「リン…お前、蜘蛛に入らないか?」
宝を予め持参していたらしい袋に仕舞いながら、クロロが言った。リンは持っていたかなり高価であると思われる壺を取り落としそうになりながら間抜けな声を出す。
当の本人はなぜ驚かれるのかが心底理解できないといった表情で、首を傾げた。
「持ち運びに優れた能力や砂粒を操る能力…それにオーラの質を変化させる特技と、お前の能力はレアだからな」
「…私、ハンターなんだけど。掃除屋って噂されるくらいの」
「だが小遣い稼ぎ代わりなんだろ?それなら盗賊になった方が稼げるぞ。それにライセンス程度なら俺も持っている」
倫理面を考慮しなければ、クロロの言っている事は間違っていない。推しのチームに入るのも魅力的だが、リンの頭の中を可愛い弟の顔がよぎった。もはや原作なんてどうでもいいリンだが、万が一原作通りにゴン達が旅団と敵対したらゴンは旅団員になったリンを見て悲しむだろう。
(あっあかん…想像しただけで心臓キュってなった)
というわけでリンの返答は一択だ。もっとも、そうでなくても断るつもりだったが。簡単に首を横に振ると、何が面白いのか古書を選別しながらクロロは鼻で笑った。
「つれないな」
「盗賊趣味はないからね」
「狩人も盗賊も似たようなものだろ」
確かにと思ってしまった自分がいないでもない。分野にもよるが、盗賊とハンターの仕事内容は被る事もあるからだ。今回のように。
「それを言うなら似て非なるもの…かな」
しかし少なくとも、リンにとっては狩人である事が重要であった。父親の背中を追うためにも、弟に背中を見せるためにも。
この話はおしまいと言うように立ち上がり、ほんの僅かな宝だけを
「私はこれくらいでいいや」
その言葉に今度はクロロ達が驚く番だった。当然だろう。脅されながらも半分以上の宝を寄こせと言っていた人間が、前言をあっさり撤回してやたらと謙虚な事を言ったのだから。
「本当にいいのか?あれだけ豪語していた奴の言葉とは思えないが」
「うん。探検できて満足したし、これだけで十分」
(だって盗賊さん相手にお宝いっぱい欲しいとか言ったらリアルな話ぶっ殺されそうじゃないですかぁ~欲しい物は奪い取るんでしょ~?)
流石に口にはしなかったが、しかしリンの予想は当たっていたらしい。その言葉を聞いたウボォーとノブナガが僅かに纏っていた殺気が消えたからだ。
どうやらこの僅かな宝が取り分として妥当だったようで、この財宝のハントはリンの功績が大きいとはいえ懐が広いのか狭いのかよくわからない旅団である。
「賢いな」
「思ってもない誉め言葉要らないから。んじゃ、五分後にこの中砂で満たすからそれまでに逃げてね」
そう言いながら手を軽く振り、ピラミッドを後にする。クロロ達はそれを引き留めようとはしなかった。
(さて…と。こっからやる事はいっぱいだな)
能力が適用できる範疇で街へ向かいながら、五分経過したことを確認して地下ピラミッドを埋め立てる。砂を満たした感覚では人型のものは感じなかったから、三人ともちゃんと脱出したのだろう。楽しい経験ができて大満足のリンだ。
しかし、リンがエジプーシャでやりたい事はまだまだあった。
取り敢えず手始めに、その足で博物館に向かい物品の受け渡しを行う。同時に地下ピラミッドの修繕作業についても相談し、協会を通して念能力に理解のある作業員を手配した。
地下ピラミッドの修復は、リンが念能力で支えている中に作業員が入って壁面の修繕や柱の設置を行うところから始まる。そのため一度修復を始めたら、砂を抜いてもピラミッドが崩れたり砂が入り込んだりしなくなるまでリンはそこから動けないのだ。
しかし協会を通じて手配できる人材なら、一カ月もあればリンの能力を必要としなくなる程度には修復ができるだろう。逆に言えば、少なくとも一カ月は拘束されることになる。
遺跡の修復マニュアルについては広く確立されている。砂粒に埋もれたピラミッドは少々イレギュラーだが、事前に調べた限りではリンが補助を行えば十分修復可能な範囲だった。マニュアル考案者がジン=フリークスなのは気に入らないが、これが一番合理的なので仕方ない。
(服の新調でもしようかな。最近服が小さくなってきた気もするし)
予想よりも長期的な滞在になりそうなため、この土地に馴染む服を購入する事にしたリン。繁華街の屋台で食べ歩きをして腹を満たしつつ、手頃な服を売っていそうな店を探す。
成長期に入ったらしい事を考慮すると少しゆとりのある服装が適しているだろうなどと考えながら、ガラベーヤをショーウィンドウに飾っている店に入った。
流石エジプーシャ…と言うべきか、肌を見せない服やゆったりした服など、民族衣装の類が沢山販売されている。しかし、どれも動きにくさを感じさせ、購入には踏み切れない。
ハンターでも動きやすさよりビジュアル重視の人間は沢山いるが、リンは最低限体術に影響しない服装が望ましいと考えている。ロングスカートの類はもってのほかだった。
(唯一良いと思ったのはこれ…か…)
そう思いながら手に取るのは所謂風来坊スタイルな服装。下はズボンタイプになっているが胴着のようにゆったりしており、動きやすそうだ。そして上半身はノースリーブとなっており、更に上からマントのようにアウターを羽織るデザインになっているため、寒暖差が激しい地域でも体温を調節しやすいだろう。
土地柄も考慮すると仕方ない事だが、場に馴染みかつ動きやすいという条件だとジンにそこはかとなく似ている服しかなく、なんとも言えない気持ちになるリンである。
背に腹は代えられない。さっさと代金を支払い、その場でブーツとスカーフを残して購入した服を身に着けた。鏡に映る自分の姿がかつてのジンを思わせ、辟易する。ゴンに比べると、やはり顔つきはそこはかとなくジンに似ているのであった。
(普通男の方が似るだろ。なんで?性格の悪さ?ゴンにある純粋さが私には足りないという事?)
これ以上考えると負のループに陥るので、止めておくことにする。
今まで身に着けていた服は丁寧に
地下ピラミッドの修復作業にはリンの能力を常時発動している必要があるからだ。当然、リンも能力が使用できる範疇までしか移動できない。
長かったような短かったような、そんな一日を終えてリンはどっかりとベッドに座り込んだ。肉体よりも精神的疲労が大きい。
推しとまさかの共同ハントができたとはいえ、殆ど脅されたような形である上にリンの取り分はごく僅かだった。地下ピラミッドの修復作業に私財を投じる事を考えると、金銭的には完全にマイナスだろう。
しかし、リンはまったくもって気にしていない。むしろ大成功の部類だったとすら考えている。
(なんだかんだ、一番欲しかったお宝は確保したからね)
時価数百億はくだらない宝や古書の大半を旅団に譲る事によって、リンは個人的に最も欲しかった新大陸紀行をどさくさに紛れ確保していた。
クロロも解読可能な古書の振り分けに熱中しそうな様子だったため、特に怪しまれる心配もなかったわけだ。
というか、あれだけ大量の財宝を譲ったのだから本一冊くらい目を瞑れと思うリンである。
新大陸紀行は数百年前に発行された書籍だ。奇跡的にも読める状態で残っていたが、あちこちにかすれや文字の潰れが見られ、ただでさえ分厚い書籍なのに簡単に読めるものではない。
また、ハンター語で執筆されているとはいえ百年もあれば言語は微妙に変化を見せる。ところどころに出てくるよくわからない言葉を調べる必要性も考えれば、更に読破に時間がかかるのは明白であった。
(この本を解読しながらピラミッド内部で能力を発動させ続ける…頑張るぞぉ)
常時疲労回復できるからいいものの、かなりの重労働になる事は十分予想された。だがそれ以上に公式グッズを取得できた事への興奮が止まらないリン。
普通に考えればピラミッド修復作業を終えてからゆっくり解読をするべきなのだろうが、オタクはせっかちなのだ。
本来なら明日からに備えて休んでおくべきところを、待ちきれずに携帯を開き古書の解読について調べ始める。ハンター世界では遺跡や古書を扱うハンターも多数いるため、汚れで文字が読み取れない場合の対処法や文字の推測方法なども一般化されているものが多い。
いくつかのサイトを検索し、最も手早い古書解読が行ないやすそうなサイトを発見した。それどころか簡単な昔の言葉程度なら翻訳機能も付いており、その利便性に感動するリンだ。
一番の問題はそのサイトの設立者がジン=フリークスと記載されている事なのだが。
(本当にどこでも出てくるなあの親父…)
今回は自らその親父の専門領域に足を踏み入れているので何も言えないのだが、ともかく何とか解読は出来そうだった。一ページずつ、ちまちまと気が遠くなるような作業をしていく。
(『この本を門番に託し、私は西へ向かう…』やっぱりノンフィクションなんだなこの本)
フィクションや与太話の類として当時は陳列されていたらしいが、これが実話である事は知る人ぞ知る事実だ。細部を記憶していないリンだが、暗黒大陸という強烈なインパクトを残した存在ははっきりと覚えていた。
著者はドン=フリークス。彼が先祖なのか無関係の人間なのかはわからないが、頭のねじがぶっ飛んだ人間だという事だけはよくわかる。そんな人間の探検した記録を、少しずつ解読する。
リンの携帯が震えたのはその時だった。メイメイがポッケから取り出してくれたのを受け取り、画面を見る。相手は知らないホームコードであり、少し迷ったが思い切って電話に出る事にした。
『よく俺を出し抜けると思ったな』
リンの中で一瞬時が止まった。
機械越しで少し変化しているが、それは紛れもなくクロロの声だった。CV宮野●は電話越しでもイケボだなと関係ない事を考えるリン。完全に現実逃避だ。そうしないとキャパオーバーだったとも言う。
(Foooooooooooo!クロロさんからの直々のTELだぜイェア!ていうかどこでホームコード入手したの?え、待っていやホントになんで?ていうか新大陸紀行パクってきたからだよね絶対。あ、死んだわ~これ死んだわ~~~)
『…ナンノハナシデスカネ』
『とぼけるな。お前が持っている新大陸紀行だ』
予想的中。というかそれしか思い当たる節がないのだから当然だろう。出し抜いたことを根に持たれているかもしれないという気持ちと、こっちも妥協したんだからそれくらい許せよという気持ちがせめぎ合う。
『…お宝殆ど譲ったんだから、それくらい譲歩してくれてもよくない?大人げないよ』
『生憎だがやりたいと思った事は絶対にやりたい性質でな』
数時間前にリンが言った言葉をそのまま返され、思わず口籠るリン。どうしようかと考えていると、コンコンと窓がノックされ、そのままクロロが侵入してきた。鍵をかけていた筈なのだがと思うのも束の間、クロロの右手にピッキング道具があるのを見て全てを察した。
(泥棒は窓から入らないと死ぬ病気か何かなの?)
普通にドアから入られるのも嫌だが、窓から入られるのも心臓に悪い。本を胸に抱え、後ろ手で出入り口の扉を開けた。密室が条件の能力もあるかもしれないと予想してその対策と、そして何かあった際に少しでも逃げやすいようにと。
「今読み始めた所か。丁度良い」
クロロはリンの持っている本に目を向けると、嬉しそうに口の端を少し上げた。本を返せば命は助かるかもしれないが、そこまで旅団に得ばかりさせるのも正直嫌だった。…というか、ただの意地である。
完全に頭の悪い選択ではあるが、リンにとってこの本はそれだけどうしても読みたいものだった。要するに『手に入れたばかりの公式激レアグッズを易々と渡す奴が居るか』論である。
命の危険を感じたら大抵は渡すと思うが、そこはパンダ欲しさあまりに念を発現させ、あのジンさえ呆れさせたリンだ。その辺のしつこさと気の強さが売りでもあった。
「何?私を殺して手に入れようって?」
威嚇するメイメイを宥めつついつでも行動できるようにオーラを練りながら、リンは喧嘩っ早くクロロに尋ねた。対するクロロは思っていなかった言葉に不思議そうな表情を見せる。
「…?なぜだ?殺されたいのか?」
「…欲しいもののためなら仲間以外全員殺すと思ってた。幻影旅団はそれくらい極悪非道の集団だって」
口調こそ柔らかいが、会話の内容は不穏なものでしかなかった。同様に数メートル空間を空けて対峙した二人にも同じ空気が流れている。いや、正確にはリンが殺気を全身に纏わせているのだが。
クロロは口元に手を当てながら、静かにリンの目を見据えた。それだけでも蛇に睨まれた蛙のように身が竦むリン。一度は拳を入れた相手とはいえ、あの時はお互い殺し合いまでの気持ちはなかった。だが今は場合によっては殺されるだろうとリンは思っている。
「そうだな…間違ってはいない。だがこれは蜘蛛ではなく俺個人として興味があるものだからな」
「それが私を殺さない理由にはならないと思うんだけど」
リンの言う通りだった。クロロは平気で人を殺せる人間だ。それはA級盗賊の長でもある事が明瞭に示している。そんな彼が個人的な興味だからと言って自身の欲しいものを所持しているリンを殺さないとは思えなかった。
リンの言葉に一瞬クロロの表情が抜け落ちる。それに背筋がぞくりとしたリンだが、クロロは特に動きを見せる事はなかった。
先程より深く思考の渦に入り込み、視線すら逸らす。もっとも、リンが逃げようとすれば即座に捕まえられると自覚しているからこその余裕だろうが。
「それもそうだ。…なぜだろうな」
そのまま暫く考えこむ。カチカチと時計が刻む音が、まるで余命宣告されているかのように感じる。仕事の最中でも毎日訓練は続けていたリンだが、今の自分では目の前の男には敵わないとはっきり理解している。
「恐らく、お前という人間にも興味を持っているのだろう。自分を知りたいなら合わせ鏡を見るのは理に適っている」
「…確かに似た匂いを感じるとは言ったけど、そこまで似てる?」
少なくともリンには自分とクロロが酷く似ているとまでは思わない。特質系だから気質が似ているのかと感じたくらいだ。というか、クロロの方が完全に上位互換だと思っている。
「お前と同じ、『似た匂いを感じた』というやつだな。感覚的なものだが、それをもう少し追求したいと思っただけだ」
どうやら今すぐ殺される気配はなさそうだ。オーラを途切れさせこそしないが、ホッと一息ついた。
「…まあ、殺されないなら私はいいけど。でも本を渡せって事でしょ?私は死にたくないけど、本を渡したくもない」
「俺はその本の内容が知りたい。それほどの古書であれば解読作業は難航するはずだ…俺も手伝う。その方が早い」
それはリンとしては願ってもない提案だった。実際、解読作業は一人より二人の方が容易く進む。
「…本当に殺そうとは思わないんだ」
「化けて出られるのは嫌だからな」
「明日から野宿でも?」
「とっくに把握している」
それを最終確認とし、かくしてハンターと盗賊の奇妙な協力作業は続くことになった。
クロロは古書の復元に対して知識が深く、確かにリンが一人で作業するよりも解読はスムーズに進んだ。場所を移しソファに二人腰かけて作業しているが、平然と隣に座るクロロに違和感しかないリンだ。
「『たった一人航海が許されたのは、まだ世界規模のシステムが構築されていないからこそ可能だった事だ。今後、新大陸への渡航は更に困難になると予想される』」
「まさにその通りになっているな」
それでも、『新大陸紀行を解読する』という共通の目的を持った二人の作業は息があったコンビのように進んでいた。書籍そのものがかなりの分厚さを呈しているため全体で見れば亀の歩みのようなスピードだが、確実に疲労と引き換えにページは捲られていく。
もっとも、リンは
「…しんどー」
当然だがそんな環境下で先に音を上げたのはクロロの方であった。
本に張り付いていた身体を引き剝がし、ソファに身を投げる。それは解読作業の一時休憩を意味していた。大発見を伴う冒険をした後に夜通し頭を使った解読作業をしていたのだから、当然ではあるのだが。
「寝たら?」
「その隙に本を持って逃げられるかもしれないだろ」
「賢いね」
そんな事をする気はないし、状況的にできるわけもないのだが、先日のやり取りを思い出し何となく軽口を叩く。
しかし数時間後にはホテルを出てその後しばらく野宿を続ける事を考えれば、今のうちに休むのが最善だとクロロは考えたらしかった。
いつの間にか昇っていた朝日に目を瞬かせ眉間を軽く揉みながら、
「俺一時間ほど休むから。続きはここを出てからにしよう」
「…普通に能力使うんだね」
どうやら使用するのは疲労回復系の能力らしい。小さな天使のような生き物が具現化され、クロロの頭に乗っかった。
リンのコピーした能力やクロロの盗んだ能力は、その性質上人に知られてもあまりデメリットがない。また、日常使用系能力は他者に知られても特に問題ない場合が多いためクロロがそれを使用するのはそうおかしい事でもないのだ。
それでも目の前の人間が平然と本を開くのが不思議でしょうがなかった。リンの質問に対して、オーラの粒子のような光を浴びながらクロロが目を閉じて言う。
「確かに…負ける可能性がないからだろうか?」
「失礼過ぎ」
信用されているのか馬鹿にされているのかどちらなんだろうと思うリン。殆ど馬鹿にされているのだろうが、旅団との力量差は実際に会う事で嫌という程感じたから何も言えない。
リンのイメージではクロロ=ルシルフルという人間は警戒心が強く、仲間以外誰にも心を開かない人間だった。それがリンに対しては旧知の仲であるかのように接している。
振る舞いも、口調こそ変わらないものの一見ただの好青年だ。ウボォーやノブナガと居た時のような『団長』の顔ではなくリンと初めて出会った時のようなフランクささえ見せる。
蜘蛛ではなくプライベート故にそこまで警戒する必要がないのか、それともリンがそれだけ取るに足らない存在なのか。
好奇心は猫をも殺すというが、普段は決して湧かない好奇心がリンを刺激した。ラフなジャージを着てソファにもたれかかっているクロロに対し、一瞬だけ軽く殺気を飛ばしてみたのだ。それは完全な出来心だった。
(っ!?)
遊び半分でためしてみたものの、決して油断はしていなかった。何か起きれば即座に退避するだけの構えもしていた。
それでも、気づけばリンの身体はソファに押し付けられていた。首をギリギリと押さえつけられ、息ができない。身体を起こそうにも、マウントポジションを取られてしまい身動きが取れなかった。
「…うっかり殺してしまうところだった。何のつもりだ」
リンの腹の上に膝を押し付けたまま、リンが話せるように少しだけ首元の力を緩めながらクロロが言った。
先程までの好奇心で動く研究生のような表情はなりを顰め、無表情な殺人鬼の顔がリンを見つめる。返答次第では首を千切られるとリンは悟った。
「ちょっとした…好奇心。なんでA級盗賊がほぼ初対面の私の前で平然と念を使ったり休んだりするんだろって」
「そうか…答えは簡単だ。お前が取るに足らない相手だからだ。現に、少し殺気を飛ばしただけなのに俺にこうして組み伏せられているだろう?」
そう言うとクロロはリンを解放した。軽く咽ながらリンも身体を起こす。互いの念獣が再び術者に乗るのを眺めながら、クロロは感情を読み取らせない声で言った。
「次やったら殺す」
「…はぁい、ごめんなさい」
クロロ=ルシルフルはよくわからない。それが命を懸けた実験でリンの出した結論だった。まるで二重人格者だ。好奇心旺盛な青年の顔と冷徹な殺人者の顔を併せ持ち、あちらこちらにキャラが飛ぶ。そんな人間が自らとリンを似ていると評価するのだから、よくわからない。
ともかくやる事がないのなら自分も身体を休めておこうと、リンもソファで目を閉じた。
ノブナガはウボォーに似ている事からゴンを気に入っていましたが、それなら反対にリンは性格が合わないのではと何となく思いました。