ほのぼの生存戦略、気ままに生きるのは難しい   作:こふし無双

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二章46話 聖導師強すぎ問題

 

「気を付けます。ちなみに、ですが……ユリアさんとルティナさんってどっちが強いんですか?」

 

 なんとなく答えが分かっている気がしたが、確信を得るために質問する。

 

「ユリア!」

 

「……ユリアちゃんだよ」

 

 即座にマリエッタが、そして少し遅れてルティナが答えた。やっぱりか……そうすると、ホフナーは勝てない相手に喧嘩を売ってるという事になるな。なんとなく、そんな気はしたが。

 

「ユリアさんでしたか……ちなみにその、さっき言ってた十回戦ったらって仮定で言うと、どんな感じになりますか?」

 

 ルティナ相手にする質問では無いような気もしたが、どのくらいの力量差があるか聞きたいので問う。六:四か、いや、これまでの感じだと七:三以上になりそうだな。

 

「私とユリアちゃん? それなら、まあ、十回なら、八回くらいユリアちゃんが勝つくらいかな」

 

 八:ニか。ユリアって強いんだな……俺から見て結構強そうなホフナーに全勝できるルティナが、二回しか勝てないのか。いや、まあ相性とかもあるだろうから、単純に三段論法みたいに並べることはできないのかもしれないけれど。

 

「いやいやルティナ、盛りすぎ! 百回やって九十九回ユリアが勝つでしょ!」 

 

 ん……? そんなにか。ほぼユリアの必勝みたいな関係なのか? 

 

「……九回」

 

「え?」

 

 ルティナの呟くような声をマリエッタが拾う。

 

「――だから九回っ。十回やったら九回はユリアちゃんが勝つよ。でも一回、一回くらいは私が勝つよ」

 

「勝てたところ見た事ない! でまかせ!」

 

 強く言うルティナに対してマリエッタが煽るように声を投げつける。

 

「マリエッタが入る前に模擬戦で勝った事あるよっ!」

 

「ボス! 本当?」

 

「『フェムトホープ』結成直前に二人の模擬戦を見たわ。確かルティナ一回か二回勝ってたはずよ」

 

 いきなり会話に巻き込まれたにも関わらず、アストリッドが淡々と答える。いつもこんな感じのやり取りをしているのだろうか……? ここにさらにユリアがいて、おっかなびっくり口を出したり出さなかったりしている感じだろうか? なんか想像できるな。

 

「何回負けた!?」

 

「覚えてないわね……」

 

 追及するマリエッタに対して、アストリッドは僅かに視線を逸らして答えた。なんとなくだが、本当は勝敗数を覚えているように俺には感じられた。

 

「やっぱりルティナ、盛りすぎ! 百回中の一回くらいでしょ!」

 

「昔っ! 昔は勝ててたのっ! アストリッドさんに出会う前くらいにはっ! ユリアちゃんに聞いてよっ!」

 

 この感じからすると、ルティナにとって、ユリアはかなり分が悪い相手のようだ。ただ、今までの会話からすると、この中でルティナが一番強そうな感じがする。その事を踏まえると、ユリアは尋常じゃない程強いという事になる。まあ、この前、リデッサス大聖堂で話をしていた時にルティナがそんなことを言っていた気もするが。ん? あれ……?

 

「あれ? もしかしてユリアさんと一番付き合いが長いのってルティナさんですか?」

 

 ふと気になったことがあり会話に割り込む。俺はてっきり『フェムトホープ』の四人はだいたいみんな同時期に揃ったと思っていたが、そうではないようだ。

 

「そうだよっ! 私は『フェムトホープ』結成前からユリアちゃんと知り合いだったからっ!」

 

 ……ふむ。そういえば以前、マリエッタがアストリッドとは付き合いが長いみたいな事を言っていたな。とすると、このパーティーはユリア・ルティナ組とマリエッタ・アストリッド組に分けられるのか。そういえば宿も分かれてたな。

 

「あら? そうなの? 結成した時には二人とも顔見知りって感じじゃなかったと思たけど……」

 

 しかしアストリッドが言葉を差し込み、またしても疑問が出る。

 

「それは――色々あったのっ! とにかくっ! 私だって一回くらいはユリアちゃんに勝てるからっ! 勿論っ! 十回中ねっ!」

 

 しかし、俺の疑問が解消される事なく、ルティナが話をゴリ押しで纏めはじめた。少し気になったが、なんかルティナがぼこぼこにされてる気がしたので、ルティナの援護に入るか。

 

「ユリアさんってそんなに強いんですね」

 

「強い! 凄く強い!」

 

「うん。マリエッタの言う通り、凄い強い。聖導師ってこともあるけど、でもユリアちゃんはそれ以上に強いと思う。たぶん聖導師の中でも強い方なんじゃないかと私は思ってるよ」

 

 俺のぼけーっとした言葉に対してマリエッタ、ルティナが強く同意する。どうやら無茶苦茶強い人のようだ。まあ、俺もクリスクにいた時、図書館での活躍からユリアの身体能力は非常に高いとは思っていたが……ん?

 

「そうでしたか……あれ、ただ今の言い方からすると、ルティナさんは、あまり他の聖導師の方には会っていない感じですか? ん、あ、でもスイさんとは会ってますよね? ユリアさんとスイさんはどっちが強いとかあるんですか?」

 

 またしても気になることがありルティナに問う。言葉を発した後、これはまたルティナをぷりぷりさせてしまうのではないかと思い、チラリと彼女の顔色を窺うが、特に怒っている様子は無かった。ふう、良かった。

 

「私は、あんまり聖導師とは会ってないよ。聖導師は珍しいからね。スイのことだけど……正直分からないんだよね。スイは実力が読みにくい。最初見た時はユリアちゃん以下、たぶん私より少し上くらいだと思ったけど……今は少し違うと思ってるよ。悔しいけど、私だとスイの力を正しく測るための技量が無いんだと思う。ミーフェがユリアちゃんの技量を測れないのと一緒で。だから、ユリアちゃんよりスイの方が強いのかも」

 

 ルティナは少し歯切れが悪く答えた。複雑な感情が伝わってくる。自身を恥じているような、不思議な出来事の前で困っているような、そんな様子だ。

 やはりスイの方が強いか。ユリアも前にそんな感じの事を言っていた気がする。あの時はユリアの強さとか漠然としか分かっていなかったが、ここまで情報が出揃うと見方が変わってくる。纏めると、俺が強いと思っているホフナーに必勝するルティナが逆立ちしても勝てなそうなユリアより強いのがスイだ。うーん。

 

「スイさんってなんか、マイペースな方というイメージが強かったんですが、そんな方だったとは……」

 

「あれで強い! まあユリアが強すぎるから、スイの強さとか考えてもしかたがないけど!」

 

 マリエッタの言葉に内心頷きつつも、前々から考えていた事についても聞いてみることにする。まあ今からする質問の答えについても以前ルティナがそれらしい事を言っていた気がするが……一応確認のために聞いておこう。

 

「……しかし、そんなにユリアさんが強いなら、何でミーフェさんはユリアさんのことを弱いと思ってるんでしょうか。あれですかね、ユリアさんて優しそうな感じがするからですかね」

 

「ユリアちゃんが優しいっていうのもあるけど、それよりも、自分より強すぎる相手の力量は一周回って弱く見えたりするんだよ。私も聖女様は全然強く見えないから。まあ聖女様が弱いわけないから、本当は凄く強いんだろうけど。でも何回見ても、あの聖女様がユリアちゃんより強いようには見えないかな。ミーフェも同じ気分なのかもね」

 

 やっぱりそんな感じか。まあ、分からなくはない。

 実は俺も、ルティナとホフナーは、なんとなくホフナーの方が強く見える。というか、まあもっと言うと、アストリッドとマリエッタは結構強そうに見えるんだけど、ルティナはいまいち強そうに見えない。

 たぶん実績とか考え方とか言動とかを見ると強いと思うんだけど、印象的にそんなに強そうに見えないんだ。でもこれはきっと、今ルティナが言っていたことが、まさしく当てはまっているのだと思う。俺から見てルティナは強すぎて、一周回って弱く見えるんだ。ユリアのことも、クリスク聖堂の図書館での超人的な身体能力を見なければ、強いとは思わなかったはずだ。ついでにスイもだ。

 

「なるほど…………どうりで、ルティ――つまりユリアさんが激怒した時、ミーフェさんは危ないと……」

 

 正直にルティナが弱そうに見えたと言おうと思ったが、これは絶対にぷりぷりされると思い、話をホフナーとユリアに戻す。

 

「……!」

「確かに!」

 

 一瞬ルティナが目を光らせたように見えたが、マリエッタの声に妨害されて指摘するタイミングを逸したようだ。危ない危ない……

 

「そこは大丈夫じゃないかな。ユリアちゃんは凄く優しいから。忍耐力も凄く強いし、ミーフェって子が何言っても気にしないでしょ」

 

 それは確かにそうだな。

 ルティナの言葉に強く同意しつつ、その後もフェムトホープの面々と少し長めの朝食を楽しんだ。

 とりあえず、なんとなく皆の相対的な強さについて分かった。まあ、俺は素人であるため、ちゃんとは分かってないだろうけど、それでも表面的にはざっくりと分かった感があった。

 なるほどーって気分だ。

 

 

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