リン=フリークスの冒険   作:夜桜百花

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親父を探してみる【前編】

 修行をしたりハントをしたり、そんな事を続けながらリンは17歳になった。G・Iをクリアしてから約一年と少しの月日が流れている。

 

 この期間に起きた特別大きなニュースとして、リンがシングルの称号を得た事が挙げられる。

 功績はジャポン文化の世界的流布、そして発展途上国への無償の多言語翻訳本提供だ。書籍の多言語翻訳も会社が動かしてくれるし、サブカルチャーについてはファンが広まり二次創作サイトやオリジナル創作サイトという受け皿も作った今、リン達が手を加えずとも瞬く間に新たなものが生み出され広がっている。だが、その土台を作ったのが功績なのだとか。

 自分がやりたい事をやっていただけなのでこんな事で功績として称えられるのはおかしな気持ちだが、貰えるものは貰っとけ精神で受け取ったリンだ。

 

 ハンターになってからずっと心残りになっていた厄介ごとも片付き、今リンが夢中になって取り組んでいるのは、たった一つのトラップ作成のみ。史上最大の大掛かりな仕掛け、それだけに半年以上の月日を費やしている。

 そして今日、ようやく全ての準備が整った。PCを見つめ思わず込み上げる笑みを押さえながら、リンは静かにオーラを練る。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「ノワール、悪いけどミザイストムさんと連絡を取らせてくれない?」

「それは良いが…何のためだ?」

「色々あって、除念師の力が欲しいの」

 

 時は少しばかり遡り、リン達がゲームをクリアした直後。

 墓参りを終えて地理的にも近いノワールの故郷に寄り、メンチの舌をも唸らせる料理を堪能しながらリンは話を切り出した。

 バッテラとの契約を遂行するにあたってノワールに頼む必要があり、バッテラとのやり取りを含めてリンは彼の邸宅での一部始終を二人に説明する。詳しく話すのが面倒でざっくりとした概要しか伝えていなかったため、最愛の女性がいたというくだりでは二人とも苦い顔をした。

 

「代わりに、バッテラにベイベースの全面協力(というかほぼ奴隷状態)をするようにさせたから」

「でもそれならバッテラの財産全部をベイベースに渡させた方が良かったんじゃない?」

「ばーか、お嬢のメンチは知らないかもだけど、お金は使われてこそお金なのよ」

 

 国家直属の料理人に作ってもらったケーキの山を食べながらフォークを軽く振りつつダメ出しをする。少しムッとしたメンチに軽く肩を小突かれるが、気にするでもなく続きを話すリン。

 

「まるっと国に渡したら横領の危険性も上がるし、お金が動かなくなっちゃうじゃん。その点、バッテラはクソ野郎だけど一代で大富豪になるくらいにはお金の使い方を理解してるし、勝手に増やしてくれる。ていうかバッテラは資産を処分したがってたし、あいつの思い通りにもしたくない」

 

 最愛の女性を助け、バッテラ自身も若返らせる。代わりに一生金を稼がせ続け、生かさず殺さずノワールのために働かせ続ける。それがバッテラの状況を判断したリンが、ノワールを最優先にしつつも罪のない女性も助けるために考えた折衷案だった。

 ついでにリンの言う事も全て聞くよう契約をしたが、それはあくまで思い付きでついでに行った契約だ。それを聞いたメンチとノワールは、ついでで奴隷にされるバッテラにほんの少しばかり同情した。

 リンでなくツェズゲラに頼んだ方がバッテラ的には良かったのだろう。しかしバッテラはあの後ツェズゲラに事情を説明することもなかったらしく、結果この一件はリンに一任されている。リンとしてはラッキーの一言に他ならない。

 そしてG・Iの攻略も禍根の解消も終わった今、ようやっとバッテラの依頼…すなわち除念師の斡旋に取り掛かろうとしているのが今の状況だった。加えて念能力を習得したバッテラをG・Iに飛ばして『魔女の若返り薬』を飲ませれば、晴れて依頼達成だ。

 

「そんなわけで、協会幹部のミザイストムさんなら腕利きの除念師を紹介してくれるかなって」

 

 全てのプロハンターを束ね、念能力の知見に最も長けてると言ってもいい集団。当然、組織で雇用している除念師もしくはその伝手くらいはあるはず。

 ハンター業は命懸けであり、仲間とは純粋な信頼のみで成り立っているが故に、同業者間の結びつきが強い。信頼している相手が紹介した相手ならば信頼できるだろう、という理論だ。

 そんなリンの信頼に応え、ノワールも自分ができる最善案を提示する。仲間というだけでもなく友人でもある二人の間でそれが交わされるのは自然な流れだ。そしてそれは、リンに少しばかり想定外の出会いをもたらすのだった。

 

 …と、そんなこんなで、かくしてゲームクリアから三カ月後。

 

 16歳になったばかりのリンは仕事の待ち合わせ場所に向かうついでに、少しばかりの調べ物ととある用事を兼ねて久しぶりにハンター協会本部に来ていた。

 ノワールがミザイストムに連絡を取ったところ、協会お抱えの除念師を紹介するが代わりに仕事を手伝ってほしいとの要請があった。諸事情により信頼できる筋の人手が足りていないらしい。

 

(絶対パリストンが副会長になった影響でしょ)

 

 パリストンが懇意にしているハンターが最近では協会内部をほぼ埋め尽くしているらしいというのはナックルから聞いた情報だ。

 オーラの質といい狩りに対する向き合い方といい、確かに同業者にしては匂いの違う人間が増えているのは本部に入った瞬間に感じていた。基本的に協会には資料を探すかネテロ関連の用事しかないリンには関係ない事だが。

 

「リンさん!」

 

 噂をすれば何とやら。騒がしい背景が視界に入り込んだかと思えば、リンより頭一つ分高い理想的と呼ばれる高身長の男がリンの目の前に現れた。珍しくジャケットを脱いでおり、ボタンを少し開けてワイシャツを着こなすその姿はいつになくセクシーだ。

 

(何その色気うっざ…どうせなら他の男に向けなさいよ)

 

 例えばジンとか。ジンパリでもパリジンでもいい。

 

 …と思ったが、流石に口にしないだけの分別はリンにもある。

 

 こいつに会わないように注意しながら資料室に行っていたはずなのに、会長室に足を向けた途端にこれだ。パリストンの専らの遊び相手はネテロだから仕方ないのだが。

 

「…いつもここに来るとお会いしますね」

「そりゃあ、ここが僕の職場ですから!」

 

 少しうんざりしながらもそれを隠さずに挨拶すると、パリストンは爽やかに笑った。

 顔といい声といい、見る者を魅了するだけの魅力に溢れているだろうに、どうしてこんなにイラつくのだろうか。一瞬そんな疑問が頭をよぎったが、パリストンがそう仕向けているからだと答えはすぐに出た。

 リンの思考でも読んでいるのかと思うくらいあからさまに、襟もとでパタパタと風を送りながら妙に憂いを帯びた流し目をするパリストン。そんな表情まで作って何を言おうとしているのかは、簡単に予想がつく。

 

「ミシャクーロさんを捕縛されたらしいですね!いやあ…これで悲しい事件に幕が下りましたか!」

 

 これだ。今リンが特にパリストンに会いたくなかった理由は、ここにある。絶対面倒な絡み方をされるとわかっていた。

 だが、会ってしまったものは仕方ない。心の中でため息をつくのが唯一できること。

 

「でも元々はパリストンさんのせいですよね?」

「まさかとんでもない!…ああ、でもあの一言がきっかけだったのかなぁ?」

 

 レンタル秘密ビデオ店の制約に引っ掛からないギリギリでリンが言及する。

 あからさまに詳細を匂わせつつも取ってつけたような悲し気な表情を浮かべた後、どこかわくわくした様子でパリストンはリンの目を見つめた。

 

「僕を嫌いになりましたか?」

「いえ、別に。パリストンさんと遊ぶ気にもならないですし」

 

 会わないのが理想的だったとはいえ、会ってしまった場合どんな対応をするかは元々決めていた。

 変に感情的になれば思うつぼだし、挑発的に対応しても面白がられる。かといって無視してもしつこく構われるのであれば、もう開き直ってありのまま思った事を言うのが最善だ。一周回って無策とも言うが。

 

「じゃ、親父やジジイのケツでも追っかけてくださぁい」

 

 二つの意味で吐いた捨て台詞をパリストンがどう受け取ったかはわからないが、特に後ろを振り返らずに会長室への道をスタコラサッサと歩く。ここで用事を済ませてしまえば、あとは現場に直行するのみだ。

 相変わらず引き際は弁えているらしく、パリストンの今回の攻防はここまでだった。

 

 いつも通りまともにノックをせず会長室に入るリン。ネテロは心源流でよく行われるストレッチをもう少し複雑…もとい一般人には不可能な動きにしてこなしているところだった。

 軽く汗をかいているところを見るに、誰かに遊んでもらっていたのだろう。通り道でパリストンと会ったのを考えると、相手はパリストンだったのかもしれない。

 

(人手不足だったのでは?)

 

 至極真っ当な疑問だが、会長の遊び相手も十二支んの業務の一つだ。何より十二支んは会長に心酔しているメンバーばかりで構成されているため、最優先業務ともいえるのだろう。…パリストンは心酔派ではないが。

 

「全て終わったわ。必要ないかもしれないけど、一応報告しに来た。私は真面目なんで」

 

 リンはネテロのデスクまでつかつかと歩み寄ると、ばさりとクリアファイルに入れた書類を投げ出した。

 それはミシャクーロの現在について記載された報告書だ。リンが念能力を使用した後、『マッド博士の整形マシーン』で完全な別人に姿を変えさせ、戸籍の改ざんをした。今ではこの書類を見なければ、その男がミシャクーロだと判断するのはもう不可能だ。

 

「あいつの今の姿と名前よ。念も使えないようにしてある。今後どうするかはご自由に」

 

 ネテロは珍しく真剣な表情で書類に目を通し、そしてリンに深々と頭を下げた。心から発せられた言葉と共に。

 

「…恩に着る」

「何の話?私は性格の悪いジジイに面倒な人間を押し付けただけだから。ここへ寄ったのもついでだし」

 

 ネテロは様々な秘密を抱えながら、それでも飄々としたあの態度をリンの前で崩す事はなかった。それならば、今更殊勝な態度を取られるのはかえって気持ちが悪い。

「陰険ジジイなのがトレードマークでしょ」と言って背を向けるリンに、「おぬしまでそう思っとったんかい」と返ってきた。当然、リンが振り返る事はなかった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 所変わってスワルダニシティから夜行列車で北へ向かい、とある山の麓。

 ミザイストムから依頼されたのはとある少数民族の生存確認。…というよりは死亡確認と遺跡の点検、場合によっては疫害を防ぐための清掃の人員配備だ。

 不測の事態も備えてある程度の武力を持つ人間が必要だと言われたのは、メインの幹部がやや武力に欠けるからとのこと。

 集合時刻ぴったりに落ち合い簡単に自己紹介を終えると、リンはおずおずと言った。

 

「…チードルさんって、ファミリーネームも改名してるんですか?」

「?」

 

 チードル=ヨークシャー…戌を担うために生まれてきたような彼女が今回の同行者だ。親ネテロ派(本人は認めないが)の筆頭格で、前副会長の頃から参謀ポジションとしても働く彼女だが、そこまでしていたのかと気になって思わず質問をしてしまった。流石に言ってから少し後悔したが、元々気になっていたのだから遅かれ早かれ口にはしていたとは思うリンだ。

 

「いいえ、元々の名だけど?→リン」

 

 やはりというか元からの名前だった。つまりは神の采配というやつだ。

 

(冨樫…ファミリーネーム考えるの面倒になったのかしら)

 

 十二支んは一気にキャラが登場したため、仕方ないと言えば仕方ない。

 そしてリンが名乗っても何も言われなかったあたり、以前からジンの娘と知っていたかもしくはミザイストムから聞いていたのだろう。わざわざそこに言及しないでくれるのはリンにとってもありがたい。不要な恥はかきたくないのが人情というものだ。

 

「別に深い意味はないです。…新任の副会長のせいで、随分と苦労されてるみたいですね」

「会長の意向だから仕方ないわ→仕事をするだけ」

 

 クールにドライに、忠実に。それが十二支んの戌としての彼女の立ち位置だ。それに従って、必要以上の詮索もせず山の中へ歩き出す。

 

「もう一人の同僚っていうのはもう先に来てるんですよね?」

「ええ。侵入者を排除する山の機能が失われているみたいで、その確認をしてくれています。→双眼鏡で」

「へぇ…」

「知ってる人ですよ→かなり」

 

 事前に聞いていた通り、村が僅かに見えるくらいの位置まで登るともう一人の同行者が待っていた。先に到着して村の状況を確認していたらしい。

 そのよく見知った人物に、思わずリンは笑顔で駆け寄った。

 

「カイト!」

「おー、久しぶりだな。元気してたか?」

「ぼちぼちってとこね。カイトも助っ人?」

「ああ。…ジンさんに頼まれてな。キユリノ族の生存調査らしいが」

「らしい?」

 

 元から頼まれていた依頼にしては曖昧な言い方をするカイト。その答えはチードルが受け継ぐ形で応えてくれた。

 

「キユリノ族は古代遺跡に造詣が深くて大陸の遺産と呼ばれるものを管理しているからね…ジンに同行を依頼したんだけど、代わりにカイトを連れてけって言われたのよ→押し付け」

「見つけた途端にこれだ。…一人前と認められたのは嬉しいがな」

「…うちの親が恥知らずですみません」

 

 今回は言わなくていいと思っていたのに、不意に出てくる身内の恥。専門分野で仕事せずして、お前はいったい何をしているのかと小一時間問い詰めたくなるところ。だがカイトもチードルも慣れているらしく、ひらひらと手を振って許してくれる。

 

「そういえば卒試合格おめでと。ミトさんとも」

 

 集落への経路の安全を確認し、三人で雪山の登山を開始する。…と言っても、念能力者で身体能力も常人離れしている彼らは登山家が見れば失神する程の軽装だが。

 道すがらニヤニヤしながら言うと、カイトはぎょっとしたようにリンを見た。

 カイトから『ジンさんを見つけた』と連絡は数か月前にあったが、ミトのことは何も言っていなかったからリンも知らないと思っていたのだろう。当然、家族大好きで報連相を怠らないミトがそんな事をするわけない。

 

「たまにはくじら島に顔を出してあげてよ?ミトさんモテるんだから、愛想つかされちゃうかも」

「それは勿論だ。初めて護りたい人ができたんだ…この命、簡単には散らせなくなってしまった」

 

 だからフラグ染みた発言をやめろと内心思うリン。

 

 キユリノ族は、雪山に住む数十名の少数民族だ。木の上に家を作る風習を持ち、彼らは皆手足が一般水準よりやや長く大きい。知能も高く、表世界では知られていないが古代遺跡を管理する役目も持っている。

 

「山が認めた人間にしか見えない集落って聞いてたけどね」

「自然と古代技術の融合ってわけだ。それが機能していないって事は…何かあったんだろうな」

「ていうかちょっと腐敗臭するし」

 

 カイトが事前に確認していた通り、集落には人気が全くない。リンにしかわからない程度だが腐敗臭もするあたり、生存者の期待はしない方が良さそうだ。木々に隠れて真っ白な視界の割にはやたらと暗い村の中では、ところどころ雪に埋もれた古代兵器らしき球体だけがきゅぴきゅぴと音を立てている。

 

(人の気配がないのに機械音だけが聴こえるのって…なんでこんなに怖いのかしら)

 

 荒廃した土地で急にゾンビや先人の残した兵器が襲い掛かってくるホラーゲーム、灯りもない廃村となったボロボロの集落でどこかから聴こえる呻き声を始まりとするゲーム…。先日怖いもの見たさで視聴してしまったゲーム実況動画を思い出す。最もビビったのは配信者の叫び声だったが。

 

「あら、怖いの?→リン」

「安心しろ、幽霊は死後の念だってお前も知ってるだろ」

「幽霊を信じてるわけじゃありません。怖い雰囲気が苦手なんです」

 

 強がりで言ってみるが怖いのを認めている事には変わりない。この場で最年少だからこそ少しだけだが弱気になれる。

 血の匂いがする薄暗い廃村で、見た事もない機械だけが動く。しかもカメラの様な赤いランプはチラチラとリン達を見つめているのだから臆してしまうのも仕方ないとリンは思う。もしも同行者がゴンやイルミ、クロロやネテロだったら絶対に口にしないが。そう思うとカイトたちは多少甘えられる貴重な相手なのかもしれない。

 

 きゅぴぴぴぴぴ…。

 

 真っ赤なライトがそばを通ったリンに唐突に焦点を当て始めた。唐突なサウンド変化に内心パニックになるリン。

 

(ひぇえっぇあああああ!!とぅららーとぅららートライアングール!三平方の定理はピッタゴラッスー!!)

 

 恐怖のあまり思わず脳内で歌を歌いだす。恐怖を煽る舞台と初見殺しの攻撃はホラゲーの代名詞だ。それでも身体に染みついたハンターとしての習性は冷静に念能力発動の準備をする。

 

「ぎゃああああぁあああ!!!!」

 

 予想外なところからの悲鳴に、思わずビクゥと身体を強張らせるリン。隣を見るとチードルがリンよりもビビり散らかした表情でかなり後方へ跳んでいた。

 それを見てリンとカイトもともに後方へ退避するが、ライトはレーザーの様に波長を変化させ、リンを追尾する。まるで今からお前を撃ち抜くと言わんばかりに。

 

【透明な反射鏡】(ミラーミラージュ)

 

 自分よりビビっている人の存在により急激に冷静になったリン。一瞬の間を置いて発射された光線をガラスで弾く。弾く瞬間はリン自身が『絶』状態になってしまうが、所詮は一方通行の攻撃だ。このくらいなら問題ない。

 

「…チードルさんも、怖いの苦手ですか?」

 

 撥ね返したレーザーが古代兵器を木っ端微塵にするのを背に、プルプルと震えるチードルに尋ねる。ビビり散らかしているのが自分だけと気づいたチードルは、パッパッと膝の埃を掃いコホンと一息入れた。

 

「…気のせいでは?→幻聴」

「…はーい」

 

 有無を言わせない口調でそう言われてしまえばリンは何も言えない。あくまで自分は雇われで、今回の依頼人はチードル(正確にはミザイストム含む十二支ん)なのだから。

 

「お前ら、そんな茶番をしている場合ではなさそうだぞ」

 

【気狂いピエロ】(クレイジースロット)

 

 カイトがそう言いながら念能力を発動する。恐らくリンの一撃がトリガーだったのだろう。つられて周囲を見れば、今まで通り過ぎてきた古代兵器たちが続々と起動を始めていた。

 脚は蛇腹の様に可動域が広そうな機械が四本取り付けられており、雪で埋まっていたために球体に見えた本体部分は上部のみの半球状だ。そしてやっぱり赤いレーザーでリン達を捕捉している。

 

「おっしゃー!どんな能力が出てくるかなァ?」

 

 カイトが発現させた念はスティックの様な形状にピエロの頭部がくっついた不思議な物体。そしてやたらと喋る性格のようだ。

 明朗に喋るピエロを無視するカイト。それを気にした様子もなくドゥルドゥルという効果音と共にスロットが回りだす。数秒の後に現れた数字は『2』。

 

「2番…ハズレだな」

「そう言うなって!」

 

(…メイメイにもお喋り機能つけた方が良かったかしら?いやでもメイメイは無言だから可愛いってのもあるし…)

 

 カイトの能力のような話し方をされれば、幻滅とまでは言わなくても多少引く。

 リンも援護できるようにオーラを練りながら、そう言えばとふと気づいてチードルに確認を取った。

 

「チードルさん、古代の遺物らしいけど、壊してもいいの?」

「緊急時の防衛は止むをえません。でも可能ならば修復できるようにしておいてください→壊しておいて今言うか?」

「…ま、善処するよ。二人とも伏せてくれ」

 

【死神の円舞曲】(サイレントワルツ)

 

 カイトがそう言いリンとチードルが伏せると、カイトは大鎌を大きく振った。斬撃は明らかに鎌のリーチよりも広範囲に伝わり、リン達に近づいていた数十体の遺物達は軒並み真っ二つにされていた。

 レーザー機能のみを狙ったのはカイトの配慮なのだろうが、全てが機能を停止したところを考えると修復の仕事はそこそこ大変だろう。

 

「随分よく喋る能力ね」

 

「消えろ」と雑に能力を解除したカイトに、久しぶりに他人の念能力を見たリンは見たままの正直な感想を伝えた。

 

「ああ、おまけに出てくる武器はランダムで使うまで消えない。…まったくもって鬱陶しい」

「正直意外。博打は嫌いそうなのに」

 

 情に厚い面も見せるが基本的には理知的で合理的なカイトが行き当たりばったりの能力を作るのは少し違和感がある。

 できるだけ沢山の武器を使用する能力自体はあらゆる場面に対応できるようになりたいという願望が入っていそうなので納得できるが、無駄にお喋りする機能やランダムに武器を具現化する機能は合理的とは言えそうにない。思った事を素直に尋ねると、カイトは今日一番申し訳なさそうな顔をした。

 

「…能力を作る時、ジンさんが「そっちの方がおもしれーだろ」って譲らなくてな」

「…本当にごめん」

 

 気まずそうに頬を掻きながら答えるカイトに、心底申し訳なくなるリン。

 だがそんな気まずい空気を背負って仕事をするわけにもいかないので、切り替えてさっさと進んでいく。防衛システムらしいそれらの機器を壊してしまえば、あとはリンの鼻を頼りに血の匂いの下へ向かうだけだ。




今年も異界入りの季節が来ましたね。
うp主はニコニコ時代からのガッチマンファンです。
キットカットを食べながらデッドラ実況を観ていたら面白過ぎて吹き出してキットカットが鼻に入り、泣きながら鼻に入ったウエハースを洗浄したのも良い思い出。
ウエハースってな、尖ってるから鼻に入ったら死ぬほど痛いんだぜ?
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