ほのぼの生存戦略、気ままに生きるのは難しい   作:こふし無双

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二章32話 捕捉

 

 ホフナーが、宿をアーホルンに移した翌々日。

 この日も朝からホフナーが宿の入口で待ち伏せをしていたため、ホフナーと行動を共にすることになった。これで三日連続である。そろそろ連続記録を打ち切りたいところだ。

 

 午前中はギルドを回ったり街を回ったりしながら友好(?)を深め、昼になるとホフナーの奢りで飯を食う。その間、俺がやることは、ひたすらホフナーの話の聞き手に徹しつつ、タイミングを見ながら『合いの手』ならぬ『合いの賞賛』を挟む。偶にホフナーから話をするように促されるので、その時は求められているような気がする事を言う。そんな感じだ。

 なんかルーチンワークみたいになってきた。ホフナーを賞賛する仕事をしてるみたいだ。飯代が浮くから得か? ああいや、でも、拘束時間を考えると時給は高くないな。

 

 午後もホフナーから街巡りを提案されたが、勇気を出してそれを断った。理由はちょっと最近――とはいってもここ三日ではあるが、とにかく最近、ホフナーと関りすぎている気がしたからだ。ホフナーとはそこまで友好を深めたくないような気がするので、少し距離を置くという意味もこめて午後は別行動をしたかったのだ。

 ホフナーに街巡りは付き合えない事と、宿に戻る事を告げ彼女と別れた。しかし、ホフナーは何を勘違いしたのか、俺のあとをついて宿まで戻ってきた。宿の入口でチラリとホフナーを見る。ホフナーもこちらを見る。目と目があう。前もこんなことあったな……

 

「なに?」

 

 鋭い目線が投げかけられる。本来なら少し緊張するところだが、ホフナーと三日も行動を共にしたためか少し慣れつつあった。

 

「あ、いえ、ミーフェさんはてっきり街の方で何かするのかと思っていましたが……」

 

「いや、カイがいないなら行く意味無いでしょ。まあ遺跡に行ってもいいんだけど、たまには宿で休んだりしてもいいかなって思ったの」

 

「そうでしたか……」

 

 遺跡に行っても良かったのに、と思いながらもそれを抑える。すると、ホフナーは少し考えるような顔になった後、俺の方を一度見て、そして目線を一度宙に向けた後、もう一度俺を見ると口を開いた。

 

「あのさ、カイは今日――」

「――フジガサキさんっ!」

 

 ホフナーの妙な動きに注視し彼女の言葉を聞こうとして、そんな中、突然割り込む声。やや混乱しつつも、一度ホフナーを見る。割り込まれた事に不快そうな顔をしている。そして俺を、いや俺の後ろにいるであろう人物を睨んでいる。

 俺はそのまま後ろを振り向き、僅かに驚く。そこには、本来リデッサスにいないはずの人物がいたからだ。声を聞いた時に分かったことではあったが、それでも不思議に感じてしまう。

 

 俺の後ろには、この世界でも珍しいピンクブロンドの髪を持つ少女――聖導師にしてクリスクのAAランクパーティー『フェムトホープ』のエース、ユリアが立っていたからだ。

 いつもと同じように黒いローブのような服装――聖導師の制服と思われる服を綺麗に着込んでいる。ん? あれ? なんかいつもと違うものも身に着けている。腰から垂れた革の輪に、縄のようなものを巻きつけているのだ。んだ? あんなもの前は付けてなかった気がしたが。

 いや、今はそれはいいか……それよりも、なぜ、彼女がここに……? それに何か焦っているようだが……?

 

「ユリアさん。あ、えっと、お久しぶりです。リデッサスに来ていたんですか……」

 

「はい……その、ちょっと活動場所を移動する事になって。フジガサキさんはこちらの宿に泊っているんですか?」

 

 ……ん? そうだけど……ん? 再会して最初に聞くことがそれなのか。いや別に全然変では無いんだが、なぜか違和感を覚える。なんだろう? それに、なぜこんな焦っているのだろう。少し緊張しているようにも見える。なんだ……? 全然分からないけど、もしかして、今日クリスクからリデッサスに着いて宿を探しているけど全然見つからなく困ってるとかかな?

 

「あ、はい。そうです。ここにずっと泊ってます。ユリアさんはもしかして今日リデッサスに着いたんですか?」

 

「はい、今日の午前にリデッサスに着きました。えっと、そのフジガサキさんとまたお会いできて、今凄く驚いてて、あ、いえ、その前クリスクにいた時に北方遺跡群に行くって言ってたので、知ってはいたんですけど、でも、また、それも突然こんな風に会えて凄く驚いてて……それで大きな声が出ちゃって、突然ごめんなさい、驚かせちゃいましたよね……あ、でも、その、本当にフジガサキさんとまた会えて嬉しいです」

 

 緊張しているのか、ユリアは言葉を選ぶように優しく話した。しばらく会っていなかったからか、最初の会った時と同じように緊張しているように思える。気持ちは分かる。『そこそこの付き合いの人と再会した時の距離感に悩む』というのはとても理解できる。

 

「あ、いえいえ、全然大丈夫です。自分もユリアさんにまた会えて結構、いやかなり? 驚いてるような気がします。あと、またお会いできて良かったです。ああ、なんか、同じこと言ってしまってますね……」

 

 緊張しているかもしれない。

 

「いえいえ、私こそ……あの、最近はどうでしょうか? その寒くなりましたし、体調は大丈夫でしょうか? 特に北方はクリスクよりも寒いですから……」

 

 ユリアは心配そうに言葉を口にする。

 

「あー、そうですね。寒くなって来てますね。でも、なんとか上手くやれてるみたいです。ユリアさんはどうですか?」

 

「はい、私も、なんとか上手くやれてます…………あ、あの、えっと、その突然ですけど、お昼ご飯は食べたりしてますか、私は実はまだ食べてなくて……もしお昼がまだでしたら、今から一緒にお昼にしませんか? もちろん、フジガサキさんが良ければですけど……」

 

 緊張しながらも勇気をだすように、ユリアが提案してきた。その提案に対して応じたいという気持ちがあったが、残念ながら先ほど既にホフナーと一緒に食べてしまった。

 ユリアと再会することを知っていれば食べなかっただろう。タダ飯よりもユリアと一緒に食べる方がきっと美味しい。これはユリアの店選びが上手いというのもあるし、単純に人格者であるユリアと一緒にいるのは心地よいという面もある。まあ、偶に気まずくなることもあるけれど。

 

「あ、すみません。実はもう食べてしまって……」

 

「そうでしたか……あっ、その気にしないで下さい。あ、でも良ければ――」

「――ちょっと、さっきから急に話しかけて、何なの? ミーフェの事舐めてるの?」

 

 ユリアに断りの言葉を入れ、それに対してユリアが気遣って別の話題をしようとしたところで、今度は先ほどとは逆にホフナーが会話に割り込んでいた。

 後ろを向くとホフナーが敵意を込めた瞳でユリアを睨んでいる。怒っている。しまった、ユリアとの再会の驚きからホフナーの事を少し忘れてしまっていた。これは大変だ。機嫌が直るのに時間がかかりそうだ。

 

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