ほのぼの生存戦略、気ままに生きるのは難しい   作:こふし無双

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一章56話 異世界十四日目 夕食①

 歴代二番と褒められて、ふんわりとした気分のままギルドを出た。

 いつものなら適当に夕飯を済ませるところだが、せっかくに二層突入記念、それとよく分からないが歴代二位の昇級記念だ。少し特別な所で食べたい。

 いや、特別な所で食べるほどに大した事はしていない気もするが……まあ、いいか。俺は以前ユリアに紹介してもらった大通り東側の店――『キーブ・デリキーエ』に行く事にした。あそこはとても良かった。ディナーもやっているようなので、せっかくなので行ってみようといった感じだ。

 

 人が沢山いる大通りを歩いていく。どの人も活気のようなものを感じる。たぶんクリスクが経済的に発展しているからだろう。まあ、その分貧富の差もあるからか、教会に恵みを求める人もいるみたいだが。大通りを進むにつれ、ちらほらと探索者らしき見た目の人も増えてきた。見た目の雰囲気からして昼組っぽい。たぶん昼の得た稼ぎを夕方から夜にかけて使うのだろう。宵越しの金はもたないみたいな感じかもしれない。

 

 周囲を観察しながらも例の店にたどり着いた。まだ夕方に入る少し前だが、繁盛しているようで、混んでいるのが外から見ても分かる。満員か? あんまり待たない性質なんだが、今日はなんとなく特別な日っぽい気分だし、お腹も本格的に空いているわけではないから少しくらい待っても良いだろう。

 俺は店員に話しかけ、席の空きを確認する。やはり満員のようなので、順番待ちのリストに入れてもらい店外で待つことにした。親切な店員で、待ち時間のおおよその時間を教えてくれた。しかもその時間がなかなか精確で、ちょうど言われた時間を待ったら、店の中へ入れた。

 

 店内は夕焼けに焼かれていて、なんとなくだが綺麗に見えた。席やテーブルの置き方、装飾品などが、夕焼けの上手く合うようにセッティングされているのかもしれない。この微妙な時間帯でも人気であることから考えると、もしかしたら、店側が夕方に客を引き寄せるように色々と考えているのかもしれない。

 などと適当に考察しつつも、単品料理や飲み物をいくつかオーダーする。まだ、時間的に夜でもないし、今日はちょびちょび食べながら居座ろうかな。

 

 椅子に座り、今日の遺跡でのことやギルドでのことを考えながら時間を潰していると、単品料理と飲み物が運ばれてきた。それを口にする。美味い。やはりこの店は一番美味い。ユリアが紹介してくれた店の中でも別格だ。その分値段も張るが、十分に値段に釣り合った旨さだと思う。この飲み物も果実の搾り汁、つまりジュースだが、なんか凄く美味い。繊細な味がすると言えばいいのだろうか。

 あ、ちなみに俺は酒が飲めない。厳密には飲めないんじゃなくて飲まないんだが、まあ他人から見ればその二つに大して差は無いだろう。

 ジュースとともに単品料理も口にする。ガーリックトーストと揚げた肉料理だが、どちらもやはり美味い。味付けも良いが、多分食材も良いんだろう。一流っぽい味がする。

 その後も、間を置きつつ料理を一つ一つ食べていく。色々な料理を食べれるように一品の量は少ないものを選んでいる。それを少しずつ食べる、飲む。単品料理の皿が四つ、飲み物のグラスが二つテーブルに並んだところで、なんとなく周囲を確認する。既に太陽は沈みきり、店は品の良いライトアップがされている。込み具合は夜になっても相変わらずだ。というより、むしろ夕方よりも混んでいるように見える。もしかしたら、席が増えているのかもしれない。

 

 次は何を注文しようか。気持ちとしては腹七分目くらい。つまり後半戦だ。ここは少し重い系、メインディッシュっぽいものでも頼むか。

 俺は肉の煮込み料理を頼もうとしたところで、店員から声をかけられた。

 

「すみません。今ちょっと混みあってまして、相席入ってもいいですか?」

 

 相席…………内気だからちょっと。何となく周り見渡すが、目に入る席はどこも埋まっていた。空いているのは俺のテーブルの前の椅子くらいだ。なるほど。どうも、一人客はあまり多くないようだ。もしくは、他の一人客も既に相席をしているのかもしれない。

 

「ん……ん、ええっと。はい、まあ、その、怖くなさそうな人なら、大丈夫です」

 

 どこも席が埋まっていて、俺の前だけが空いている。そして店の外には待っている人がそこそこいる。拒みにくかった。それに、ここはとても良い店なので、拒んで出禁になったら嫌だ。

 

「大丈夫ですよ。この店によく来る人なんで、問題事は起こしませんよ」

 

 そう言って、店員は客を案内するためか店の入口の方へと向かった。

 常連さんか。その情報だけだと大丈夫かどうかは分からないが……まあ、この店は雰囲気も良さそうだし、治安の良い通りに面しているし、暴力的な人とかはあんまり寄り付かなそうだから、常連さんなら大丈夫かな?

 そう思っていると、店員に案内されて一人の茶髪の少女がやってきて、俺の前の席にどかりと乱暴に腰かけた。そして、俺の方を見て、口を大きく開いた。

 

「相席! ありがとねっ! ここ結構混んでてさ! いつもは仲間と来るんだけど、今日は一人だからさ! とにかくありがとっ! それ、見ない料理だね! 何食べてるの?」

 

 思わず、ビクリとしてしまった。

 なんだろう、勢いがある少女だ。声量は普通よりも少し大きいくらいだが、なんか声に芯があるというか、力があるというか、とにかく胸に響く。発声が良いのだろうか。それに、なんか、こう目力があるのか、喋っている時にこちらの目を力強く見るものだから、気圧されてしまう。悪気は無さそうな感じだが、気が弱い俺としては、驚いてしまう。

 

「え、ええ、これは……穀物でできた薄い生地に野菜と肉が入っている料理です。肉は香辛料がかかっていて、後かなりよく焼けていて……炭かな? 焼く時にたぶん工夫がされていて香ばしさが付けられてて、それが香辛料と上手く調和している感じがしますね……ああ、えっと、自分としては、美味しかったですよ」

 

 俺が説明している最中も、目の前の少女が強い目力でこっちを見て来るから、なんか、良く分からない説明になってしまった。いや、説明というか、もはや感想かもしれない。

 

「いいねっ! 美味しそう! 私もそれにしよっと!」

 

 そう言って、少女は手慣れたように店員にいくつかの料理を注文した。その中には俺が説明した料理も含まれていた。店員が去った後、少女は俺の方に再び視線を向けた。

 

「名前、なに?」

 

 ……? …………あ、名前聞いたのか。なんか、凄い短い質問文だったから分からなった。

 

「えっと、自分のですよね。フジ、あー、カイ・フジガサキです」

 

 この世界、あ、いや、クリスク遺跡街では、名前が先、苗字が後だ。未だ慣れない。

 

「そう! カイ、よろしく! 私はマリエッタ。マリエッタ・バーセル」

 

「ああ、どうも、バーセルさん、よろしくお願いします」

 

 俺の言葉が気に入らなったのか、茶髪の少女はこちらを力強く見て、さらに口を開いた。

 

「マリエッタでいいよ! 同じ探索者でしょ!」

 

 やはり胸に響く声だ。声量が大きいというわけでは無いが……自分に自信がある感じの人なんだろうか。

 

「マリエッタさんは探索者でしたか。ちなみに、自分が探索者だとどうして思ったんですか?」

 

「あれ!? 違った? ごめんごめん。魔力の残り香を感じたから、てっきり今日潜ってきたのかと思ったんだけど」

 

 魔力の残り香……以前ルティナが言ってたやつかな? 残り香を判別するのは高等技術だとルティナは言っていたが、マリエッタにも分かるのだろうか。

 

「いえ、合ってます。探索者です。仰る通り、今日潜ってきました」

 

「だよね! 合ってた、合ってた。十層くらい? というか、どこのパーティー? 見ない顔だよね! クリスクには最近来たの?」

 

 ど、どんどん質問してくる……

 どうしよう? どう答えたものか。一応嘘を吐く理由は無いし、正直に言った方がいいのかな?

 

「今日は一応そこそこ潜りました。パーティーには所属してはいない感じです。クリスクには十日と少し前くらいに来ました」

 

 層に関しては、ぼかしておく。

 

「おお! ニュービーか! ソロで十層とはやるね! 見た目に寄らず武闘派! って感じ?」

 

 なんか十層に決まったようだ。まあ、実際、今日採取したものは十層以降のものばかりだから、あまり間違っていないのかもしれないが。

 

「戦闘は避ける方なので、非武闘派です」

 

「はっは! 面白いね! カイは! さっきから落ち着いてるし! 私より年下でしょ。凄いね! 年いくつ?」

 

 ……ん? いや、たぶんこの少女の方が年下に見えるが……案外同い年くらいだったりするのだろうか。

 

「22です。ちなみにマリエッタさん、無茶苦茶若く見えるんですけど、おいくつなんですか……?」

 

 聞いてて、女性の年を聞くのは良くないかなとも思ったが、まあ話題にしたのは向こうだし良いのかな?

 

「え! 嘘! 年上! 本当? サバ読んでない? 別に年下でもカモったりしないよ?」

 

 年上、年下でカモるカモらないってあるのか……いや、まあ、マリエッタはしないみたいだが。

 

「いえ、本当に22です。というか、そろそろ23かもしれないです」

 

 こっちに来て季節が飛んでるから、いまいち誕生日と肉体年齢の相互関係が分からないけど。

 

「え、えー。22……あー、えっと! 私、17歳。よろしく! カイさん!」

 

 おお、敬称がついた。年齢を重視するタイプなのだろうか。

 

「あ、はい、どうも、よろしく、マリエッタさん」

 

「呼び捨てで良いよ! カイさん! 年上なんだから! 探索者としての腕も良いみたいだし! っていか、カイさん凄いね! 十層ソロでしょ! 私もできるか分からないよ!」

 

 呼び捨ては抵抗あるな。距離感が上手く測れなくなる気がする。

 

「あーいえいえ、たぶんマリエッタさんの方が探索者としては先達なので。あとまあ、層に関しては、巡り合わせが良いので。マリエッタさんはどのくらいの層で活動してるんですか?」

 

「そんなことないと思うよ! 活動層はいまのところ二十層と少しくらい! でも、パーティーでだから、ソロだとそんなに行けないよ! 私、後衛だし!」

 

 二十層! 最上級レベルじゃん。強い。あと、後衛なんだ。ちょっと意外。なんか圧が強そうな感じがするしパーティーなら前衛だと思ってた。

 

「二十層って凄い深いですね。もしかしてAAランクパーティーってやつですか?」

 

「そうそう! よく分かったね! まあまあ前にできたパーティーなんだけど、リーダーが私の探索者としての師匠でね! クリスクに来た時に入れて貰ったんだ!」

 

 へー。やっぱり人脈って大事なんだな。

 

「なるほど……あれ? となると、それまではソロだった感じですか? もしそうだとすると、ソロの時はどんな風に行動してたんですか?」

 

 ちょっと気になったところを質問する。自分も分類的にはソロ探索者なので、深層経験者であるマリエッタの振る舞いは聞いてみたい。

 

「ソロじゃないよ。その時、その時でパーティーを組む感じ! ていうか、15層以降でソロは危ないしね!」

 

 あー、なるほど。朝一でその日限りのパーティーを組んでいくスタイルか。ギルドでも見かけたタイプだ。

 

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