リン=フリークスの冒険   作:夜桜百花

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そしてまたシリアルへ…


お家に帰ろう!

 さて、無事試験に合格し、ハンターライセンスを手に入れたリンが一番初めに行う事はおわかりだろうか。

 

 天空闘技場で種銭集め?ありかもしれない。戦って経験を積みつつ億単位のお金が稼げる。ライセンスで公共施設や交通系は無料になるとはいえ、数億程度持っていれば次の行動で選択の幅が広がるだろう。

 

 イルミたちに連絡を取る?それもいいだろう。旧友と交流して新たな情報を手に入れられるし、置きっぱなしの漫画も受け取らなければならない。

 

 あの試験官の情報集め?当然必要だ。行方知れずの賞金首をハントするには何にせよ情報を掴まなければならない。

 

 腐教?名案だ。大いなる夢の第一歩として仲間を増やす事は不可欠だ。かつて夢見た会社設立の足掛けにもなる。

 

 しかしリンが初めに選んだのは、人道的かつ子どもらしい選択であった。

 

「ミトさーんただいま!!」

 

 飛行船に乗り船を乗り継ぎ、帰ってきたくじら島。念能力をフルに活用して折れた骨や傷はある程度回復させておいたため、一見傷一つない元気いっぱいの状態だ。

 

 家までの小道を走り、庭先で洗濯物を干すミトに大きく手を振る。リンに気が付いたミトは、すぐそばまで走り寄り優しくリンを抱きしめた。

 

「リン!…おかえりなさい!」

「へへ、ただいま。ハンター試験、合格したよ」

 

 そう言って手に入れたばかりのライセンスを見せる。ミトは複雑な気持ちになりながらも、リンが念願を叶えて無事に帰ってきてくれた事を喜ぶことにした。

 

「姉ちゃん!おかえり、どうだった?」

 

 声を聞きつけて森から戻ってきたらしいゴンが、猛ダッシュでリンに飛びついた。その勢いはまるで黒い弾丸、リンでなければ受け止められなかっただろう。

 ゴンがまた一段と野生児として成長している事に内心恐れ慄くミトである。

 

 苦も無くゴンをキャッチしたリンは、これまで会えなかった不足成分を補うようにゴンに頬擦りした。

 

「ゴン~会いたかったよ~ちゃんと合格したよ!」

「おめでとう姉ちゃん!今日はお祝いだね、ミトさん!」

 

 そう言って破顔する弟を見て、真っ先に帰ってきて良かったと確信したリンだった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「あなたに渡したいものがあるの」

 

 店を臨時休業にしてまでミトと祖母が腕によりをかけて作ってくれた料理を、リンは大喜びで残さず平らげた。ゴンと一緒に風呂に入り寝かしつけた後、リンはミトに呼ばれ開口一番にそう言われたのだ。

 

「渡したい物?」

「ジンが、あなたがハンターになった時に渡すように言っていた物…」

「あんのクソ親父、そんなとこまで用意周到にやってたのか…なんか腹立つ」

 

 元から宣言していたとはいえ、リンがハンターになる事を予期していたジン。行動を読んで先回りされていたように感じ、そこはかとなく悔しいリンである。

 

 リンがハンターになった事で何とも言えない心境だったミトだが、父親の名前を出して初めに出てくる言葉が悪態だった事に思わず笑ってしまった。

 ジンを探すためにハンターを志して資格を得、渡りに船と情報がやってきた事に喜ぶだろうと思っていたからだ。

 

「ミトさん、ありがと。何となく想像はつくから、部屋で見てみるね」

「ええ、わかったわ。おやすみなさい」

 

 そう言ってホールケーキ程度の箱を持って自室に籠る。扉に鍵をかけ、必要はないが誰も居ない事を『円』で念入りに確認してからベッドを背もたれにして部屋の中央に腰を落ち着けた。

 

(原作でゴンにそういうのを渡していたから、もしかしたらと思ったけど…思ったよりでかいな)

 

 (遺憾なことに)この世界では実の父親にあたるのであまりメタ知識を出したくはないが、リンが真っ先にくじら島に帰ってきたのはそういう理由もあった。勿論一番の理由はゴンに会うためだが。

 

 絶対探し出してぶん殴ると宣言した父親。それでも、ジンならば娘のために何かしらのものを用意しているのではないかと思ったのは、原作知識なのか父親への信頼なのか、リンにはもうわからない。

 

 無機質な白っぽい箱には、シンプルに留め具だけが備え付けられている。しかし鍵穴はないのに蓋が空く気配はない。唯一カードの差し込み口のような場所が手掛かりのように思えた。

 振ってみても音はせず、中にクッションのような物が入っているのだろうと予想した。

 

(まぁ、この見た目で『ハンターになったら』って事はそういう事だよね)

 

 メイメイから【何でも叶える不思議なポッケ】(四次元パンダ)に仕舞っていたハンターライセンスを受け取り、差込口に挿入する。『カシャリ』と小さな音がして留め具が勝手に開いた。

 

 生唾を飲み込みながら蓋を開けると、中には高級そうな二段の紺色のクッションに包まれて、ゲームパッケージと指輪、メモリーカード、そして円盤が入っていた。

 

(CD?DVD?カセットテープかと思った)

 

 てっきり原作のゴンのようにテープを渡されるのではないかと思ったが、まさかの円盤。

 ちなみに色々と機器類の時代背景がごっちゃになっているのは深く考えたらいけない部類の話なのだろう。そう、ここは異世界なのだから。

 

(指輪とメモリーカードは予想がつく。パッケージがあるのはもしかして…)

 

 恐る恐るパッケージを手に取ると、表面にはゲームらしいポップなイラストと『GREED ISLAND』という文字が書かれていた。

 

(まさかのグリードアイランドー!!!え、どうしよう五十ウン億のゲームが入ってたんですけど?こんなの今まで我が家においてあったって事だよねすげえ!ていうかこれ開発者直々のプレゼントって事になるよな公式直々の供給ですありがとうございますあっ開発者うちのクソ親父なんだったうわなんか微妙な気持ち!)

 

 前世のオタク精神と今世の娘精神がごっちゃになってよくわからない事を脳内で叫ぶリン。これを口に出さなかったのは隣の部屋で寝ているゴンが起きてしまうからだ。クソでか感情を声に出さず堪え切ったのは我ながら称賛に値すると一人自分を褒め称える。

 

 ゲームが入っているのはわかった。指輪とメモリーカードが入っているのも、恐らくそういう事だ。指輪の裏側には神字が彫られており、密かに興奮する。ジョイステーションを購入すればすぐにでもプレイする事が可能だろう。

 

 しかし、今すぐそれをする必要はない。そうなると、リンの興味は残りのDVDに移った。

 

 性格の悪いジンの事だから、このDVDを見られるのは一度だけだろう。となるとこっちも相応に対策をして臨んだ方が良いと考えられる。例えば、声と顔で現在地を割り出せる念能力を持つ人間など、探知系能力者がいるかもしれない。

 

 念能力は奥が深い。原作を読んでいた時は戦闘系発を持つ能力者ばかりのイメージだったが、むしろ純粋な戦闘専門の念能力者は少数派で大抵は探知や除念などの日常生活や仕事に応用しやすい能力を作る人間が多い。

 これはリンが幼少期にG・Iテストプレイをしていた時に学んだ事だ。

 

 共にモンスターを倒していたごろつきたちは戦闘系技能にしても拳銃や肉弾戦を補助する程度の能力にとどめ、殆どは人間の操作や探知などの能力を持つ人間ばかりだった。

 それは大っぴらに念を使っても日常生活に馴染み、念の存在を秘匿できる能力を求めた結果であるとも言える。

 

 少し話が逸れたが、探知系能力者は意外と多い。そういった人間を雇ってDVDを一緒に見せればジンの居場所を簡単に割り出せるのではないか。

 

(…と考えるのですが、だが断る!)

 

 即座に自分で却下したリンである。

 

(なんか自分の力で見つけられませんって言ってるみたいで悔しいし、ていうか身内の恥を他人に知られるの無理)

 

 要は意地である。どうせ親父の事だ、このDVD内でも他人に見られて居た堪れなくなるような何かをやらかしているとリンは考える。

 

 というわけで、早速リンはDVDを手に取り部屋のテレビで再生させることにした。デッキに装填し、リモコンの再生ボタンを押す。懐かしい父親の声は、映像が現れて暫くしてから流れ始めた。

 

『…ようリン。お前やっぱハンターになっちまったか』

 

 G・Iの中だろうか。どこか懐かしい自然を背景に、切り株にどっかりと腰かけたジンが画面には映っている。声の一つも聞き逃さないように、ヘッドホンを差し込み音量を上げた。

 

『お前は昔っから負けん気が強かったからな、そんな気はしてた。…ハンターになったって事は、俺を探して殴りに来るか?』

 

 リンがジンに『ぶん殴る』宣言したのはくじら島に預けられるほんの数日前だ。ジンはいつこの映像を撮影したのだろうか。それすらも予想していたというのだろうか。

 

『言っておくが、俺はお前に会いたくねぇし合わせる顔もねぇから、お前が来てるってわかったらトンズラかますぜ?』

「かっこつけんなハゲ」

 

 思わず悪態を口にしていた。むかついたからしょうがない。

 

『ああ、あとお前用のG・Iのメモリーカードを入れといてやるよ。ソフトは自分で買え。小遣いもやっただろ』

 

 ソフト用に小遣いを貰った覚えはない。もしかして、かつて渡された500万ジェニーの事を言っているのだろうか。全く足りないってわかりきっているのに。

 

(もしかして親父ってバカ?)

 

 一周回って、冗談ではなく本気で言っているのではないかという気がしてきた。そして『そういえば親父は馬鹿だった』と結論に辿り着く。

 

『おいジン、リンにビデオレターだろ?さっきから聞いてりゃ何言ってんだおめー!』

『あっ!入ってくんな!真面目に話してんだよ!』

 

(あ、ドゥーンとショウユウの声だ)

 

 急にジンとは別の声が入り込んできた。それが記憶の中のジンの仲間たちと酷似している事に気づき、懐かしい思いでいっぱいになる。そして(ドゥーンはもう改名したんだろうな)と関係ない事に思いを馳せるリンである。

 

『なぁ~にが『ハンターになっちまったか』だよ!お前リンにハンターの英才教育してただろうが!『なってくれてありがとう』だろ!』

『おい声入るだろ!要らん事言うんじゃねえ!』

 

 完全にビデオレターではなくなっている。これは何だろう、ホームビデオだろうか。自分は何を見せられているんだとぼんやり眺める。

 

 ジンとカメラの向こうのドゥーン達のやり取りは終わる気配がない。むしろ更にヒートアップの気配を見せていた。

 

『かっこつけんなボケ!真っ先に『育児放棄してごめんなさい』だろうが!つかてめぇが会いに行け!』

『G・Iは渡しておけよ!リンは開発の功労者なんだからな!え、お前まさか自分で買わせる気か?親の風上にも置けねぇな!』

 

(煽られてるな親父…しかもド正論だ)

 

 そして自分を開発メンバーとして数えてくれている事が何気に嬉しかったりもするリンだ。

 

 ジンは言い返す事も出来ずどんどんイライラボルテージが上がっているのが見て分かった。そろそろ殴りにかかるだろうと容易に予想できる。

 

『あーもーわかったよ!入れとけばいいんだろ!?ちゃんと入れといてやるよ満足かぼけ!』

 

 ビシッとこちらを指差すジン。おそらく画面の前のリンに対してではなく、ビデオカメラの向こうに居るドゥーン達に対してだろう。

 

 そして改めてカメラの方に視線を向けた。今度はリンに向けてだろう。もうホームビデオを眺めている気分になっていたので、急に自分に向けて話を振られびくりとする。

 

『あ、言っておくがゴンにはG・Iはやらせんなよ?自分でハントさせるからな!いいか、絶対にやらせんなよ!わかったな!!約束だからな!!絶対だからな!!じゃあお前はお前でとっとと俺探しに来い!』

 

 DVDはそこで終わっていた。締めの言葉は当然なく、ビデオカメラが倒れたらしく、画面がぶれて最後はドゥーンたちをタコ殴りにしているところで切れている。

 

(というか自分で『俺の事探しに来い』って言っちゃってるし…寂しがりか)

 

 とりあえず、絶対ゴンがハンターになったら一緒にG・Iをやろう。自動的にデータ消去されるDVDを眺めながら、リンはそう心に決めた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 リンの中の何かが変わってしまったのは、リンがハンター試験を受ける数カ月前だと、ミトは考えている。恐らくゴンを連れているか島に行った日だ。

 

 何が起こったかは分からない。ただ、急にゴンが消えて、数時間後にリンが傷だらけのゴンを連れて帰ってきた。ゴンは暫く夜泣きや魘される事が増え、その数時間の間にゴンの身に何かが起こった事が察せられたが、ミトにはそれを尋ねる事は出来なかった。

 

 ミトはくじら島で育った。大自然を相手にジンと駆け回ってきたミトは、リンやゴンほどではなくとも鼻が利く方だ。

 当然、ゴンを連れて帰ってきたリンから血の匂いがする事も察していた。

 

 しかし苦しそうに笑うリンを見て、ゴンを何かから助けるために自分が傷ついたのだろうと考え、無理に聞き出せなかったのだ。だから、ただ強く抱きしめた。少しでもこの子の心が癒されるようにと。

 

 そしてハンター試験から帰ってきたリンは、またあの時と同じ様な顔をしていた。もっとも、あの時よりも遥かに覚悟が決まったような一本筋の通った顔つきだったが。そして、やっぱり血の匂いがかすかにしていた。

 

 特にスカーフ。出発前にはしていなかったオレンジ色のスカーフは、リンの真っ黒な黒髪によく似合っている。しかし、もっとも血の匂いが強いのはそのスカーフからだった。そして、誰か別の人間の匂いも。それが誰かの形見である事は想像に難くなかった。

 

 毎年何千人と死者の出る試験だ。どんな辛い事があったのか、ミトには想像もつかない。

 ミトは自分ではリンを抑えられない事を理解している。だけど、リンが道を踏み外す事はない事も知っている。

 

 だから、ミトはただ笑顔で迎え入れ抱きしめる。この家がリンにとって帰って来られる居場所であるようにと。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 帰省して数日後、リンは自分の部屋で一人、一つの品と向き合っていた。勿論部屋の中央で、正座をして、だ。それはリンにとっての最大級の敬意の表現である。

 

 目の前に置かれた品は携帯電話。最新機種のスマートフォン型を選んだ。時空のゆがみにより様々な機種が販売されているハンター世界だが、使い馴染みのある形を選ぶのは自然な流れであった。

 

 ちなみにだが、リンは多少ならお金を持っている。ハンターにとっては本当に多少、程度のものだが。

 幼い頃から店の手伝いをしては小遣いを貰っていたのを少しずつ貯めていたのだ。基本的にゴンの写真を現像する以外は使い道がないので、かなりの額が貯まっている。

 

(これより…神聖な儀式を始めます)

 

 黙祷を捧げ冨樫神に祈りと感謝を述べる。別に聖書の一文とかそんな形式張ったものではない。要は気持ちの問題だ。

 

 そしてメイメイの【何でも叶える不思議なポッケ】(四次元パンダ)からバインダーを取り出し、一ページずつ、決してしわなど寄らないよう丁寧にページを捲っていく。中に挟んだメモに間違っても傷がついてはいけない。

 

 鋭い人は察した事だろう。リンが行っているのは所謂アドレス登録作業だ。携帯をいるか島で購入して早々に家のホームコードを入力し、自室に籠ったのはこのためだった。

 

「姉ちゃーん!遊ぼうよぉー!」

「ごめーんゴン!今姉ちゃん人生で一番大事な事してるから後で!」

 

 こればかりは愛する弟を関わらせる事も出来ない。万が一、億が一メモを紛失したりなんかしたら、発狂して情けない姿を弟に晒す事になってしまう。

 

(イルミ、ミルキ、メンチ、ノワール、ビスケ…神か!私のアドレス帳に神が宿っている!!)

 

 伝説の暗殺一家からハンター協会の重鎮まで、数は少ないが妙に濃ゆいラインナップである。一つ一つ丁寧に、拝み倒しながら入力をしたのは言うまでもない。

 

 全員に自分が携帯を買った旨とホームコードを記載したメールを飛ばす。メールというのはあくまで便宜上で実際は某ショートメッセージの様な機能なのだが、そこはあまり重要ではない捏造の小ネタだ。

 

(お、メンチとノワールは返信早いな…近況も報告してくれてる)

 

 たまたま同じタイミングで返ってきたメッセージだが、メンチとノワールは既に最終試験会場からは離れているようだった。メンチは天空闘技場、ノワールは森の中で修業を付けてもらっているらしい。

 

(『めっちゃ生意気なガキがいるのよ!チョコロボくん買い占めてお子ちゃま舌の癖に妙に強くてむかつくー!』って…これキルアじゃね?)

 

 それ暗殺一家のエリートだからあんまり刺激するなよ、と言うべきか悩むリンである。

 

 そんな事を考えていると、ビスケからも返信が来た。こちらは比較的シンプルなものだった。

 

(…ていうかどうしよう、推しからのメッセージとか全部永久保存したいんだけど、そんなんしてたら容量無くなるよな…今から追加でデータ量増やしとくか?)

 

 購入して間もないが、早くも契約変更を考え始める。

 

 先が思いやられるが、イルミとミルキから返信が来た事によりその思考は中断された。やたらと受信に時間がかかっているのだ。最新機種にも拘らず、きっかり六分かかった事に嫌な予感を覚えながらも画面を開く。

 

 まずイルミからのメールは、『見せてあげる』の一言のみ。しかしそれと共に数千枚に渡る写真が添付されていた。どうりで時間がかかるわけだ。自分の最新型携帯は十分頑張ってくれていたのだ。

 

(キルアの写真多っ!!あ、でもミルキ達のもちゃんとある)

 

 八割はキルアの成長記録だが、ところどころに他の弟たちの写真も入っているあたり何だかんだ兄弟大好きなのだなと感じるリンである。キルアへの愛情がクソ重なだけで…。

 そしてアルカやカルトの写真も混じっている事に改めて時間の流れを感じる。

 

 次にミルキからのメールを開くと、これまた『見てくれ』の一言のみだった。変なところで似ている兄弟だなと思いつつ添付ファイルを開くと、数百に渡る同人誌が詰め込まれていた。

 初めは小説を書いていたようだが、次第にイラストの方にシフトチェンジしたらしく、最も新しそうなものはプロ顔負けの画力を誇る漫画になっていた。この数年間の殆どを二次創作に費やしていた事が見て取れる。

 

(暗殺者より漫画家の方が向いてるんじゃない?)

 

 とりあえず、送られてきた品々はじっくり時間をかけて読もうと思うリンだ。暫くは【私の代わりに眠って】(睡眠パンダ)を使用して徹夜する事になるだろう。

 

 ゾルディック写真集を一枚一枚保存しながらほくほくしていると、写真の送り主から電話がかかってきた。リンの携帯の通話記録第一号は暗殺一家の長男である。数年ぶりの会話に緊張しつつも、受話器マークをタップする。

 

『見た?』

 

 数年ぶりを思わせない第一声だ。やや声変わりして別人のように聞こえるが、こんな話し方からスタートする知り合いはイルミで間違いない。

 

『今見てる。兄弟も生まれたんだ』

『まあね。五人兄弟だよ』

 

 緊張していたのが嘘のように、すっと話す事ができて内心ほっとしているリンだ。まるで毎日会話していたかのように気楽に話す事ができる。

 

『キルア大きくなったね』

『うん、暗殺者としての才能も歴代でピカイチだよ。今は天空闘技場で修行させてる』

 

 確定演出。メンチのメールにあったチョコロボガキンチョはやっぱりキルアの事だろう。これを言うとイルミの過保護が爆発しそうなので黙っておくが。

 

『へぇ、順調に育ってるみたいで良かった。同い年だし、うちの弟とも気が合うかな』

『キルアに友達なんか必要ない』

 

(急に空気変わるじゃん)

 

 電話越しでも伝わる殺気に、何と反応していいのかわからなくなるリン。しかし謝るような事も言っていないので、相手がなぜ怒っているか聞く方を優先する。

 

『いやそこまで言ってないじゃん…どした急に』

『ああ、キルがさ、最近外の世界に妙に憧れだしてるんだよね。針で矯正しても直らなくって』

 

 別段リンに怒りを向けているわけでは無いようだ。けろりと態度を変えたイルミに、何となく予想はつくが一応確認をしておく。

 もしかしたら万が一、億が一の確率で人道的な教育方針を取っている可能性もあるから…。

 

『…矯正って?』

『脳に針刺してるの』

『頭にぷすーっと?』

『ぷすーっと』

 

(…まあ、そりゃそうか)

 

 淡い期待を抱いてみたが、やっぱりイルミはイルミだった。思わず「うわぁ」という声が漏れ出てしまったが、イルミはそこは気にしていないらしい。

 

『甘い考えは死に繋がるからね。キルにはうちの跡取りとして立派になってもらわないと』

 

 そう言われると、一理ある。これまでの経験からリンもそこは同意だった。にしても、やり方があるだろうと思うが。

 

『…イルミはうちのクソ親父を少し見習った方が良いと思うよ』

 

 というか、足して二で割った方がいいと思う。

 

『?リンの父さんって育児放棄の駄目親じゃん』

 

 ジンのイメージはゾルディック家でも固まっているようだ。お前にはそれくらいの心持ちがちょうど良いって言ってんだよ馬鹿たれ、と内心毒づく。

 

 ともかくイルミの話したい事は終わったらしかった。『じゃ、切るね』という言葉と共に通話はあっさりと断たれ、ツーッという音しか聴こえなくなる。

 

(…ゴンと遊ぶか)

 

 ミッションコンプリートした事により、携帯をメイメイに預けて部屋を出たリンであった。

 

 

 

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