呪霊ですが、何か?   作:なゆさん

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前回の更新から1、2……
毎度毎度遅くなってすんません
正直に言うと、宿儺の情報が少なく、展開が矛盾しないかどうかでかなり悩んでたっていうかチキってました


4話

羂索との戦闘の後、私はより一層自己強化に励んだ。

今のままでは、術師に怯えながらひたすら逃げるだけの人生、いや蜘蛛生を送ることになってしまう。

 

(――それは嫌だ! 私は自由に生きるんだ!)

 

積極的に便利そうな術式を持った呪霊や強いと噂の呪霊を追って日本中を巡っては、呪力や術式を増やしていった。

 

 

 

そんな生活を続けて何年か経った頃、私は――

 

「なんだ貴様は?」

 

最強と出会った。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

(いやいやいや!! 何コイツ!!)

 

最強と噂の宿儺とかいう化け物をちょっと見物しようとしただけなのに、その化け物がちょいと目を離した隙に目の前に立ってる件。

 

「答えろ呪霊。貴様はなんだ?」

 

初対面の人に話せるほどのコミュ力なんて私にゃないんだよ!! 察しろ!!

 

「答えんか……ふむ」

 

 ――ゾクッ

 

「ッ!?」

 

瞬間、私は本能に従って咄嗟に後ろに身を引いた。

 

『ガッ』

 

身を引いた直後、先程まで私が立っていた地面が斬り裂かれた。

 

「ほう。今のを躱すか」

 

「…………」

(――ヤバいヤバいヤバいヤバい!! 一瞬でノーモーションでこの威力? 冗談じゃないわ!! バケモンじゃん!!)

 

「先程から俺を観察していたこと然り、この状況で不用意に踏み込んでこないこと然り、知能は十分にある筈だが……何故言葉を発さない?」

 

「…………」

(……さっき見てたのバレテーラ)

 

「……いいだろう。そこまで頑なに言葉を交わさんと言うのなら―――」

 

宿儺の雰囲気がガラリと変わる。今まで会ってきたあらゆる生物が霞んで見えるレベルの異次元の圧力。

 

――文字通り、生物としての格が違う。向かい合うだけでそう思い知らされる。

 

「遊んでやる」

 

瞬時に最速で回避。地面を切り裂く斬撃を横目に、捕捉されないよう高速で動き回る。

 

「クハハハ! 良いぞ、もっと踊れ!」

 

だんだんと打ち出される斬撃の量が増えていく。

 

(ただでさえ呪力感知最大限活用してもほぼ山勘で避けてるのに、これ以上は――)

 

そしてついに、

 

『ザン』

 

「捉えたぞ、呪霊!」

 

右の前足が切り飛ばされた。

 

(ヤバい! 近距離じゃどうあがいても勝ち目ないし、たぶんもう動きが完全に捉えられた。これ以上逃げて時間稼ぎは難しい。クソ、()()()()()()!!

――こうなりゃヤケだ!)

 

「来るか!」

(【闇黒槍】連打!!) 

 

闇黒槍の弾幕が展開される。

 

「……ぬるいな」

 

数十発の暗黒槍は、簡単に受け止められた。効果は少しかすり傷がついた程度だった。

 

(――だよね!! やっぱりムリ!?)

「こんなものか?」

 

再び宿儺が斬撃を放つ。

 

(【土壁】!!)

 

大地を変化させ、それを防ぐ。

 

「ほう…! なるほど、そういうことか」

 

(ほらすぐになんか気づく! これだからあまり猛者相手に術式の情報を与えたくはないんだよ! 今はこの2つの術式しか使えないしできればこのまま時間を稼いで――)

 

「……何かを準備しているな? 察するに、逃げるためのものか?」

 

(――気づかれた!)

 

「逃がすと思うか?」

 

瞬間、宿儺が目の前にいた。

 

「フン!」

(ッ!)

 

咄嗟に拳を避ける。その速度と込められた呪力は、一発でも受けたらヤバいという事をひしひしと感じさせる。避けた直後相手に隙が見えるが、どうせ相手の呪力防御を前にあまりダメージは期待できないので、カウンターを入れたりはしない。

 

(宿儺も目に見えないぐらい速いけど、初速は私が上! まだ時間稼ぎはできる筈――)

 

「逃げてばかりではつまらんぞ?」

 

高速で振るわれる拳を躱す。

やはり、接近戦ならやりようが――っ!?

 

宿儺の4本ある腕の一本が、私の足をガシリと掴んだ。

 

(不味い! 誘われ――)

 

「【捌】」

 

腹に宿儺の掌が置かれ、ゼロ距離から斬撃を食らう。私の身体はあっさりと腹から真っ二つになり、地面に転がった。呪霊とはいえ、簡単に回復などできない傷だ。100%回復前に殺される。つまり、宿儺の前にはこの傷は、致命傷と同義だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(し、死ぬ? 私、こんなところで?―――嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!)

 

「嫌だぁ!!」

「む?」

 

生まれてから今までで一番の大声。それに応えるようにして私の上半身の部分が何処からか現れた蜘蛛糸に包まれていく。

 

(え? え? なになになになに!?)

「ほう、今までは呪胎だったか? いやそれにしてはタイミングが妙だ。となると――」

 

いつの間にか始まった変質は一瞬で終わった。

わけもわからないままに蜘蛛糸の繭から這い出ようとして、自分の身体の変化に気づく。

 

(ひ、人の身体ぁ!? あ、でも下半身は蜘蛛のままだ。何この中途半端な形態。なんか妖怪みたいだな)

 

とりあえず攻撃される前に繭から抜け出る。律儀に待っててくれたすっくんに感謝だね。……いや誰が感謝するか!!

 

()()したか。さらに受肉までも果たすとは……やはりただの呪霊ではないな」

 

(受肉? つまり私もう呪いじゃないの!?)

 

「先程よりは楽しめそうだな。―――来い」

 

(…………すっげー行きたくない。行きたくないけど、【転移】の術式発動まではまだ時間がかかる)

 

宿儺との戦闘開始直後から準備していた転移の術式。距離に比例してその発動までの時間が増える上に視界にある場所か一度マーキングした場所にしか行けない。そのくせ呪力操作が極端に難しく、連続発動や準備中の3つ以上の術式との並立利用ができないという性能は高いが使い勝手の悪い術式だ。

 

(しょうがない)

 

私は進化して大きくなる前と変わらないスピードで宿儺に接近する。

 

「やぁ!!」

 

そして、そのまま思いっきり殴った。腕4本の内の2本でしっかりと受け止められる。だが、進化の影響で呪力量、出力ともに何倍にも上がっているし、素のフィジカルもかなり強化されている。今なら、目の前の化け物とも殴り合えるだろう。

――直後、宿儺が笑みを深めた。

 

「受肉前なら欠損は治癒できただろうが――今はどうだ?」

(っ!! あっぶね!!)

 

咄嗟に身を捩り斬撃を躱す。

 

「よく躱したな」

 

真横から声。

 

「ご褒美だ」

 

斬撃を躱し、一瞬目を放した隙に宿儺は私の真横に立っていた。斬撃よりも速く移動したのだ。宿儺の掌が私の首に添えられる。そして――

 

「【捌】」

 

私の視界はクルクルと回りながら下がっていき、首のない人間の上半身と蜘蛛の下半身の化け物を映した。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「まだいくつか術式を隠し持っていたようだったが――所詮は呪霊か。つまらん」

 

腕についた血を払いつつ、興が冷めたように宣う宿儺。先程の表情とはうって変わって、世のすべてはつまらないと諦めているような、空虚な表情だった。

 

……しかし、何かを思いついたのか、その顔がニチャリと歪む。そのまま仕留めた呪霊だった生き物の頭の方へ歩みを進め、その髪を掴んで持ち上げる。

 

「裏梅にこれで何か作らせるか。元呪霊の脳髄……ケヒッ、どんな味がするやら――」

 

そしてそのまま踵を返そうとして、

 

「【転移】」

 

手に持っていた生首が急にそんな言葉を吐いた。

瞬間、手の内から重さが消える。その手に残っているのはまだ固まってもいない血のみ。見れば、先程までは不様に這いつくばっていた首のない死体も消えてなくなっていた。

 

「……用意していたのは、コレか」

 

そう呟いた呪いの王の表情は、どんなものだっただろうか。

怒りに満ちていただろうか、機嫌良く笑みを浮かべていただろうか、それともまさか食事ができず落ち込んでいたのだろうか。

それを伺い知れた者は、誰もいなかった。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「あぁー!! 危なかったぁ!!」

 

長距離転移を完了した私は、大きく息を吐く。

正直言って、綱渡りもいいとこだった。後少し運がなかったら、今頃私はこの世にはいなかっただろう。ピンチで進化なんてご都合展開があって助かった。

 

(ていうか何あれ!? 100%生まれる世界間違えてるわ!!)

 

あんなやつ、呪術なんてものがあったって日本にいていい存在じゃない。もっとファンタジーな世界にいるべき生物だ。例え転移の準備をせずに術式全開放でやったとしても、いったいどれくらい生きられたことか。

 

(――まぁ。そのお陰でこの受肉ボディを手に入れられたんだけどね)

 

受肉できたのは本当に幸運だった。

術式で下半身は人間の物に変えられる。少し肌の色が白すぎるが――まあなんとかなるだろう。つまり、

 

(これでゲロ雑巾並呪霊飯ともおさらばだ!!………まぁ強くなるためには食わないとだし別におさらばではないけど)

 

とにかく、うまく立ち回れば人間とも交流できるし、人間の飯や道具を使うことだってできるかもしれない。

 

(――でもまずは、反転術式を習得しないとなぁ)

 

斬られた首を触る。呪霊の時に欠損に慣れたせいかあまり痛みは感じないが、少し血が滲んでいた。

糸で縫い留めているものの、未だ再生していない首。流石に放っておくわけにはいかない。

 

(随分と難しいらしいけど………まぁ進化したこの私にかかればまぁ余裕でしょ。ちゃちゃっと習得して人との初コンタクトと行こー!!)

 

そして私は反転術式の習得にとりかかり………そのまま2ヶ月の時が流れたのだった。

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