何の変哲もないとある独身男性の日常の話   作:泡沫幻想黒衣の人

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32符 奔放少年とお嬢さま

 メリーが来て未だ3日目

 

 

 

 会津若松

 

 

 今は真夜中、おやつ時から夕方はまた適当に散策だけして宿を確保した後、剣道場の近くで〝出る〟とのことでメリーと肝試し的な、そんなことをやっておりますと、昔の格好をした子供が1人いたので心配して声をかけるも、そんなことより剣の相手をと言うので相手をした帰り…。

 

「ボコボコのボコじゃんね☆」

 

メリー「それにしては次第に動きが良くなっていたと思うけど」

 

「見え透いたよいしょはやめてください」

 

メリー「それにしてもこんな時間まで練習だなんて、凄い努力家ですね、あの子」

 

 いや、もっと他に言うべきことがあるでしょ。

 

 それにしてもこんな時間に出歩くなんて、あの子の親は何してるんだろうか。いつのまにか帰ったのか、目を離した隙に居なくなってたけど、無事に帰ってるといいなぁ…。

 

 って、側から見たらまるっきり誘拐犯かなにかに見えるかな、現状………早く宿に戻ろう、職質されたら最悪錠前を掛ける。

 

 

 宿泊所

 

 

宿主「いやー、一体どこさいったべかとおもっとったところなんよー」

 

「心配かけてすみません、知り合いのお嬢さんが夜風に当たりたいと言うもので…」

 

メリー「ごめんなさい」

 

 俺達がとった宿は満室で残ってる部屋が宿主さんの部屋だけだったので、特別にそこに泊まらせて貰っている。宿主さんは別に持ち家があるみたいで、そこで今夜は過ごしていたところ出て行く俺達を見かけて心配していたようだ。

 

宿主「気をつけるだ、こんな真夜中に出て天狗さ出るといけねぇ、拐われっぞー」

 

「はい…」

 

 天狗かー、この会津若松で、俺の夢枕にでも現れてくれないものか。

 

メリー「天狗さんには是非会ってみたいですね」

 

「ちょっとメリーさん?」

 

メリー「あ、えっと、ご忠告痛み入ります」

 

 本当かねってなっちゃうよ、さっきの言だと。

 

「さて、じゃ、明日に備えて寝ますよ」

 

メリー「はい」

 

 勿論布団同士の距離は出来るだけ離している。

 

 

 …………………数時間後。

 

 やっぱり眠り浅かったよ、隣にいるのがあのメリーかもしれないと思ったらよくは眠れない。当然だよね?

 

「さ、朝ご飯を済ませたら早速北上しましょう」

 

メリー「私は、もっとこの辺を見ていきたいです」

 

 ここに来るまでの道中ずっとあっちこっちへふらふらして、この子の観光気分は如何なものか…現状が分かっているのか定かではないけど、過去に来ていることに気づいていてこれなら大分お気楽が過ぎると思ってしまう。

 

 普段ならこういう危なっかしいところを蓮子がフォローしているんだろうか、そう考えるとてぇてぇ(尊い)。

 

 

 諏訪神社

 

 祭神建御名方神…のミナカタは、ミナカタの神、つまり水神様ってこと。そして建御名方神は現代語に訳するとすれば立てられた柱(水神様)、御祭神ならぬ後祭神。  

 

 彼の神様は八坂の代理の神様であり、かなすわが幻想入りする時に仮に立てた神様だって考察をどっかで見たときはそんな考え方があるのかと、妙に感心したものだ。

 

 ここへは通りかかっただけだけど、一瞬メリーの姿がブレて〝すわ〟…こういう変な驚き声がでるぐらい吃驚した。やはり神様関係の場所、事物はメリーと一緒にいる間警戒した方がいいのかも。

 

メリー「神社…あぁ、結界の向こう側はつくりものみたい」

 

「つくりもの?」

 

メリー「まるで機械仕掛けみたい」

 

「そうなんだ?」

 

 一体彼女の目には何が映っているのやら…。

 

「気になるのは分かるけど、神域に対して不埒だから覗き見るような真似はやめましょうか」

 

メリー「分かった、それより信じるんだね」

 

「僕もそれなりに不思議な力を持ってるからね、無手で鍵を開けられるってだけだけど」

 

 今向こう側に行かれたら俺としては何も出来ないだろうから、その可能性がある限りこういうのはやめてほしいところ。

 

「それより、まだ歩くの?そろそろ休もうよ」

 

メリー「んー、それじゃ、甘味処を探して、そこでお喋りしましょう。私が退屈しないようなのを頼むわ」

 

「さいで…」

 

 このお嬢様は面白いお話をお望みの様子。

 

「じゃあ近くの串団子売ってる場所に行こうか」

 

 最早絶滅危惧種となっている串団子、まだ売っている場所があるというのはなんだか嬉しく感じる。

 

メリー「あ、私お金…」

 

「………今更なんですよ、気にしないで」

 

 団子といえば、馴染みの団子屋の婆ちゃん元気かな、またあのみたらし団子が食べたくなってきた。戻ったら早速寄ってって買おうかな。

 

 昔のちょっとした友人、惣十郎(そうじゅうろう)も呼んで昔話に花を咲かせたい。

 

メリー「それで…面白い話は?」

 

「そうだったね、それじゃあ地獄門でも語るかな」

 

 地獄門

 

 

 むかしむかしというほどむかしでもないほどのちょっとむかし。

 

 明治15年 某月某日。

 

 幻太夫という遊女ととある小説家がおりました。

 

 これは定かな話ではありませんが、その小説家は幻太夫が開いた地獄への道を辿った先で閻魔様に出逢ったとか…。

 

 そこで小説家は閻魔様に問うたのです、地獄門を開きっぱなしではあの世とこの世の行き来が出来、伊邪那美命伝説の再来が危惧されるのではと。

 

 閻魔はその問いに返事をしました。

 

 大丈夫、あと2年もしないうちに地獄門を閉めるからと。

 

メリー「え、それで終わり?」

 

「ん、まだ聞きたいから、なら天狗の話でもするかな」




 次は天狗の話から。
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