ゾルディック家を出た後。下山し門を出てバスが来たのと反対方向に少し歩けば、ゼブロたちが住んでいるのであろう小屋は簡単に見つかった。
ログハウスの様なデザインをした、木の香りが溢れリラックスできそうな家だ。ここだけ切り取ればそれが暗殺一家の使用人の家には到底見えない。そして扉を開けずとも良い匂いが漂ってくる。晩御飯の支度中のようだ。
「姉さんおかえり。遅かったね」
中に入るとゴンが声をかけてくれた。身体にはいかにも重そうな見た目のベストを纏い、椅子を運んだり皿を運んだりと晩御飯の用意をしている。ゴンとレオリオが場所の準備、クラピカの姿が見当たらないところを見ると、奥で料理の手伝いをしているらしい。
(あのセンスの料理が出てこないといいけど…)
喋る料理が出てきたらどうしようと一瞬不穏な考えが頭をよぎるが、流石にゼブロが共に作っているのだからそれはないだろうと思い直す。ゴンが降ろした椅子は鉛が入っているかのような音を立てた。
「ちょっと向こうで直談判してたのよ…ゾルディックの嫁になるとかありえんわ」
「お前ゾルディック家の嫁候補だったのかよ!」
「知らないけどそうだったみたい。全力で断ったからもう大丈夫」
「暗殺一家に物申せるとかすげーな…」
リンの言う『全力』の意味を勘違いしたレオリオは、リンが決死の覚悟で暗殺者と殴り合いの勝負をしたというイメージを抱いている。シルバ的には殴り合いに近い衝撃と(精神的)ダメージを受けたのであながち間違いではない。
あの後、しばらく滞在する旨を添えて通常の挨拶をもしたが、シルバが上の空だったのは仕方のないことだろう。会社を経営しているのは知っていたがミルキのBL趣味までは知らなかったらしく、息子と友人の娘がえげつない呪物を生成していると知った暗殺一家当主のショックは計り知れない。リンが脅しに近い直談判を提案した時にミルキがかなり悩んでいたのもよくわかる。
察するに、恐らくミルキの趣味を知っているのは兄弟くらい。キキョウはどうでもいいが、どうかゼノやマハには伝わりませんようにと心の中で祈るリンである。
「でも姉さんがキルアの家にお嫁に行ったら、俺とキルアは義兄弟になれたんだね」
「…ま、姉ちゃんにも選ぶ権利はあるってことよ」
「そんなややこしい事しなくてもあなた達が結婚すれば家族じゃない」と言いかけたが黙っておいたリンだ。
ゴンが運んできた椅子の一つに腰かけ、机に頬杖をつく。丁度良いタイミングでゼブロとクラピカが料理を運んできた。ありがたい事に、料理はまともな見た目で美味しそうな匂いをさせている。どうやらシチューらしい。
「ああ、リン様。戻ってきておられましたか」
「私は雇い主じゃないし、リンって呼んでよゼブロさん。ゴン達と同じように接してくれると嬉しいわ」
「そう仰るなら…リンちゃん、君も一緒にトレーニングするかい?扉を全て開く力があるなら必要なさそうだけど…」
「そうね…一緒にやりたいかな!」
ゼブロに促され、全員が席に着く。せっかくならゴン達とお揃いがいいリン。手を合わせていただきますの姿勢をとりながら、悩む余地もなく大喜びで返事をした。
「これがうちにある一番重いチョッキだ。試しの門を全部開けられるってならこれくらい余裕だろ」
それを聞いて食事の前に紹介されたもう一人の掃除夫であるシークアントが面白そうに目を細めながら、しかし重たそうにリン用の重りを持ってくる。さも通常の衣服を受け取るかのように手に取ったが、リンからしてもなかなかの重みを感じる一品だった。
「ありがと。…おっ、なかなかね」
「シークアントさん、姉さんのは何キロあるの?」
「1トンだ」
「「「いっ…!?」」」
先に食べ始めていたゴン達が思わずスプーンを取り落とす。ゴロンとそぐわない音を立てるスプーンを気にするよりも、三人ともリンに釘付けになった。
「あ、サイズも丁度良いじゃない。重量トレーニングは長いことやってないからありがたいわ」
理解不能な生き物を見るような視線を一身に浴びながらも何食わぬ顔で袖を通す。重りに慣れずギクシャクとした動きをするゴン達とは対照的に、リンは涼しい顔をしていつも通りに身体を動かして見せた。立ち上がりくるりと軽いステップで一回転するリンに、レオリオがぼやく。
「…ゴリラどころじゃねえな」
「可憐な乙女を捕まえて酷い言いようね。自分の方がよっぽどゴリラ顔のくせに」
「彼女の言う通りだな、レオリオ。そろそろ鏡を見て自覚をした方がいい。今この中で最も筋力が見掛け倒しなのもお前だしな」
主人公の姉だけあってリンはルックスがそこそこ良い。誰も否定できない切り返しにレオリオがムキー!とぎこちないながらも腕を振り回した。その怒りの半分は無意味に煽りを入れたクラピカに向いているが。
「…クラピカ、何か姉さんに遠慮してる?」
野菜を頬張りながらゴンが横目でクラピカを見る。洞察力に優れているゴンは当事者でなくとも何か感じるものがあったらしい。
「…いや、そんな事はないさ」
「ふーん?」
リンとしては触れられると気まずいところなのでぎくりと肩を震わせる。当の本人は少し言い淀むものの、涼しい顔をしているが。
(そんな事あるでしょ…)
客観的に見ても主観的に見ても、クラピカはやはりリンに対して少し距離のある物言いばかりをしていた。心にはくるものがあるが、こればかりはクラピカの問題なのだからどうしようもない。
仕事だったとはいえ信頼を裏切り、騙し続けていたのはこちらだ。レオリオがニアの時と変わらずに接してくれるのがそもそも奇跡に近いだろう。
「…ま、私的にはそれだけの重さで底が抜けないこの家の方がよっぽどすごいと思うけどね」
色々と思うところはあれど、自分からクラピカに仲良くしてほしいなどという資格はない。少なくともリンはそう思っている。そのため、辛うじて話題を逸らすしかできる事はない。その後の夕食は他愛もない話で過ぎていった。
さて、ゴン達のベストは50キロ。家具類は全て20キロ以上で扉に至っては500キロだ。普通に生活するだけでも常人は死にかねないし、常人ではないゴン達でも一つ一つの動作にかなり時間を必要とする。
数時間後、ゴン達はゼブロに宛がわれた部屋でどっかりとベッドに転がっていた。丁度四人分のベッドが用意されている部屋で、リンもその様子を見ながら同じようにベッドに腰かける。三人とも慣れない重さの生活に疲れ果てた表情をしており、特に扉に苦戦して危うく漏らしかけたレオリオは精神的な疲労も激しい。
「姉さん…片方で2トンもあるなんて、一カ月以内にあの扉開くかな…」
「自分で言い出したくせに何弱気になってんのよ。だからライセンス使った方がいいって言ったのに」
ぺたりとベッドにうつ伏せになりながら、ゴンが不安そうに顔だけリンの居る右側に向けた。観光ビザで入国しているリン達は1カ月しかパドキアに滞在できない。扉の事は黙っていたとはいえ助言していただろうと呆れるリンに、「だってあの時はさっさと会えると思ってたんだもん!」とゴンも言い返す。この程度のじゃれ合いは慣れてきたらしく、レオリオとクラピカは何も言わない。
だが、すぐに入ったところでキルアとの面会は難しいだろう。シルバとはあの黒歴史なやり取りの後でキルアと話し合いをするよう頼んでおいたが、家出(しかもキキョウの顔面を刺して)してきたキルアを御仕置きなしで許すほどゾルディック家は優しくない。
「…まあ、今すぐ行ったって暫くは会えないだろうし、丁度良いわよ。ついでに骨折も治しちゃいなさい。骨折れたまんまだとキルアと遊ぶのに邪魔でしょうし」
「うん。もうほぼくっついてるけどね」
「「え」」
あっさりとゴンが言い放った衝撃的な言葉に、これには黙って聞くばかりだったレオリオ達もぎょっとして起き上がった。全治一カ月と言われていた怪我に対して、ゴンは1週間程度でほぼ完治していると言うのだから当然だ。
「早くねぇか?」
「煮干し食べてたからね!」
「やっぱ骨折れた時はカルシウムよね!」
ゴンがリュックから煮干しの袋を取り出してニヒヒと笑う。リンもあっさりと同調すると、レオリオは自分の頭が正常だと確かめるかのようにこめかみをぐりぐりと指で押さえつけた。
「…クラピカ、俺達がおかしいんじゃねぇよな?」
「少し既視感のある質問だな。大丈夫だ、お前の感覚が正しいよ」
二人の脳裏をよぎるのは一次試験でニアとゴンの嗅覚が異常だとわかったあの時。当時は本気で自分がおかしいんじゃないかと心配したレオリオだったが、今思えば単純にゴンとリンがおかしな家系であるだけのことだったのだろう。父親もプロハンターとなれば、そもそもが規格外な一家なのかもしれない。
当然の様に世間の常識からずれた会話をするリンとゴンに、二人は更に疲れを感じるのであった。
◇◇◇
トレーニングは順調だ。住み込みのトレーニングを始めてからたったの二週間で、レオリオが一の門を開いたのだ。その間にゴンの骨折も完治し、三人ともトレーニングの負荷にどんどん適応してきている。ゼブロもシークアントも驚きつつ彼らの負荷を上げている。
基本はゼブロたちの仕事を手伝いつつ筋力トレーニング、時折リンが最終試験の時に感じた弱点を克服させるために、組手の指導をする日々だ。
(…?)
そんなある晩、何かが落ちたような物音でリンは目を覚ました。隣のベッドに目を向けると、案の定そこにあるはずのゴンの姿がない。どうやらベッドから落ちたらしく、ベッドの下を覗き込むと芸術的な寝相をした弟が何かの冗談かと思う程安らかに眠っていた。
ゴンの寝相の悪さは折り紙つきだ。幼少期から一緒に昼寝をしていたらよく蹴飛ばされたものだと思い出し、少し笑いながらベッドを降りるとその身体を抱き上げて元の場所に戻してやる。掛け布団をかけ直すとむず痒そうな、しかしどこか嬉しそうな表情になった。幼い頃から変わらないその仕草に、思わず笑い声を漏らしてしまう。
(プロになったっていっても、やっぱりまだ子どもね)
クスクスと笑いを堪えていると、衣擦れの音が響いた。首を回して確認すると、そこには上半身を起こしたクラピカの姿。ぱちりと目が合ったが、クラピカはさっと視線を逸らしてしまう。
「ごめん、起こしちゃった?」
「いや、水が飲みたくなっただけだ」
起きたのはリンのせいだろうが、どうやら本当に水が飲みたくなったらしかった。ベッドサイドの水差しからコップに水を汲み、数口飲んで一息つく。元の姿に戻ってからクラピカと二人きりで話したことが無いため、微妙な空気が部屋の中を流れる。
「話をしないか?」
気まずさに耐えかねてリンが口を開こうとした時、クラピカがそう言った。ベッドから降りるとカーテンを薄く開け、窓の外を指さす。寝ている二人を起こさないようにという配慮らしい。
「…少しは信用してくれた?」
夜風が心地よく肌を撫でる中、するりと窓の隙間から身体を外に出すとベランダの柵にもたれ掛かり、リンは思い切って尋ねた。月明かりに金髪を美しく照らされながら木々の景色を静かに眺めていたクラピカは、不思議そうにきょとんとして見せる。
「何の話だ?」
「ずっと私に素っ気なかったし警戒してるみたいだったから。…まあ騙してたわけだし、仕方ないんだけど」
正体を明かしてから2週間と少し。このまま気まずい関係を続けるのも限界が近づいていた。そこにきた仲良くなれそうなタイミングに、勇気を出して本音を話す。クラピカはハッとしたような表情を見せると、申し訳なさそうに目を伏せた。
「…いや、リンが悪いわけではない。私の問題だ」
その返答に、今度はリンが不思議そうな表情をする。リンが扮していたニアは、クラピカとよく話していたし、クラピカとレオリオほどではないがそこそこ仲が良くなっていた。てっきりその信頼を裏切った事で距離を置かれていると思っていたが、そうではないらしい。
「四次試験で、私はリンに完膚なきまでにやられた。しかも情けでプレートまで貰って合格した。…あの強さがハンターに必要なものならば私にハンターになる資格はないのではないかと思ってな…リンを見るたびにその事を思い出していた」
「誤解させていたようですまない」と頭を下げるクラピカ。リンが気まずさを感じていたのには気づかなかったらしく、それも含めて本当に申し訳なさそうにしている。
(…でもよかった。嫌われてるわけじゃなかったのね)
常識から逸脱した人生を歩んでいるため、基本的にリンは他人にどう思われようが気にしない。理解してもらう方が難しいからだ。
だが、そんなリンがクラピカに対して気まずさを覚えているのは彼を仲間と認識していたということで。初めは推しだからゴンの友達だからと思っていたが、もうそれだけでは説明できないほどの存在になっていた。
真相を知りホッとした一方で、別な申し訳なさを覚える。リンにとっては良かれと思っての行動だったが、手助けをされたことはクラピカの心に影を落としていたらしい。
「私が手助けをしたのはクラピカがハンターに相応しい人材だと思ったからよ。それに、年齢はそう変わらないけど私はゴン位の年齢からハンターをしてるし、力量差があるのも当然よ」
「6年であれ程の力を身に着けられるのか?」
「まあ…私は他のハンターよりも対人戦闘を重要視してるわ。クソ親父を鉄拳でぎゃふんと言わせたくてね」
ぶんぶんとジャブをしてみせると、クラピカは目を細める。クラピカがリンと接しづらかったのはニアと性格が違うのもあったのかもしれない。クラピカと親しかった『ニア』は、あくまで蔵馬を基にしたリンのキャラづくりだ。違和感が生まれても仕方のないものだ。
やっぱり今まで通りに接してくれるレオリオの方がマイノリティなのだろう。コミュ力お化けとも言う。
「…でも、力をつける必要はあるわね。幻影旅団は私と同じくらいの強さよ?」
「!?それは本当か!」
「全員がA級賞金首だからね。私くらいのはゴロゴロいるわ」
「…弱音を吐いている暇はない、な」
風に靡く髪を耳にかけ、ギュッと拳を握る。目の前の人間と、その家族を殺した人間両方が自分の知り合いであるのを改めて認識し、複雑な気持ちを抱えずにはいられない。
「…強さなんて後から身に着ければいいのよ。ここに才能の塊な先輩様がいるのよ?教えてもらえば良いじゃない」
仄暗い気持ちを吹き飛ばすため敢えて少しふざけた口調でふんぞり返るリンに、クラピカはまた笑った。リンの言葉に少し気が楽になったらしかった。
二人して笑っていると、カチャリと小さく音がして中から人が出てくる。自分達よりも大きなシルエットは一人にしか当てはまらない。
「何だお前ら、水臭ぇじゃねーか」
「レオリオ」
窓の縁に手をかけ、ニッと笑うレオリオ。その様子を見るに起きたのはついさっきというわけではないらしい。
「クラピカ、リンを口説いてたのか?そういった事に興味ねぇみたいな顔して、意外と大胆だなオイ」
「お前の下心丸出しの思想と一緒にするな」
「冗談だよ。…お前ら相談くらいしろよな。傍から見ていてひやひやしてたんだぞ」
レオリオの言葉にリンとクラピカは揃って顔を見合わせた。自分たちの姿がレオリオの眼にどう映っていたのか、すぐに理解できなかったからだ。
暫く考えると少し想像がついたが、確認のために「何の話?」とリンが訊ねた。レオリオは苦笑いしながら頭を掻く。
「クラピカは一人で悩んでるし、リンは勝手に罪悪感持ってるしよ。まぁ解決したみてぇで良かったよ」
「あ~はは…」
ゴンは弟だし、キルアは生まれた頃から知っている。リンは弟の様に思っているから遠慮しないし、キルアも性格的にリンが押す分には何だかんだ嫌いはしないだろう。
しかし、クラピカとレオリオは年齢も近く初対面からのスタートだった。騙していた負い目もあり少しばかり距離感に悩んでいたが、この先はそんな事に悩む必要はない。
「こっぱずかしい言い方で、ゴンじゃねーけどよ…俺らダチだろ?」
「ふはっ…確かにね。いい歳して、友達に確認の言葉が要るとは思わなかったわ」
リンがレオリオ、クラピカと本当の意味で友人になったのがいつかと言われたら、恐らくこの時であった。
◇◇◇
夜更かしをしたせいだろう。寝起きが良くいつもは一番に目覚めるリンだが、この日は誰よりも寝過ごした。
「…さん、…姉さん朝だよ」
寝ぼけ眼を擦りながら壁掛け時計を見ると、とっくに朝ごはんの時刻になっている。ゴンが扉を開けてリンを起こしに来たのは食事に呼びに来たためらしい。大欠伸をしながら身体を伸ばし、呂律の回らない挨拶をかける。
「おはよゴン」
「珍しいね。昨日あんまり眠れなかった?」
クラピカ達と話していたからとは言う気にもならないし、ゴンの寝相が悪いせいで目が覚めたとは姉としてはもっと言う気にならない。
そのため曖昧に笑って返事にすると、ゴンは不思議そうに首を傾げる。体調でも悪いのかと心配してリンの周囲をぐるぐる回るゴンに、リンは面白がってちょっかいをかける。そのままわちゃわちゃとじゃれていると、なかなか戻ってこない二人の様子を見にいつのまにやらクラピカとレオリオも続いて部屋に入ってきていた。
「遅いぞおめーら。飯冷めちまうだろ」
「ごめんごめん。…ん~、でもかなりスッキリしたわ。よく眠れたし」
「涎垂らして寝てたよ。凄く気持ち良さそうだった!」
腕を真上に伸ばしたままぴしりと固まるリン。思わず「は!?」と叫びながら口元を拭って確認する。そんな様子を見て、レオリオが笑いを堪えながら追撃を食らわせる。
「ああ、おっさんが寝てんのかと思ったぜ」
「…忘れてください」
女好きのレオリオにまでそう評されるとは、どんな顔をして寝ていたのだろうか。白目を剝いてだけはいませんようにと願うリンだが、レオリオの表情を見るにあまり期待できない。二次試験の時のお返しと言わんばかりに、クラピカがリンの肩をぽんと叩いた。
「気にするな。あの程度で落ちる程、お前の品性は残っていない」
「はぁ?表出なさいよクラピカ!今の言葉の痛みを物理的に返してやるわ!」
「気を回してやったのだろうが!」
クラピカ的には本気でフォローを入れたつもりだったらしいが、リンからすればそれがとどめなのは言うまでもないだろう。無意識で煽るクラピカに寝起き早々喧嘩を買うリン。
「どこに回ったのよその気!まったく見えないんですけど?」
「白目で寝る人間には見えないのではないか?」
「ひっど!あーもうクラピカ後で組手な!ぼっこぼこにするから!」
そこまで言われて黙ってはいられないと、ぎゃいぎゃいと口論する。昨日までとは打って変わって攻撃的な二人に、ゴンが思わず呟いた。
「姉さんとクラピカって、知らない間に随分仲良くなったんだね」
「まあな」
「…よかった!」
思っていた仲の深まり方とは少し違うと、レオリオが笑いながら頬を掻く。ゴンは言い合いを続ける二人を見て、自分のことの様に嬉しそうに笑った。