何の変哲もないとある独身男性の日常の話 作:泡沫幻想黒衣の人
蓮子の記憶を持つ彼女が来てから2日目…麟ちゃんの言を受け、早速東方へと赴いたのだが…。
フダチ「我、そこにいる」
日陰「そばに…だよ」
フダチが無理矢理エアカー(空飛ぶ車)に乗り込んできたので、仕方なしにそのまま出発した次第。
しかし本州最東端付近まで来たところで、違法な人体実験を受けた狼頭の怪人が秘密研究所から脱走して暴れているとのことで全面的に最東端に行くための手段が断たれてしまっていた。
蓮子「こんな時に…」
麟「残念だね」
そこにまったくもって間の悪いことに、私の端末(バングル型)にある連絡が入る。
*「娘が帰ってこないのですが、何かお知りになりませんか?」
ネッ友の、りま(本名はリ・ラズベリ・マエリベル・キサメ)の関係者からだろうか?知らんし、今は忙しい。
…ということで、預かり知らぬ旨をそのまま返信。
と、気を取られていたところ、エアカー内蔵AIが安全の為に我々に警戒を促すアラームをビーッ!!!!!と鳴らすと、直ちに臨戦体勢になる麟ちゃん、フダチ、そして私。
蓮子「ななななな、なんか来る!?」
蓮子の言葉に前方に目を見張れば、小さく、しかし恐ろしいスピードで此方に迫ってくる人型を視界に捉えた…頭部が狼に見えるので、例の怪人の狼男だろう。
その存在に何故か私のバングル型端末が反応する…バングル「イヴ因子投与済、実験個体名【犬走】___」
そして表記が途中で消え失せる。
…イヴ因子、どっかで聞いたような?確か新しく設営される〝パーク〟内で使われる予定のヒト因子の研究初期段階での呼び名だったかな…?
それが投与されて………って事ならこの件、私は無関係ではいられないな。
日陰「そこの狼男!止まれ!そして名を名乗れ!我々は貴様の身の安全を保証する!大人しく我々に従うといい!」
麟「え」蓮子「え」
えじゃない、えじゃ、ここは何も言わなくても合わせて欲しい…むちゃ振りなのは分かってるけど。
狼男「グルルルルゥ!!」
唸り声をあげ、威嚇しながら迫ってくる狼男はどう見ても正気ではなく、洗脳装置にでも入れられていたのかってぐらい、何かしらの機器の残骸が手足と頭にこれでもかとくっついている。
しょうがない、鍵でも刺すか…そう決めた刹那、エアカーが壊されそうになったので、ライトで威嚇、即座にエアカーを降りると鍵を掌に生成し、狼男の胸に差し込む。
狼男「ア…オ…」
日陰(悪いね、鍵をかけさせてもらうよ)
蓮子「今のは一体…何を?」
日陰「気が動転して飛び出したら急に眠ってしまったんだよ、疲れてたんだろう、後は空想動物園に行かないと…少し手前まで来たのに、ごめんね」
蓮子「ううん、後は私だけで行って…」
日陰「それはちょっと困るっていうか、駄目…かな、君案外目立つからね?」
蓮子「そ、そう…?(心外だ)」
日陰「んしょっと」
麟「すごい(大男を担いでトランク部分に乗せた!?)」
狼男を荷物としてエアカーに登録、トランクに若干縮小された後収納された。
・・・、
数十分後、空想動物園研究所 所長室
一旦動物園前に彼女達を置いてきて、狼男を担いでここにやってきた私は、目の前の旧時代の白衣を身に纏う怪しげな男にいきなり怒鳴り散らす。
日陰「あそこにあった旧い研究所は閉鎖したはずだろう!?なのになんだこの狼男は?暴れて大騒ぎになってたぞ!説明責任をっ!!ジョシュア所長!!」
ジョシュア所長…本名ジョシュア・ゴクウ・シルビー・サントス…いつも無気力な顔をしているこの空想動物園の主任研究員でここの研究所の所長だ。
ジョシュア「おっかしいねぇ…あそこに居たのは全部冷凍睡眠にしたはずなんだけどねぇ」
冷凍睡眠…それじゃあ不十分な対応、ああいう知能を持たせた人造生命達はしっかり〝処分〟しておいてもらわないと、いつぞやの【デザイナーベビーの反乱・ミュータント事件】を繰り返す懸念を拭えない。
【】内のことを簡単にかいつまんで説明すれば、2110年中頃、何処ぞの国が造った人造人間達が徒党を組んで人類に反逆してきた事件のことで、その何処ぞの国では1億近くの人口の損失を招いた超が付く大事件である。
………いまいち緊張感がなく、あっけらかんとしているのは伯剌西爾(ブラジル)国民の国民性なんだろうか?この手の伯剌西爾人に会うのは初めてではない、日高の姓を持つ誰かさんも同じ感じだったから。
日陰「今一度ちゃんとした確認とその後、園長と共に会見をお願いしますよ、私も同席しますから」
ジョシュア「えー、やだな」
やだな、じゃないんだよ、コイツは全くもう。
まぁこのあっけらかんとした感じに助けられたことも多いから、園長並びに関係各者にはなるべく穏便に済ましてあげるよう頼まないとなぁ…どうも私はこれでも、生真面目過ぎるくらいに働く瞬間があるらしく(無意識)、そこを何度か彼に助けられているのだ。
……………だ、だからといって彼に特別な感情を抱いているだとかそんなことは絶対にないんだけどね?そもそも私には誰か大切な人がいたような記憶がある訳で___
あぁ、人恋し娘達と一緒に遊んだ男の子が懐かしい、彼は一体誰だったか?
日陰「って、そんなことより、あの狼男は空想動物園の1エリアに許可とって放り込んどいたからね!今後このようなことがないように、外部に残した研究所についても責任ある行動を!」
ジョシュア「といってもなぁ、本当に実験体の狼男だったのかい?ここへ外部から侵入を試みる輩はどんな手を使って入ってくるか分かったもんじゃないよー?」
日陰「それは高度な技術でもってあの狼男に扮している輩がいるっていいたいの?まさか…」
それならそれで今この時から活動を開始しそうなもんだ、ちょっと様子を見に行こうっと。
空想動物園 人型空想生物エリア
狼男「さて………破壊活動を開始する」
?「待って、頭の中で話さない?ここで喋ってバレたら笑い話にも_」
パァんっ!
?「何?今の軽い音…まさk」
狼男「それ以上喋るな、どうやら撃たれたらしい、よって計画は失敗…笑ってくれ」(脳内に埋め込まれたチップからの通信内容)」
日陰「手間、かけさせないでよね」
超強力空気銃を許可もなく持ち出してしまったけど、緊急事態だったから十六夜野々美(イザヨイ ノノミ)園長も許してくれるはず。
・・・、
空想動物園中心棟 園長室
野々美「まったく、創作物に出てくるキャラの名前を持つと苦労するのよね」
夢美「本当本当」
野々美「…で、そんなことを話しにここに来た訳じゃないよね?面白おかしい〝未来人さん〟」
夢美「…うん、さっき園の前で見かけたこの子なんだけど…」
野々美「ん?この子ってあの………」
夢美「そう、似てるけど、違うの…って、それより緊急の事態が起きたみたい?」
野々美「わー、出動かー」
〝〟内翻訳、二十三世紀少女さん