何の変哲もないとある独身男性の日常の話 作:泡沫幻想黒衣の人
蓮子(偽)が来てから2〜3日目
周りの植物に偽装された園内の哨戒システムが戦闘行為を認めたためか、パーク中に緊急事態を知らせるためのサイレンが鳴る。
狼男ミュータントと思われる彼に聞きたいことがあったために捕まえられてしまってはそういった機会の喪失を招くかもしれないことを危惧し、すぐ様担いで園の出口まで走る。
途中途中にある監視カメラやレーダー機器の類には適当に鍵を差し込んで一時的に機能停止状態にしておいたので、運んでいる様子は見られていないだろう…と、随分と久しぶりに全力で、しかも大人を担いで走ったもんだから、1km近く走っただけで早くも足にガタが来ている。
日頃の運動不足が祟ったかな…。
そのままシャトルエアバスに乗って帰宅。
・・・、
日陰家
「いやー、ごめんね付き合わせちゃって」
蓮子「それを言うならお互い様」
「そうだねー」
まぁ…いわれてみればそうか、それはそれとして、狼男はいつ目覚めるだろう?このままリビングに放置はアレだから、楽園に置いてフダチに見張らせておこう。(おい
side 狼頭ミュータント
・・・、すっきりしない頭を抱えて起き上がると狼と幼女。幼女の方は直前に自分の意識を奪った相手、警戒心からすぐに睨みつけてしまう。
幼女「あー、あー、そんなに警戒しないで、こっちは一応保護した立場なんだよ?君のこと」
保護、ね。そんな言葉を信じられるほど、俺の脳内はお花畑じゃない。必ず国の要所に通報でもして処分が検討され…いや、処分されるはずだ。
そのくらい俺達の命は安い。人権も何もあったものじゃないただの実験動物。それが俺達ミュータントへの世間一般的な感覚だ。
だから、多分目の前の幼女にも満たない俺の命はこの後呆気なく消費されるんだろう…何かしらで。
幼女「君さえ良ければ狼男のキャストとして空想動物園で働かない?」
………まさかの斡旋と来たか。答えは決まりきっているようなもんだ、断れば即処分行きだろうしな。
「有り難くその提案を飲もう、だが………しかし」
幼女「そんなに堅くならなくても大丈夫、頭の中に埋め込まれてたやつはもう機能しないようにしといたから」
!?まさか頭の中のチップに何かしたっていうのか?脳内深部にあって、絶対に外から摘出できるような代物じゃないってのに、一体どうやって………。試しに脳内通信を試みるも何の反応も無いのを見るに、幼女の言は本当のようだ。
こうなってくると目の前の幼女がただの幼女だとは思えなくなってくる…。一体何者だ?
〝何 者 で も な い〟
ふいに、ナニカがそう呟きを残した気がした。
side 日陰
提案したものの、その目から警戒の色は消えず、こりゃもう少し日が必要かな…。その間に彼女の件を済ませておきたい。
蓮子「あのー、私が言うのもなんだけど、放っといて大丈夫なの?」
「心配は要らない、3食寝床付きで面倒を見るつもり、所有権は私持ちでね」
所有権…なんだか物扱いするようで悪いけど、それしかないんだよね、彼の身分を保証するようなものは。私がそれを持っていれば決して逃げられないし。
「それよりラグランジュポイント3に向かおう」
蓮子「えっと…?」
「あぁ、言わなかったか、ラグランジュポイントっていうのは霊道的に重要そうな場所に私が個人的に付けている名称のことだよ、他にラグランジュポイントはL1、関東の嵐山。L2、長野の田んぼのとある地点にあるんだ」
蓮子「そうなんだ、面白い(面白い…この子、いや、この人)」
・・・
L3 本州東の果て
蓮子「着いた」
「着いたね」
麟「お疲れ様」
また何がしかに巻き込まれなくてよかったけど、麟は何が起こっても見届けたいとか言って着いてきそうな気配の子だ…。なんとなくそう思う。
「さて…」
ここからのことだけども、はっきりいって何をしたらいいか分からない。何をすれば彼女が元の彼女のままやってきた過去へと送り返せるだろうか?まずは蓮子という…テクスチャー?を剥がすべきだろうか。
ここに来るまでに調べといた、この地の特質(2つのものが1つに成る謂れ)を考えるに、彼女(蓮夜)と蓮子をそれぞれ別のものに結びつけられるようにしてみた上で過去や創作上の世界へと送り返す…。
「そんなことが可能かどうか、やってみるか」
蓮子「?お、お願いします…」
なに、因数分解は得意なんだ、別の式に直すくらいお茶の子さいさい、屁の河童ってもんよ。
蓮子イン蓮夜…いや、蓮夜イン蓮子か?をそれぞれ蓮子(成分)は冷蔵庫、蓮夜は車とデータ化して崖下のラグランジュポイント3へ送り出すことに決める。
霊的経験から直感で感じた必要なものは、冷蔵庫…エアカーのクーラー(クーラーボックス)を代用、蓮子(成分)もろとも私の端末からクーラーのデジタル部分へデータ化しインプット。対してエンジンは質量分データ上でデータ化して狼人間から取ったチップに上書き、そこに更に蓮夜の中の蓮子成分をデータとしてインプット。
勿論無手では無く私の能力を使って其々の質量をデータ化…つまりはデジタル化せざるを得ない存在に置き直している。
その上で…またまた能力を使って蓮夜を過去と、蓮子(成分)を創作上の秘封倶楽部の世界へと繋がるイメージで保たせる。そうしたら後は上手くいくことを願いつつ2つのデータが入ったものを崖下へ落とす。
「どうなるかな…」
麟「無手でのデジタル化…???」
この話を理解する上で必要な霊的意味
クーラー=氷
氷は感情の浄化または停止 変容の可能性 内なる明晰さを表す
エンジン
この話の上では停止した感情に熱を焼べる役割を担う