何の変哲もないとある独身男性の日常の話   作:泡沫幻想黒衣の人

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 大体は作者が本当に見た夢の通り。


30符 Dream Express

 ガタンゴトンという音を聞いて目が覚めると、上手く認識できない、ボヤけたままの世界で、改札の前に立っていた。

 

 チケット…否、切符もなしに通れてしまったので、右手の階段を降りて、ホームの黄色い線の前で電車を待つ。

 

「1番線、未来行き、夢列車がまいりまーす!パヒャッ!」

 

 特徴的な、失笑?を耳にした後、僅か1秒にも満たない間にいきなり目の前に、これまた特徴的な列車が現れた。

 

 運転席があるであろう前面は真っ黒で、両端に青いラインが入った半月型の形状をしていて、続く車両はそれには似合わないアルミでできたコンテナという風な簡素なものに見える。

 

 そこに自分の意思と関係なく身体が乗り込もうとすると、突然ドアが現れて中に入れるようになる。中に入ると誰もいない。

 

 ………いや、1人いた。少し不明瞭でノイズが走ってるように見えるものの、俺の理想の少女だ。思わず見惚れていると向こうからウィンクをしてくれた、可愛い。

 

 されどもやはりずっと見ているのも失礼かと思い、運転席の方に視線を移すと、運転手の制服に身を包んだ小さい緑髪の存在が見える。小学生か中学生の子が運転しているんだろうか。自分としてはそのくらいの時期の早苗に見えて仕方ない。

 

 後ろ姿しか見えないから確認のしようもないんだけど。

 

「では、西暦2112に向けて出発します」

 

 と、今度は無機質なロボットの音声が流れると瞬時に時速1万kmと、先程まで駅名などが表示されていたであろう場所に速度が表示される。

 

 そんなにスピードを出せば次の瞬間にはぺしゃんこだろうけど、そんな不安を抱かなくてもいいくらい安定した運転に感じる。

 

 窓から外を見ると、地面が見えなくなって、大きなビルをいくつもいくつも通り過ぎていくかのような景色が広がっている。その中によく見ると2、3列今乗っているのと同じような列車が走っているのが見える。

 

「ねぇ」

 

 いつのまにか座席の隣に座っていた先程の少女に声をかけられた。

 

「な、何事か用かな?」

 

 一瞬緊張しすぎて、言葉が変になってしまっただろうか?

 

「ちょっとだけ顔を近づけて見ていいかしら」

 

「それは勿論…いい、よ」

 

 許可が取れたとみるやいなや少女はその端正な顔をこれでもかと近づけてきて………その柔らかそうな水気を湛えた唇が俺の頬に触れた。

 

「ちょっとなにやってるの」

 

 そんなことを言いながらも、俺の心中はどったんばったんで、落ち着いてくれない。そして、俺の問いには少女は答えず、向かい側の座席に座り直して、窓の外を見てそれっきり2112年の駅で降りるまでそうしていた。

 

「えー、間もなく、間もなく2112年〜、パヒャッ!」

 

 またも特徴的な失笑を耳にしつつ、少女が降りていくのを見送る。

 

「未来で待ってる」

 

 降り際、そんなことを少女が呟くも、その時俺は故人だろうし、冗談のようなものと受け取る。

 

「次はー、2756年ー、2756年です」

 

「出発しまーす!」

 

 またロボットの音声がすると、次に運転手が元気よく声をあげる。今度は7000kmで走っていく。窓から見る景色は先ほどよりもビルは見かけなくなり、螺旋状の住居だろうか?明かりがついたものが見える。

 

 そして前よりも同じ列車の列が格段に増えていくと、前方に超巨大なターミナル駅のようなものが段々と見えて来る。

 

「トラブルのためー、この先迂回して、紅界に行きまーす」

 

 そうロボット音声が告げると一瞬でターミナル駅を過ぎ、紅界の駅に着く。

 

「折角ですし、観光していっては?」

 

 そう運転手がこちらを振り向かず言うものだから、首肯し、列車を降り、改札を出て外を歩いていくとすぐに赤い世界が広がった。

 

「赤い雨に霧…人っぽいのはみんな角が付いてるし、怖い世界だな」

 

 降りて観光しに来たことを後悔して、すぐに列車の中に戻るチキンな俺。

 

「間もなく出発致しまーす」

 

 そんなに時間も経たないうちに戻ってきた俺を一瞥もせずに運転手は運転を再開するようだ。

 

「あーいやいや、トラブルとは参ったね」

 

 いつのまにか乗り込んでいたもう1人の乗客、ドレミー・スイートに似た存在の声に気を取られる。

 

「どれみー?はて、誰かしら」

 

 自分は今声に出しただろうか?

 

「私は獏、ただの夢獏、それ以外には無い」

 

 夢獏さんというらしい。たしかに彼女はドレミーの特徴的な服じゃなく、赤いスーツを着ている。なら、彼女はドレミーではないのだろう。

 

「この時代は初めてかい?」

 

「はい」

 

 そして気がつくと鉄錆びた地面に、アリの巣状に金属の何かが広がる空を夢獏さんと共に見上げていた。そして小型のドローンに吊られて降りてくるのは顔。顔、顔、顔。

 

 昔、とある子供番組で見かけたような四角い箱に顔が表示されているものが大量に空からドローンに吊られて降りてきた。それら箱の顔は此方に一瞥もせずに整列し、後方の海の上を歩き出した…カオス。

 

「ふふっ、お気に召しましたか?」

 

 そう声をかけられた場所に向かって顔を向けようとするも、何故だか向いてはいけない気がして、結局そのままその声を受けて…。

 

「またのお越しをー!次があるかはわらないけどね、先達!」

 

 よくわからないまま夢の世界を去るのだった…。

 

箱の顔の1人「…」

 

 最後の最後に知らない顔に見送られて…。




 夢って大体は訳わからんものだったりするものですよね。
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