リン=フリークスの冒険   作:夜桜百花

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二次試験を受けよう!

 木の頂上に登り切った受験生が100名に達した頃、受験生を運ぶ飛行船が木の真上までやってきた。器用にホバリングしながら滞空し、受験生たちのために階段が降ろされる。数年ぶりの空の旅に密かにはしゃいでいるリンだ。

 

 空の旅はさして長くかからなかった。気づけば真下にはリンの通った都市が見えており、逆戻りしてきたのだと悟る。

 その中でも一際大きな建物の屋上に飛行船は降りた。また自然的な舞台で今度はサバイバルが行なわれるんじゃないかと予想していたため、心の中で少し意外に思う。

 

 誘導されるままにリン含む受験生たちは屋上からビルの中に入っていく。階段を四階ほど降り、ひと際広い部屋に案内された。百名の受験生が全員入っても十分すぎるくらいのスペースが余っている。家具の類は一切なく、ただただ広いだけの空間だ。

 

 いかにも乱闘を始められそうな部屋。受験生の間に殺気と緊張感が走る。誰もが互いと距離を取り、いつ何が起きても良いようにしている。

 

 そんな空気は、やや場違いなベルの音と共に入ってきた眼鏡の男によって壊された。おしゃれなベストにネクタイを締め、一見インテリな若き大学教授を思わせる。しかし均整の取れた身体はしっかりと筋肉がついており、オーラの漲り方からしてもかなりの使い手である事が予想された。

 

「どうも、二次試験官のブンガクです。専門は考古学!文学ではありません!」

 

 し~ん…。

 

 イメージと異なり冗談が好きな性格らしい。しかし、今この状況でそのジョークを笑える受験生は一人も居なかった。もしも誰かが笑うのなら合わせておこうと思ったリンは辺りを見渡したが、皆眉毛一つ動かしていない。

 

(まぁ、そりゃそうか…)

 

 場を白けさせてしまったブンガクは気まずそうに頬をかき、軽く咳ばらいをした。そして雰囲気をガラッと変え、試験官の顔となる。

 

「二次試験は筆記!四人一組で問題を解き、正答率95%以上で合格とします!様々なジャンルの問題を出すから、できるだけ自分と異なる知識を持つ人間と組むのを勧めますよー!」

 

 戦闘の類の実技試験だと思っていた受験生たちはざわつく。年齢故にハンター世界の知識に乏しいリンも、少し及び腰になった。

 

「ただし!組んだメンバー全員を叩きのめしてそいつらのプレートを持ってくるのもアリ!チームができたら案内された部屋へ移る事!そこに問題がありますからね!」

「制限時間は二時間!問題は100問!さっさとチームを組んでいきましょう!」

 

(下手したらここで二割以下まで減るな…)

 

 周囲を見回すが、まともに筆記で試験を通過しようとする人間は少なそうだ。せめて問題くらいはちゃんと見たいリンは、どうしようかと顎に手を当て考える。

 

「おい嬢ちゃん、良ければ一緒に組まないか」

 

 ろくなもんじゃないと直感したが、反射的に振り返る。

 リンにそう言ってきた男は見るからに半笑いの目でリンを見下ろしている。身長は二メートル越え、筋骨隆々で問題を解かずに拳で解決する気満々のようだ。

 

(そっか。プレートを奪うだけなら弱い人の方が楽だしね。どうりで私をちらちら見る人が多いわけだ)

 

 念能力縛りをしているリンだが、日頃から纏と練と野生環境で鍛えている身体はそこら辺のハンターよりも丈夫だ。子どもだからと侮られ、むっとする。

 

「うーん、お断りしておきます。ごめんなさい」

 

 ていうか頭悪そうだし、と見た目で判断しているリンも人の事を言えないのだが。

 

 声を掛けてこようとする似た様な風貌の男たちをひょいひょいと躱しながら、少しでもまともに問題を解く気のありそうな人物を探す。

 

(…あ、さっきのお仲間っぽい人)

 

 リンの見た先には、一次試験の際に見かけた少女の姿があった。リンと同じく体格の良い男たちに誘われては、雑にあしらっている。声を掛けられるのは彼女が美少女だからというのもあるだろうが、男たちをあしらうその目は完全に「鬱陶しい」と言っている。

 

(あ、トンパだ!トンパさんだ!)

 

 リンが見たのは新人潰しことトンパが少女に殴り飛ばされるところだ。早速の出オチ感、いかにもトンパだと思うリン。それを蔑んだような目で見る少女は、完全にSの風格を漂わせている。だがしかし、それすらも様になる。

 

(これをきっかけに友達になれちゃったりしちゃうかも??)

 

 勿論トンパではない。少女と仲良くなりたいと密かに思っていたリンは、なけなしの勇気を振り絞って少女に話しかける事にした。こんなきっかけでもないと話しかける勇気は自分にはないと思っていたのだ。この試験は渡りに船とも言える。

 

「…ねぇ、よかったら一緒に組まない?」

 

 男たちをかき分けて隙間からひょいと顔を出し、声をかけた。少女はしばし値踏みするようにリンを見る。パステルグリーンの髪が肩口で揺れている。

 

「ええ、良いわよ。あんた、名前は?」

「リン。12歳。あ、こっちは相棒のメイメイ」

「ふ~ん、3つ違いね…私はメンチ。よろしく」

 

(メンチ!メンチだったんだ!わ、まだ幼い!ていうかメンチって『お仲間』だったの?わー思わぬところで出会ってしまった!神様ありがとう!!!)

 

 さばさばと行われた自己紹介をよそに、リンの心は激しく荒ぶっていた。

 

 リンの記憶が確かなら、目の前の少女は原作の二次試験で出てくる美食ハンターメンチだ。この年にハンター試験に受かっていたのかと思わぬ公式情報に心の中のオタクが暴れまくるリンである。

 

「私が言うのもなんだけど、あんたガキじゃない。大丈夫?」

「問題による。サバイバル系の知識とか言語系の知識はある」

「ふーん…受けんのは今年初めて?」

「うん。メンチは?」

「…二回目。ホントは去年受かるはずだったのに、試験官にアタマ来て殴っちゃったのよ」

「…へぇ…」

 

 メンチが二回目受験だったのは意外だが、試験官を殴ったというのは何と言うか、納得できる。メンチに言う気は無いが。

 

 メンチは腰に手を当て、周囲を見渡しながらリンに問いかけた。

 

「さて、他に誰を仲間にする?」

 

 あと二人、できれば仲良くなれそうな人が良い。ハンター試験を友達づくりの場とややはき違えている節のあるリンである。

 

「できるだけ年が近そうな子が良いかな。話しやすいし」

「それで馬鹿だったら話にならないけどねぇ…まぁ、武闘派のおっさんよりはいいかしら」

 

 そう言いながら受験生を見回す。ぽつぽつとチームが出来上がりつつある部屋の中は、机にぶちまけた囲碁の様な雰囲気を醸し出していた。あちらでぱらぱら、こちらで人が少し集団になっていたりと、規則性がない。

 

 リンたちに声をかける人物が現れたのは、きょろきょろしながらメンチとリンが雑談している時だった。振り返ると、リンとそう背丈の変わらない少年が立っている。

 

 仏頂面でいかにも愛想が無いガキンチョといった雰囲気だが、センター分けにした綺麗な金髪といい青色のぱっちりとした瞳といい、かなりの美少年だ。

 

(あ、さっきの美少年)

 

「おいお前ら、俺と組まねえか?」

 

 少年はポケットに手を突っ込んだままそう言った。身長もリンと変わらず正面からこちらを見ているのに、微妙に目線が合わない。つまりは上から見下ろすように見られている。

 

(低身長で子どもなのにここまで見下しスタイルを取れるの、逆に凄いな)

 

 だぼだぼとしたスウェットとカーゴパンツを着た身体を気だるげに揺らしており、面倒くさそうな雰囲気を醸し出している少年。アクセントのオレンジ色スカーフが妙に様になっていてぱっと見の雰囲気はアメ村常駐者といったところか。

 

 そういった系統の男が嫌いらしいメンチは、さっそく喧嘩を売りにかかった。

 

「え~あんたと?なんか馬鹿そ~」

「はぁ?なんだよ」

 

 オーラの色は薄い紫と内側に青。なんだかんだ冷静で頭の切れる人物だと判断するリン。そしてむかつくがやっぱり年齢が近そうだし仲良くなりたいと思う。気持ち的には複雑なものだったが、承諾するために口から出たものは意外とあっさりしたものだった。

 

「いいよ。私はリン、12歳。もしかして年近い?」

「…ルカス。同い年だよ」

「メンチよ。もうすぐ15」

 

 メンチとルカスも剣吞な空気ながら一応自己紹介をする。これから共に問題を解くのだから仲良くしてほしいリンである。

 

 これで三人だ。あと一人。

 他の受験生たちはさっさとチームを組んで行った者もいるらしく、明らかに百名よりも少なくなっている。そしてそう離れていない部屋から怒号が聴こえるあたり、彼らは肉弾戦を選んだようだ。

 

 誰もがチームメンバーを探して固まっている中、一人ぽつんと立っている青年はやや目を引いた。仲間探しをする気配もなく、のんびりと読書に興じている。

 

「ねえ、あの子とかどう?眼鏡かけてて頭も良さそうだし」

 

 そう言うメンチのオーラはうっすらと桃色に染まっている。

 オーラはその時の感情や状態によっても色を変える。異性と対峙するときは大なり小なりオーラの色が異性を意識したような色になるが、先程のルカスとの違いを見るにどうやらメンチの好みらしい。

 

 リンとルカスが返事する前に、メンチはさっさと行ってしまった。メンチも大概協調性がないなと思うが、よく考えれば原作でも一度はゴン達を全員不合格にし、協会にも喧嘩を売っていた子だったと思い直す。

 

「ねえ、一緒に組まない?」

 

 メンチの声に青年がこちらを向く。確かに近くで見ると、彼女の言う通り眼鏡が印象的な黒髪の青年だった。

 ハンター試験を受けている人間はそもそも眼鏡をかけている人間が極端に少ない。それに加え、色白の華奢な身体をインドで着ていそうな民族衣装で覆っているその青年は、ひと際目立つ。

 

 青年は黙ってこちらを見つめている。間が耐えられず、リンも口を挟んだ。

 

「あと一人足りないの。お願いします」

「…いいですヨ、組みましょ」

 

 ホッと胸を撫でおろしたリン。やや片言の喋り方を見るに、もしかしたらハンター言語に慣れていなかっただけなのかもしれない。それにしても、共通語であるハンター語に慣れていないのは少し珍しいが。

 

(どっかの部族とか?クルタ族的な)

 

 共通言語こそあるものの、この世界には数百種類の言語と民族文化がある。クルタ族のように世間から秘匿されている民族もある事を考えると、まだ発見されてないものも沢山あるだろう。

 世界中に漫画文化を広める野望の一環として言語学の勉強にも力を入れていたリンは、密かにその青年の国が気になっている。

 

「じゃあ、行きましょうか」

 

 決まったならばもうこの部屋にいる必要はない。メンチの言葉に全員扉の方へ進み、案内員の指示に従い部屋を出る。歩きながら、先程しそびれた自己紹介をした。青年の名はノワールというらしい。

 

「なんでさっき一人で立ってたの?」

「百人いるなら、絶対誰かとチームになるマス。ならばわざわざ探すのは余計」

 

 なるほど、と納得した。しかし逆に言えばどんな相手が来ても迎え撃つ事ができる、あるいはどんな馬鹿と一緒でも問題を解ける自信があるという事になる。もしかしたら凄い人なのかもしれないと横目で青年を盗み見た。

 黄色い瞳は髪色が黒い事でより強調されている。睫毛も長くかなりの美男子だ。年齢は17、8くらいだろうか。

 

(この世界では顔が整っている人間ほど死ににくい。ここのメンバーは長生きしてくれそうだし、ぜひ仲良くしたい)

 

 整っているからといって死なない、ではないのが怖いところなのだが。少なくともモブっぽい死に方はしないだろうというリンの見解だ。大丈夫、どうせ人類なんて最悪ナニカの力とかでみんな死ぬのだから。

 

 案内された試験室は、筆記試験で四人しか入らない部屋にしてはえらく広々としていた。おまけに壁には様々な武器がかけられている。はじめから筆記をさせる気など無いのかと思うレベルだ。

 

「チーム組む間に15分過ぎちゃったわね」

 

 そう言いながらも座ろうとしないメンチ。ちゃんと四人分の椅子と大きなテーブルがあるのに、メンチ含め誰も座ろうとしない。それどころか腰を落としてどんな動きでもできるように構える始末だ。

 

「ねえ、座ろうよ」

 

 そう言って椅子を引いたリンの背後を、ルカスがとる。それは一瞬で、まるで風が吹いたかのようだった。

 

「隙あり!!」

 

 そう叫んだルカスはまるで容赦がなく、リンの首を強く蹴った…様に見えた。

 

「隙なし」

 

 ルカスの足よりも先に椅子を持ったリンが振り返りルカスの頭に椅子を振り下ろす。そこまで力は入れていないが、ルカスが額を押さえて叫ぶには十分だった。

 

「痛~~~!!!」

「うわ、痛そ~…」

 

 声にならない声を出して蹲るルカス。そこにメイメイが蹴りを入れているのが、メンチとノワールの同情を誘った。何だか哀れに思ったノワールが、鞄から薬を取り出し差し出す。

 

「ルカス、傷薬いるカ?」

「いらね!!」

 

 ノワールの差し出した薬を舌を出しながら中指を立て突っぱねるルカス。キッとリンを睨みつけるが、本人は涼しい顔をしている。その姿はまるで問題児に説教をする学級委員長だ。

 

「ルカス、問題も見ないで仲間に襲い掛かるのはよくないよ」

「はぁ?これが試験だろ!」

 

 初めから肉弾戦に持ち込もうとしていたらしいルカスは、まるでリンが異端だというように叫んだ。実際、異端ではあるのだが。

 

「まず問題を見ようよ。案外ちゃんと解けるかもしれないし」

 

 ルカスにはリンの言っている言葉の意味がわからなかった。初めから戦闘する気満々だったし、全員がそうだと思っていたからだ。

 

「つーか、倒しやすいって思って同年代と組んでたんじゃなかったのかよ!」

「違うけど?年近いから相談しやすそうって思っただけ」

「はああああ???」

 

 どちらでも対応できるようにと日和見していたメンチとノワールは呆れた目を二人に向ける。一触即発の空気だったのが急にギャグテイストになったからだ。構えていた自分がアホくさいと、リンの反対側の椅子に座った。

 

「ほら、さっさと座りなさい。時間が無くなるわよ」

「ですね」

 

 リンは勿論、やる気を削がれたルカスもしぶしぶ席に着いた。四人でテーブルを囲み、問題を眺める。

 

「あ、美食ハンターの問題があるわ。この辺は私に任せて」

 

 そう言ってさらさらと回答欄を埋めていく。何だかそれを見ていると、意外といける気がしてきたリンである。

 

「私も、この国の言葉ならわかるよ」

「オレは政治問題する」

 

 リンとノワールも別の解答用紙を取り出し、わかるところを埋め始める。暫くはぶすくれながら観察していたルカスも、じっとりとリンを睨みながらペンを手に取った。

 

 無言で問題を解く事数十分。合計六枚にわたる解答用紙は、意外としっかりと埋められている。今は四人全員が分からないところを考えているところだ。遺跡に関連する問題がどうしてもわからず、記憶を頼りにうんうんと悩んでいる。

 

(遺跡なんて興味ないし…このまま提出するのは駄目かなあ)

 

 高い正答率が求められる問題で緊張していたリンたちだったが、問題はサバイバル知識や野生動物の知識、金品の探し方など、ハンターが仕事をするうえで必要な知識が大半だった。その上で各ハンターのジャンルの専門知識が問われている。専門知識を有したプロハンターが四人揃えばある程度解けるような問題だ。

 

 問題のバランスも良く、意外と常識的な問題を出す試験官だと思っていたが、最後の問題がやたらと配点が大きいのだ。恐らく考古学者である試験官の個人的趣味だろう。これを解けないのはかなりのハンデを背負う事になる。

 

Q:遺跡修復マニュアルはルルカ文明遺跡の復元を元に制作されている。この遺跡を発掘したのは誰か。

 

「こんなんわかるわけないじゃない!ニッチ過ぎでしょ!」

 

 どれだけ考えても記憶を手繰っても出てこない答えに、メンチがうがーっと叫んだ。この中に遺跡や考古学に精通している人間はおらず、こればかりは試験官との相性が悪かったと言える。

 

「オオツノダイオウモドキの生息地を述べよなんて問題を答えられるお前はそれ言えねーだろ」

 

 ルカスに突っ込まれ睨みつけるメンチだが、リンもそれには少し同意なので何も言わないでおく。メンチ曰く、オオツノダイオウモドキは舌が美味いらしい。

 

「…たとえバ、知り合いの方に電話して尋ねるのはどうでしょウ?」

「はあ?カンニングになるじゃねぇか!」

 

 ノワールの提案にルカスが嚙みついた。しかしノワールは冷静にルカスたちを見回して説明する。

 

「カンニングしたらだめとも言われてナイ」

 

(確かに…)

 

 ノワールの言う通りだ。一般的には試験なんてカンニング御法度だが、これは一般的な試験ではない。むしろ情報収集能力を有しているという点で評価されてもおかしくないだろう。

 

(ま、私携帯持ってないんだけど)

 

 持っていたとしても誰に聞けばいいのやらと思うリンである。

 

「確かにそうだけど、こんな事知ってる人なかなかいないわよ~」

「ブラウザで検索は…ああ、シャットアウトされてマス」

 

 どうやらインターネット検索は出来ないようにされているらしい。

 

「…親父に電話して調べてもらおうとしたけど、電話も繋がんねーぞ。誰だよカンニングしたらいいとか言った奴」

 

(あ、そもそも圏外ですか)

 

 ノワールの提案は完全に意味を成さなかったことになる。全員ががっくりと肩を落とした。

 

(親父に電話ね~。ルカスみたいなタイプが親頼みってちょっと面白いな)

 

 生意気な少年が親に頼みごとをするのは意外性が高く笑えると関係ない事を考えるリン。そしてそんな風に気軽に頼れるのが少し羨ましくもある。

 

(私はなんせクソ親父だからなぁ~。そういえば親父って一応名目は遺跡ハンターだったっけ)

 

 好き放題やる人だから専門がある事をすっかり忘れていた。いや、ジンの事自体基本的に記憶から抹消しているのだが。そう考えていると、忘れかけていた原作知識が脳裏に浮上してきた。なんだか腹が立ち、思わず頭を抱える。

 

「あ~…ルカス、ありがとう…私答え分かった…」

 

 周囲がはてなマークを飛ばす中、リンは少し濃いめの筆圧で『ジン=フリークス』と記入した。それを覗き込んだメンチが不思議そうに言う。

 

「ジン=フリークス?誰それ?」

「私の親父…遺跡ハンターなの。…こんな所にも出てくんなっつーの」

 

 ともかく、不本意ながらも問題は解けた。試験官に持って行こうと立ち上がる面々だ。

 

「ほう、ちゃんと問題を解いて合格したのは君たちが第一号ですよ」

 

 ブンガクはリンたちの持ってきた解答用紙を見て、酷く喜んだ。それが意外で、リンは思わず聞き返す。

 

「そうなの?」

「20名程、プレートを持って来て合格しました。知性と協調性を問う試験なのに…」

 

 そう言って悲し気な表情を見せるブンガク。暴動の気配がまだ収まらないところを見るに、肉体に物を言わせた受験生たちはまだまだ来るだろう。

 

「けっ、あんな試験内容だったらそりゃそうなるわ。こいつらがおかしいんだよ」

「正確にはリンが、かしらね」

「えー、だってハンターになるなら即席のチームワークって必要そうじゃん」

 

 リンがそう言うと、少し納得したようにノワールが頷いた。ブンガクが満足げに言う。

 

「実際、それが正解ですよ。プレートを持ってきた受験生には補習という形で私の遺跡発掘ドラマ8時間コースをお見せしていますので」

 

 (真面目に解いてよかった)と四人全員が思った。次の日の試験に響くのはごめんだ。

 

 二次試験合格と言われ、ホテルのロビーに案内された。今日はここで宿泊するようにとの事だ。

 

「…まさかこんなちゃんと筆記やるなんてな」

「まぁ~ほんとにね。てっきり大乱闘でも始めるのかと思ってたわ」

 

 試験が終わり気の抜けた様子のルカスとメンチがぼやく。性格が似ているからか、ソファに座る二人の姿は姉弟のようだ。少しゴンが恋しくなるリンである。

 

「デモ、皆さんと組んでよかった。助かりました」

 

 ルカスの隣に腰かけながら、ノワールが言った。リンもメンチの隣に座り、改めて今日一日を振り返る。トンネルを歩いて、木登りして、筆記問題を突破した。…うん、言葉にするとよくわからない。

 

「ていうか、ルカスの蹴り凄かった。あんな体勢からあんな威力の蹴りをできるなんて、何者?」

 

 リンのそれは純粋な称賛だ。同い年のリンが言う事でもないが、普通はあんな動きは出来ない。大木を登り切った事と言い、ルカスがただ者ではないのは間違いない。

 

「別に。親が軍人だっただけ。…つーか受け止められたし」

「弟の動きと似てたからね」

「お前の弟ナニモンだよ…」

 

 そう言って雑談に興じる。これは友達っぽいのではないだろうか。新たに試験仲間が三人もできた事に、内心興奮を抑えられないリンであった。

 

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