ほのぼの生存戦略、気ままに生きるのは難しい   作:こふし無双

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3章17話 ほのぼの決着

 

 

 それからターンは巡っていき、ルミとリーシアは一体化した住処群の拡大と動物の配置に努め、一方で、俺の方は一人で拡張を進めるが肝心の『右側に川があるカード』が見つからずリーシアとの接続に苦戦していた。一応、動物は順調に配置しているので、手札の数では不利ではないが……このままでは接続失敗による『全員敗北』が有り得そうだな。

 

「ロランのところには、うさぎがいっぱいいるわね……」

 

 リーシアが羨ましそうにこちらを見た。

 この十数ターンの間、俺が回収できた地形カードは偏ってしまい、多くが草原となっている。そして、動物も偏っている。山札から引く動物カードが兎や狐などの小動物ばかりだ。

 

「リーシアの方は大人しい動物が多いね」

 

「うん……そうね……」

 

 頷きつつも、未練があるような目で俺の前にある住処群をリーシアは見つめた。だいぶ兎が気になるようだ。

 

「リーシア様、リーシア様! 見てください! こっちにも兎がいますよ、私とリーシア様の兎ですよ!」

 

 ルミがリーシアを元気づけようと、自身の草原に配置されている兎を指差した。ルミが配置した兎だが、今はリーシアとルミの地形は一体化している。リーシアの兎とも言えるかもしれない。

 リーシアはルミの兎を見たが、不安そうな顔をした。

 

「でも、その子の近くに狼がいるわ……食べられちゃわないか心配ね……」

 

 兎の近くにはルミが設置した狼がいた。ついでに言うと、熊も結構近いところにいる。リーシアが配置した動物は馬などの草食な物が多いが、一方でルミが配置した動物は狼や熊などの強そうな物が多かった。カードの偏りだろうか……?

 

「だ、大丈夫です……! ちゃんと食べないように躾けてます!」

 

「そうなの……? それなら大丈夫かしら……?」

 

 そう言うと、リーシアは細い指を伸ばして、ルミが配置した兎カードを突いた。そして小さく笑うと、俺の方にある兎軍団をじっと見つめた。

 

「早くロランと合流しなきゃいけないわね……」

 

 リーシアが決意を新たにしたようだった。

 しかし、それから数ターンの間、目的の川のカードが出なかった。これはだいぶ運が悪いな……このゲームは迂闊に川を並べてはいけないな……ん、待てよ。

 

「あれ、このゲームって、空白ができちゃうのはアリだっけ?」

 

 このゲームの説明は絵柄を繋げていくことで動物の住処が広がるとあった。上下左右はカードが配置されれているが、そこ自体には何もない空白のマスは許容されるのだろうか?

 

「空白……?」

 

 リーシアがぼんやりとした雰囲気を出しながら聞き返した。

 

「あ、うん、その、地形を繋げるときに上下でも繋げられるじゃん。だから川の札を使わないで川を跨げないかなと思って……ええっと、この『湖付きの草原』の上に『草原』が置いてあるじゃん。これをさらに上に拡張した後、川関係のカードを使わずに左に拡張すれば、絵的にはちゃんと繋がってるからアリかと思ったんだ。ただ、そうすると、川の上は絶対に絵が繋がらなくなっちゃうから、空白になるんだけど……これはゲーム的にはアリ?」

 

「…………あり、だと思うわ」

 

「お! やった。それなら、今言ったように上側から合流を目指してみるね。もし良かったらリーシアとルミも上側の拡張を進めてくれると、接続しやすくなるから助かる……!」

 

 これで何とか『全員敗北』を避けられると良いが……

 

「……うん、分かったわ」

 

 リーシアは儚げで弱弱しくも、目には力を込めて答えた。

 

「頑張ります!」

 

 そしてルミもそんなリーシアに続くように強く頷いてくれた。

 それから数ターン後、出て来るカードの引きも良く、そして何より三人で接続のために全力で住処の拡張を行ったため、無事接続が完了した。

 

「良かった……ありがとう、二人とも……」

 

 いやー、よかったよかった。俺だけ孤立してしまって『全員敗北』になってしまったら、実質戦犯なので、防げて良かった。

 

「私も、ロランと合流できてよかったわ……これで、うさぎもいっぱいね……」

 

 リーシアは指を伸ばして、俺の、いや既に三人の共有地形に配置されている兎たちを順々に指で触っていく。そして嬉しそうに小さく笑った。

 ルミと俺はそれを安心した気持ちで見守っていた。

 だた、一方で、安心ばかりはしていられない。なぜなら、ここから先は、全員の住処が結合しているため、全員が好きな場所に地形を繋げられ、そして、好きな場所に動物を置けるからだ。

 改めて、このゲームの勝敗条件を思い出す。全員が接続しなければ、つまり地形カードが一繋ぎにならなければ、『全員敗北』。そして、それ以外のケースでは、地形カードを全て使い切った時にゲームが終了し、そのときに手持ちの動物カードが一番少ない人の勝ちだ。

 

 つまり、効率良く自分の手札を処理し、一方で相手の手札の処理を妨害する必要がある。

 気を引き締めていこう……!

 

 

 

 

 心を鬼にして、一枚、また一枚と動物を配置する。配置するときはできるだけ、ルミとリーシアが手札に持っていそうな動物の生息域を予想し、そこに先回りして動物を配置する。

 そうした活動が上手くいったのか、三人接続完了後、十ターン程度経過したあたりで、リーシアが声を漏らした。

 

「さっきから、置きたいところに置けないわ……どうしてからしら……いつもロランが置いちゃうの……」

 

 リーシアは、十枚まで増えてしまった彼女自身の手札を、悲しそうに見つめていた。

 すまない……

 俺は無言でプレイングに集中することにした。しかし、それは許されなかった。

 

「リーシア様! ロランさんが意地悪してるんです……!」

 

 八枚の手札を持つ白と黒の二色髪の少女――ルミが俺を糾弾するように見た。

 

「……? そうなの……? ロラン……?」

 

 リーシアはルミの言葉に驚いたような顔になり、それから、俺の方を見た。疑っているというよりも、どうしたらいいか分からない、信じたいといったような感情をその瞳からは感じた。

 すまない……

 

「え? え?」

 

 三枚の手札を持つ俺は、すっとぼけた……

 リーシアは俺とルミを交互に見た。

 

「騙されちゃダメです……! ロランさんはリーシア様と私の手札を予想して先回りしてるんです!」

 

「…………そうなの……? ロラン……?」

 

 リーシアは悩まし気に俺の方を見た。まだ結論は出ていないようだ。

 

「えっと、その、手札に動物がいたから、それで出してて……」

 

 俺はすっとぼけた……

 

「そうなの、それならしょうがないわね……」

 

「リーシア様! しょうがなくないです! それにロランさんも、急に惚けないでください! 狡いですよ! これは協力して動物の住処を広げるゲームですよ!」

 

 ……ん? そうなのか……?

 これは、ルール的に考えて、いかに動物カードを処理するかのゲームではないのか……?

 あれ、え? もしかして、俺の解釈違った……? でも、ゲームって勝つためにやるというか、いや、まあ、それだけじゃないかもしれないけど、勝つ方向に向かう意志を持ってやるものじゃないの……?

 ん? ん? あれ? もしかして、このゲームって皆で協力して楽しむもの……? え、じゃあ、何で、勝敗とかあるの……?

 

「えっと、えっと、まあ、その、あの、半分以上は本当だよ。実際、置けるから置いたというか……まあ、ちょっとだけ、置く順番を工夫したりもしたけど……」

 

 気まずさからか、ルミの指摘を肯定するかのような言葉を口にする。

 

「意地悪はダメですよ……!」

 

「いや、意地悪ではないよ……純粋なプレイングというか……いや、まあ、ごめん、見方によってはそう捉えられるかもしれないけど、でも、みんなやってると思って……これ、そういうゲームじゃないの……?」

 

「違います! これは意地悪するゲームじゃないです! これは協力して動物の住処を広げるゲームです! そうですよね、リーシア様!」

 

「……うん、そうよ。これは皆で動物の住処を広げて、いろんな動物をいろんな所に住まわせてあげるゲームよ……」

 

「え、あ、それは、何と言うか、ごめん。次から気を付けます」

 

「ううん、いいのよロラン……でも次からは、うさぎを独り占めしたらダメよ……」

 

 俺が謝ると、リーシアは見当違いの注意をした。

 

「それも気を付けたいところだけど、兎に関しては完全に運だから何とも言えない……」

 

 偶々だが、接続完了後も兎が出続けてしまい、俺は何度も兎を草原に設置するということをやっていた。そのたびにリーシアが羨ましそうに見ていたが、まさかここで口頭注意されるとは思わなかった。

 

「……そうなの……? そっちは意地悪じゃないの……?」

 

 リーシアは不思議そうに俺を見た。

 

「うん」

 

「………………それなら…………しょうがない、のかも、しれないわ……」

 

 とても深く悩みながらもリーシアは俺に許しを出した。妨害プレイングしたことに対する許しよりも、遥かに時間がかかった許しであった。

 

「えっと、ルミも、ごめんね? よく知らなくて……」

 

 じーっとこちらを睨むルミに対しても謝る。

 

「……むー、リーシア様が良いみたいですし、反省してるなら私も良いですけど……もう先読みして動物を貯めこませたりしたらダメですからね!」

 

「それは勿論。あと、その、これは別に、変な気持ちで言うわけじゃないけど、偶々、順当に動物カードを置いていった時に、他の人が置きたいところに被っちゃうのはアリ? あ、勿論、偶然ね。わざとじゃなくて」

 

「アリですけど、狙ってやったら意地悪だからダメですよ!」

 

 おお、良かった。許しを得た。いや、勿論、わざとやるわけじゃない。ただ、普通にプレイングしてても、この流れだと悪者扱いされる可能性があったので、事前にその可能性を減らしておきたかったのだ。

 

「勿論……、勿論……!」

 

 それから先は、三人で協力しながらゲームを進めていった。妨害はなく、平和的に土地は広がり動物たちの住処になっていった。

 のんびりとした気持ちで、動物を置いておくのは、少しだけ退屈だったけれど、一方でどこか心を洗われるような気分にもなる。

 俺の妨害がないためか、リーシアとルミも問題なく動物カードを置くことができて、どこか嬉しそうだった。

 そして最後のカードが置かれゲームは終了した。リーシアは満足気な笑みを浮かべながら場にある動物カードを一つずつ愛おしそうに突いていた。そして、ルミはそんなリーシアの様子をニコニコしながら見守っていた。

 ちなみに最終的な順位はリーシアと俺が1枚で同着になり、ルミが2枚となった。妨害プレイングを続けていたら単独首位だったろうなと、ろくでもないことを考えていると、動物を一通り突き終えたリーシアが何か言いたげにこちらを見た。

 

「リーシア、どうしたの?」

 

「うん、…………ロラン。一緒に遊んでくれて、ありがとう……いつもは、ルミちゃんとしかやってなかったから……嬉しかったわ」

 

「え、あ、うん……こちらこそ?」

 

 思わぬ感謝に反射的に言葉を返してしまう。

 

「あ……違うの……ルミちゃんと遊ぶのが嫌わけじゃないの……むしろ嬉しいわ……でも、そうじゃなくてね……ルミちゃんだけじゃなくて、ロランも一緒なのが嬉しいの……」

 

 おっかなびっくり、頬を赤くしながらリーシアが言葉を紡いだ。

 ……うーむ。どうやら、和マンチ気味で、妨害ばっかりしているようなやつでも、リーシアは広い心で向き合ってくれるようだ

 やはり、リーシアは、とても優しい心を持ってるようだ……

 

「ああ、なるほど。それは、なるほど……俺も楽しかったし、なんか嬉しかった気がする。二人ともありがとう」

 

「私も、リーシア様とロランさんと一緒に遊べて楽しかったです!」

 

 続くようなルミの言葉を聞いて、リーシアは嬉しそうに笑い、それを見て、俺とルミもまた朗らかな気持ちになったのであった。

 

 

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