汚い、さすがファデュイきたない   作:燃料切れ

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炎銃の章 第二幕

「……起きろ」

 

 

 そんな一言で目が覚める。真っ先に視界に入ったのはこちらを見下ろす岩使いの姿だ。

 常に仮面をつけているため表情は窺い知れないが長年の付き合いだ。怒っているオーラを感じ取った俺は逃げるように起き上がった。

 

 前にも叩き起こされたことがあったが、あの時はヒルチャールが食料を求めて襲撃してきた。

 今回も何かあったんだろうと考え、状況把握に努める。

 

 とはいえ外は寒いので首だけ出して見回す。まだあたりは暗く、鳥の鳴き声さえしない。

 

 焚き火の火はまだ微かについており、その近くには箱にもたれかかって寝ているデットエージェントがいる。特に異常はないな、ヨシッ!

 

 なんでまたこんな時間に……襲撃を受けてるわけでもなさそうだしな。全く心当たりがない。

 

 

「忘れたとは言わせないぞ……」

「・・・またオレ何かやっちゃいました?」

 

 

 某なろう小説のフレーズを言い放つと、岩使いの武器の杖が俺の頭にゴリゴリと押し付けられる。先端から岩元素の光が漏れ出ており、今にも礫が飛んできそうな勢いである。

 

 眠気が一瞬で吹き飛び、思考が正常に動き始める。と同時に二日酔い。頭が痛い。ガンガンする。

 お慈悲~!お慈悲~!

 

 

「面倒だ……本当に忘れているのか」

「なんかあったっけ?」

「今日旅人が来るとデットエージェントが言ってただろ。ちょうどいいしファデュイ辞めるとか一泡吹かせるとか言ったのは誰だ?」

 

 

 あーー・・・はいはい、アレね、追い剥ぎね? だんだん思い出してきた。

 俺、生きてモンドに帰れたら『鹿狩り』でちょっと高いものと洒落込むんだ。

 

 それはそうと、その後のことは一切記憶がない。岩使いによれば、俺とデットエージェントは随分と泥酔して暴れたようである。

 

 まぁ過去のことを振り返ってる場合じゃない。準備しないと碌なことにならないって、死んだばっちゃも言ってたからな。

 

 

「んじゃまァ……行動開始だッ!!」

「……ちゃんと作戦の内容も覚えてるんだろうな?」

「¯\(º_o)/¯」

「・・・まずはこれを」

 

 

 このまま勢いで誤魔化せ――あーっ! いやまって!! 助けて!

 まて、まってほんとに、ゼロ距離だからッ 当たったら洒落にならなッッ

 

 

 

 

 なんか、中指立てたばっちゃの姿を見た気がした。

 

 

 

 ▼

 

 

 

〜岩使い説明中〜

 

「Zzzz……Zzz……」

「というわけで」

「どういうわけで?」

 

 

 一人寝ているんだが。気のせいじゃないんだが。

 アイツ岩使いの攻撃を寝ながら避けやがった。実は起きてるなんてこともない。

 

 なんかおかしくない? 俺だけ頭から血を流して。不条理だッ!

 岩使いにそう訴えるが、諦めたように深いため息をつくだけだった。

 アキラメンナヨォ!!

 

 

「とにかく、このバカと一緒に例のブツを調達してくるから。お前は穴を掘っていろ」

 

 

 と言い俺にスコップと風の神の目が渡される。

 ・・・なして?

 

 え、まさかの落とし穴?塹壕でも掘れと?

 それはそれで有利になるけど、まだ元素力を使いこなせてないし決定打に欠けるんですけど。

 

 

「・・・逃げ道がないように広く深く掘るんだぞ」

「イエッサーッ!!」

「……よろしい」

 

 

 俺知ってる、説明がめんどくさいって顔だ。時間もないし、情報通りなら昼にはやってくるはずだ。

 まぁ、見るからに燃え上がってる火に油を注ぐヤツはいないので、元気よく敬礼しておく。

 猛獣に歯向かうバカはいないって事。

 

 作戦を忘れた身としては何も言えない。

 

 

「……それじゃあ頼んだぞ」

 

 

 そう言い残し、岩使いはデットエージェントの首を掴み引きずり去っていった。

 

 受け取った神の目は、ひとまず銃にくくり付けておく。

 ファデュイ先遣隊なんて装備が同じ規格で、その上仮面までつけていて判別がつかない。ちょっとしたアイデンティティである。

 

 

「さてと……」

 

 

 銃はそこら辺に立てかけておき、スコップを手に取る。

 そのまま勢いをつけ上から下へ、地面に思いっきりブッ刺す。

 

 見れば、土砂をすくう部分が金属でできているのがわかる。謎に片側がギザギザしているが十分掘ることが可能だろう。

 

 しかし、地面と衝突した瞬間、耳をつんざくような金属音が聞こえた。ついで襲ってきた衝撃で腕がジーンとする。

 

 

 うん、まぁ知ってた。遺跡守衛のミサイルで抉れなかった地面が掘れるわけないわなッ!

 どうしたものか、昨日の雨も相待って、土地が凍っており、氷が張っている。

 除雪はできてもこれじゃあ意味がない。掘れないスコップなどただの棒以下である。

 

 

 考えろ、俺はファデュイに入隊したせいで割と修羅場をくぐってきた。そう、危機的状況、圧倒的力量差、大事なのは――元素反応ッ!!

 

 この世界は前世とは大分違う。

 そりゃあ人の何倍もの大きさの化け物とか、神がいたりとファンタジーな世界ではあるが! 特に重要なのが風、水、氷、炎、雷、草、岩の7つの元素があることだ。神の目持ちが強いのはこの元素力を使えるからだな。

 

 そして7元素それぞれの組み合わせで様々な反応が起こせるのだ!!

 だから今回の場合は俺の銃を使って、氷+炎で溶解反応を起こせばなんとかなるかもしれない。

 

 ちなみに俺が好きな元素反応は過負荷です! 理由は敵が吹っ飛んでくれるから危なくない!!

 元素反応次第で強敵を潰す事だってできるんだぞって事で――

 

 

「バーベキューの時間だァ! ッハッハッハァー!!」

 

 

 銃口から炎元素の弾丸が飛び出る。弾丸とは言ったが炎元素でできているため、着弾したらちょびっと爆発する。小さい爆弾といった方が正しいだろう。 これが本当の銃火器ってな!

 

 弾丸が当たったところから蒸気が上がり、地面の表面が現れた。

 撃った弾が当たったからか、雑草が燃えている。

 

 しかし、まだ足りない。火力がッ!!

 

 

「風力最大!!」

 

 

 ぶっつけ本番。元素増幅状態――炎のシールドを張る――の要領で元素を操り、風元素の塊を手のひらに作り、それを圧縮しまくる。

 荒削りなこともあり、今にも弾けんばかりの負荷を右手に感じるが無視だ無視。

 

 爆発寸前のそれを火元に投げつけ、それと同時に押さえつけていた力を解放した。

 風元素による拡散反応。圧縮していた分、より広い範囲に効果が及ぶ。

 

 

「のわァ!!?」

 

 

 俺の意識は、光を出して激しく燃え盛る炎に飲み込まれたところで途切れた。

 

 

 

 ▼

 

 

 

「……起きろ」

 

 

 そんな一言で目が覚める。真っ先に視界に入ったのは、こちらを見下ろす岩使いの姿だ。

 ――デジャブ?

 

 既視感を感じつつ、伸ばされた手を掴み立ち上がる。

 岩使いは俺に「及第点だ」とだけ言い、その場からに去っていった。

 ・・・なんのことだかさっぱりわからん。いつも一言足りてないよな。

 

 ラジオ体操の動きで固まった体をほぐす。硬い地面で気絶していたからか、ゴキゴキと骨がなる音が聞こえた。

 HP半分は削れてるだろこれ、早く『鳥肉のスイートフラワー漬け焼き』を食べなくてはッ!!(使命感)

 

 

 ふと現在の時刻が気になり空を見上げる。太陽はだいぶ高く上がっており、燦々と日差しが照っており、暖かい風が肌を撫でる。ドラゴンスパインにしては珍しい。

 

 ぼけーっと、そんな呑気なことを考えていると、遠くの方からするデットエージェントの声に気づいた。

 

 近づくと、道のど真ん中に大きな穴が空いている。俺が穴を掘っていた場所であり、腰の少し上くらいまでが隠れる位には深かった。

 岩使いが言う及第点とは穴掘りの事かと思い至り、自分の中で何かが綺麗に嵌ったように感じた。

 

 

「何してんだ?」

「危険物取扱中だ」

 

 

 デットエージェントの足元には樽があり、その周りを岩使いがシールドで守っているようだ。樽の中にはマグマのようにぐつぐつとした赤い物体が入っている。

 樽に空いた穴からは目が見え、それが生物だということがわかる。

 というかコレは――

 

 

「――蛮族共のやつか?」

「あぁ……威力が高く、衝撃によって大爆発を起こす。不意打ちにはなるだろう」

「モンドには大きいヒルチャールの集落があるだろ? そっからチョチョイと透明化して掻っ払ってきたわけだ」

 

 

 樽爆弾。と私はそう名付け読んでいる。

 メイド・イン・ヒルチャールといえど侮るなかれ!

 シールドを張ってなければ重傷を負うのは確実だ!! 事実、そうなった同胞を何人か見たことがある。

 

 たしか旅人は極寒のドラゴンスパインでも目を疑いたくなる軽装だった。敵である自分が少し心配になる程度には常識を疑う格好であった。つまり――

 

 

 ――勝ったな(確信)





岩使い
「アハ……アハ……!」(ヤケクソ)


炎銃
「死ぬかと思った…」(満身創痍)


デットエージェント
「( ᐛ )パァ」(こっそり飲んでる)
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