リン=フリークスの冒険   作:夜桜百花

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リンの九月四日【7】

「っはあ~~~」

 

 車の後部座席中央に座らされたリンは、当てつけのようにクソでかため息をついた。もちろん、例えではなく本当の当てつけだ。主に隣に座る盗賊のリーダーに対して。

 自ら人質交換を申し出てとっ捕まったとはいえ、人使いが荒すぎる。文句くらい言う権利はあると思うリンだ。

 そしてあからさまに顔を自分に向けられつつため息をつかれた盗賊のリーダーは、ポーカーフェイスを崩さないが面倒くさいようでリンとは目も合わせようとしない。

 

「辛気臭いね。まるで捕虜にでもされたみたい」

「鋭いわね。今捕虜にされてるとこなの」

 

 反対隣に座るシャルナークが朗らかにリンを揶揄い、それに軽く返す。言葉だけ聞くと不穏なものだが、あくまで当人達の表情は普段と何ら変わらないものだ。だが、シャルナークが内心緊張しているのは、オーラの色からしても明らかだった。

 運転席に座るのはノブナガ。助手席にマチが座り、周囲を警戒している。団員の生死に関わる状況下でいつもより更に荒い運転の中、1台の盗難車は夜の荒野を突き進んでいた。

 

「この辺で良いだろう。ノブナガ、止まれ」

「おう」

 

 監視カメラが2人を捉えていた地点から直線状へ進みある程度周囲が見渡せるところまで来ると、マップを確認しながらクロロが運転手に指示を出した。ノブナガも端的に返事をし、荒野のど真ん中で車は停車する。全員が車から降り、視線はリンに集まった。

 

「リン、やれ」

「言われなくてもやるわよ…っと」

 

『波』

 

 つま先を荒れた地面に打ち付ける。リンの放ったオーラはリンを中心としてエコーロケーションのように広がっていった。

 これを実際に見たことがあるのは、今居る中ではクロロとシャルナークだけだ。ノブナガとマチは、仲間の身を案じながらも初めて見る技術に少しばかり目を奪われる。

 

「久しぶりに見たけど、やっぱかなりの技術だね」

「まあ、放出系はそこそこ得意分野」

 

 誰も言葉を発しない状況に耐えかねたのか、シャルナークが真剣な表情を少しだけ崩してリンに話しかけた。流星街で見た能力だけでリンの系統を判断していたシャルナークは、ノブナガの話を聞いていたとはいえその意外性に思わず「へえ」と声を漏らす。

 

「特質系ってやっぱ変わってるのかな…で、見つかった?」

 

 リンのオーラは既に半径数十キロまで広がっている。しかし都心部まで広がったオーラが感知したものを除くと、リンのオーラは生命情報の一切を感知しなかった。もちろん死体も。

 つまり、少なくとも荒野に人間は居ないということだ。

 

「…ないわね」

「テメー、嘘ついてたんじゃねーだろうな…」

「嘘なんかつくメリットある?私だってあんたらの地雷くらい把握してるつもりだけど」

 

 テキトーな事を言って場を攪乱するつもりだったのではないかとノブナガが凄む。本当のことを言っているのに疑われて心外だ、とリンもぎろりと睨み返した。一触即発の空気が場を包み、他の面々も軽く臨戦態勢に入る。

 だが当然ながら、リンにここで戦う意思はない。誤解されたままは癪だから言い返しただけだ。マチには相変わらず糸を括りつけられたままだし、この状況で4対1は分が悪すぎる。さっきまで10対1をしようとしていた人間の思考ではないが。

 

「言っておくけど、この高等応用技は『円』に比べると大まかな情報しかわからないわよ。オーラが通過する一瞬しか感知できないから、気づかなかった可能性も十分ある」

 

『波』はオーラの形状を平面的にすることで距離を伸ばした技だ。そこにオーラが通過する一瞬しか感知しないという取捨選択も取り入れることによって、達人の『円』でも不可能なレベルまでの伸長に成功させている。

 しかしそれは、裏を返せば感知能力が杜撰になるということでもある。よって、細やかな探し物にはあまり向いていない。

 

「ンなザルな『円』してんじゃねえよ。殺すぞ?」

「これは『円』じゃなくて『波』っていう別の技!じゃないとこんなに距離伸ばせるわけないでしょーが。ていうか文句あんならあんたがやれば?」

「あ?」

「なによ、やんのかコラ?」

 

 もとより喧嘩っ早い2人だ。一見リンとクラピカ、ノブナガとフィンクス達との喧嘩と同類にも見えるが、違いがあるとすれば信頼関係がない点。互いに口喧嘩だけに済ませているが、手が出るとすればそれは本当の殺し合いに発展する時だろう。

 クロロはそんな言い合いは聞き流しながらも、リンが口にした情報はしっかりと頭に入れていた。その上で思考を巡らせ、この場で何が起きたか推測を立てる。

 

「ウボォーは恐らく、戦って敗れたはずだ。勝っていれば鎖野郎の死体が見つかるだろうし、何よりウボォーが帰ってこないわけがない」

「じゃあ、ウボォーが見つからないのは…?」

「鎖野郎か第三者…鎖野郎の可能性が高いか。一番高いのは、生死にかかわらずウボォーの身体を密かに持ち去った可能性だな」

「木っ端にされた可能性もあるけどね」

「リンお前マジで黙らねーと殺すぞ」

 

 ここまでの情報からわかるのは、ウボォーは確実に敗北しているということ。しかしリンの話では、ウボォーは生きている可能性があるとのことだった。動けるならばアジトまで戻ってきているだろうし、動けずに倒れ伏している可能性を考慮してここまで来ている。

 だがリンの『波』に引っ掛からないということは、ウボォーはここには居ないということだろうか?

 

「マフィア組織の可能性は?」

「それなら堂々と首を公開してるはずだろ。ウボォーの写真は流れていない」

 

 シャルナークの疑問にマチがそう答える。実際その通りで、ハンターサイトにすらウボォーの死体は上がっていなかったのはシャルナーク自身がよく知っている。

 

「だがよお、鎖野郎がウボォーを連れ去るメリットってねーだろ。人質にして俺達を一人一人潰そうって魂胆ならとっくに動きがあるはずだ」

 

 あくまでノブナガはウボォーが生きている前提の言葉選びをする。しかしノブナガの言う通りだ。

 ゴンとキルアが鎖野郎の知り合い(とリンの口ぶりからして判断できる)であることから、鎖野郎はアジトの場所も把握している。もしもウボォーが鎖野郎によって誘拐されているなら、とっくに動きがあるだろう。

 

「リン、お前『円』の範囲はどれくらいだ」

「ざっくり60mってとこかしら。あんまり細かい情報は拾えないけど」

 

『円』を広げられる半径と収集できる情報量は、能力者に依存する。

 例えばノブナガは4mしか『円』を広げられないが、その分微細な虫であろうと正確に感知できる。オーラに触れた物体を感知する反応速度と、獲物と見定めて即座に斬り伏せる瞬発力はノブナガならではのものだ。

 

 リンはオーラこそ広げられるものの、情報整理が苦手分野であった。能力者によっては触れた物体の質感も実際に触っているかのように感じることができるが、リンが感知できるのはあくまでオーラの有無と物体の形状のみ。詳細を感知しようとすると集中力が切れるのでスルーしているのだ。逆に言えば『スルーするのが上手い』。

 こればかりは本人の気質に左右されるものであり、余談だがフィンクスが『円』で集中力を切らしてしまうのはそのような情報の取捨選択が苦手だからである。

 

「今度は『円』でいい。もっと精密にやれ」

「はいはい…」

 

 顎で使われるのに辟易しつつも、命令通り『円』をする。

 しかしそれだけではやはり何も引っ掛からず、マップを見ながらこれまで進んできた方角へと暫く歩く。そこで、ようやく僅かな違和感を捉まえることができた。

 

「ん?」

「どうした」

「なーんか違和感…あ、アレだ」

 

 むーっと目を凝らし前に眼をやる。岩が邪魔だと悟り上に飛び乗って見下ろすと、違和感の正体がはっきりとした。

 それは、大きな穴だった。人ひとりを入れるにはあまりにも大きすぎる穴。まるでウボォーギンのために用意されたような穴だと、その場の誰もが思った。

 しかし中には誰も居ない。それどころか穴と言うには妙に雑で、荒野の割には周辺の地面が柔らかくなっていた。まるで、一度掘って埋めたのを再度中途半端に掘り返したかのようだ。

 

「土を掘り返した跡…か?」

「この辺、戦ったような跡があるね。雨が降ったからわからないけど、もしかしたら血痕も残ってたかも」

 

 クロロが土に触れてぼそりと呟き、シャルナークは何か周辺に痕跡がないかと探すように辺りを見渡した。午後に降った雨はこの辺にも届いていたらしく、血の臭いはリンにもわからない。だが岩壁は所々崩れており、念能力者のタイマンがあったと思わせる程度には荒れている。

 

「殺した後、埋葬したってか。ご丁寧なこって…!」

「ならなぜ、掘り返された跡がある?」

 

 誰も答えられないクロロの疑問。クロロ自身もそれをわかっていて口に出しているのだが、風の音だけがリン達を包み込む。

 

(ひとまずこっちでできるのはここまで…ね)

 

 嘘はついていない、真実を隠しているだけだ。リンは既にここに来たことがあるし、真相も知っている。しかし、知っているのはリン一人だけ。

 今頃はゴン達が辿り着いているところだろうか。何とか鉢合わせしないように上手く誘導できたと、リンは内心ほっとしていた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 リン達が荒野へと車を走らせている頃、ゴン達はリンの残したメッセージに従って新ヨーク病院へと足を運んでいた。

 本来ならばとっくに面会時間を過ぎている上に、病院は個人情報を気軽に提供できる場所ではない。ゴン達の急な来訪を可能にしたのは、もちろん天下のハンターライセンスだ。クラピカが代表してライセンスを提示すると面白いくらいに話が進み、数十分後には院長室にて責任者と顔を突き合わせることができていた。

 白い口髭の似合う眼鏡をかけた男は、重厚な扉を閉めるとゴン達に革張りのソファーに座るよう促す。このような経験が少ないのだろう。自らも反対側に座ると、緊張した面持ちで手のひらをこすり合わせた。

 

「で、私に何の用でしょうか?」

「用っていうかえーと、姉さん…いやリン=フリークスの事で…」

 

 正確には院長に用があったというわけではない。ただ、リンがここに何かを隠しているというのならば院長に聞くのが手っ取り早いと考えただけだ。

 しかしそれを上手く言葉にできず、ゴンが頭を掻く。ここは自分が話した方が早いだろうとクラピカが隣でゴンを制し、じっと院長の眼を見据えて言った。

 

「リン=フリークスの代理でここへ来た。何か大切な情報を預けていると聞いたのだが」

 

 この病院に来ていたならば、リンも当然ハンターの権限を使っているはずだというのがクラピカの推測だった。それだけライセンスは重要で、権限を持てるものだ。

 これで反応が無ければ諦めて別なアプローチを考えなければならない。しかしその心配は杞憂に過ぎず、むしろ院長はあくまで隠しているもののどこかホッとした表情を見せた。

 

「…ああ、リン=フリークスさんの指示で入院中の患者なら、506号室にいらっしゃいます。…ですが私にはどうにも理解できない状況でして…」

「入院中の患者ァ?」

 

 何か巨大な武器を隠しているとかそんな想像をしていたらしい。院長の言葉にレオリオは眉間に皺を寄せた。患者をリンが入院させる理由もわからなければ、それがリンが暗号を使ってまでゴンに伝える切り札になるとは到底思えない。

 

「ともかく、ついてきていただければおわかりいただけるかと」

 

 癖らしき様子で髭を撫でた院長は、また手をこすり合わせてゴン達に付いてくるよう促した。慌ただしくはあるがそう促されて従わないわけにもいかず、4人は立ち上がって無言で院長の後ろをついて歩く。

 エレベーターを降りて506号室に案内される。意図してかそこまでの必要性を感じなかったのか、通常の患者とそう変わらない病棟の一室にその患者は横たわっていた。

 病院特有のツンと来る匂いが一層充満する室内で、ベッドからはみ出しそうなまでの大男は病院着を着せられて静かに眠っている。

 

「こいつは…!」

「知り合いなの?クラピカ」

「旅団の一人だ。私が…殺したはずだ」

 

 それは幻影旅団の1人、ウボォーギンだった。バイタルチェックの機器をセットされていて命に別状があるのかと一瞬思わされるが、その割には酸素マスクやその他の救命器具はつけられていない。本当に、ただ生きているかどうかを確認するためだけの器具が取り付けられている様子だ。

 そしてバイタルは微弱ながらも安定したサインを示している。それはクラピカの証言とは正反対のもので、青白い顔をしているとはいえ目の前の男が死んでいるようには到底見えなかった。

 

「いや、だってこいつは…」

「生きています。…いや、それも語弊があるか」

 

 レオリオ達の疑問に答える形で院長が短く答える。てっきり彼こそが真相を知っていると期待していたが、それが期待外れでしかないのはその声音が明確に示していた。

 

「死んでいるけど生きている…その表現が最も相応しいです。脳死や植物状態とも違う」

「死んでいて、生きている…?」

「例えるならばコールドスリープ状態でしょうか。しかしそんな器具が装着されている形跡はどこにもありません。フリークスさんが運び込んだ時点でこのような状態でした。私たちは現状の維持を任されただけです」

 

 怪訝そうに呟くキルアに、たとえ話を交えて可能な限りの説明をする。院長はそれ以上は何も言えないらしく、クラピカは小さく礼を言って院長をその場から下がらせた。

 ぺこりと一礼して出て行った老紳士が扉を閉めてしまえば、あとは若いハンター4人と盗賊の病人だけがその場に取り残される。

 自身の能力で想定外の出来事が起きたのだから当然だろう。手近な椅子に腰かけ、額を手で支えながらうわごとのようにクラピカが呟く。

 

「いったいどういうことだ…私の念を受けて生きているというのか」

「リンが念で何か仕掛けていたって考えるのが最も自然だな」

 

『発』に関しては自分の能力を既に作っている分、クラピカとレオリオの方が詳しい。そしてこの状況、十中八九リンが何かを仕掛けていたと考えるのが自然だ。それがクラピカにかけられたものなのか、それとも戦闘中に引き起こされたものなのかはわからないが。

 何が起こったのかまではわからなくても、現在の状況はわかる。死んだと思っていた蜘蛛の一員が、自分たちの手元にあるという事実だ。冷静にその場を分析したキルアが、にやりと笑った。

 

「これがリンの示した隠し玉ってことか…確かに戦況をひっくり返せるかもしれない」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

九月二日午後十時

 

 リンが早めに就寝すると宣言した後の話だ。ゴン達がこっそりと密談をする最中、窓からこっそりとホテルを出たリンは、左手でスマホを確認しながらもビルを縫うように飛び移り走っていた。

 

(…GPSが壊された!でもここまでくれば十分、オーラの鳴動を嫌でも感じる…!)

 

 神字などを用いて念を込めた物品を通常『念具』と呼ぶ。念の込め方は手法によりけりだが、今回リンが使用したのは神字の媒介を必要としない、直接念を送り込むものだ。効力は低いが気づかれにくく、何より小さいものにも容易に念を込められる。

 リンは発信機に念を込め、それをクラピカに取り付けていた。耐水性の極小な機器をポケットの内側に取り付けられては、気づく者は少ない。念を込めたのは、発信機付近で『練』がされた時に反応が強くなるように仕掛けるためだった。

 

 ストーカー呼ばわりされるのは覚悟のうえだ。ヨークシン滞在中、リンは定期的にGPSの所在と反応の強度を確認していた。

 昨日、1度だけ反応が強まったもののすぐに弱まったことからその時はスルーしたが、今回は反応が持続的に続いている。そして近くにもう一つの『練』の反応があったことから、クラピカが旅団員とのタイマンをしていると予測を立てたのが今の状況だ。

 

(やっぱりクラピカ!相手は…ウボォーさんか。予想通りとはいえクるものがあるわね…)

 

 全力で駆けて近くに到着したところで、『絶』で気配を断つ。気づかれない距離から動向を確認した2人は、クラピカがウボォーを鎖で捕縛して圧倒的優位に立っている状態だった。

 ウボォーが旅団の情報を吐くとは思えない。このままいけばクラピカは『ルールを強いる鎖』をウボォーに刺すだろう。止めるべきかどうかと1歩前へ足を踏み出しかけ、唇を噛んでその足を引っ込める。

 

(今私が止めたところで、クラピカは止めない。いっそ手を汚させて後悔させた方がいい…)

 

 ウボォーを殴りながらも、悲痛に顔を歪めて不快だと叫ぶクラピカ。その叫びを聞きながら、リンは岩陰にもたれた。

 だから言わんこっちゃない。これに懲りてやめてくれと願いながら。俯いたことで後ろ髪が肩口に垂れる。

 だがここまできてクラピカが止めるわけはない。遠目に鎖を引き抜く動作をするのが見えた瞬間、ウボォーの身体は地面へと崩れ落ちた。

 

(ウボォーさんを倒すなんて…本当、1人ずつ上手くタイマンに持ち込めば蜘蛛を潰すのも可能かもしれないわね)

 

 それまでクラピカの精神が保てるならば、だが。そしてそれは恐らく不可能だ。そうでなくともクロロには勝てない。

 同じ系統の能力者でありクロロの性格も理解しているリンは、蜘蛛の統領が敵としてどれだけ厄介な相手かを十分に理解していた。

 体術や念能力も一流のものでありながら、慢心することなく研鑽を重ねている。なにより、確実に勝てる条件を綿密に計算し、おびき寄せるバトルスタイル。相手十分の条件ならば尚更、勝てる可能性は0だ。

 そのまま立ち去るのかと思っていたが、予想に反してクラピカはウボォーを埋めるための穴を掘り始めた。一般男性よりも遥かに大きなその身体を埋める穴は、掘るのにもかなりの労力がかかる。それをクラピカは、オーラで覆っているとはいえ手で掘っていく。

 

(あんな情けをかけるなら、やっぱり復讐なんてしない方が良い)

 

 本当は今すぐにクラピカに駆け寄り、そう叱責したかった。だが今の時点でリンは姿を現すわけにはいかない。クラピカの精神状態のためにも、そして念能力の穴を悟られないようにするためにも。

 少なくとも、今の段階ではリンがクラピカにかけた念能力の正体を知られるわけにはいかない。ウボォーを殺しきれていないとバレるし、何よりいざという時の切り札は多いに越した事はないからだ。

 

 クラピカがウボォーを埋め終えてその場を去った後、リンはこっそりとできたばかりの墓まで近づいた。急いで掘り起こすと、埋められたばかりのウボォーの巨体が姿を現す。

 

(よかった…生きてる。はっきりとはわからないけど、とにかく生きてる)

 

 一見呼吸をしているようには見えない。当然オーラも見えない。これでは能力も相まって、クラピカが死んだと誤認するのは当然だろう。

 だが、胸に耳を当てて澄ませるとごくごく僅かな心音が聴こえる。どういう理屈かはわからないが、リンの念は正常に発動していたらしかった。

 リンはほっと胸を撫でおろすと全身を掘り起こし、その大きな身体を背負って歩き出したのだった。

 

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