リン=フリークスの冒険   作:夜桜百花

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久々に仕事でもして閑話休題【前編】

(それにしても…9月まで暇になった、わね)

 

 卒業試験をもって、晴れてリンは二人を合格として送り出した。一カ月半という僅かな間ではあるがレオリオは故郷へ帰り、クラピカは斡旋所を探すことになる。

 基本技、応用技と念能力に必要な技術は全て叩き込んだ。これらをどう使うかは彼ら次第だ。しかしクラピカとレオリオとも別れ、9月のヨークシンまで中途半端に暇を持て余したリン。ポリポリと頬を掻きながら飛行場の入り口に大きく張り出された行先一覧を眺める。

 

(新しくハントするにはちょっとスケジュールがタイトよね。最近気になってたのは流星街文化だけど、それかなり長期滞在の前提だし)

 

 かといって何もしないで過ごすには長すぎる。いつもならこの時期はコミハンに行っていたが、今更向かったところで間に合わない。

 それに元々ミルキにもキャンセルの連絡を入れていた手前、行けばミルキから嫌味の嵐が飛んでくること間違いない。下手すればブースも碌に回れずに面倒な仕事ばかりを押し付けられる事だろう。

 

(コミハン…オタ活したいなぁ久しぶりに…ん、オタ活?)

 

 満喫に居座って新しい漫画でも読みふけるかと考えていた時、ピンと閃いた。まさに慧眼、天才的発想と自画自賛する。

 

 時間が空いているならやるべきこと。それはオタ活。聖地巡礼。

 即ち天空闘技場だ。記憶はないが、かつて記憶が消えていると自覚したリンは慌てて携帯にメモを残していた。そこに『天空闘技場』と書いていたから恐らく聖地なのだろう。巡礼する根拠としては曖昧だがそもそもこの世界全体が聖地のようなものなので、細かいところまでは気にしていない。

 もしかしたらまだゴンとキルアが居るかもしれないし、居なくても十分聖地巡礼ができる。それに、ウイングにも会っておきたいところだ。

 

 そんなわけで、思い立ったら即行動。リンは飛行船を乗り継ぎ、7月の末には天空闘技場に到着していた。

 人間同士の戦闘が人の注目を集めるのはどの時代のどの世界でも変わらないようで、高い塔を中心にあちこちに観光客や常連らしき客の姿が見える。お祭りよろしく観光客向けの屋台も並んでいるため、早速葡萄飴を購入するとリンはメイメイと分け合いつつ街を練り歩き始めた。

 

「ん、割と美味いね」

「きゅ」

 

 薄い飴を嚙み砕きながら歩いていると、闘技場公式らしき土産物売り場に行き当たった。流石はオフィシャル、200階クラス含めて一定数勝ち抜いた闘士たちのブロマイドがずらりと並び、人気選手になるほどにキーホルダー、サイン、バトルビデオなど商品の種類が増えている。速攻で飴を食べてしまったリンの視線は、その中の一つに吸い寄せられた。

 

(…なにこれ、リアルの世界でガチのオタ活できるなんて、いいんですか?本当にいいんですか??)

 

 当然だが、ゴン達の顔と名前も闘士一覧表にしっかりと記載されてあった。

 子どもの闘士で目立つという事もあり、非公式らしき近辺の店も含めてかなりの種類のグッズが売り出されている。どうやらファンが多く、かなり金づるとして扱われていたらしい。

 

(ふーん、ここの連中もなかなか見る眼あんじゃん)

 

 内心謎に古参ぶるリンである。しかし正当性はある。何しろこちとら、ゴン達が生まれてからの古参だ。

 

「いらっしゃい!お姉ちゃん、ここは初めてかい?イケメンも多いぜ!」

「まあね。ゴンとキルアのグッズ、全種類ちょうだい」

「は?え?」

「あ、観賞用と保存用で2つずつね。…いや、やっぱ実用も要るわ。3つずつで」

「ま…まいどあり!」

 

 店員からショタガチ勢というあらぬ嫌疑をかけられたのは仕方ないだろう。

 

(…あ、会うなら連絡しとかなきゃじゃん。うっかりしてた~)

 

『ここからここまで』の大人買いを躊躇なくした後、ほくほく気分でようやく当初の目的地に向かうリン。

 長蛇の列に並びながら、時間もかかりそうだし丁度良いとメイメイからスマホを受け取った。こっちからゴンやキルアと合流するなら200階以上に行かなければならないだろうが、向こうから来てもらえば今すぐに会える。

 

「あ、もしもしキルア?闘技場に来たんだけどさ、今どこいる?」

 

 例の如くゴンは携帯を所持していないため、キルアに電話をかける。暇だったのか2コールで出た目的の弟分は、リンの言葉にさして残念そうでもなくあっさりと返した。

 

『あー、入れ違いだな。俺ら今くじら島だよ』

「マジ!?うわーしくった…」

『ま、予定通り9月にヨークシンで、だな』

「そうね。あ、ゴンに「帰ったなら勉強やっときなさい」って伝えといて」

『ん、わかった』

 

 弟達との一足早い再会ができないのは残念だが、居ないものは仕方ない。今からくじら島に帰るのも考えたが、キルアもいる状況でリンまで帰省してはミトの負担が増えるだろうと遠慮しておく。

 しかし多少の八つ当たりはしたいもので。殺さないように『指チョン』で倒すにせよ、必要以上に対戦者が煽られたのは仕方ないことでもあったのだった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 そんなわけで数日後、リンは見事に闘技場の有名人と化していた。ただでさえ珍しい年頃の女性闘士であるのに加え、全ての対戦者を『指チョン』で倒しているのだから、当然話題にもなる。

 物珍しい女性闘士にファンがつくのは必然。天空闘技場運営陣には人寄せパンダとしても扱われているが、そこは無視というやつだ。

 

(今日はB闘技場ね~。お、珍しく相手は子どもかな?)

 

 圧倒的強さに面白いペースで階層が上がっていく。湯水のように使える金銭があるとはいえ、基本的には庶民的な金銭感覚を持っているリン。なので当日の内に100階クラスに入ってタダで宿泊できたのはかなり嬉しいところ。実のところはウイングに会う際に自慢できるように階層を上げている…という理由も密かにあったりする。

 

(次倒したらたぶん200階クラスに上がるわよね。確かメンチが「200階以上はお金出ないくせに全員念能力者だからダルい」って言ってたし…どうしよっかな)

 

 階層は180階を超え、丁度もう少し小遣い稼ぎのためにこの階層をうろつくか、それとも運動がてら200階クラスに上がるかで悩んでいるタイミングであった。

 

『次の対戦はァー!天空の戦乙女(ワルキューレ)リン選手!バァーサス!天才少年武闘士ズシ選手です!!』

(ん?ズシ?ズシってあのズシ?)

 

 特に他の選手の戦いを観ていないため、対戦相手の顔が表示されたモニターを観て今更驚くリンである。ズシも闘技場ではかなり有名な選手となっているのだが、グッズ売り場では弟のグッズしか見ていなかったうえに自分の戦いの後はさっさとホテルに籠っているリンが知らないのは仕方ない。

 

(ズシって、顔と名前だけは憶えてるけど…誰だっけ?誰かの弟子とか…あ、ウイングさんの?あ…あー!)

 

 無いに等しい前世の知識を総動員させている間にも、モニターにはリンとズシの正面からの写真と登録した選手名が簡潔に表示される。

 中央にはVSの文字が表記されており、格ゲーでも始まりそうな雰囲気が出ていた。ゲームではなくこれからリアルで戦闘をするので間違ってはいないが。

 

 リンがこめかみをぐりぐりしながら武舞台に上がって暫くすると、ズシもタタッと走って武舞台に上がった。

 二人の選手が顔を見せたのに呼応して、観客のボルテージはさらに上がる。

 

『リン選手はこれまで、対戦選手を指一本で倒しています!蝶のように舞い蜂のように刺す!華麗に相手を翻弄するその姿はまさに戦乙女(ワルキューレ)!一方のズシ選手!正々堂々と拳で勝負し、200階クラス目前のこの層まで上り詰めてきました!真っすぐに繰り出される拳は筋の通った信念そのもの!両者ともにファンも多く期待の一戦です!』

 

 歓声や野次が飛ぶ中、リンとズシは周りを気にせず相手だけを見据え向かい合った。軽く身構えるリンに対し、ぺこりと丁寧に頭を下げるズシ。

 

「押忍!よろしくお願いしますっす!」

「こちらこそ、よろしく」

 

 ビスケやウイング、他の兄弟子達が見せていた心源流の構えを丁寧に踏襲したそれを見せるズシ。そのオーラは垂れ流しの状態だが、明らかに非念能力者のものと比べると力強い。

 

(まだ発展途上だけど念能力者ね。やっぱりあのズシか。加えて心源流の道着…ウイングさんの弟子で確定ね)

 

 うろ覚えの記憶を手繰り寄せながらこちらの世界での記憶と繋ぎ合わせる。心源流の人間ならば一応はリンの弟弟子のようなものだ。

 

「念能力者よね?せっかくだから、ちょっと指導してあげよっか」

 

 ウイングも見ているであろう事を考えると、少しくらい先輩ムーブもしてみたいところ。イキれるところでイキるスタイルはジンを見て育った影響だ。怪訝そうにリンを見るズシを、リンは不敵な笑みで見つめ返した。

 

『練』

 

 一般人に偽装していたオーラを解除し、念能力者だというアピールとして軽く精孔からオーラを出すリン。

 かなり手加減しているがそれでも濃密なオーラに、ズシがびくりとして身構える。

 

「メイメイ、悪いけどちょっと離れた所に居て」

「きゅい」

 

 メイメイに指示して少し離れた所に待機させる。一応観客の前なので具現化をあからさまに解除するのは避け、かつズシに念を使わないという意思表示を見せるためだ。

 ズシに気を遣って更にオーラを絞りある程度オーラ総量を合わせると、両手を腰に当てて先輩の風格を持ちつつズシに笑いかけた。

 

「そっちも使っていいわよ。私は『発』は使わないから」

「じ、自分はまだ作っていないっす!…でも、胸をお借りしますっす!」

 

 ある程度一般人に聞かれても問題のない範囲で会話を済ませると、構えをとって『練』をするズシ。リンが相手だからか、今度はウイングの怒声が飛ぶことはなかった。

 

 一閃。ズシの拳がリンに向けて飛ぶ。勢いのある良い一撃だ。

 それをひらりと躱しながら、同等の攻防力にした右手で受け止めた。左手で軽めの掌底を鳩尾に当て、同時にぱちんと弾くかのようにその手を離す。

 一瞬動きが固まったズシに、くるりと回転して右手の裏拳を頭部へ向けて放った。ズシも右腕で受けようとしたが間に合わず、手加減したリンの攻撃はズシの身体を軽く後方へと飛ばした。

 

『リン選手!なんとここに来て指一本の制約を解きました!これは互いに全力の試合ということかー!』

 

 リンがここでこなした試合は7試合。今まで指チョンでしか相手を倒してこなかったリンが初めて戦闘らしい動きをしたのだから、実況が大興奮して叫んだのも無理はないだろう。制約ではなくただの舐めプなのだが、傍目にはそう見えても無理はない。

 

 ズシが軽く咳き込みながら立ち上がる。構え直してキッとリンを見据えたタイミングで、次はリンから攻撃に移った。軽い突きを、攻防力移動をさせながらズシに当てる。

 スピードも調節しているのでズシもギリギリだが受ける事が出来ている。一撃一撃が衝突するたびに、ガシガシと拳とは思えない音が会場に響き渡る。

 

『ズシ選手も負けていない!得意の肉弾戦に移るようだ!!』

(オーラ総量はまだまだだけど、『流』はかなりのものね。操作系かしら)

 

 そのガードはそこそこの精度の攻防力移動も伴っており、目の前の少年が真面目に鍛錬しているのが良く分かる。

 オーラの流れを操作するだけなら他の系統である可能性も十分あるが、見た所ズシはかなり実直な性格だ。そのため少なくとも特質系や変化系はないだろうと独自の性格診断でアタリをつける。

 

「相手のフェイントも見抜かなきゃ!常に『凝』を怠らない事!」

 

『隠』をしてフェイントの蹴りを当てると、ズシの身体がまた吹っ飛んだ。少し乱れたポニーテールを肩から払いのけ、師匠然として言う。

 初めは少し驚いていたズシも今では完全に集中しているらしく、「押忍!」と鍛錬で先輩に言うかのように叫んだ。

 

「まだまだ行くわよ!」

『どうしたんでしょうかリン選手!まるで手ほどきをするかのような戦い方だ!』

 

 観客の怒声も歓声も無視して攻防を繰り返す二人。集中すればするほど動きが良くなっていくズシに、図らずもリンは口元が緩んでしまう。

 

(やっぱ、才能ある人間の成長を見るのは面白いわね。ゴン達の修行をビスケに任せるって言ったの、勿体ないことしたかも)

 

 ズシの顔に疲れの色が見え始める。そろそろ頃合いだろうかというところで軽く押し出し、場外にした。未だかつてないリンとズシの攻防に会場は大いに盛り上がりを見せたのだった。

 

「…押忍!ありがとうございましたっす!」

「ううん、こっちこそありがと」

 

 飛んできたメイメイを再び肩に乗せ、軽く手櫛で髪を整える。丁寧に頭を下げたズシに、何となくこちらも頭を下げる。

 リンの行動が気になったらしく、武舞台を降りて控えに戻ってもズシはリンから離れることなくその顔を見上げた。裏表のなさそうな純真な瞳は、やはり素直な性格をしているという印象を受ける。

 

「…あの、なぜ自分に稽古をつけてくださったのですか?」

「間違ってたら恥ずかしいけど、弟弟子みたいなモンだからね。うちの弟達もお世話になったし」

「弟…?」

 

 ズシが不思議そうな表情を見せたところで、タイミング良くウイングが控えに顔を出した。

 恐らくそのままズシと共に留まってくれていると期待していたのだろう。リンが居るのにも驚かず、眼鏡をずり上げて緩く微笑む。

 

「リンちゃん、お久しぶりですね!」

「ウイングさん!やっぱりこの子、ウイングさんの弟子だったんですね」

「師範代!この方は…?」

 

 ズシとしてもある程度の予想はついているのだろうが、それでも確認を取るために師匠に紹介を求めた。

 ウイングと会うのは心源流の道場以来だ。大きくなったなと言葉にはしないまでも感慨深げにリンを見るウイング。身長はウイングの方が上だが、あの頃よりも見下ろす首の角度はかなり異なる。

 

「ゴン君のお姉さんでビスケ師範の弟子、リンちゃんですよ。リンちゃん、来ていたなら連絡してくれればよかったのに」

「ちょっと驚かせたかったもんで!…ズシ君だっけ?ゴンとキルアがお世話になったわね」

「あ、写真の…お、押忍!こちらこそ、お二人には沢山勉強させて頂いたっす!」

 

 わたわたと慌てて挨拶をするズシ。リンがウイングの知り合いで関係者だというのは察していても、ゴンの姉とまでは思わなかったのだろう。無意識にゴンと似ている箇所を探しているらしい視線を、笑って流す。

 

「リンちゃんはここへは何をしに?ゴンくん達ならもうここには居ませんが…」

「それを知らなかったんですよね…まあ、ちょっと時間が空いたから暇つぶし半分ってとこです」

「そうですか。ここに居る間、よければズシとも相手をしてやってくださいね」

「勿論!」

 

 お近づきの印にと近くの自販機で缶ジュースを買い、ズシに渡す。ウイングにもコーヒーを渡して、リンもオレンジジュースのプルタブを開けた。カシュッと気持ちの良い音が三つ、あたりに響く。

 

「ところで…ゴン達、どんな感じでしたか?」

 

 雑談の流れでちらっと気になっていた事を尋ねると、予想に反してウイングは苦い表情をした。

 ビスケのように「才能の原石だわさ~♥」とまではいかなくても、ウイングももう少しいい反応を見せると思っていたリンは少し驚く。だが、その理由がウイングの口から出てくると納得せざるを得なかった。

 

「リンちゃんの言う通り、恐ろしい才能でしたよ…でも、だからこそ危ういですね」

「危うい…まあ、才能に溺れる心配はありますね」

「それもありますが、違いますよ。特にゴン君…リンちゃん、彼をちょっと甘やかしすぎたのでは?」

「…なぜそう思いましたか?」

「あまりにも精神が純粋すぎる。相当大切に育ててきたのですね…それは良いのですが、彼がこれから生きる世界は、彼が飛び込むにはあまりにも過酷な世界のように思います」

「…(そう言われると辛いわね)」

 

 痛い所を突かれた。これがリンの素直な感想だ。気まずさに眉尻を下げて目を逸らす。ズシは何の話か分かっていないようで、それが唯一の救いだ。

 

 ハンターを目指している弟を、リンはあまりにも汚い物事から引き離して育て過ぎた。

 それだけならミトや祖母の責任もあるが、しかし彼女たちは正真正銘の汚いものは見た事がない。ゴンが幼少期からハンターを志しているのを知っていながら、ハンターなら一度は経験する世の中の汚れから弟を意図的に隠していたのは、確かにリン個人の責任であった。

 

「あー…正解ですね。あの子自身の気質もありますけど、汚いものから遠ざけて育てたのは事実です」

「…気持ちはわかりますよ」

 

 素直で曲がった事が嫌いな性格はゴン個人の性質だ。しかし無意識とはいえそれを助長するように仕向けたのも事実。だが、年の離れた弟に人間の意地が悪い部分を教えたくないのもまた、姉としての心理だった。

 ウイングもそれを理解しているのだろう。同情するような視線を投げかけると、それ以上は何も言わない。

 

 これから先、ゴンはどのように成長するだろう。キルアが友人になってくれたのは、そういう意味でもリンにとってありがたかった。

 キルアがゴンの暖かさに安心感を覚えるように、ゴンにもキルアという護りが必要だ。つらい現実に直面した時、隣で支えてくれる存在が。

 

(…ま、キルアに全て押し付ける気はないけど)

 

 とりあえず今日は軽い挨拶だけで良いだろう。その後いくつかのやり取りをすると、リンは軽く手を振りその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 ウイング達と別れる前に、ズシとは何度か手合わせをするという約束を引き受けた。ウイングにも頼りにされては、そこらへんで小遣い稼ぎをするなんてつまらない事をしている場合じゃないだろう。

 少しでもズシにかっこいい先輩感を見せるため、リンは試合を辞退せずにそのまま200階クラスに上がることにした。エレベーターを上がろうと待っていると、開いた扉からは見知った顔が現れる。

 

「あ、ヒソカ」

「…♠」

 

 目の前に居たのは長身で赤髪の筋肉質な男。ヒソカは扉の向こうから現れたのがリンだとわかると、目の前に有名なニシンのアレを出された時のような表情をしてエレベーターを出た。

 リンが赤髪だった頃はヒソカの方がニヤニヤと付きまとっていたのに、今や立場は逆転している。絶対にこの階に用はないだろうにわざわざエレベーターを降りるあたり、よっぽどリンと密室で二人きりになりたくないらしい。

 

「そんな顔しないでよぉ~。一戦交える?」

「…凄く魅力的な誘いだケド…君の顔見ると萎えるんだよね♣ゴンと似てるのに不思議だ♦」

「何それすっごい悪口」

 

 見知った顔を無視してエレベーターに乗り込む気にもならず、ヒソカの後を追いかける。ニア姿の時に行った軽い戦いが楽しかったのも事実なのでダメもとで誘ってみるが、『萎える顔面』の烙印を押されただけだった。

 だがしかし萎えさせる原因になったのは自分だ。かなり昔の記憶なので時効だと自分に言い聞かせているリンだが、その言葉にニシンのアレを嗅いだ顔になったのは仕方ないだろう。

 

「でもまぁ…君と戦うのは楽しいんだろうな♠殺死合いなら良いよ♦」

「えー、そんな軽率に命を賭けに出すのはなー」

「…♠」

 

 やっぱりこいつ嫌いだ。そう再認識したヒソカは、自分は誰とも話さなかったのだと思い込むことにして、スタスタと歩いて行くのだった。

 

 

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