呪霊ですが、何か?   作:なゆさん

9 / 9
受験というもので大変忙しく書けませんでした。
遅くなってすんません


9話

夏油の百鬼夜行からしばらく経った。現在、私は――

 

「――で? 誰だよコイツ」

「しゃけ」

「彼女さんか?」

「まさか、あり得ねぇだろ。普通に親戚とかじゃねぇの?」

「んや〜、呪詛師。ちなみにめっちゃ強い」

「「なんで連れてきた!?」」

「こんぶ…!」

「あぁ大丈夫大丈夫。多分襲ってくることはないから」

「多分かよ……」

「ホントに大丈夫なんだろうな?」

「ツナマヨ」

 

――ヤンキー系メガネ女子と喋るパンダと食べ物の名前しか喋らない白髪の美少年と面のいい白髪長身のクズに囲まれています。

 

「――というわけで、僕のアシスタントを引き受けてくれた白さんで〜す! みんな拍手!」

 

(ハァ、ないわ〜)

 

「表情動いてないけどめちゃくちゃ嫌そう……」

「ツナマヨ」

「どうせ無理矢理連れてきたに決まってる」

「……ゴホン。無理矢理かどうかなんてどうでもいいでしょ。これからは僕と白との二人体制で教えていくから」

「二人体制って……サボりてぇだけだなこりゃ」

「押し付ける気マンマンだろ」

「めんたいこ」

「君たち。先生に対して敬意が足りないんじゃない? 殴るよ?」

「「そういうとこだよ!!」」

「しゃけしゃけ!」

 

おうち帰りたい。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

話は1週間前に遡る。

百鬼夜行から数日、私は山に帰って以前のような生活を送っていた。

 

(あ~、やっとクリア。数々のゲームをクリアしてきたこの私のゲームスキルを持ってしても苦戦を強いられるとは。【ダーク○ウルⅢ】、中々のツワモノだった)

 

ボッチに対戦相手などいるわけもなく手付かずの山の中ではWi-Fi環境もクソもないため残念ながら対戦ゲーはできないが、術式を使って人から拝借した金と夏油から貰った金にモノを言わせて色々なゲームをやり込んでいた。

 

(流石に次はもうちょっと軽いゲームで気分転換を――ん?)

 

何故か背筋に悪寒が走り、立ち上がった次の瞬間

 

 

『パリン』

 

 

私が山に張っていた結界が破壊された。

 

(何事――)

 

「――よお、また会ったな」

 

背後から声をかけられる。つい先日、聞いたばかりの声。もう二度と聞くつもりのなかった声だ。

 

「……五条悟」

「お? 覚えててくれたわけ? うれしいねぇ」

 

いつ襲いかかられても対応できるよう準備しつつ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――!? 相変わらずハンパないね…!」

 

五条悟が妨害する間もなく、術式を発動させた。

一級下位以下程度の術師にしか通じない雑魚専用の術式だが、過半数の術師が意識を失った。これで連携は断てただろう。後は分体を使えばいつでも目の前の男以外は殺せる。

 

「……何でここが分かったの?」

「百鬼夜行にいたあの黒人、ミゲルに憂太を預けるついでにちょっと聞いたら教えてくれたよ。『俺ノ名前ハ出スナ』とか言ってたけど、縛りも結んでないし別にいいでしょ」

 

どうやらあのボ〇ーオロゴン擬きがあっさりペラったようだ。

 

「チッ」

(アイツ!! 普通そこは『仲間ハ売レネェナ』とか言って秘密にするもんじゃないの!? 稽古つけてやったってのにあの恩知らずが!!)

 

「――え? 舌打ち?」

 

無意識の舌打ちを五条悟に聞かれたようだ。

このままではクールビューティーな私のイメージが…! 落ち着け、落ち着け私。ビークールビークール。……よし、落ち着いた。

 

「……何の用?」

 

(私の平和な引きニートライフの邪魔をするなんて、私が温厚な蜘蛛ちゃんじゃなかったら問答無用でぶっ殺してたところだ。しょうもない用事だったらただじゃおかない)

 

五条悟は私の質問にニヤリと笑い、

 

「もちろんお前を殺しに――ってわけじゃなくて」

 

わざわざ剣呑な雰囲気を使ってまでフェイントをかけてきた。

 

(ッ! ……ふぅ~、アブナイアブナイ。私の格ゲー仕込のコンビネーションを叩き込んで小綺麗なその顔をぐちゃぐちゃにするところだった。――私は平和主義の優しい蜘蛛だ。身体は美少女、心は淑女なのだ。こんなことで怒るわけがない。私を怒らせたら大したもんですよ、ええ)

 

「お、今キレたでしょ?」

「……キレてない」

「ウソだぁ〜。殴りたくなったでしょ?」

 

(グッ…! 落ち着け私…我慢…我慢――よし)

 

「……何の用?」

「……ま、おふざけはこれくらいでいいや。質問に応えよう。――キミ、高専の教師になってよ」

「……無理」

 

(そんなのなるわけないでしょ。教師? ないわー。メンドイし、コミュ障にできるわけないない)

 

「百鬼夜行の呪詛師連中を鍛えたの君らしいね? 教えれないことはないでしょ」

「……イヤだ」

 

(どんだけペラペラ喋ってんだあのハゲ!!)

 

あの偽ボビー○ロゴンには次会ったら特製の劇毒飯を振る舞ってやろうと心に誓いつつ、五条悟の申し出を再度断る。

 

「この提案はそっちにも得があると思うけど?」

「……どうでもいい。断る」

 

私は今の平穏な引きニートライフを気に入っているのだ。何故わざわざそこから出て面倒くさい事をしなければならないのか。そもそも呪術師の頼みを聞くってのもなんかイヤだ。夏油は特別に協力してやったが、本来私は呪術師に対しても呪詛師に対してもあまり味方しないのだ。

だってアイツらなんかムカつくし………別に強くなる前に何度も殺されかけた事を根に持っているわけではない。ないったらない。

 

「提案を受けるメリットは3つ」

「……どうでもいいって言ってる」

「一つ、今この場で戦闘しなくて済む」

 

(全然人の話聞かないタイプだコイツ…!)

 

「二つ、呪術師を敵に回して日本中の呪術師に狙われたり、しつこく寝蔵を襲われたりすることがなくなる。そして三つ目――Wi-Fi完備プラス快適なゲーム環境の整ったパーフェクトルームをプレゼント。更に給料も高いからゲームとかも買い放題。なんなら誘えば誰かと一緒に対戦ゲームもできるかも」

 

(――なん…だと…!?)

 

五条悟の最後のセリフに、思わず身体がビクッと反応してしまう。私の心を動かしたもの。それは、唯一この山奥では手に入らないWi-Fi環境とゲーム仲間であった。

 

「クックック、反応したな? ミゲルからの情報は確かだったみたいだね。どうだ? 提案を飲む気になったか?」

「……くっ…!」

 

どうしよう…! どうすればいい…!? これは最適なゲーム環境を入手できるまたとない機会だ。呪術師に追われ続けるような面倒くさい事態に陥ることもなくなる。――だが、この提案を受ければ最後、私は平和な引きニート生活を失い職に就くという屈辱を味わうことになる。

 

「毎日毎日1人用ゲームかCPUとの対戦なんてつまらないでしょ? Wi-Fi環境を整えようと思ってもここじゃ無理だ。だけど拠点を移そうにも見た目も呪力も目立つから人がいるところだといつか足がつく。この提案を飲むのが一番手っ取り早いよ?」

 

ぐうの音も出ない。正にその通り。でも……

 

(働きたくない…!)

 

前世から生粋の引きニートであるこの私が、教師などというブラックな職に甘んじるなんて…!

 

「どうする?」

 

五条悟が再度問いかけてくる。とっとと言質を取って縛りでも結ばせようって魂胆だろう。私もいい加減決断しなければ。

 

「………私は――」

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

そして、現在に至る。

結局、あの後五条悟と縛りを結び、私にパーフェクトルームを提供することと呪術師勢力に私への手出しを禁ずることを条件として五条悟の補佐という立場に立つことになった。

縛り解除の条件は五条悟か私のどちらかの死亡、もしくは双方の合意、または上層部が私を裏切った場合である。

 

早速縛りを結んだ事を後悔している私をよそに五条悟と生徒たちの言い争いが一段落したようだ。

まぁ、初日からいきなりガッツリ仕事があるわけでもあるまい。さっさと済ませてWi-Fi部屋でゲームでも――

 

「さてと。自己紹介も終わったことだし、早速今日一日生徒たちを頼んだよ」

「……え?」

「僕これから任務だから」

「「「は?」」」

 

奇しくも生徒たちと声が被る。それも仕方ないだろう。この男は今何と言った? 私に今日一日生徒たちを任せると言ったのか?

 

「……正気?」

「当然。縛り結んでるし下手なことはしないでしょ? 訓練とかでボコボコにする分には問題ないから、適当に鍛えといてよ。――それじゃ!」

 

私のイライラを察知したのか、目の前から五条悟の姿が掻き消えた。

 

「えっと……」

「あー……」

「高菜」

 

パンダと美少年が気まずそうに話しかけてくる。呪術師なんてやっている割には、根は善人や善パンダなのかもしれない。

 

――だが、

 

「……もういい」

「「え?」」

「……全員、かかってこい」

 

可哀想ではあるが、五条悟の分も私の八つ当たりに付き合ってもらおう。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

任務を終え高専に着いた五条悟は、目の前の光景に唖然としていた。

殺人現場のように血に汚れたグラウンド。散乱した綿毛。そこに横たわる無傷の生徒たち。

他2人は完全に気絶していたが、人間ではなく呪骸であるからかパンダだけが膝をついて立っていた。

 

「何が起こったの? コレ」

「お、オマエが呼んだあのバケモンの仕業だ……」

「え? 何その声、ウケる」

「ほっとけ! コレもアイツのせいだ」

 

パンダの声がいつもの野太い声から随分可愛らしくなっていた。なんというか、見た目に合った声である。

 

「アイツ、いきなり実戦形式で俺らをボコボコにしてきたんだ。反転術式が使えるからって致命傷になるような攻撃もバンバンしてくる上に回復した瞬間には次の攻撃を撃ってくるから休む暇もねぇ。一日中ずっとアイツのサンドバッグだった」

「へぇ~。で? 仲良くやっていけそう?」

「話聞いてたか?」

「まあそこはおいおい慣れてよ。でもいい先生だったみたいだね」

「なんでそう思う?」

「他の二人はともかく、パンダはだいぶ強くなってるじゃん」

 

そう。他2人には目に見えた成長はないが、五条の眼はパンダが任務前に会った時とは別次元の強さになっているのを見抜いていた。

 

「素材ごと取っ替えられたんだよ」

「素材ごと?」

「俺が呪骸なのに気づいたアイツが、どうやってかは知らないが俺の3つの核だけ抜き取ってアイツお手製の呪骸に移したんだ。性能は確かにすげぇが、おかげで俺のイケボがボイスチェンジャー使ったみたいに……」

「……マジ?」

「大マジ」

 

普通はあり得ない。というか理屈が合わない。

パンダの核というのは物体として存在しているわけではない。人形に定着した呪力の中で、呪力操作や人格を司るものが核と言われているだけだ。核は掴めないし、核がなくなればパンダは死ぬ。もし仮にパンダの核を抜き取れたとて、それを移し替えるなど不可能だ。方法なんて想像もつかない。

一つ言えることは、百鬼夜行時、白織が見せた閉じない領域と同レベルで常識外れな神業であるということだ。

 

「……まぁどうやったかはいいや。それで? 新しい身体の具合はどう?」

 

五条の見立てでは、形態変化も駆使すれば一級最上位レベルとも渡り合える強さになっている。術式そのものは変わっていないが、呪力の質が段違いだ。

 

「基本的には単純な強化だな。呪力量や出力が何倍も上がった。素材が変わってるからその分呪力なしの身体能力や耐久性も上がってる。そもそも素材がアイツの術式で作られた糸らしいから相当硬いし呪力の通りもいい。炎や氷、電気なんかにも耐性があるらしい」

「そりゃ、随分と大盤振る舞いだねぇ。良かったじゃん」

「そりゃそうだが、その代わりずっとこの声だぞ?」

「見た目相応になったんじゃない?」

「それが教師の言うことかよ。生徒が嫌だって言ってんだぞ?」

「それ僕関係ないもん」

「このクズ教師が…!」

「――あ、今日はもう訓練終わりでいいから、パンダが2人運んどいて」

 

そんなセリフと共に、五条はその場を去っていった。

 

「とりあえず僕が離れても動きはナシ、か。まだ警戒は要るけど、たぶんしばらくは大丈夫かな」

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