ストックの都合上、今年は三が日連続投稿は厳しいですが、元旦特別投稿とさせていただきます。
今年もよろしくお願いします。
『ディーゴ総帥(操られ済)は建国記念大会への国民全員参加を呼び掛けている。ここが決行日じゃ。0時ジャスト、諸君らには王と護衛軍の分断を頼む』
スマホを介して、ネテロも参加しての作戦会議。ここに、討伐隊メンバー全員が初めて揃った。
……といっても、ネテロの指示は単純明快なもの。ミッションの開始時刻と場所、そして改めて任務を伝えただけだ。これだけならメッセージでも十分に事足りたはず。それをわざわざ通話で会議に参加したのは、何かしら直接対話した方が都合の良い展開になると予測しているからだろうか。
「お、おうよ!」
「レオリオ気合い入り過ぎ……」
レオリオが久しぶりに聞く会長の声に、ごく僅か、ほんのわずかに緊張する。ネテロの存在に緊張しているというよりは、初めてのハンターらしいミッションへの参加に武者震いしているというところだろうか。
「つまり、国民選別までに叩く……ってことだよな?」
「だが、スタートに伴って間に合わなかった国民は犠牲になる。最低で500万人、今回想定される被害の規模だ」
そんなレオリオの確認に、ノヴが悲観的な事実を改めて述べる。実際に言葉にすると、その残酷さは現実味を帯びた。ゴンとナックルが嘘だろうと言いたげにその現実を受け止めきれず唸る。
「……そんな」
「あまりにも多過ぎる」
『諸君らには作戦決行日、王と護衛軍の分断を頼みたい。後は現場の判断に任す』
やはり、ネテロが自分から伝える言葉はそれだけらしい。ここから先の情報は自分から聞いて取りに来いということか、あるいは聞かなくても作戦の進行には差し障りないものなのか。そんなことはどうでもいいと、リンは太々しい態度で電話の向こうに話しかけた。
「てか、今更だけど王はどうやって倒すつもり? コルトには『護衛軍にすら勝てない』って言われたんでしょ?」
ネテロは世界最強の念能力者だ。少なくとも周囲からは今もそう信じられているし、その実力は確かだとリンも身をもって知っている。
だが、それでも護衛軍に殺されるだろうと言われている。これは護衛軍と対峙するリン達にも言えることだが、ネテロは王とどのように戦う気なのだろうか。念能力者として勝つ気で戦うとはいえ、ハントとしては確実性を求められるBランクの脅威だ。
『ミニチュアローズじゃよ』
「はぁ、ミニチュアローズゥ?」
どのようにして倒すかは、ネテロ個人のミッションの範疇。返答を渋るかとも思われたが、ネテロは事も無げに答えた。てっきりだらだらと引き延ばされると思っていたので、リンは少しばかり面食らう。どうやらこの爺さん、今回は本当の本当にガチらしい。
「まあそれなら……っていうか、それで殺せなかったら人類終わりね、完全に」
確かにそれなら、確実に王も殺すことができるだろう。王だけでなく、護衛軍も他のキメラアントも。そのような名称は初めて聞いたと、ゴンが不思議そうに首を傾げる。
「ミニチュアローズって何?」
「安くて簡単に大量生産できる、えぐい威力のやべー爆弾だよ」
この辺の常識に関しては意外と知識の深いレオリオが、簡単にゴンに説明する。この中でミニチュアローズを知らないのはゴンとナックルだけだったようで、二人はレオリオの話を前のめりで聞く。ナックルはハンター歴もそこそこ長いのに、とリン達は冷ややかな目を向けているが。
(ナックルも知らんのかい。流石にあんたは知っときなさいよ……)
ナックルは所謂、頭が良いが学がないというタイプなのだろう。頭の良い不良あるあるだ。ゴンの教育にも丁度良いので、リンもレオリオの簡単に解説を付け加える。
「大量殺戮兵器ってわかる?」
「核とかだろ?」
「三分の一正解。化学兵器、生物兵器、核兵器の三種類ね。ミニチュアローズはその三つの特性を少しずつ備えてる。そのくせ本質は毒だから、狙った場所以外には殆ど被害が及ばない。独裁者御用達の爆弾ってとこかしら」
ミニチュアローズは、激しい爆風と共に猛毒を撒き散らす。爆発自体は核兵器にも用いられる物質を用いている他、毒は生物を介して一定時間広がっていくという生物兵器にも見られる特徴を備えている。
にもかかわらず搭載されているのは毒であるため、化学兵器らしく一定期間の拡散で薄まり無害化する。特定の場所の生物を殺すことにのみ特化しており、かつ安価で作成も比較的容易だからこそ、紛争地域ではしばしば使用される。この世界の人類の愚かな発明だ。
「でもそれを落とすだけなら、わざわざ護衛隊と王を分断する必要ないんじゃないの? 纏めて処理できるじゃない」
「そんなのしたら、ピトーにカイトを直させられないじゃん!」
「ゴン、その話は一旦置いておいて。まずは合理的な対策から話すのが先よ」
「簡単に討伐する気かコラ! リン、テメェ敵と拳交える気ねえってか!?」
「あーもー、ややこしくなるから黙ってて!」
ゴンとナックルが文句を言ってくるが、リンの聞きたい事から本質がどんどんズレてくる。だが、リンの言い分はキルアやシュートには納得できるものに感じられた。そのためリンのフォローをしておくことにする。
「落ち着けゴン。聞くだけ聞いておこうぜ」
「ナックルもだ。下手に私情を出すな。……で、会長。爆弾はなぜ落とすのですか?」
そのような爆弾を使うくせに、リン達に課せられたミッションのメインは『王と護衛軍を分断する事』。むしろ『王と護衛軍を一カ所に纏めておけ』と言われる方が理に適っている気がする。
これこそが、わざわざ電話をしてきた本当の理由だったのだろう。いずれ知られるならばさっさと言ってしまおうということだったらしい。やはりネテロの口調は変わらなかった。
『落としはせんよ。地面で直に爆発させる』
「はぁ? 意味が、……ちょっと待ってよ!!」
リンが叫ぶのと、ベテランであるモラウやノヴがネテロの意図を察するのは同時だった。リンが先に文句を言ったから出鼻をくじかれたが、一言言いたくなる気持ちは全く同じ。三人の空気が一変したことに、弟子達は良からぬものを感じて黙り込んだ。
「あまり賢い判断とは言えないんじゃない? 王に目掛けて上からドカン。それで済むじゃない!」
『そんな事は百も承知よ。これはわし個人の我が儘じゃ』
だが、リンとネテロのやり取りを聞いていても、ネテロの言うことの真意が分からない。キルアが代表してリンに尋ねた。
「どういう事だよ?」
「この馬鹿ジジイはね、爆弾一発で済むのをわざわざ自分が王と戦いたいから分断しろって言ってるのよ!」
スピーカーモードのスマホを、それがネテロ本人であるかの如く指差して怒鳴る。怒り心頭のリンだが言い分はわかると、ノヴも眼鏡をずり上げた。
「しかし、リンの言う通りですね。明らかに合理的じゃない。最低500万人が死ぬより、宮殿の中に居る数十人の命を犠牲にして今すぐ爆弾落とす方が被害は少ないです」
「それ! 馬鹿なんじゃないのクソジジイ!」
「姉さん落ち着いて……」
ノヴの助け舟もあり、ここぞとばかりに乗っかるリン。まるで、かつて命を懸けると言ったクラピカに起こっていた時のような子どもっぽい罵倒だ。流石のゴンも、リンを諫めにかかる。だが、リンの本当に言いたい文句はここからだ。
「それに、地上で爆発させる。それを起動させるのは誰かわかる? このジジイ自身よ。じゃあ戦った後に負けた際、王の近辺で確実に爆発させることのできる方法は? このジジイの身体に爆弾を埋め込んでおくこと!」
それは、ネテロがほぼ確実に死ぬことを意味している。勝てば良いのだろうが、勝てる相手ではないと先に言われている。
だが、負ければ確実に死ぬと決まっているわけではない。真剣勝負に負けたとしても、討伐を可能にする方法はあるはずだ。しかしネテロはその尻拭いも自分ですると言っている。自ら死にに行くというそれはクラピカの時同様、リンにとって地雷ど真ん中だった。
「そ……そうなの? ネテロさん」
「もうとっくに爆弾埋め込む手術も終えてるはずよ。大方、女王の城が落ちた後の待機期間にやってたわね?」
『これは指令、意味はわかるな?』
今回のハントのリーダーはネテロであり、リーダーからの指令は絶対だ。つまりは、一切の異論は受け付けないということ。リンもそれはわかっている。
「わかってるわよ。心底馬鹿だとは思うけどね!」
そう言いながらも明らかにリンの顔は納得していない。指令と言われてしまえばモラウやノヴもそれ以上を言うことはできず、その後ある程度の詳細を取り決めて作戦会議はこれで終了する運びとなった。
王とネテロが対峙し、リン達は護衛軍を引き離す。具体的にはネテロの旧友……ゼノ=ゾルディックが上空から急襲し、その隙に各自が取り決めた相手を担う形だ。パームはそれまでの間に潜入し、王の居場所を把握する。
ゴンとキルアはネフェルピトー、モラウとノヴがシャウアプフ、ナックルとシュートはモントゥトゥユピーを。レオリオが救護に回り、リンはレオリオの護衛をしつつゴン達とともにネフェルピトーと対峙する。
各々の役割は確定した。だが、やはりネテロの立てた王討伐作戦には、納得できないものがあった。それぞれ譲れない美学はある。だが、それはあくまで命あっての物種。
ネテロはそれを捨てると言っているのだから、五百万人の命どうこう以前に自分の命を捨てると言っているのは、異常に思える。少なくとも、キルアにはそう思えた。だからこそ、そのまま口にする。
「会長はそこまでして命を懸けるのかよ? もっと良いやり方もあるのに、今回の作戦じゃ命捨てるに等しいだろ」
これは、自分が念能力者の何たるかをわかっていないからではないはずだ。モラウをちらりと見ると、キルアを馬鹿にするような言葉は見られず眉間にしわを寄せた。
「これが人生最後の仕事になるからだろ」
「え?」
「パリストンだ。このミッションには間違いなく犠牲が出る。つーか既に出てるしな……。そこを副会長に突っつかれたら、会長は座を降ろされるだろーが」
ナックルやシュートも、モラウについて修行をしていれば会長を取り巻く面倒な事情はある程度知っていた。特にナックルは自分自身も痛手を負った事があったから、余計にパリストンについては過敏なところがある。
「そんなの変だよ。ネテロさん、このミッションを凄く一生懸命頑張ってるのに」
「変だよ。マトモなハンターなら誰だってそう思ってるさ。だが、一見真っ当な事を言っているだけに俺達ではどうにもできない。国の要人を巻き込まれたら余計に、な」
シュートの言う事に、ゴンは何も言い返せなかった。今更ながら自分達は国家の存続に関わっているのだと気づいたからだ。そして、大人の厭らしさにもまだ耐性がなかった。我慢できずにモラウは立ち上がり、怒りのあまり叫ぶ。
「椅子にふんぞり返ってるだけの奴らがよぉ! テメーらでは何もできねーくせに口だけは一丁前だ!」
未だかつてない、世界最強の自分でも敵わないと言われる敵が現れた。そして、成功失敗の有無にかかわらず自分の仕事はここで終わる。文字通り、ハンターとしての最後の仕事。
(それでも大して動じてないのは、あのジジイの本質がハンターではないから……か)
ネテロの本質は、ハンターではなく武人だ。ハンター協会の長として確実に仕事を全うする責務がある一方、武人としてはなんとしても王と拳を交えたかった。
要は、それがネテロにとっての『譲れない矜持』だから。誰もがはみ出し者であるハンターの界隈に置いて、仲間の矜持は尊重するのが暗黙のルール。
だからこそ、会長を尊敬しているハンターは黙って従う。最後の願いを叶えてやりたいと。十二支んにも伝わらないように情報統制をしたうえで。
(やっぱり私は理解できないけどね)
その中にはモラウやノヴも含まれている。モラウは怒りをため息とともに吐き出すと、この場の最年長として指揮にかかった。
「あとは作戦決行日まで各自で動くことにする。この感じだと、二人一組くらいで行動した方が効率は良いだろうな」
「んじゃ、対護衛軍の組み合わせで二人ペアになる感じかしら」
「パームは私達と共に来なさい」
「はい……♥」
護衛軍の対応チームに沿ってペアを作るのが合理的だろう。モラウ・ノヴ・パーム、ナックル・シュート、ゴン・キルア、そしてリン・レオリオでチームを組む。このメンバーで、各々情報収集を当日までこなすことになる。
「師匠達はどうするんスか?」
「取り敢えずは、裏切ってくれそうな内部に近しい人間を探すところからだな。パームの潜入の足掛かりにもなるだろう」
「東ゴルドーのことも改めてハンターサイトで下調べしておいた方が良いだろう。知っているだけでも、かなり厄介な国だからな」
モラウ達は内側から探りを入れることになるようだ。ならば、国民の方から情報収集をするメンバーも要るだろう。
「んじゃ、俺らは外からだな」
「俺達もそうするか、ゴン。潜入して、村を見て回る」
ナックル・シュート、ゴン・キルアも、外部からの情報収集に回るようだ。「よし!」と張り切るゴンに、リンは念のため釘を刺しておく。
「ゴン、いい? やるべきは敵情視察よ。絶対に、ぜーったいに、『住民を助けなきゃ!』とか暴れないでよ」
「うん、わかった」
「本当に? 討伐隊が動いてるってバレたら、作戦自体おじゃんになる可能性もあるんだから。全員の命かかってるんだからね?」
「もう、俺だってプロだよ? わかってるって……」
余りにも念入り過ぎると少し面倒くさそうな表情を見せるゴン。ブラコンで少し過保護気味の姉であることは今更だが、今回はいつにも増してしつこい。
だが、リンは引かなかった。それどころか、更に顔をずいと近づけてゴンを見つめる。『嘘をついてたら一発で分かるぞオーラ』を出され、ゴンはたじたじになった。
「ほ・ん・と・う・に?」
「う、うん……」
多少は五百万人の国民が犠牲になることに対して思うところがあったのだろう。頭の片隅でいざという時は助けるという思考があったのを、見事に突かれた。それを察知したリンに、更に追い打ちをかけられる。
「あと、油断しない事。人間に似てるし言葉を話すから勘違いしそうになるけど、あいつらは別の生き物だから。情を見せたら殺られる」
「う……わかったよぉ……」
「コルトみたいな奴は居ないと思いなさい。万が一キメラアントと遭遇した際には、速やかに排除する。敵陣に情報が伝わる前に殺すこと」
「はい……」
しつこいというか、最早しつこすぎるくらいに言うリンに、しょんぼりと項垂れるゴン。いたずらをして叱られた後の子犬のような表情だ。
「……リン、いくらなんでも酷な念押しじゃないか?」
何もしていないのにガミガミと叱られているような言い方に、流石のシュートも少し可哀そうになったのだろう。忠告を終えてレオリオと相談しようとしているリンに、こそりと声をかけた。弟と言えど、共にミッションを遂行する一人前のハンター。信用してやってもいいのではないかと。
だが、リンからすればそれこそ愚の骨頂だ。この弟は、一見まともな顔をしてるから騙されそうになるのだと改めてゴンを軽く睨みつけておく。キルアもレオリオも、十分に理解しているので助け船は一切出さない。
「いーや、こいつはやる。キルアが居るから何かあっても大丈夫だとは思うけど……」
「こいつ、シュートが思ってるよりマジで頭トんでるから。思い付きで全部パーにしかねねーぜ」
リンの言い分にキルアも同意する。レオリオも否定できず苦笑いを溢し、長い付き合いの三人が口を揃えていることからシュートも(もしかして本当なのでは……)と悟った。
なので「……そうか」とだけ言い残し、これ以上食い下がるのは止めておく。口喧嘩になったら恐らくリンに勝てないというのもある。
(……ゴンもキルアも、まだ十三歳になったばっか。しかもゴンはジュニア課程すら修了してない。このミッションはやっぱ早過ぎるわ)
リンのそれは、自分自身も通った道だからこその不安だ。ゴンとキルアは誕生日を迎え、最近十三歳になったばかり。それに対し、明らかに年齢に見合わないミッションを受けている。自分達で望んだ道とはいえ、それは修羅の道だ。
だが、ゴン達が討伐隊のメンバーであるのも事実。そして、シュートが心配しているよりもリンはゴン達を一人前のハンターとして認めている。
だからこそ、プロとしての心構えを厳しく言いつけているのだから。本当に護るべき弟としか思っていなければ、ヨークシンの時のように謀ってでもゴン達が東ゴルドーに来ないようにしていた。
「んじゃ、一旦はこれで解散だな」
「何かあったらそれぞれのペアに適時連絡する事」
「了解」
モラウとノヴが最後の締めくくりをして、各々目的に沿って散っていく。リンとレオリオに大きく手を振るゴンと軽く手をあげて挨拶するキルアに手を振り返しながら、リンはどこか不安と気まずさが胸の中を覆うのを感じていた。
(……にしても、またキルアに任せることになっちゃうわね)
ゴンはもちろんだが、キルアもリンにとっては心配で仕方ない。キルアは無意識にゴンに依存しているところがある。眩い光を放つ弟が、暗い世界で生きて来たキルアにとっては信仰の対象に近しいものもあるのだろう。
ゴンにとっても、キルアは特別な親友だ。だが、互いに互いへと向ける感情はあまりにも釣り合っていない。仲間第一に見せかけて実は酷く個人主義なこの弟は、ある意味自分よりも性質が悪いとリンは思っている。
ハンター試験、ゾルディック家の来訪、ヨークシン、G・I。話に聞いただけだが天空闘技場でも、ゴンは周囲の制止を振り切って向こう見ずな行動を起こしてきた。にもかかわらず、普段は共に居たいと仲間を大切にするのだから、色々と言いたくもなる。
今回もそうだ。キルアは自分の意思によって動いていると思っているが、ゴンが共に戦うことを当然のように期待したからというのも大きな理由だろう。だが、いざとなったらきっとゴンは一人で突っ込んでいく。大事な相棒も友も姉も、全て置き去りにして。
(考えれば考える程、やっぱ性質悪いわね。前にゴンが言ってた「クロロに性質悪いって言われた」って、この事かしら)
ゴンが純粋に他者へ、特にキルアへと向ける『期待』。これがリンにとっては、酷く危なっかしいものに思える。『期待』とは、悪意なく他人に自分の意のままを求める、ある種残酷な感情だから。応じてくれるのを当然として、思うようにならなかった時には簡単に相手を責め立てるものだ。
「リン、どうした?」
「……ん~、ちょっとゴンとキルアが心配になってね」
「十分に修行したじゃねーか。あいつらは強いさ」
「だから心配なのよ。歳相応に子どもなのに、大人と張り合えるから心配なの」
言いたい事を察したレオリオは、安心させようとしていたのを止めて真剣な表情でリンの言い分を聞く。レオリオからすれば、リンも十分にリンの言う『心配』の対象なのだが。
自分も含め、まだまだ二十前後の若者。それは経験があるといえどリンも例外ではない。それなのに、師匠として仲間として姉として、自分達の心配をしている。
「……歳くった大人だって、まともに『大人』できてる奴は居ねーよ。大丈夫だ。あいつらは強い」
「……そうね」
言いたい事を察した上で、やっぱりレオリオは同じことを言った。リンが心配しているであろう子どもゆえの幼さや向こう見ずさ、それらが後悔へ繋がる可能性は、確かに捨て置けない。だが、それ以上に彼らは強い。それを信じているからこそ。
「それよりも俺はおめーの方が心配だぜ? 酷い顰めっ面だぞ」
「ジジイのせいよ」
「じゃなくて、その前からだよ」
「……」
レオリオの指摘は、リンがナインの死で動揺して怒っていることを見抜いたからこそだろう。それは他者の機敏に聡いレオリオだからというだけではなく、リンが表情を繕う余裕を失くしてきているからでもあった。
心の余裕を失うことは、取り返しのつかないミスに繋がる。経験則で嫌という程知っているリンは、また大きく息を吐いて気持ちを整えた。
「……大丈夫よ。準備期間の間にスッキリできるアテがあるから」
「俺達も外部から潜入か?」
「そのつもり。でも、その前に悪いけど少し付き合ってくれない? 一日で終わるから」
これから数日の方針が決まっていないのは、残りはリンとレオリオのコンビだけ。基本的にはリン達も外部からの潜入となるだろうが、その前にリンはどうしてもやっておきたい事があった。
ネテロ。ゴンと違って何百年も生きているくせにコレだ。だが歳をとっている分、遠慮する必要はない。意識する先を改めて戻すと、ムカムカと苛立ちが湧き上がって来た。
「ジジイに直接文句言いに行く。口では伝わらないだろうし、グーで」
自身の我儘のために五百万人を犠牲にする。自分自身も犠牲にする。部下の言うことには何一つ耳を貸さない。強化系はどいつもこいつも面倒な奴ばかりかと、リンは軽く指を鳴らした。
誰も彼もがやりたいようにやるのなら、自分だってやりたいようにやってやると。