呪霊ですが、何か?   作:なゆさん

10 / 10
途中まで前話地続きの話を書いたけど納得いく展開が作れなかった……。
というわけで一気に原作へ行きます。


10話

『――仙台、白の方が近いでしょ? 僕忙しいからさ。様子見てきてくれない?』

「……いやだ」

『いいのかな? 君のお給料は僕が握っているんだよ? あの新作ゲーム、買えなくなるよ?』

「……チッ」

『じゃ、ヨロシク〜』

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

(――最悪だ! 万が一の最悪が出た!)

 

東京都立呪術専門高等学校1年、伏黒恵。1年生でありながら2級術師の実力者であり、禪院家相伝の術式【十種影法術】を持つ。そんな彼であるが、非術師という足手まといが居たからか、それとも彼の油断からか、2級呪霊に後れを取った。

結果――

 

(特級呪物が受肉しやがった!!)

 

呪物を飲み込んだ非術師――虎杖悠仁はもはや人間とは呼べない。呪術規定に基づき、祓わなければならない。

 

「――伏黒。これ、何?」

「っ!?」

 

式神を呼ぼうとした刹那、いつの間にか己の背後に気配が現れた。

 

「は!? えっ!? 誰!?」

「――白さん」

 

背後に立っていたのは、恐ろしい程に白い少女。【白】と呼ばれている彼女。伏黒自身も彼女について深く知っているわけではない。ただ――

 

「特級呪物【宿儺の指】が受肉しました。なんとかしてください」

 

この状況を変えることのできる実力者であることは間違いない。

 

 

 

「……コレ、宿儺じゃない」

「――は? いや、そいつは俺の目の前で宿儺の指を飲み込んだんです。両面宿儺が受肉したのは確実で」

「……身体の方の人格が出てきてる。たぶん、身体を乗っ取れてない」

「そんなことが…?」

 

(つまり、虎杖は今両面宿儺を抑え込んでいる状態…ってことでいいのか? どちらにしろ、呪術規定に則れば呪いとして処分すべき場面……。でも、虎杖がまだ生きている状態なら――)

 

合理的ではない。リスクの多すぎる選択肢。普通の呪術師ならまず選ばない、思い浮かびすらしないもの。

 

「――白さん。虎杖を助けてください」

「……なんで?」

「私情です」

 

普段目を閉じている彼女の目が見開かれる。幻想的な紅い瞳がこちらをジッと見ている。

何を見定めようとしているのかは分からない。伏黒には彼女の考えを読めた試しがない。だが、自らの第一の師匠である白髪のバカとは違い、こんなことを二つ返事で引き受けるような人物ではないことは確かだった。

 

「……君」

「え? オレ?」

「……戻れたら戻って」

 

彼女が虎杖に視線を向けた、その瞬間

 

「ケヒッ。いい仕事をするなぁ()()

 

邪悪な気配が辺りを包んだ。

 

「宿儺に戻った!?」

「……今から試す。その後は任せる」

「いったいどういう――」

 

どうやってかは知らないが、白が強制的に宿儺を表に出したらしい。相変わらず口数が少なく意図が掴めない。

 

「さて、まずは人間でも食うか。女がいいなぁ」

「……指一本。弱いね」

 

邪悪な気配を垂れ流す宿儺を前にして、彼女は堂々と煽りをいれた。

 

『ドッ』

 

いつの間にか、宿儺の拳が白の眼前で停止していた。

伏黒の目には追えない程のスピードだ。いつ拳が放たれたか、どうやって防いだか、何も分からない。風圧で後ろの校舎は半壊している。たかだか2級術師とは余りにもレベルが違う。

 

「――今の俺は気分がいい。あの頃のように貴様に身の程というものを教えてやろう」

「……勝てると思ってる?」

 

瞬間、白が消えた。

 

『―――』

 

轟音。砂塵が舞い上がる。

 

「……まだ寝ぼけてるなら、そのまま殺す」

 

瞬きの後、伏黒の目に映っていたのは、グラウンドにできた巨大なクレーターと、宿儺の頭を押さえつけている白の姿。常人なら確実に死んでいる上に彼女は追撃と思しき呪力を練っていた。

 

「白さん!! 殺す気ですか――」

「ちょ、ちょっとタンマ! 俺だよ俺! もう戻ったから! 痛い痛い痛い!!」

 

虎杖を助けに向かおうと駆け出した直後、緊張感のない大声が伏黒まで聞こえてきた。

 

「……見ての通り。後は五条に任せる」

 

いつの間にか虎杖と共に背後に居た白はそう言い残して消えた。

 

「――は?」

「え!? 何、どうなってんの!?」

 

伏黒と虎杖が困惑している数秒の内に、

 

「恵〜。白が来いって言うから来たけど、コレどういう状況?」

 

虎杖以上に緊張感のない声と共に、事態の収拾が可能な人物がやって来た。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「――で、白には新しく入学することになった虎杖の指導もしてもらうから。僕の補佐って形で」

 

数日後、白は五条悟から事の顛末等を聞かされていた。

 

「……それ、上からの命令?」

「いや、僕の決定」

「……じゃあヤダ」

 

表情を一切変えない白に対して、五条は怪訝そうな顔で詰め寄る。

 

「何であの年寄り共の命令は聞いて僕の言うことは聞かないわけ?」

「……私が結んだ縛りは私が決めたルールに則る形の()()()()命令ならば聞くこと。五条の言うことを聞く筋合いはない」

「珍しく口数が多いじゃない。確かに縛りの上ではそうだけど、キミの給料に関しては僕に決定権があるんだよ?」

「……夜蛾にゴネてるだけ。もう騙されない」

「――チッ! 誰だよバラしたの。後でマジビンタだな」

 

交渉材料を失った五条は顔を顰め、白は無表情のまま得意げに腕を組んだ。

 

「何でそんなに頑なに断るわけ?」

 

ふと、思いついたように五条が声を上げる。

 

「……面倒」

「いーや違うね。宿儺にビビってんでしょ」

「……は?」

 

いつも閉じている白の瞳が見開かれる。

 

「伝説では対等なんて扱いされてるけど、実際は逃げ回ってたんだろ。指一本相手にイキったはいいけど、今後指を全部食う予定の宿儺の器には近づきたくないってわけだ。伝説の白織も随分と脚色されてたみたいだな」

「……うるさい」

「別に責めてるわけじゃないよ? 怖いのは仕方がない。僕は逃げないけど、白は存分に逃げるといい」

 

ここぞとばかりに白を煽る。挙句の果てには、目隠しを外して変顔まで始めた。

 

「………る」

「ん?」

「……やる。五条と違って、私は教師も優秀」

「は? 僕はパーフェクト万能イケメン教師なんですけど?」

「……生徒に尊敬されてないくせに」

「親しみやすいタイプってだけだから!」

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「………」

「「「………」」」

 

その空間には、沈黙が続いていた。

片や、つい先日釘崎野薔薇が加わり三人となった呪術高専1年生。片や特別講師。本来なら、5分以上もの間互いに向かい合って沈黙することなどないはずである。

 

(どうすんだよこの状況! 時間が経つにつれどんどん話しかけづらくなってるんですけど?)

(知らないわよ! アンタがさっさと話かけないからでしょ!)

(一回殺されかけてるから気まずいんだよ! 伏黒も黙ったままだし!)

(さっき話しかけて無視されただろうが!)

 

 

――5分前

 

『白さん。今日は宜しくお願いします』

『………』

『白さん?』

『………』

『…………』

 

―――

 

(あの流れで会話できるわけねぇだろ! 怒らせたらどうすんだ!)

(そりゃそうだけど……)

 

 

「……白」

 

「「「――え?」」」

「……好きに呼んで」

 

シーンと、あたりが静まり返る。今まで口を閉ざしていた白の想定外のセリフに、三人とも咄嗟に理解が追いつかなかった。

 

(((もしかして、自己紹介待ちだったの?)))

 

「あ~、えっと、俺は虎杖悠仁ッス。宜しく、白センセー」

「アタシは釘崎野薔薇です。宜しくお願いします。白さん」

 

遅れて、名乗っていない二人が自己紹介する。

 

「……宜しく」

 

((分かりづれぇ〜))

 

三人がそれぞれ、目の前の人物が何を考えているのか、何を求めているのか、声に出さないタイプであることは理解できた。これからしばらく、コミュニケーションで苦労しそうなことも。

 

 

 

 

 

「……構えて。殺す気でやって」

 

弛緩した空気の中、ポツリと彼女が呟く。

 

伏黒が最も早く式神を呼び出し、他二人も直ぐに臨戦態勢に入った。

白の隣に、いつの間にか彼女そっくりの女がいた。

 

[いっくよー!]

 

『トッ』

 

伏黒は視界の端で、ギリギリその姿を収めた。分身体と思しき白が己に拳を放つその姿を。

 

[ハッ!]

「――っ!」

 

咄嗟の回避が間に合い、初撃を躱すことに成功。

 

「虎杖合わせろ!【鵺】」

「ふっ!!」

 

伏黒、鵺、虎杖の連携攻撃。

 

[甘いよ!]

「がッ…!」

「チッ!」

 

白――仮称〈偽白〉が、素早い動きで迎え撃つ。本体と違って口もよく動いている。

虎杖がカウンターで鳩尾に一撃を貰ってうずくまり、鵺の帯電は効かずに押さえつけられ、伏黒も蹴り飛ばされた。

 

「――今!」

 

その直後、攻撃後の緩みを狙って釘崎が仕掛ける。釘は4本。狙いは頭、心臓、両膝。

 

[無駄!]

 

偽白はアクロバットな動きで全ての釘を掴む。

 

[不意打ちなら、伏黒と虎杖が仕掛ける直前がベストじゃないかな?]

「掴んでくれて助かったよ。【簪】!!」

[――え?]

 

『グシャ』

 

偽白の掌で呪力が弾けた。掌が少し焦げ、彼女も流石に驚いているらしい。動きが一瞬止まる。

 

「【玉犬】【蝦蟇】! 畳み掛けるぞ!!」

「応!」

 

蝦蟇が彼女を拘束。ダメージを回復しつつ機を伺っていた虎杖と伏黒がトドメを刺しにいく。

玉犬、拘束の解けた鵺、虎杖に伏黒。

 

(蝦蟇の拘束が解けたとしても、勝てる)

 

伏黒はそう判断を下す。

 

[はっ! ――さぁ来い!]

 

向かってくる4人に対し、偽白は素早く蝦蟇の舌を引き千切り構えた。

 

「っ!?」

「止まるな虎杖!!」

 

偽白の動きに面食らって一瞬迷った虎杖。

その隙に偽白は――

 

[キミが一番役割が多いよね]

「なっ――」

 

『ドスッ』

 

伏黒を叩いた。虎杖のカバーに動こうとして判断が遅れた伏黒はそのまま腹に一撃を貰い意識を失った。

そしてそのまま――

 

「くっ!」

[さっきのはびっくりしたけど、近接戦闘もできないとね?]

 

近くにいた釘崎も意識を奪われた。

 

「伏黒! 釘崎!」

[――さっきから何もしてないけど、呪力纏えないの? 生身が凄いのに勿体ない。五条は何してるわけ?]

「後ろッ!?」

 

『ゴッ』

 

 

 

―――数分後

 

 

「……弱い」

「「「………」」」

 

白から告げられた辛辣な言葉に、三人は声には出さないものの不満げな態度を示す。

それらの視線を軽く流すかのように、白は個人毎に意見を言っていく。

 

「……虎杖」

「は、ハイ!」

「……呪力は必須」

「まだ教えて貰ってないんスけど……」

「……基礎は五条に任せる」

 

虎杖、進展無し。

 

「……釘崎」

「ハイ」

「……近づいたら楽。刀とか使って」

「刀? 呪具ってことですか?」

「……使い方は教える。身体も弱すぎ。鍛えて」

「うっ…」

 

釘崎、近接戦闘指導決定。

 

「……伏黒」

「はい」

「……前より良い。けど考えすぎ。敵は待ってくれない」

「……はい」

「……式神を増やすのもいい。円鹿とか使いやすい」

「そりゃ増やせれば増やしますけど……調伏ができないんですよ」

「……摩虎羅以外なら頑張ればいける【貫牛】」

 

白が印を結び、影から大きな牛が顕れる。

 

「……貫牛なら攻撃が直線。呪具を使ったカウンターで十分勝機はある」

 

白が呪力を解き、貫牛が影に溶ける。

 

「……式神毎に攻略法がある」

「なるほど」

「……逆に自分で使う時はその攻略法を踏まえて使って」

「分かりました」

 

「……ちょ、ちょっと待って」

 

「……?」

「白さんの術式って、伏黒と同じなんですか?」

「……違う」

「じゃあなんで伏黒の式神のことを?」

「……伏黒の術式も使えるから」

「そういう術式なんだと。俺も詳しくは知らないけど」

 

釘崎は釈然としないような生返事をして、術式どうこうについて何も知らない虎杖は頭にたくさんハテナを浮かべていたのであった。

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