ほのぼの生存戦略、気ままに生きるのは難しい   作:こふし無双

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三章14話 テチュカほのぼの生活のはじまり

 

「そ、それは……何というか。まあ、その、そうだね……」

 

 何ともコメントしにくい発言のため、言葉に詰まった。

 

「はい! とりあえず、これでリーシア様とロランさんの関係は継続ですね! せっかくですから、それを祝してお昼は豪華に作りますね! お二人は何か食べたいものはありますか?」 

 

 会話の切れ目を感じたのか、今までずっと黙っていたルミが声を上げた。

 『関係継続』というワードを聞いてリーシアが微かに嬉しそうな顔をした。

 

「私は、そうね……ルミちゃんが作ってくれる食べ物なら、どれでも美味しいと思うけど……今日の気分は、白身魚のムニエルかしら……? ロランは何か食べたい物はある?」

 

「白身魚……うん、いいと思うよ。あ、でもルミは、それでも大丈夫? 作りにくいとかあったら――」

「――勿論、大丈夫です! 任せてください!」

 

 全て言い切る前にルミが自信満々に遮った。

 作ってくれる人が良いなら、問題ないだろう。

 

「あぁ、ありがとう。それなら俺も白身魚がいいかな。あんまり食べてなかった気がするし、あ、この前はルミに魚料理を作ってもらったけど、魚を食べたのは久しぶりで、それに凄く美味しかったから、また魚料理を食べれると思うと、かなり嬉しい」

 

「期待しててください! それでは、私は材料を用意してきますね……! お二人は、ごゆっくり……!」

 

 にこにこと俺とリーシアに笑みを向けると、ルミは素早い動きでソファーから立ち上がり部屋を出た。非常に短い間の出来事であった。ルミはかなり身軽のようだ。

 彼女の思わぬ素早さに感心しながらも、内心で、材料の買い出しがあるならば手伝いを申し出ればよかったと思った。勿論すぐに、ルミの行動が早すぎて手伝うなど言うタイミングがないと気付いたが。現にもう玄関の扉が開閉する音が聞こえた。かなり素早いな。ホフナーレベル……いや、さすがにそこまで高くないか。ホフナーは人外みたいな速さだったし、それに比べればルミは正常な速さだろう。まあ、俺よりは身軽だと思うけど。

 

「ロラン……」

 

 考えていたらリーシアから声がかかった。

 

「うん? どうしたの?」

 

「えっとね…………二人っきりね……」

 

 こちらを見るリーシアの頬は少し赤かった。

 

「そうだね」

 

 ……なんか緊張する。

 

「私たち、友達よね……」

 

「そうだね」

 

「見せたいものがあるの……その、友達ができたら見せてみたくて……待ってて、すぐ準備するから」

 

 そう言ってリーシアは立ち上がると、室内の壁側にある棚の方へと向かった。そこでごそごそと何かを探し出す。

 リーシアは「ここだったかしら……」「あら……?」といった言葉を口にしながら何かを探し続け、さらに少ししてようやく「あった……」と小さく呟いた。

 そうして、リーシアは片手にトランプを持ちソファーへと戻ってきた。

 

「ロラン……今から手品をしようと思うの。見てて……」

 

 少し自信あり気な顔だ。手品が得意なんだろうか? 得意なことを友達に見せたいってことか。なるほど。

 

「うん、どんなやつ?」

 

「驚くやつよ……」

 

 ……手品はたいてい『驚く系』では……?

 

「なるほど。どきどきする準備をしておくよ」

 

「きっと驚くわ……それじゃあ、ロラン、私に見えないようにカードを一枚選んでちょうだい」

 

 リーシアがトランプの山をこちらに渡してきた。ふむ……

 どんな手品か分からないが、数字を当てる系だろうか?

 

「選んだよ。選んだカードはどうすればいい?」

 

 特に理由は無いが、ダイヤの6にしよう。

 

「当てるわ……」

 

 リーシアは真剣な雰囲気を纏いながら答えた。

 俺がどうすればいいかという質問だったのだが……まあ、いっか。

 

「なるほど……」

 

「ロランが選んだのは、ダイヤの6よ」

 

 おぉ! 当たりだ。凄い。どうやったんだろう。

 

「当たり。ちょっと驚いた。どうして分かったの?」

 

「……秘密よ」

 

 リーシアは得意げな表情を浮かべた。珍しい表情だ。

 

「気になる」

 

 俺が追及すると、リーシアは得意げな顔をすぐに困った顔に変えて視線を逸らした。

 

「だ、駄目よ……手品だから、秘密よ……」

 

 強気になったと思ったらすぐ弱気になった。正直、どうして分かったか結構気になるのだが……まあ、リーシアを困らせるのも良くないし、あまり追求しないでおくか。

 

「そっか。じゃあ、まあいいや。でも、教える気持ちになったら教えて。結構、気になる……!」

 

「そうね、気持ちになったら……教えるかもしれないわ……」

 

 リーシアは俯きながら、不安そうに答えた。

 

 

 

 

 それから、昼飯までの間、リーシアと共に過ごした。手品を他にもいくつか見せてもらったり、雑談をしたりして、そうしているうちにルミが屋敷へと戻ってきて、すぐに昼食の準備を始めた。余計な行動かもしれないが、ルミに手伝いがいるか尋ねたところ、「リーシア様と一緒にいてください!」と笑顔で答えられてしまった。

 ルミの手際が良いのか、大して待つことなく、昼食が始まった。リーシアやルミと一緒に食事をするのは二回目だが、一回目と変わらず非常に美味しい食事であった。メインのムニエルに関して言えば、今まで食べた焼き魚料理で一番おいしかったかもしれない。

 

 昼食後は、これまた美味しいハーブティーを口にしながら、ゆっくりと喋るリーシアの相手をした。途中で後片付けを終えたルミも混じり、それから午後にかけては三人で雑談をしたりトランプをしたり、他にも、ウミガメのスープのようなゲームをしたりした。

 なんとなく、こういう風に過ごす機会は最近無かったこともあり、帰るタイミングを逸してしまって、結局夕食までご馳走になってしまった。一応言い訳すると、夕食前には抜け出そうとしたが、リーシアとルミから強く夕食に参加することを求められたので、しぶしぶ参加した形だ。いや、今、嘘を吐いた。夕食が美味しそうだったので、嬉しく参加した感じだ。

 

 最終的には夕食後、暗くなってきたので帰ることにした。なお、この時、リーシアが少し悲しそうにしていたことが俺の心を痛めた。なんかリーシアの悲しそうな雰囲気は、とても罪悪感を覚えるのだ。

 

 『ウスタレゴ』の宿に戻ってから、なんとなく今日を振り返る。

 ちょっと不思議な一日だった。てっきり、午前中には全てが終わり、昼前には帰って来て、それから二度とリーシアとは会えないものだと思っていた。

 しかし、そうはならなかった。それどころか、明日もまた来て欲しいと言われて了承してしまった。

 なんと言えばいいのだろうか……

 思ったより落ち込んでいないリーシアの空気感に、肩透かしを食らったかのような気分になった、と表現するのが正しいだろうか? まあ元々リーシアを傷つけないように断ることが今日の目標だったので、ある意味上手くいったと考えていいだろう。いや、俺の予想以上の良い形になった、見方によっては最高の着地点だったかもしれない。一件落着と考えていいか……?

 うーん。まあとりあえず、約束をしてしまったし、明日またリーシア達と会わないとな……

 

 

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