相手が死んだ時点でソレは発動するようだ。多分この世界、固有魔法的なやつが人それぞれにあるんだと思う。勘だけど、なんかそんな気がする。その固有魔法的なやつも奪えるようだ。
……言いたいことはいくつかあるが、一つだけ。―――何で発動条件が『食事』なんだよ!!アレか?モンスターだからか?強くなるには私みたいな魔物か、ましてや人間を食うしかないと?
はぁ~ないわー。
◆◇◆◇◆
蜘蛛の糸出したーい。何で出ないの?力み方が悪いの?マイホーム作りたいのに作れないんですけど?天性の引きこもりであるこの私に、洞窟生活はキツ過ぎますって。マイホームでニートさせてくれや。脱出はできるかもだけど、それにしたって外で野宿じゃんか。
なんでだYO!ふざけるなYO!どうしたって人間の家には住めないんだからマイホームが要るんだよ!引きこもらせろー!!
……はぁ。しょうがない。とりあえず、洞窟を出よう。洞窟にいたってなんにもならない。
「あ、ああああ遊ぼぼぼ?」
え〜?ザ・インドアな私がゲームも無いのにこんな洞窟でどう遊ぶって………ん?
恐る恐る振り返る。
「阿、阿蘇阿蘇阿蘇阿蘇阿蘇遊ぼぉ?」
後ろに、二足歩行のカエルみたいな化け物がいた。
ギィヤァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ーー!!化け物ーー!!
……あ、私もか。落ち着いたらなんか相手から魔力(多分)も感じるし。私と同じモンスターだわこいつ。
―――そういえば、お腹すいたな。
え?今何考えた私!?こいつ食べようとしたの!?イヤイヤないない。こんなの食べたく……食べ、たく……い、いや、まあ、食べないと死ぬし?洞窟の中じゃ選り好みできないし?仕方がないかな~って?思っちゃったり?
…………。
『ガブッ』
「ギャァ゙」
……………………ウ゛ッ!!オェェ゙ーー!!
まっず!!いやまっず!!何このゲロ拭いた雑巾みたいな味!!不味すぎだわ!!
――でも、食べる。自分でも抑えられない【食べたい】という欲求。いくら不味くても、私の口は目の前の悲鳴を上げているカエルを貪る。魔法(多分)が発動し、カエルの魔力(多分)が私のものになっていく。固有魔法(多分)は持っていなかったようだが、魔力(多分)はほぼ私と同等レベルだ。それをまるまる私の力に変える。その感覚が、不思議と気持ちいい。もっと食べたい……モットタベタイ!!
◇◆◇◆◇
…………は!私は何を!?
我に帰った。目の前には祭壇のようなもの。え?どういう状況?え~と確か、めちゃくちゃマズいカエルを食べてたらパワーアップして、なんかもっと食べたくなってきて……あ、思い出した。私、我を忘れて手当たり次第に見つけたモンスター食べまくってたんだ。見つけたら食べ、見つけたら食べを繰り返し、少なくとも10匹は食べた。まあカエルと同程度のあまり強くなさそうなやつだけど。――少なくとも目の前に居る奴よりは絶対に弱かった。
「ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙」
明らかに強そうな4つ目の人型モンスター。感じる魔力(多分)も桁違いだ。私もモンスターを食べて、目覚めたばかりの頃より何倍も強くなってる筈なのに、今の私が絶対に勝てないと思ってしまう程の威圧感がある。
『食いたい』
……これ、モンスターの本能的なやつ?正直ずっと聞こえてきてうっとおしいんだけど!!なんか気張ってないと意識消えそうになるし!!
『食いたい』
うっさい!!黙らっしゃい!!
『食いたい』
あぁ、もう!!食べればいいんでしょ食べれば!!
私はこのしつこい本能の声に従い、宙に浮いている四つ目に飛びかかる。魔力(多分)を使い身体能力を強化すると、大量にモンスターを食べた影響で、思った以上の速度と勢いで四つ目に向かっていった。
「ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙、ァ゙?」
『ガブッ』
「ァ゙、ガァァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!」
すれ違い様に頭部を食いちぎった。相変わらず不味!!まったくなんでこんなもん食べなきゃいけないんだよ。
――って危な!!何これ!!あの四つ目、黒い槍みたいなの飛ばしてきた!!
あいつの魔法?自分以外の魔法持ち初めて見た。
……ってことは、あいつ全部食べたらあの黒い槍打てるの?鍛えたら某金ピカ王みたいに指一本動かさずに敵を圧殺したりとか出来そうなんですけど?厨二心くすぐられるんですけど?
「――そんなの食べるしかないでしょぉー!!」
打ち出される黒い槍を素早く躱し、四つ目に再び噛みつく。
「ガァァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!」
「ぐっ!」
めちゃくちゃに暴れまわる四つ目。あちこちに身体をぶつけながらめちゃくちゃな方向に黒い槍を飛ばしまくる。
こっちも必死に牙を突き立ててしがみつく。
「もういっちょ!!」
暴れたせいで余計に牙が食い込み、その痛みで怯んだ隙に、私は相手の首元を食いちぎった。
「ァ゙ァ゙ァ゙……」
四つ目は力尽き、消えていった。
◆◇◆◇◆
四つ目が消滅したと同時に、黒い槍の使い方が頭に直接浮かんできた。ちょっと頭痛がする。コレ、もしかして相手の魔法(多分)を奪う度に頭が痛くなるんだろうか?つくづく使いづらい能力だ。
「ふぅ~、それにしても強敵だった。」
最後に暴れまわられた時潰されそうになったし、もう治したもののかなり傷も負った。けど、その分収穫はあったと言えるだろう。私の厨二心をくすぐる闇属性っぽい魔法(多分)を手に入れられたのだから!
「フハハハ!この私が最強の魔法少女☆蜘蛛子ちゃんになる日も遠くない!よ~し!どうせならこの第二の人生、いや蜘蛛生!思いっきり楽しんでこー!!」
私は前足を高々と突き上げ、ハイテンションが止むまで高笑いしていた。
現在の白(仮)ちゃん(1話終了時)
・呪力量……2〜3級程度
・呪力出力……3級程度
・呪力操作……そこそこ
・体術……すばしっこいだけの雑魚
・術式……【暴食】食べた相手の術式、または呪力量、呪力出力、または体質や特殊能力、または魂のどれか一つを奪う。
食べた相手に化けることも可能。
知性があるものの場合はその記憶を一部奪える。
発動条件は相手を食い殺すこと。食べた相手が死に至ることでも発動するが、奪うものが劣化する。
術式発動時、頭痛が起こる。奪うものが自分が持っているものよりも大きければ大きい程頭痛は酷くなる。
【闇黒槍モドキ】四つ目の呪霊(準一級)から奪った術式。(勝てたのはぶっちゃけ主人公補正かな。)