何の変哲もないとある独身男性の日常の話 作:泡沫幻想黒衣の人
某月某日…今日も今日とて我らの秘密基地にて考察談議。
今回の集まりに関して、1つ今までと違うところがあるとすれば…一輪の華があること。
小鈴「やはー、男たちによる男だけの秘密基地…本当に持っているんだね秘密基地、一種の都市伝説かと」
一平「そして新入りを迎えるにあたっては特別な儀式がある」
野洲「設備の設定を…こうかな?カメラ、録画用意できました!」
(いつのまに床下から謎の設備見つけたんだろう)
日和見「か〜」野洲「め〜」一平「は〜」小鈴「め〜…」
小鈴「波ーっ!…って、なにこれ?」
野洲「あらら、カメラが途中で止まっちまったわ、これの操作謎に難しいんだよなー」
多分、俺らに扱える代物じゃないと思うよ、その床下の設備。
「今回は緊急の集まりだったね?」
一平「ああ、実は例のトンネルで、写っちゃったんだよね…」
小鈴「心霊!?wkwk」
一平「そこにいなかったはずのブロンドの髪の女の子の像が!」
野洲「どうせやらせだろ?お前のことだから」
一平「なっ、失敬な、モノホンだよモノホン」
この写真は…あぁ、やっぱり、例のトンネルだ。
例のトンネルとは赤い霧事件でも有名な通称…『底無しトンネル』。
実はあのトンネルはとある時期に作られた、〝何処かへと続くトンネル〟という都市伝説を元に発生した新たな都市伝説…底無しトンネルの都市伝説も孕んでいて、その底無しトンネルの伝説というのは入り口から入ったら最後…
奥にあるはずの出口には永遠に辿り着けない、しかし入り口方面に向き直ればすぐにまた入り口に戻れるとされている伝説。
まぁ実際は普通に向こう側に辿り着けるはずなんだけどねあのトンネル。
しっかしひとつところを起点に都市伝説が複数あると色々と影響が複雑に絡み合って新しい都市伝説を生み出す土壌となりやすいのかもしれない。
昔から怪しい話がてんこもりなあの山はもはや都市伝説生産現場と化しているな。
写真の少女「…」
「んで、それだけで俺たちを呼び出したわけ?」
一平は俺のその言葉にはつらつとした顔で答えた。
一平「…ふっふっふ、聞いて驚け、この写真の少女はなんと、〝存在しないんだよ〟」
そりゃ見たとこ幽霊だから現実に存在しているかどうかは曖昧だろう。
野洲「どういう意味?」
一平「近隣の住民の証言によると、あのトンネルで消えた人間は1人だけじゃない、もう1人居たみたいなんだ」
「それがこの子って訳?」
一体彼女は何処の誰で、どうやって来たのか、そこまでの検証をしているのか?
一平「でもこの子の来歴はついぞ誰にも分からなかったんだよ、近くにこういう子がいる、いた、ということもなかったみたいだし?」
野洲「それでこれは存在しない子の写真だとかいうわけ?」
「現地の人達には知られていないルートで来た線はないのか」
一平「あそこはほぼ一本道以外獣道もなければ急な崖になっているところもある、そこをこんな軽装の少女が歩いてこれるとは思えないし、何より彼女はこのトンネル付近でしか目撃されていないらしいんだ」
ふーん?来歴不明の幽霊子ちゃんか。
「夢のない話すると、ある時に一時的にトンネルを仮住まいにしたホームレス少女なんじゃないの?」
野洲「俺も同意見」
一平「だ、だけど彼女がトンネル周辺に来たのを目撃した人は誰もいないんだぜ?トンネルがある山の1番近くに住んでいて、余所者の気配には必ず気付く爺さんだって気付かなかった存在なんだ」
「そりゃあ幽霊だからとか…?」
一平「…幽霊?そんなちゃちな存在じゃあないと思うけどな俺は、写真に写るだけのモノホンの怪異なんだよ彼女は!」
写真に写るその一瞬だけ存在する少女の怪異ねぇ…?
「一応どんなカメラで撮った写真か、そこら辺の歴の情報があったら教えて」
一平「それは、ほら、いつぞや発掘した小数点付きのカメラに近いカメラで写したものらしいぞ、これを写したのはあの!赤い霧事件の関係者とされているんだ」
俺が写真の来歴を問うと、一平は詳しい経緯は話さず出所と思われる情報だけを小出しした。
その赤い霧事件の関係者って誰なんだよ…。
野洲「取り敢えず俺も写真撮ってきていいか?それで彼女が写ったら本物認定ってことで」
小鈴「もし撮るなら、古い型のカメラにしないとね」
小鈴の言う通り、それが彼女の発生条件となっているかもしれないが…。
「例のトンネル、もう肝試しやいたずら目的で入ることは禁止されてるぞ、地元民の総意でな、古いトンネルだしそんなところに子供が入っていったら大変だーということで」
だけど未だに深夜に肝試しに来る輩がいるとか…俺もそういった輩の内に入る、残念ながらね。
一平「それは、深夜人目が付かない時にこっそり行けば…」
「怖い目に遭いたいならどうぞ」
この前の巨大蝙蝠のことを思い出しつつ言う。
一平「寧ろ大歓迎なんだよなー、怖い目に遭わせてくれるのが怪異とかなら」
そうだった、俺らそういうことに関しては寧ろカモンベイベな狂った人間達だったわ。
小鈴(深夜に曰くのトンネルで肝試しか、シャレにならないことになったら面白そう)
一平&野洲「ところで…」
…ちっ、色目使ってんじゃねぇ!糞野郎共!彼女はつい最近男で大変な目にあってるんだよ、そんな感じのことを言ったら大人しく野郎共は引き下がった。
その夜遅く…
日和見の部屋 玄関
警察「失礼します、ここが日和見さんのお宅で間違いないでしょうかー?」
靉靆「あー、はいー?如何なされましたかー?」
警察「いえ、実は公共の風紀を乱した疑いでこちらの部屋の主人を捕まえていまして、今回は厳重注意で済ましたんですけど、周りの住民の不安を煽るようなことはしないようによーく言って聞かせて頂きたいとこちらの大家さんにも伝えてきたところでして…」
日和見「」
靉靆「………はい?」
小鈴「ふわー、なになにー?どしたのー?あれ、おかえりー(なんで警察?)」
実は一平の話を聞いていてもたってもいられず、例のカメラで例のトンネルを写して、現像でもしようと山を降りたら張っていた警察に確保されたんだよね…。
これは俺の中で好奇心の為に醜態を晒した苦い思い出に…………
ならなかった。
写真の少女は確かに存在した、トンネルの暗闇の中に…。
誰も存在していなかった筈だ、俺がトンネルに入る前には周りに誰の気配もないことをちゃんと確認して…だとすると彼女は幽霊か何か人外の存在だろう。
その幽霊は仮称メリーと称する。
その仮称の訳は何故だか容姿が似通っているように思えたからだ、秘封倶楽部の彼女に…。
幽霊(メリー)の写真「…」
そして今、写真の中で彼女は揺らいで存在している、そのうち消えてしまう運命なのだろうか?何故か段々と彼女の部分だけ色が薄くなっていっていてその内視認できなくなりそうだ…。
ちなみに写真の現像元は…夢幻館、戦前は人がいたらしいが今や無人の写真館だ。