何の変哲もないとある独身男性の日常の話 作:泡沫幻想黒衣の人
アパート[ファンタズム]
日和見の部屋
3月末…。
お別れ会から数日、小鈴は朝早く旅立っていった…。
起きたら取り敢えず何もされていないことを確認してから小鈴が来る前のいつもの日常に戻るつもりで朝を過ごす。
…っと、猫ちゃんを起こすこと忘れるとこだった。
しっかし、法律上彼女はどんな立場なんだろうね?特別養子縁組は…大陸の方に親がいるかもしれず勝手にできない。
そこで俺が保護しているのが現状だが…戸籍が無いままなのは非常に問題だ。
一応不都合がないようにはしてくれると警一が言っていたけど、一警察官に何が出来るんだか…期待はそれほどしていない。
歳が歳なら相手の了承を得た上で婚姻関係を結ぶこともできるんだけど…まぁそんな関係でもなし、それに…彼女は超能力などの特別な力をもっていない。
………いや、そんなのは当たり前だろう。
それより今日、鍵開けの仕事は来ているかなーと、自作のホームページ《世界一早い!?鍵開け承り!》を開く。
………無い、いつもこの時期には他と比べて割高なうちにもひっきりなしに仕事の依頼があるのに。
昨日、いや…一昨日まではびっしり依頼あったよね?
何故にこんな急になくなったし、依頼…。
まぁ考えてても仕方ない、今日は依頼があるまでゆっくりするか。
常ならばこの時期は休みなんて無いも同然だもんね、逆にありがたいと思わなくちゃ。
靉靆「ご主人様、朝ですよ」
日和見「そういえば靉靆、お金は大丈夫?渡したのだけで足りる?」
靉靆「大丈夫です、欲しいものも特にありませんし」
日和見「そうか、俺の口座にあるとはいえ、お前のお金なんだから自由に使っていいんだからね」
靉靆「はい」
しかし、靉靆の暮らしの為に直に一億渡すのは断られるだろうからって、給料名目で一億渡すって、どんだけ金持ちなんだろうなぁ亀鶴さん…。
なのに質素な生活してるの、凄い好感持てる。
靉靆「今日は何かご予定は?」
日和見「今のところはないよ」
靉靆「では散歩でもしてきたらいかがでしょう?猫ちゃんと一緒に」
猫「さんぽか、そういえば最近やってなかったかも」
日和見「さんぽねぇ…(面倒臭い)」
だけど歩くのは健康にいいって言うし、久しぶりに散歩でもするかな。
かといってこんな真っ昼間っからほっつき歩いてるとまたご近所さんに仕事はどうしたとか思われそう。
日和見「よし、さんぽ行くか、ついでに何処か神社にも寄って行こう」
猫「じんじゃ?それって…オイナリサマとかがいる?」
日和見「ん?あぁそうだぞー、これから行くつもりなのは稲荷様じゃないけどね」
猫「ん?そうなんだ(じゃあ八咫烏様や真神様のところかな?)」
・・・、
八雲神社
猫「公園かと思った」
日和見「あっはは、まぁ普段は公園みたいな使われ方してるみたいだよ」
集合住宅地のわずかな隙間に建てられた八雲神社の分社。
こちらも本社と同様創建された時期は不明なれど、長く地域の人々と共にあったことが伺える。
その証拠に公園の砂場から江戸時代の茶器の破片など、昔の人々の生活の様子が伺えるようなものが出てきている。
金継ぎのやつが出てきたときなんて、地元でちょっとしたニュースになったんだっけか。
確か今は近くの公民館の奥の方に展示とかされていたような。
日和見「さてと、お賽銭あげに行こうか」
猫「えーっと、お賽銭あげるとき何か儀式するんだよね?」
日和見「儀式?あぁ…二礼二拍手一礼ってやつだな」
猫「二礼二拍手一礼?二礼四拍手とかじゃなくて?」
日和見「んー?あー、そういえば二礼二拍手一礼は昭和の終わり頃から流行ったやつだっけか?」
正確には一念一祈一拝一礼(四礼)八拍手一礼………だったっけ?
日和見「神社ごとに違う参拝の儀式があるって話もあるけど…要は心の持ち用だ、神様お願ーい!って一生懸命お祈りするんだぞ、だけど拍手の音は鳴らさない、またはポンポンといった軽い音でね」
日和見「あとちゃんと願いが叶ったらお礼参りにきて、その時にパンパン元気に鳴らすんだぞ拍手は」
猫「はーい!(二礼二拍手一礼)」
さーて、俺のお願いは………取り敢えず不思議な事物に出会えますようにとしておきます。
日和見「ちゃんとお願いした?」
猫「うん!皆元気でいるようにって!」
日和見「そっかー(いい子だ)」
ところで皆ってどの皆?フリースクール寺子屋の子たちかしら…。
日和見「さて、それじゃあ次は宇佐美神社にも行ってみようか」
猫「うさみ…ウサギさんの?」
日和見「違うよ、八幡様の分霊がお鎮まりになっている神社でうさぎとは関係ないんだ」
猫「ふーん」
・・・、
道中
道中バザーをやっていたのでちょっと寄り道、さっさと参拝に来いよってほど神様もせっかちじゃないだろうから、このくらいの寄り道くらいは許してくださいな。
日和見「おお〜…」
猫「何か見つけたの?」
日和見「藍染の美しい履物をね、部屋履きにいいかも」
猫「……3まんえん?」
日和見「げっ………(たっか!!?)」
・・・、
宇佐美神社
日和見「あれ〜?おかしいなぁ」
猫「立ち入り禁止だって」
日和見「賽銭箱に悪戯があり………ってははーん、賽銭泥棒かな?罰当たりめ」
警察の鑑識が入ったりするから立ち入り禁止なのかもしれない、後日また日を改めて来てみようと思う。
・・・、
日和見の部屋
日和見「ただいま〜」
猫「ただいま!」
靉靆「あ、おかえりなさいませ、お昼できておりますよ」
日和見「ありがとう」
やっぱりハウスキーパーがいるといいな、自分で料理しなくて済むんだもん。
と、その時携帯が鳴った。
非通知じゃない、一体何処からの番号だ………ジュリア?
ジュリアジュリアジュリア……………あっ、ジュリア姉さん!?
日和見「も、もしもしー?一体何の御用で?」
ジュリア「あー、出た出た、って、他人行儀が過ぎない?今からそっちいくからちょっと泊めてー」
日和見「はい?えっ、泊めてって、そんな急に………切れた」
靉靆「知り合いですか?」
日和見「ん?あー、腹違いの姉だよ」
靉靆「まぁ、腹違いの…」
日和見「ジュリアっていう伯剌人でね、ちょっと色々あったんだ、うちの親父…」
靉靆「そうなんですか」
ジュリア姉さんは父が18のころ伯剌で誤ってこさえた子供で、今のいままで存在を忘れていたくらいだったのにどうして急に…。
・・・、
都内某所
ジュリア「いやー、参ったわ、友達ん家泊まり歩いてたら迷い子拾っちゃったんだもの…」
少女「…」
ジュリア(見た目からして明らかに外国人の子供って感じ、それは私もだけど)
その後の日和見の人生で小鈴と会うことはついぞ無かった…。