呪霊ですが、何か?   作:なゆさん

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6話

宿儺とのあの戦闘から何年もの月日が流れた。

その間、約束の宿儺との定期的な戦いや鍛錬など以外に、宿儺に対して討伐隊が差し向けられたり、その討伐隊が大打撃を受けたせいで功を焦った位の高い連中が私に対しても討伐隊を寄越してきたり、宿儺の追っかけファンみたいなのに捕まって戦闘&強制ガールズトーク(一方的)をすることになったり……まあ色々あった。

その色々の詳細は話す機会があれば話すとして、その色々のお陰で私はかなりの強さを手に入れた。手加減なしの宿儺が襲ってきても対応して生き残れるぐらいの強さを。

それだけ強くなった為に、宿儺との戦い以外はさしたる危険もなく、平穏な日々を送っていたのだが―――

 

「……呪物化?」

 

羂索から突然そんな提案をされた。

 

「私は今、とある計画を立てていてね。その計画の最後の方に、大規模な殺し合いをしてもらう予定なんだ。その殺し合いを盛り上げる為に色々呪術師を誘ってるんだけど、殺し合いをする段階までもっていくのに何百年単位で時間がかかるかもしれない。だから、一度呪物となってもらって、然るべき時に復活して暴れてもらおうってことさ。既に宿儺には了承を貰ってるから、君もどうかな?」

「……断る」

 

やりたかないわ、そんな面倒なこと! 

そもそも、宿儺とか、コイツが選んだ術師とか、そんな連中と殺し合いなんて命が幾つあっても足りないじゃん! メリットになってないでしょうが!

しかも、呪物化ってのも怪しい。いったい何処でそんな技術を身に着けたのやら。趣味の悪いコイツの事だ。呪物化したついでに何かを仕込むことも十分にあり得る。コイツの言葉には警戒し過ぎるくらいが丁度いいのだ。

 

「えー、それは困るなぁ。いったい何が気に入らないんだい? 別に戦いだって嫌いじゃないだろう? 全力で戦う絶好の機会だよ?」

 

私ゃ戦闘狂じゃないんだよ!! そんなもんに釣られるか!!

 

「……そんなことしなくても、私は何百年後でも生きられる」

 

コイツの前で本音を言えば間違いなく面白がって嫌がらせをしだすので、それっぽい理由を話す。

私は別に人間でもなければ蜘蛛でもない。元呪霊という化け物だ。だからか、どうやら寿命というものが存在しないようだ。つまり、別にコイツの怪しい提案をのまなくても、コイツの計画が進行するまで待つことは可能なのである。

 

「君は何百年という長い間、私を待っていられるかい? 自らの生に飽きたり、孤独に耐えきれなかったり、君自身が死を選ぶ動機はいくらでも思いつくけど……それでも、君は生きられるのか?」

 

そんなもん――

 

「……余裕」

 

楽勝に決まっている。だって、これからの日本を知っているのだから。

鎌倉、室町、戦国、江戸、明治、大正、昭和、平成。

人々の生活は移り変わっていくのだ。暇になったら、人に紛れてその時代の文化を満喫すればいい。コミュニケーションなど、術式でどうとでもなる。

それに前世では生粋の引きこもりだったこの私が、孤独で自死などしようはずもない。

羂索の計画がいつ実るかは分からんけど、私は家にゲームを置ける日まで生き続ける!!

 

「へぇ……そうかい。なら、余計なお世話だったかな?」

『コク』

 

まったくもってその通り。

白織ちゃんは不滅! 引きこもり舐めんな!!

 

「じゃあ、私も色々することがあるんでね。ここらで帰るとするよ。これからは会うことも少なくなるだろうけど、行ける時は会いに行くから――」

「来るな」

「――相変わらず酷いね、君」

 

そうして、羂索は去っていき、その後、何百年にもわたって顔を見せなかった。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「……ん」

 

おっと。昨日はドラクエIXをやってたはずだけど、いつの間にか寝ちゃってたか。

 

(……懐かしい夢を見たな)

 

あれから時は流れ、世は平成。平成21年である。DSでドラクエができる時代である。

 

(そう考えると、ここまで本当に長かった)

 

あの時の羂索よ。余裕とか言ってスマン。ぶっちゃけ流石に長かったわ。

いつか来るゲームと時々来る勇気ある術師との暇つぶしをモチベーションに生きてたわけだけど、人間の文化の成長というのは本当に遅い。いつまで停滞で満足してんだって何度も思った。町に降りてもいつもおんなじことやってるし。そんなところ3、4回来たら飽きる。それに農村だといつもいつも便所みたいな匂いがする。村行きの意欲だだ下がりである。わざわざ時代によって京の都や大阪、江戸まで徒歩で行くことになった。

引きこもりにそんなことさせんな! 疲れるだろ精神的に!

ただ、そんな生活も終わりを迎えた。明治頃から戦後の高度経済成長まではめんどくさそうだから山に引きこもっていたんだけど、その甲斐あって無事ゲームができる時代に到達することができた。

ゲームの発売を耳にした時は『私の時代だぁ!!』って心の中で絶叫乱舞していた。

 

(……よく考えたらゲームで喜ぶ千歳以上のババアって字面ヤバいな。――いやいやいや、心は少女だから! 永遠のJKだから!!)

 

などと、意味のないことを考える。

そして気を取り直してゲームを始めようとした――その時、

 

(――結界に反応! 誰か来た!!)

 

久しぶりの来客にテンションは爆上がりである。

私の今住んでいる山には、私が結界を施している。非術師はここを認識できないどころか、意識すればするほど此処にはたどり着けない。更に並の術師は結界によって弾かれる。よって、ここに来る客人は余程運の良いやつか、もしくは腕のいい術師だけなのだ。

結界の性質上、ここには目的もなく遊び回って迷ってしまった子どもが迷い込みやすい。前回来たのも子どもだった。そして、子どもというのは総じてノリが良い。かるただったりコマだったり、その時代ごとに流行っていた遊びで、いっしょ遊んでくれるのだ。何百年もの経験からコミュ力が少しだけ上がった私は、なんとか子どもと意思疎通しながら遊ぶのが好きだった。

 

(今回はどんな子が来るかな? 私と同じゲーム廃人は引きこもってるから来ないだろうし、そもそも山に来てるんだからゲーム持ってないか――ポケモン交換用に買ったゲーム機がもう一台あったはず……)

 

あぁ、思い出すなぁ。前世の私のポケモン図鑑制覇はいつもポケモン交換とかいうクソ仕様に阻まれていた。……思い出したらムカついてきたな。誰だよあの仕様考えた奴!! 私にゲーム機とカセット2つずつ買う金なんてねぇよ!!

 

………おっと、思考が熱くなりすぎた。今は客人だ客人。今回は何して遊ぼうかな〜?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――子どもを歓迎しようと思ったら、塩顔の袈裟を着た男とどっかで見たことありそうな黒人がいた件。

 

誰やねんお前らぁ!?

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

男――夏油傑がその噂を聞いたのは、本当に偶然のことだった。

とある地域の町の近くにある雲白山という山の伝説。

その山には古くから、蜘蛛の化け物が住んでいるという。その身体は真っ白な人間の上半身に、大きな蜘蛛の下半身。善良な人間が出逢うと蜘蛛糸で編まれたとても上質な布を与えられるが、蜘蛛のお眼鏡に適わない人間が出逢えば食われてしまうという、一見何処にでもある地方特有の伝説である。

ただ、そういう伝説への恐怖から呪霊が生まれたり、強い呪霊がその伝説の発生源だったりするのだ。

非術師(さる)を根絶するため、最強の親友(邪魔な障害)に匹敵する戦力を求める夏油は、少しでも手札を増やしておきたかった。古くから伝説になっているのだ。一定以上の強さは見込める。主力の呪霊を増やせるかも……などと考え、その山を訪れることにした。万が一のことを考え、今集めた仲間の中で最高戦力であるミゲルを連れて。

 

その山は、異常であった。山の大部分が結界で覆われているのだ。それも、近くで見ないと分からないほど自然で、残穢をほとんど確認できないほど無駄な呪力のない結界だった。

 

「当たり、かもね」

「夏油、少シ嫌ナ予感ガスル。ココハ引イタ方ガ……」

「ああ、分かっている。しかし、ここまで来て引き返すわけにはいかないさ。――入るよ」

 

夏油は、その強固な結界の内部に入った。

 

「……これは」

 

結界の内部は、屋外とは思えないほど心地よい環境だった。今は冬だというのに寒さを感じることもなく、湿度もちょうどよい。広がる風景は山道だというのに、下手な家よりも暮らしやすい環境だった。

思わず少しの間呆けてしまう二人。――しかし、

 

「「――っ!!」」

 

突如として視界に現れた存在に、咄嗟に身構える。二人とも警戒を解いたつもりは一切ない。敵の結界内部なのだ。最上位の戦力とそれに見合った経験を持つ二人が、警戒を怠るなどありえない。それなのに、何の予兆も感じられないままに接近を許してしまった。目の前の存在は、明らかに異常だ。

 

第一印象は、白。白い髪、白い肌、白い服。ソレは白で構成された女性の姿をしていた。唯一血のような赤に染まった瞳が、じっとこちらを見つめている。表情からは何を考えているのか分からないが、ソレの纏う神々しいまでの気配は、確かに圧倒的強者のものだった。

 

 

「あ、貴方の住処に勝手に踏み入って申し訳ない。私の名前は、夏油傑。貴方の名前を聞かせてもらえないだろうか?」

 

流石の彼も酷く動揺していたのだろう、明らかに場違いな言葉を口にしてしまう。

一瞬にも、数刻にも感じる静寂の後、

 

「……白織。そう呼ばれてた」

 

ソレからのまさかの返答。

夏油はその名に心当たりがあった。

 

(白織! 呪いの王両面宿儺と双璧をなす平安時代の呪いか!!)

 

――白織。呪術全盛の時代とも言われる平安の世にて、両面宿儺とともに最強と恐れられた存在。幾度も行われた宿儺との小競り合いは、地形を変えることすらザラにあったという。

 

(知らずにこんな化け物の縄張りに入ってしまうとは…! しかし、これはチャンスでもある。呪霊である以上は、うまくいけば取り込める)

 

「白織といえば、平安時代に両面宿儺とすら渡り合ったと言われる呪霊。そんな存在にこんなところで出会うとはね」

 

(とりあえず、会話を引き伸ばしつつ何か糸口を――)

 

「……もう呪霊じゃない」

「――え?」

「……既に肉体を得てる。もう呪霊じゃない」

(なん…だと……)

 

肉体を得ているのなら、呪霊操術の術式対象にはなり得ない。希望が断ち切られ、夏油は一瞬狼狽する。が、

 

「それはすまない。白織は呪霊と聞かされていたものでね。しかし、こんなところで貴方程の存在と出会えたのは僥倖だ。――どうだろう。私の仲間として、術師の為の世界を創らないか? 貴方ほどの存在が仲間となれば、この夢も地に足がつくのだが」

 

すぐさま狙いを勧誘にシフトした。非術師を排除した、術師だけの世界。その実現のためなら、彼はどんなことでもする。

 

「……面倒。断る」

 

夏油の勧誘を一刀両断する白織。

しかし、夏油は諦めない。

 

「頼む! 非術師の殲滅に、貴方を頼るようなことはしない。私の願いは、私の手で叶えよう。貴方が面倒だと思う頼みなら断ってもいい。縛りだって結ぼう。私は、何としても術師(同胞)の為の理想郷を創りたいんだ」

 

思いの丈をぶつける。小賢しい策や、耳障りのいい言葉遣いを捨て、夏油は己の意志をまっすぐ白織に語った。

それが届いたのか、はたまた話を聞くのが面倒になったのか。

 

「……分かった。縛り、結ぼう」

 

白き蜘蛛は、呪詛師に下った。




夏油に少し違和感を感じるかもしれませんが許してください。
自分でも納得できてないけど、なんかここにこだわるとモチベが無くなりそうだったのでやめました。
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