ほのぼの生存戦略、気ままに生きるのは難しい   作:こふし無双

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一章21話 異世界四日目 ルティナの魔術講座①

 魔術店の外に出た後も、歩き続けるルティナの後を追うと、一件の軽食店――小さな飲食店のような店の前で、こちらに振り返った。

 

「立ち話だと長くなるから、ここで話すね。ああ、お代は私が払うから気にしないで」

 

 なんか、スイといいルティナといい、金出したがる人が多いな。流石に教えて貰う以上俺が出したいところなのだが。

 

「いえいえ、教えて貰うんですから、自分が出しますよ」

 

「ふーん、生意気の駆け出しのくせに意外と良い心がけ……あれ、でも、ちょっと待って! スイにお金借りてるでしょ! 出す余裕ないでしょ。あるなら返済に回しなよっ!」

 

 おっと、痛い所突かれた。というか、このネタ突かれるのちょっと嫌だな。早い所、スイに金を返さないと。まあ、日程的に明後日くらいには金が貯まったことにするか。少し早い気もするが、スイ目線ではそこまで不自然ではないはずだ。

 

「た、確かに、そう言われるとそうですね。ああ、でも、スイさんにお借りした額に比べれば、ここでの出費は大したことはないですし、それに返済の目途はある程度ついているので、やはり、ここは自分が」

 

「それなら……まあ、いいけど。でも金貨3枚の目途がついてるって……やっぱり調子に乗ってる……! 本当に生意気な駆け出しなんだから」

 

 おっと借りてる額まで把握済みか。思ったより情報共有されてるな。ということは、ルティナ側の情報もスイに伝わっている可能性があるということだ。つまりスイは俺の事を4層の探索者だと思っている可能性が結構ある。うーん、4層の収入だと明後日に返済はギリギリだな。まあ、いいか。

 

「ええっと、まあ、とりあえず、入りますか」

 

 軽食店の中へと入り、二人で適当に飲み物を頼む。店員が下がった途端ルティナが話し始めた。

 

「早速だけど、魔術について説明するね。どこから聞きたい?」

 

「基礎から分かってないので、できれば全部聞きたいです」

 

「それなら、まずはざっくりとした概念と、発動条件、それと有名な呪文についてかな。じゃあ、説明するよ。最初に魔術は『魔力』を使って『なんらかの効果』を発動させるものの事。だから、使用するには『魔力』と『効果を決めるもの』、あと『発動するための推進力』が必要なの。ここで言う『なんらかの効果』って言うのは、傷を治したり、炎の弾を出したり、まあ、色々あるよ。ここまではいい?」

 

「だいたい大丈夫です」

 

 『魔力』と『推進力』の違いが気になるが、たぶん説明が入るだろうから、質問はしないでおこう。

 

「続けるね。まず『魔力』だけど、これは結構な量を集めないと発動できないよ。『魔力』は三か所から集める必要があって、一つは『自分の魔力』、もう一つは『周囲の魔力』、最後の一つは『燃料となる魔力』。一つずつ説明するね。『自分の魔力』は一番コントロールしやすい。けど、たぶん一番量が少ない。まあ、中には生まれつき高い魔力の持ち主もいるけど、基本的に私たち人間はそんなに魔力を持ってない。だから三種類の『魔力』の中では一番少ない。でも一番制御しやすいから、一番重要なところでもある。この魔力を使って魔術を始動させる」

 

 そこでルティナは一呼吸入れると、再び口を開く。

 

「二つ目の『周囲の魔力』、これは文字通り、発動するときに周りにある魔力のこと。コントロールが一番難しい。量は状況によって変わるけど、私たち探索者の場合は遺跡で使う事が多いから、量はかなり多いと思って良いよ。特に遺跡は深部ほど魔力濃度が上がるから、魔術を使う環境としてはむしろ高すぎるくらいかも。『自分の魔力』で発火した力を拡大させるのに必要。一応、このあと説明する『燃料となる魔力』で代用できるから、最悪無くても発動はできる。でも環境によっては、特に魔力濃度が高すぎる場所だと魔術が暴発することもあるから、気を付けなきゃいけないポイントだよ」

 

 そう言うと、ルティナは一瞬こちらの目を見た。そして満足気に頬を僅かに緩めた後、再び説明に戻る。

 

「最後に『燃料となる魔力』、これは魔石とかのことね。『自分の魔力』だけでは魔力が足りないから、『なんらかの効果』を得るには足りない魔力を補完する必要があるの。『周囲の魔力』が高ければ最悪無くてもなんとかなるけど、『燃料となる魔力』は比較的コントロールがしやすい方だから、センスが無い魔術師はこっちをメインに使うよ。まあ、センスがあっても、状況によって左右されず、安定して使えるから、『周囲の魔力』よりも『燃料となる魔力』を使用する人が多いかな」

 

 ふむ、まあ、ざっくりとわかったような分かってないような。俺の表情を見て、ルティナは一息つくと、また語りだした。

 

「ちょっと火起こしで説明するね。使用する魔術の体系にもよるけど、基本的に『自分の魔力』を火打石みたいに使って魔術を発動させるの。上手い人は小さい労力で火を付けられる。下手だと中々うまくいかない。魔術に才能が必要って言われる大部分はこの辺りのこと。魔術師の数が少ない原因でもある。『自分の魔力』を上手く火種にする制御力。それが一番大事で、魔術師と非魔術師を分ける壁ね。でも修練すれば誰でもできると思うから、時間とお金があれば誰でも魔術師になれるよ。カイもよほどセンスが無いとか、生まれつきの魔力が皆無とかじゃなければ、できるようになるはず。次に『周囲の魔力』は空気の乾燥具合とかかな。状況によって火の大きさ、着火しやすさが変わるよ。雨が降ってて全然火が着かないってこともある。まあ、それはそれで対処法はあるけど。で、最後の『燃料となる魔力』は文字通り燃料、燃やすための藁とかそういうもの。これで火をつける。魔術を発動させるの」

 

 なるほど? まあ、なんとなくわかった。おそらくギルドカードで認識されている魔力というのは、ルティナが説明した『自分の魔力』というやつだろう。そして魔術店や採取物で見かけた魔石は『燃料となる魔力』だ。たしか『トーライト鉱石』はそうだった気がする。うんうん、わかってきたぞ。『魔力』には三系統あると。それで?

 

「なるほど、だいたい分かりました。ちなみに実際に発動するのはどんな感じなんですか、何か呪文を唱えたりするんでしょうか」

 

「それがさっき言った『効果を決めるもの』のこと。魔術の発動には魔力以外にもいろいろと必要で、そのうちの一つが呪文。呪文と対応する系統の発動体。この二つで魔術の効果を決める。最後に『発動する推進力』として使用する魔術の系統や格にあった触媒が必要だよ」

 

 触媒。これも素材を調べてるときに聞いたことがあったな。『ルカシャの灰』が魔術の触媒に使われたはずだ。

 俺が情報を整理していると、ルティナは彼女の鞄の中からいくつかの物を取り出した。装飾が施された腕輪と指輪、それと手袋だ。そして、指輪を左手の中指に付け、腕輪を左手首に付け、最後に手袋を俺に見えるように置いた。

 

「実際に発動までの流れを言うと、今、ここにある手袋、これが発動体。発動体は杖の形をしたのが多いけど、私は杖術をあまり使わないから手袋型にしてる。この手袋を着けた状態で『自分の魔力』を手袋に吹きかけて呪文を唱える。そうすると、腕輪に込められたルキウェルが光の魔術の触媒となってくれる。そして指輪に嵌められた『燃料となる魔石』、今回はアノトリンが魔術に発動に必要な分だけの魔力を供給する。呪文を唱え終わると、この工程が終わり、魔術の効果が現れる。基本的にはこんな感じ」

 

 説明を終えてすぐに、ルティナは言い忘れに気付いたような顔になり、言葉を付け足すように口を開いた。

 

「あと今は説明しなかったけど、状況や魔術系統によっては『周囲の魔力』も使うよ。あと今のは最低限の流れで、状況によって他にも魔術用の器具を使う事はあるよ。たとえば、魔術のコントロールや触媒は複雑で入り組んでるから、制御を助ける魔術補助具を使う人は結構多いし、他にも複数の触媒を使って効果を強めたりする触媒共鳴具とかを使う人もいるかな」

 

 ふむふむ。分かってきたが、いくつか気になることがあるな。

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