呪霊ですが、何か?   作:なゆさん

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出し忘れなんてあります?
それ放置して何日も経つとかあります?
…………言い訳終了。


2話

あの魔法、名付けて【闇黒槍】を手に入れてから数日が経った。その間、特に何かあるわけでもなく、洞窟を歩き回っては不味い飯()を食って、また歩き回るという生活を繰り返していた。

そして今日、ついに……

 

「あ、あれは…!」

 

蜘蛛になってから見ることがなかったからか、眩しくて直視できないが、間違いない。あの前方で光っている場所は――

 

「出口だー!!」

 

眩しいのも憚らず、光に向かって走る。あの代わり映えのない岩の壁ではない、光へ!

 

「うおおお!!!」

 

壁を登って、ついにその光へ突っ込んだ。

 

 

◆◇◆◇◆

 

sideとある呪術師

 

 

「チッ!しくじった!」

 

悪態をつき、背後を警戒しながら、森の中を駆けていく。どうしてこうなったのか。憎たらしい微笑を浮かべながら己をあしらった()()。油断さえしなければ結果は別としてこんな不様な敗走をすることはなかった。

 

「アレのどこがなんてことはない一介の凡夫なのだ…!」

 

主から命じられたなんてことはない、いつもの暗殺任務。最近目障りな派閥に肩入れしている術師を殺せという任務だった。

()()を名乗るその術師は、実力よりも、頭が切れる事を評価されていた術師であった。故に、実力は特段秀でたものではない筈だったのだ。今まで何度も暗殺を成功させ、はるか格上の呪術師ですら屠ってきた己であれば、問題なく殺せる。そう高をくくって暗殺を決行した。

結果、惨敗。

あの術師は、今まで誰も見抜けなかった私の隠密を見破り、私の研鑽の極地たる近接戦闘術を正面から凌ぎきり、術式すら使わずに私の腹を貫手で撃ち抜き深手を負わせたのだ。

その後ヤツは、私の呪力がほぼなくなるまでのらりくらりと私の攻撃をいなし続けた。深手を負わされた最初の一撃以外は特に反撃される事もなかった。それなのに、どんな攻撃もヤツに受け流されてしまった。どんな初見殺しも、どんな搦め手も、すべて。

 

「クソッ!」

 

呪力切れ寸前まで戦って、ヤツが私に放った言葉には今でもはらわたが煮えくり返る。

 

『多彩な攻撃手段に呪術と暗殺術を合わせた戦闘術、中々面白かったよ。ただ……すまないね。反転術式を使えると思って初撃で深手を負わせてしまった。その傷がなければもう少し楽しめただろうに。』

 

本当に残念そうな顔で、ヤツは私にそう告げたのだ。皮肉ですらない。ヤツは、当然のように私を下に見ていた。最初から。

今まで築いてきた暗殺者としての誇りが、どうしようもない程貶された。

 

「絶対に許さない…!」

 

この先には、洞窟と小さな祠があった筈だ。そこに気配を消して忍びこみ、呪力の回復を待つ。その後は奥の手でヤツを――

 

そんなことを考えていた時、私の目の前に蜘蛛型の呪霊が現れた。

 

「こんな時に!」

 

感じる呪力からして雑魚だが、今の私は呪力切れ寸前な上、応急処置は行っているとはいえ腹を貫かれ出血している。必要最低限の呪力のみでこの呪霊を祓わねばならず、正直あまり好ましくない状況だった。

 

「仕方がない……【繰糸(そうし)(ざん)】」

 

私の術式は【繰糸呪法(くりいとじゅほう)】。呪力で糸を生み出し、それを操る術式。シンプル故に応用の幅が広く、暗殺向きの術式だ。

糸は細く、そして呪力で構成されている為硬い。その上長年の鍛錬によって鍛えられた呪力操作によって、素早く、且つ精密に操ることができるのだ。

今回の技はよく切れる特性を付与した糸を相手に放つ技。呪力消費を抑え手っ取り早く雑魚処理するには最適の技だ。――しかし

 

『ヒュッ』

 

呪霊は感じられる呪力からは考えられない糸を避け、その攻撃は空を切った。

 

「何!?」

 

私の糸を認識した上完璧に回避しただと!?

私の困惑をよそに呪霊は黎い槍を数本放つ。

 

「術式持ちか!」

 

速度も込められた呪力もそこまでではない。術式持ちの呪霊にしてはかなり弱い部類の攻撃。しかし、今の私の立ち位置から避けづらい配置だ。一つの槍を避ければ、必ずもう一つに当たる。

普段ならば全て避ける事など造作もないが、今の自分は重症の上に呪力切れ寸前。回避には、状況的にかなり痛い呪力消費が伴う。呪力で防御して受けるのも同様だ。

 

「チッ!」

 

結局、呪力強化で回避を選択。残存呪力量は最早術式発動すら困難なレベルになってしまう。

そこへ、呪霊は突っ込んでくる。的確に、こちらの嫌な行動を実行してくる。 

 

「厄介な…!」

 

無駄に素早い呪霊の噛みつきを避けながら、今の状況の悪さに思わず悪態をつく。

先程以上に腹の傷が痛む。自分の糸で補強していた傷からは、再び血が滲んでいた。

早急に終わらせなければこんな雑魚呪霊に殺される。

 

「ふっ!!」

 

なんとか噛みつきにカウンターを合わせ、呪霊を殴り飛ばす。

今の状態でも近接戦ではこちらが圧倒的に有利。

 

「ならば!こちらから―――チィッ!」

 

呪霊は再び遠距離から攻撃を放ってきた。接近を諦め、回避に徹する。

――本当にやりにくい!こちらの思考を読んでいるかのようなやり方だ。

焦りが募る。いよいよ血も足りなくなってきた。呪力も最早殆どない。呪霊も術式の発動で呪力が削られているが、このままでは間違いなく負ける。

 

「一か八か……」

 

姿勢を落とし、構える。この程度の雑魚には使いたくなかったが、そうも言ってられない。

呪力切れ覚悟で、呪力を絞り出す。

 

「【極の番 繰――」

 

己の研鑽の極地を放とうとして……背中に粘つくようなな視線を感じた。

 

「ッ!!」

 

それに凄まじい嫌悪を感じ、思わず振り返る。大量出血や連戦による集中力・思考力の低下、呪力切れ寸前であった故に生じていた焦り、今も身を焦がすヤツへの憎悪……理由はいくつもあった。その致命的な失策は平時の自分ならば起こり得ないものだった。

――気づいた時には時すでに遅し。目の前には呪霊の姿。

 

「しまっ――」

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

やっちまった。いや、殺っちまった。

目の前は、真っ赤。私に食われた人間の血痕のみが、私が今何をしたかを主張している。

私は、急に襲われたとはいえ人間を殺し、食べた。

 

「――そして罪悪感なし、か。」

 

そう、それが一番問題である。正当防衛であるとはいえ、私の心には、あの人間に対する罪悪感や血肉に対する嫌悪感が全くないのだ。

どうやら私は、心まで化け物になってしまったようだ。

 

「…………………………まぁ、いっか!」

 

私は私だ。道徳心がちょっと少なくなったところで大元は変わらない。

そんなことより――

 

「人間の知識だよね、コレ。」

 

どうやら、私の魔法、いや術式は相手の記憶も一部奪えるようだ。思わぬ収穫である。

それで分かった事は――

 

1,ここは異世界ではなく、平安時代の日本であること。

2,私はモンスターではなく呪霊と呼ばれる呪いから生まれた化け物であり、呪術師に遭遇すれば問答無用で討伐されること。

3,私が魔力だの魔法だの言ってたのは呪力と術式と呼ばれるもので、呪力を持つ者にしか見えないこと。

4,私はクソ雑魚ナメクジであること。 

 

だいたい基礎知識はこれくらいか。いやはや、私は運が良かったんだなぁ。人間も呪霊もこいつの記憶の中の奴ら化け物しかいないもん。てか私弱過ぎ!こいつ自身も万全なら私なんて秒で殺されてたし。

……ただ、早い段階でコレを知れたのは大きい。私の引きこもりゲーム生活で鍛え抜かれた戦術も通じると分かったしね。私は幾度となくピンチを乗り越え、数多のクソゲーをクリアしてきた女!

 

「何とかなりそうな気がしてきた。がんばるぞ~、おー!」

 

私は天高々に前足を突き上げ、決意を固めた。

 

 

◆◇◆◇◆

 

side???

 

「へぇ~、面白いね。もし機会があれば、今度は直接会ってみたいものだ。」




時系列を進めたいがもっと弱いながらも頑張る蜘蛛子さんも見たいジレンマ。それが難産に繋がっている。誰か助けてくれ。
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